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第197話 西方への借り

 

 俺はレルガと5000人の兵士を連れて、西方の軍が野営している場所に向かう



「カイト様!」


 道中でモルスとマリアットが4000人の兵を連れて合流してきた


 ブルムンにも西方の軍が来た事は報告があったらしく、2人を出撃させたらしい


 これで俺の護衛は

 レルガ

 モルス

 マリアット

 9000人の兵士となった


 そういえば、西方の軍の人数とかを聞いてなかったな……


「あ、そうだ……3人とも、西方の連中が何を言っても絶対に怒るなよ?」


 俺は3人に釘をさしておく

 奴等がどんな態度でくるかはわからないが……

 捕虜を解放しに来たのを襲いましたってなったら、オーシャンが不義な国扱いだ

 他の領からの信用も無くなる……

 ベスス以外からは元々信用は無いと思うがな


 ・・・・・・・・・・


 馬を走らせて数日

 漸く野営している西方の……あれはロンヌールの軍だな

 ロンヌール軍を見つけた


「よし、全員止まれ」


 俺は馬を止めて、全軍待機の指示を出す


「どうしますか?」


 レルガが聞いてくる


「…………少し待て」


 俺は望遠鏡を取り出して、ロンヌール軍の様子を見る


 ……兵から聞いた通り……奴等の装備は軽装だ……

 鎧を着てない……剣は流石に腰に差してるが……それくらいだ


「兵も多くなさそうだな……」


 3人くらいの兵士が出入口で見張りをしていた

 普通ならもう5人は見張りに居るんだが……


「……俺とレルガとモルスの3人で行ってくる、マリアットはここで兵と待機だ……何かあったら合図を出すから突撃してきてくれ」

「はっ!」


 マリアットは返事をすると兵に指示を出す

 その間に、俺とレルガとモルスはロンヌール軍の野営地に向かった


「止まれ!! 何者だ!!」


 見張りの兵士に止められる


「オーシャンの領主、カイト・オーシャンだ」


 俺は名乗る


「…………」

「…………」


 見張りの兵達が何か話している


「少し待っていろ!!」


 1人の兵士が奥に行った


 そして数分後


「…………」


 少しボロボロになっている男性を数人連れてきた

 雰囲気でわかる……彼等が捕虜にされているオーシャンの兵達だ……

 俺のせいで捕まった兵達だ


「!!」


 捕虜達が俺を見た瞬間に平伏する

 そんなボロボロな姿で……辛いだろうに……見てるこっちも辛い


「おい、アイツは間違いなくカイト・オーシャンだな?」


 ロンヌール兵が聞く


 捕虜の1人が顔を上げて俺を見る

 その表情は『答えていいのか?』と聞いているように見えた

 俺は頷く


「間違いなく……カイト様です」


 捕虜が答えた

 他の捕虜達も頷く


「そうか、わかった」


 そう言うと捕虜を連れてきた兵士が再び捕虜を奥に連れていく

 それを見送った後に別の兵士が……


「馬から降りてついてきてください、『パンルース』様の所に案内します」


 パンルース……ロンヌールの将でも古株の男だ

 アイツが責任者か……


 ・・・・・・・・


「やあやあ、ようこそカイト・オーシャン殿!」


 野営地の奥に案内されて、パンルースに会う

 パンルースは愉快そうに声をかけてきた

 そして、レルガに握手を求めた


「……なんだこの手は?」


 レルガが言う


「おや? 握手をご存知無い?」

「何故俺に握手を求めるのか聞いているのだが?」

「?? カイト・オーシャン殿ですよね?」

「俺はレルガだ! カイト様はこちらだ!!」


 怒るレルガ……頼むから剣を抜いたりはしないでくれよ?


