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第218話 ようやく、会えた

 ーーーカイト視点ーーー


 パルンを目指して進み、漸くトルリに到着した



「わかってると思うが、都には泊まれないからな?」


 俺達を出迎える為にトルリの復興をしていたガイルクが言ってくる


「まあ、そうだろうな、近くで野営するからトルリには入らないから安心してくれ」


 なんせ、都中が火の海になったんだ

 完全に復興するまで何年もかかるだろう

 ……重機があったら数ヶ月くらいで終わるだろうが

 そんなのがサーリストにあるわけないしな……


「それで? さっきからボクを睨んでるコイツは?」


 ガイルクがライアンを指差す


「あぁ、俺の専属の護衛のライアン、かなり強いぞ?」

「専属ねぇ、んで? 何でボクを睨んでるの?」

「いやぁ、生意気なガキだなと思ってな」

「はっ?」

「大将に随分と嘗めた口の聞き方じゃねえか」

「ライアン、気にするな、それとお前が言うな」


 不敬とか言い出したらキリがないからな?


「ふん、ボクはコイツに忠誠を誓った訳じゃないからね、ボクの主はメルノユ様とテリアンヌ様だ、2人がコイツに従ってるからボクも従ってるだけさ」

「んな無理するくらいなら辞めたらいいんじゃねえのか?」

「なんだと?」


 あ、ヤバイ、この2人は水と油だ


「はいはい、お前らそこまで!」


 俺が止めようとしたらユリウスがやって来て2人を止めた


「ライアン、野営の準備を手伝え、カイト様はガイルクに任せろ」

「はっ? コイツと大将を一緒にするのか? 大将が危ないだろ?」

「ガイルクはそこまで無計画な馬鹿じゃねえよ、ほらさっさと来いって!」

「うぉ! ちょ! いつの間にあんたも居んだよ!?」


 いつの間にか側に来ていたティールとユリウスの2人に無理矢理連行されていったライアンだった


「…………」

「…………」


 き、気まずい


「あー、ライアンが言ったことは気にするなよ? お前がどう思ってどうするかはお前の自由だからさ」

「気にしてないから……」


 …………


「ふ、復興はどこまで進んでる?」

「やっと瓦礫が片付いた所だ、これから職人を雇って建物の修復だ」

「そ、そっか……」

「……………」

「……………」


 あぁ! 会話が続かない!

 何を話せばいいんだ?

 ガイルクからしたら父親の仇の俺が!


「なぁ、カイト……」

「おっ! えっ? あ、なんだ?」


 不意に呼ばれて戸惑った


「父上の最期を覚えているか?」

「……あぁ、忘れられる訳がない」


 ガイルクの父親、バベルクはトルリの都を利用した火計で俺達を倒そうとした

 火薬の爆発で都に閉じ込められた俺とレルガはトルリ城に向かった


『パストーレに勝利を!! ブライ! 先に逝くぞぉぉぉぉぉ!!』


 トルリ城の玉座の間で待ち伏せしていたバベルクは、自らを利用して俺とレルガを引き付けながら、隠していた大量の火薬に点火して自爆した


 レルガの決死の行動が無かったら俺もレルガも死んでいた


「バベルクにはパストーレの覚悟を見せられたよ」

「……そっか」


 …………


「やっと見つけたんだ」

「見つけた?」

「父上の遺体……身体はバラバラだったし、腐敗も進んでいたけど……頭は冑に守られたのか損傷が少なくて、確認できた」

「……そうか」

「誇らしげに笑ってたんだよ……父上の表情は……」

「…………」

「それ見たら、何か自分が情けなくなった」


 ガイルクは俺を見る


「お前を許すつもり無いし、忠誠を誓うつもりも無いけど……お前を殺したら、父上の覚悟を無駄にしてしまう、だから、お前がこの世界に必要な間は、ボクはお前を殺さないでいてやるよ」

「俺が必要ないってなったら?」

「殺す」


 躊躇いないな……


「そうならないようにこれからも働けよ」

「……あぁ、そうする……あ、でも俺を殺したい奴は多いから、先に取られるかもしれんぞ?」

「お前怨まれすぎだろ」



 ・・・・・・・・・


 トルリの外で野営をした翌日


 俺達はパルンを目指して出発する

 あと少し、あと少しでパルンに着く!



 あー! ティンクに早く会いたい!!



「大将、機嫌が良いな?」

「やっとティンクに会えるからな!」

「そんなに喜ぶほどなのか?」

「お前も結婚したらわかる!」

「……そんなもんか?」

「そんなもんだ!」


 こうして俺達は順調に進んでいた



 数日後、遠くにパルンの都が見えてきた


「おっ! 見えてきた!!」


 俺のテンションがドンドン上がる!

 馬車から飛び出して一気に馬で駆け出したいくらいだ!


