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第215話 竜の弓

 僕がパルンに到着した翌日


 僕はブライさんと一緒に訓練場に来ていた

 ついでに二日酔いで頭を抱えてるペンクルさんも着いてきていた



「……大丈夫ですか?」

「……頭いてぇ……お前は平気なのか?」

「はい、全く問題ありません」

「……これが若さか」


 そう呟くとペンクルさんは水筒を取り出して水を飲む


「さて、そろそろ準備が出来たか」


 ブライさんが呟く


「レムレ、向こうの的が見えるか?」


 ブライさんが指差す方向には的が並べられていた


「先ずはお前の弓の腕を見てみたい、儂と戦った頃からどれだけ成長したか見せてもらおう」

「わかりました」


 僕は弓を構える


「3つの的か……」


 ペンクルさんが顎に手を当てながら呟く


「3つ……じゃないですね、5つあります」


 僕は訂正する

 ブライさんがニヤリと笑った


「はぁ? 3つしか見えないが?」

「窓の外に見える木の側に1つ立てられてます……それと……もっと向こうの山の木の1つに的が貼り付けられてます」

「……はぁ?」


 ペンクルさんは窓の方に行き、外を見る

 そして戻ってくる


「確かに木の側に的があったが……山のは嘘だろ?」

「いや、儂が昨日用意させた」

「……マジかよ」


 僕は矢を取り出して、つがえる


「……ブライさん、流石にこの距離だと木の的と山の的には届きませんよ」


 そう言ってから矢を放つ


 1本目


 命中


 2本目


 命中


 3本目


 命中


「ほう、全て真ん中に当てるか……いい腕だ」


 ブライさんが感心する


「へぇ……やるじゃないか」


 ペンクルさんも感心している


「一応……狙ってみますかね」


 木の側の的を狙って矢を放つ


 矢は真っ直ぐ飛んでいくけど……窓から外に出た所で勢いが衰えて、地面に落ちた


「もう少し高いところからなら高低を利用して当てれますけど……」

「まあそうじゃろうな、儂もあそこまでは届かん」


 ならなんで用意させたんですか?


「やはり、弓の方はもう教えることはなさそうだな……あえて言うなら狩人のやり方だな」

「何かおかしいですか?」


 僕は首をかしげる


「お前は弓を射るときに相手に近付こうと動いているな、獲物を追いつめる様に」

「……まぁ、そうですね……」

「それが悪いとは言わないが、戦場では出来るだけ相手と距離を取るように動いた方がいいぞ、お前は接近戦は苦手なのだからな」

「…………」


 思い当たる事が多すぎる……


「まあ、お前なら少ししたら上手く使い分けが出来るだろう……後で訓練方法を教えてやろう」

「ありがとうございます」

「さて……むっ、どうやら来たみたいだな」

「?」


 ブライさんがパルン城の方を見る

 僕も見ると……


「よっ! ほっ!」

「はぁ、はぁ」


 3人の兵士が1つの布に包まれた物を運んできた


「ブ、ブライ様! も、持ってきました!」

「そんなに重いものじゃなかろう?」

「お、重いですよこれ……な、なんなんですか?」


 兵士の1人が息を切らしながら答えた


「鍛えが足りんな」

「親父、これはまさか……」

「そうだ」


 ブライさんは物を片手で軽々と持ち上げる

 そして布を剥ぎ取った


「……弓? これは弓ですか?」


 僕は目を疑った……

 ブライさんが持ってる物……それは弓の形をしていた

 でも……本当に弓なのかと僕は疑う

 だってその弓は金属で出来ていたから……

 持ち手である『ゆずか』部分も

 ゆずかから上半分の『押付』も、下半分の『手下』部分も

 全部金属で出来ていた

 弦だけが普通に見えた


「ああ、これは弓じゃ、『竜の弓』と呼ばれておる」

「おいおい、うちの国宝だぞ? メルノユ様から許可は取ったのかよ?」

「当たり前じゃ」


 そう言うとブライさんは矢を取り出し、弓をつがえる


「見ておれ、これが竜の弓の力じゃ!」


 そう言って、矢を1本放つ


 バシュン!

 そんな風に矢が風を斬りながら飛んでいく


「!?」


 僕は目を疑う

 飛んでいく矢が凄まじい速度だった

 普通の矢よりもずっと速い

 もう窓から飛び出していって


 4つ目の的に当た……貫いた!?