「あ、こちらで? これは失礼!!」


 そう言ってパンルースは俺の手を握った


「いやぁ、まさかこんなにお若いとは、知りませんでした」


 そう言ってパンルースは手を離して、置かれてる椅子に座った


「あ、カイト殿やお付きの方もどうぞ座ってください」

「では失礼して……」


 俺はパンルースの前に置かれた椅子に座る

 レルガとモルスは警戒の為か座らない

 レルガは俺の左側に、モルスは俺の背後に立つ


「さて、それでは話をしましょうか? まあ既に伝わってると思いますが……あ、先ずは自己紹介でしたかね? いやーこういうのは慣れてなくって!」


 はっはっはっ! っと笑うパンルース

「良く喋る男だな」っとレルガが呟く


「では、改めて自己紹介を、私はパンルース、ロンヌールで将を任されております、そして、今回の捕虜の輸送も任されました」

「ではこちらも、()()カイト・オーシャンです」


 ここは強調しておく


「そして彼はレルガ、後ろの彼がモルス、どちらもオーシャンの将です、今回は私の護衛を任せています」


 外交の場だからな、敬語を使っておく


「それでは自己紹介も終ったところで本題に……今回、私達が来た理由は先の戦で捕らえた捕虜をオーシャンに帰す為に来ました」

「……それはありがたい事ですが……何か目的があるのでは?」


 せっかく捕らえた捕虜を帰すなんて、普通はしない

 労働力としてこきつかうか、情報を吐かせて殺すか……捕虜なんてそんな扱いだ


「さあ、私は詳しくは聞かされてないですからね、ただ、西方の領主……全員の意見だと聞かされました」

「そうですか……」


 本当に知らないのか?

 知ってるが、俺には言わないだけか?

 ……考えるだけ無駄だな


「それでは……捕虜の引き渡しをしてもらっても?」

「ええ、既に兵達に指示を出してるので、準備ができ次第報告にくるかと……」


 それじゃあ、兵士が来るまで待つ感じか……


「いや~それにしても……悲惨でしたねぇ」

「……」


 何の事を言ってるのかは直ぐにわかった

 前の(いくさ)の話だろうな


「あんな犠牲しか出ない、無益な戦はもう起きないでほしいですねぇ」


 そう言ってニヤリと笑うパンルース


「……そうですね、犠牲はもう出したくないですね」


 俺は出来る限り冷静に答える

 レルガとモルスから怒りを感じた……落ち着けお前ら


「そういえば、貴方の弟さんも亡くなられたんでしたっけ? そんな噂が耳に入りましてね」

「…………」


 ……落ち着け……落ち着け……俺


「ええ、俺には過ぎた弟でした……」

「それで、どうなんです?」

「……何がですか?」

「実際、安心したんじゃないですか? 領主の兄弟なんて、領主の立場を狙ってくる邪魔者だったでしょ?」

「…………」


 耐えろ……


「いや、オーシャンではそんな揉め事はありませんからね、立派に俺を支えてくれてましたよ」


 俺がそう答えると


「おや? そうですか?」


 つまらなさそうにパンルースは答えた


 その時だ


「パンルース様! 捕虜の解放、終わりました!!」


 兵士が入ってきた


「お、準備が出来ましたか! では外に行きましょう!」



 俺達はその場を離れ、野営地の外に出る

 外には捕虜達が解放されていた、着の身着のままって感じだな……鎧と剣は流石に没収されたままか……溶かされて使われるんだろうな……


「皆、大丈夫か? 身体を壊してる者はいるか?」


 俺は捕虜だった兵達に聞いていく

 どうやら、命に関わる様な怪我をした者はいないみたいだった


「それじゃ、確認も終わりましたし……我々は明朝には帰りますので」


 パンルースはそう言うとさっさと奥に戻って行った

 ……なんだ? 本当に何も言ってこないのか?

 いや、捕虜を解放された時点で、オーシャンは西方を攻めにくくなった訳だが……


「俺達も帰るか……」


 捕虜だった兵達を休ませたいし……

 レリスと今回の事を話し合わないとな……

 西方の目的が全然よめない……


 それが不気味だった






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