「大将! 落ちるから大人しく座っといた方がいいぞ!」

「あぁ!」


 俺は扉から出していた身体を引っ込めて扉を閉める


「~♪」

「そんなにか……」


 俺のテンションはハイテンションを越えていた

 今なら会心の一撃を越えた一撃を出せそうだ!


『おい! 下がれ! 違う! 向こうだ!』


 んっ? なんか外が騒がしいぞ? 

 うぉ!? 馬車の運転が荒くなったぞ!?



「なんだ! どうした!」


 俺が叫ぶと


「猪です! とても巨大な猪がこっちに走ってきてます!」


 外から兵士が答える


 猪? こんなに騒ぐほどのもんじゃないだろ?

 よく狩りとかしてるし……


 俺は小窓から外を見る


「ぶっ!?」


 一瞬だが見えた、デカイ猪だ

 いや、マジでデカイ!

 なんだ? 大型トラックくらいの大きさはあるんじゃないのか?


「へぇ、面白いじゃねえか!」


 ライアンはやる気だ


「馬鹿! あんなのマトモに戦えるか! ぶつかったから即死だぞ!!」


 猪の体当たりを嘗めるなよ!?

 普通のサイズなら、兵士達も狩りで慣れてるから良いけど!

 あんなサイズは無理だ! 当たれば即死のオワタ式だ!


『散れ! 散れ!』


 ユリウスの声


 俺は小窓を覗く


「うわ! こっちに近付いてきてる!?」


 猪は俺達の方に向かってる

 少しずつ近付いてきてる

 高速道路で徐々に迫る後続車を見てる気分だ!


「もっと速く出来ないか!? このままじゃそのうち追い付かれるぞ!」

「これが限界です!」


 馭者が叫ぶ


「やっぱり俺が!」

「だから止めろ!」


 ってうわ近い近い!

 もう1分も無いだろこの距離は!!


 まさかの巨大猪に殺られるのか!?

 いやだ! どうにか対策を……


 パァン!!


「んっ? なんだ今の音?」


 風船が破裂したような音


 パァン!

 パァン!


 いや、これ火薬が爆発した音か?

 爆竹みたいな音だぞ?


 ドスン!!


「うぉ!?」

「大将!!」


 地響き、揺れる馬車

 ライアンが俺を抱き締めて外に飛び出した

 その直後に馬車が横転する、あ、馭者が草むらに投げ出された


 ドサッ!


「っと! 大将怪我してないか?」

「あぁ、助かった……猪は!!」


 俺は猪を見る……あれ?


「倒れてるな……」


 ライアンが言う

 散っていた兵士達が集まってきて猪を調べる

 ティールが猪の頭部に近付いて、兵士に何かを伝える

 何かを伝えられた兵士が俺のところに来る


「猪が死んでます! ティール様が平気ならこっちに来てほしいと……」

「わかった、ライアン、馭者の様子を見てくれ」

「気を付けろよ?」


 ライアンが馭者の飛ばされた方に向かう

 馭者は腰を押さえながら立ち上がっていた

 ……怪我は軽そうだな、よし、俺は猪の方に行くか


 ティールの側に行くと


「これを見てください」

「……鉄?」


 ティールは猪の頭部から取り出した物を見せる

 血塗れの鉄の塊?


「形が少し歪んでますが、これは鏃ですね、、前足2本に1つずつ、頭部に1つありました、動きを止めてから脳を破壊したかと……」


 ティールもよくわかってないみたいだ


「…………」


 ユリウスが脚の方から俺達の方にやって来た


「どうしたユリウス? 黙り込んで」

「いや、傷痕から見たら、パルンの方角から飛んで来たっぽいんだけど」

「パルンから? いくらなんでもそれはないだろ?」


 まだ距離があるんだぞ?

 鉄砲でも届かないだろ?


「……ですよね?」

「考えてても仕方ない、負傷者の確認をしてから何人か見張りに残してパルンに行こう、メルノユに知らせたら兵士達に猪を回収させるだろ」


 これだけの大きさなら暫く肉には困らないだろうな……


 俺達は気を取り直してパルンに向かった


 ・・・・・・・・


 ーーーレムレ視点ーーー


「ふぅ、良かった、倒せた」


 僕はパルンの外壁の上で座り込む

 竜の弓用の試作の矢を試せる獲物を探そうとしてたら、あんな大きな猪が出てくるんだもん

 ビックリしたし、オーシャン軍に突撃していくんだもん

 焦ったよ


「やっぱりカイト様だった……無事みたいで良かった……一緒に居た男の人は初めて見た人だけど……」


 誰なんだろ?


 取り敢えず、カイト様がもうすぐ到着する事と、猪の事をメルノユ様に伝えておこう!



 僕は外壁から降りて、パルン城に向かった





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