「なっ……えっ!?」

「見に行ってみろ」


 ブライさんに言われて、僕は的に向かう

 こうして移動して、やっぱり距離があるなぁ……っと思ったりして

 そして的の側に行く


「やっぱり貫通してる……見間違いじゃなかったんだ……」


 そして僕は窓の後ろを見る


「…………あった」


 矢が落ちてた……バラバラになってる


「あれ? (やじり)は?」


 鏃だけがなかった、僕は周りを見渡して、目の前の木を見る


「……さ、刺さってる」


 鏃があった、木に刺さってめり込んでいた


「的を貫いて……この木に刺さって……バラバラに砕けたって事?」


 な、なんて威力なんだ……普通矢は距離が離れていれば離れているほど威力が落ちるのに……


 僕はブライさんの所に戻る


「どうじゃ?」

「と、とんでもないですね……こんな弓があるなんて……」

「そうじゃろうそうじゃろう、パストーレの自慢の一品じゃ」


 誇らしげなブライさん

 僕はふとした疑問をぶつける……


「なんで僕達と戦ってる時に使わなかったんですか?」


 こんな弓を使われていたら……ユリウスも僕も負けてた


「これはオルベリン用にとっていたんじゃよ……まあ、お前達を見くびっていたっていうのもあるがな」

「……」


 怒るべきなのか、見くびられて良かったと思うべきなのか……


「そんな品物をワザワザ持ってきたって事は……」

「うむ、これをお前に()()()()()

「……良いんですか? 国宝ですよね?」

「うむ、今は儂らは味方じゃしな……このまま宝物庫に眠らせるよりも、戦場に出した方が弓も喜ぶじゃろう」

「それでは……ありがたくお借りします」


 僕は弓を受け取ろうと両手を出す


「うむ……まあ、お前が使()()()()()()()の話じゃがな?」

「……へっ?」


 弓がブライさんの手から僕の両手に移る


「ぐぅ!?」


 先ず最初に来たのは重さだった

 兵士が3人がかりで運んだから……軽くはないと思ってた……でも……これは……


「うわぁぁぁぁぁ!! ぐっ! はぁ!」


 何とか落とさずにすんだ……けど……重い!!


「ほらほらどうした? 弓を両手で持ってどうやって射るつもりじゃ?」


 こ、この人……楽しんでるなぁ!!


「親父、流石に人が悪いぞ」

「はっ、ふぅ……」


 ペンクルさんが弓を支えてくれる

 ……ペンクルさんも片手で軽々と持ってる


「少しはからかわないとつまらんからな」

「この性悪ジジイが……」

「はぁ、はぁ……これを……片手で持てるように……鍛えないと……」


 片手で持てないと話にならないよ……


「ああ、レムレ、鍛えても意味ないぞ」

「ふぇ?」


 ペンクルさんが言う


「この弓は、どうなってるのか、認められた奴以外は使えない代物でな」

「……えぇ?」

「ほら、見てみろ、この金属みたいな部分……これは竜の鱗で造られてるそうだ、んで、弦は竜の髭で造られてる……だからか使い手を選ぶらしくてな」

「じゃあ……僕は使えないんですか?」

「今はな、認められたら使えるようになる」

「……認められるんですか?」

「いつかはな、俺も10年かかったが認められたしな」


 ……10年!?


「そんな……そんなに……」


 流石に10年もオーシャンを離れるのは……


「……取り敢えず暫くは弓兵としての動きを見直してみようか、俺も暇がある時は手伝ってやるから」

「あ、ありがとうございます……」



 こうして僕の訓練が始まった



 ・・・・・・・


 ーーーブライ視点ーーー


 宝物庫に竜の弓を保管する

 そして宝物庫から出ると


「どういうつもりだ?」


 ペンクルが壁に背をつけながら睨んできた


「なにがじゃ?」

「あんなガキを追い詰める様な事してんじゃねえよ! 完全に自信無くしてんじゃねえか!」


 儂の胸ぐらを掴むペンクル


「追い詰めてるつもりはないんじゃがな……」

「追い詰めてるだろうが!」

「どうした? 随分とレムレの肩を持つな? 普段のお前なら気にせんじゃろうに」

「あそこまではしねえよ!」

「はぁ、レムレは既に実力はあるんじゃ、だから儂は精神を鍛えることにしたんじゃよ」

「……精神を?」

「うむ、見ておれペンクル、レムレが自身の悩みに答えを出した時、今よりもずっと強くなる」

「……竜の弓を使わなくてもか?」

「使わなくてもな、まあ、儂としては竜の弓に認められたら万々歳なんじゃがな」


 竜の弓に認められたレムレなら……オルベリンを越えた存在になれるじゃろうな

 儂には出来なかった化物越え……レムレなら……


「……はぁ、もしレムレがぶっ壊れたら、色んな奴から恨まれるぞ?」

「どうせ生い先短いんじゃ、何とも思わん」

「…………性悪ジジイ」


 ペンクルはそう呟くと儂から離れて歩き出した



「さて……レムレの接近戦の訓練方法を考えるとするかの」

















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