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第217話 姉弟だから言う

 ルミルに引き摺られて僕の使ってる部屋で椅子に向かい合って座る


 僕とルミルの間にはテーブルが置いてあり

 その上にはワインとツマミのチーズがあった


「それで? どんな風に訳がわからないの?」


 ルミルは2つのグラスにワインを注ぐ


「何て言うのかな……僕は肝心なところで役に立ててないなって……」

「?」


 ルミルが首をかしげる


「西方との戦の時も結局ヘルドさん達が命をかけてくれたから生き残れたし……今回の援軍も足手まといだからって置いていかれたし……」

「あ、置いていかれたんだ?」

「…………」


 ルミルはワインを飲む


「それで? それだけで悩んでんの?」

「それだけって……他にも色々あるよ」

「例えば?」

「…………」


 僕はグラスのワインを一気に飲み干す


「アルス様を守れなかった事も……敵将を1人も倒せなかった事も、自分の弱さを思い知らされた……」

「他には?」

「訓練していても強くなれてる実感が無いし、全然駄目で………………」

「今ので終わり?」

「……多分」


 僕がそう言うとルミルは2杯目のワインを飲み干し

 僕の目を見る

 そして……


「ばっかじゃないの?」

「……」

「ヘルドさんやルーツさんが命をかけたのはカイト様の為よ? あんたの為じゃないんだから気にしすぎ」

「それは……」

「私はヘルドさんやルーツさんの最期を見てないけど……あの人達が私達に望んでるのは悔やむことじゃないでしょ?」

「…………」


 それを言われて思い出す

 ヘルドさんやルーツさん、オルベリンさんに良く言われてた言葉を


『これからのオーシャンを任せる』


「訓練の時も言われてたね……お前達若者がこれからのオーシャンを守るんだって……」

「それを思い出したなら、悔やむのは止めなさい」

「……善処するよ」

「止めなさい、今回置いていかれたのもそんな所を見破られたからじゃないの?」

「…………」

「それと、アルス様の事だけど……死亡したって報告を聞いてから、ずっと思ってたんだけど……」

「?」

「カイト様も私達も誰もアルス様の死体を見てないのよ?」

「……あっ」

「報告してきた兵士を調べて問い詰めたけど、彼もシルテンの兵が報告してるのを盗み聞きしたらしいわ」

「つまり、誰もアルス様の死体を直接確認していない?」

「そう考えたらシャルスとゲルドさんが戻ってきてない理由も想像できない?」

「アルス様は生きてるって事!? だったら報告して調べてもらわないと!」

「待ちなさいって! これは死体を見てないから言ってるだけの事よ、こんな事を言ったら今のあんたみたいに混乱するだけ」

「うっ……」

「わかったら座る」


 僕は椅子に座る


「でも、そう考えたら少しは気が楽になったでしょ?」

「……まぁ、ちょっとだけね」


 アルス様が生きてるかも知れない

 そう思えるだけでもマシかもね


「それで、次は敵将を倒せなかった事だっけ? それこそこれから倒しまくればいいじゃない、あんたは私と違って、これからも戦に参戦できるんだから」

「えっ? ルミルは出ないの?」

「少なくとも今は出られないわね、私の今の役目はティンク様を守ることだから」

「……」

「正直、私はあんたに嫉妬してんのよ? あんたはこれからいくらでも活躍できるんだから」

「……でも」

「でもじゃない、活躍しなさい」


 ……酔ってきてる?


「返事は?」

「わかったよ……」


 ルミルは3杯目を飲み干す


「大体、あんたは、自分を、卑下しすぎ、もっと……自信を……」


 そう言いながらルミルは眠った


「ルミル……お酒弱かったんだね」


 僕はルミルをベッドに寝かせて布団を掛けて、椅子に戻る


「自信か……」


 僕はワインを飲み干すとメイドさんと一緒に片付けてから、椅子に座りながら眠った


 ・・・・・・・・・


 翌日、ルミルは軽い二日酔いになりながらティンク様の護衛に戻った

 ティンク様に心配されていたが、本人は大丈夫とごり押ししていた


「さてと……」


 ルミルを見送ってから、僕はブライさんの所に向かう


 そして……


「もう一度言ってもらえるか?」

「賊でも何でもいいです、討伐の任務があれば僕に任せてもらえませんか?」


 ブライさんに頼む


「ふむ……賊を殺せば強くなれる訳ではないと言いたいが……どうやら目的は別のようだな」

「はい、でも……大事なことです」


 僕が答えると


「わかった、丁度8人程度の小規模な山賊団の報告があった、それを任せよう……兵は」

「いえ、8人なら1人で出来ます」

「そうか、なら好きにやってみろ、今日中に方付けるんじゃぞ?」

「昼までには片付けます」


 僕は山賊についての報告書を読んで、アジトの場所を把握してから出発した



 ・・・・・・・・


「な、なんだ! 何処から矢が飛んでくるんだ!? ぎゃあ!?」


 ドスッ!


 最後の山賊を撃ち抜いた


「……うん、出来た」


 出来る、僕はしっかりと戦える


 山賊の死体を1ヶ所にまとめておく

 後で兵士が片付けてくれる予定になってる


「さて、戻って訓練しよう」


 もっと、もっと!

 今は身体を動かしたい!

 何かを忘れたいからじゃない

 自分自身の為に!



 ・・・・・・・・


 1ヶ月後


「なんと……」

「マジかよ」


 ブライさんとオーシャンから戻ってきたペンクルさんが目を丸くする


「も、持ててますよね?」


 僕の左手には竜の弓がある

 驚くほど……軽く感じた


「いつかは認められるとは思っておったが……」

「ここまでとはな……」

「…………」


 僕は竜の弓を見る

 こうして見ると……本当に不思議な弓だ

 力を感じるって言うのかな?

 今なら何でも射ぬける気がする


 僕は矢をつがえる


「山の的を狙うのか?」


 ペンクルさんが聞く


「はい……なんだか、いける気がします」


 僕は遠くにある山の的に狙いを定める


 ……出来る

 僕なら、出来る!!


「!!」


 僕は矢を放つ


 キュイン!


 聞いたことも無い音を出して、矢が飛んでいった


「おおおおお! 飛ぶなぁ!」


 ペンクルさんが言う


「むっ? 待て、何かおかしくないか?」


 ブライさんが言う


 僕もおかしいと思う

 飛んでいく矢が何か変……うわぁ!?


「おい! あれ燃えてないか!?」

「矢が発火したみたいじゃな!」


 ブライさんがそう言うと同時に……


 ダン!!


 そんな音が山から聞こえてきた……


「……どうなった?」


 ペンクルさんが聞く


「……わかりません」


 僕は的を見る……何も変わってない

 矢……外れた?


「ふむ、見に行ってみるか」


 ブライさんがそう言って

 僕達は馬を用意して山を駆け上がった


 夕方になる頃に、的の所に到着した


「これは……鏃か?」


 ブライさんが的を見ながら言う


 僕も的を見る、的の真ん中には穴が空いていた

 ナイフで穴を少しほじると、鏃が出てきた


「これは……つまりどういうことだ?」


 ペンクルさんが言うと


「どうやら、矢が勢いに耐えきれずに燃えたようじゃな、そして残った鏃だけが、勢いを残して的を貫いた……と考えるべきじゃろうな、それしかわからん」

「普通発火なんかするのか!?」

「知らんよ、儂も初めて見たわい!」


 話し合う2人

 僕はそんな2人よりも、取り出した鏃を見ていた


「当たった……届いた……」


 普通なら絶対に不可能な距離を……

 僕の矢が届いた

 これなら……もっと多くの敵を倒せる

 多くの人を守れる


「戻りましょう! もっと試したいです!」


 僕はそう言うと馬に跨がり城に向かった



「……アイツ変わったな」

「ふむ、自分に自信を持てたんじゃろうな、言ったじゃろ? 悩みに答えを出した時にもっと強くなると」

「爺、何かしたか?」

「なにもしとらんな、まぁ、これからじゃよ……取り敢えず、竜の弓に耐えれる矢を作らんとな」












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