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第19話 ソルトとビネガーとブラックペッパー

焔歴の143年の11月

秋も終わる頃だ……この月は今年最後の収穫をして農作業を終える

そんな月だ


そして来年の豊作を願って祭りをする

収穫祭だ!!



「皆!今年も良く働いてくれた!!来年は新たな土地も使って更に収穫を増やしてみたいと思う!……とにかく!今年は思いっきり休んでくれ!!乾杯!」


『かんぱーい!!』


俺は外壁に登って演説した

祭りの挨拶ってやつだな



「ふぅ……」

「お疲れ様ですカイト様」


兵長の1人『ムリシル』が俺の手をとる


「あぁ、城の方は?」

「準備は出来ているそうです!」

「そうか」


俺は馬車に乗って城に向かう


8人の兵長達が馬車に同行する


兵長ってのは現代で言う『主任』みたいなものだ

俺が新しく作った役職の1つだ


試してみたかったこと……それは役職の追加だ

兵と将……これだけでは何かと不便だ

俺はゲームの知識を使っていたが……この世界は今の俺にとっての現実だ

そう考えたらゲームのキャラ以外にも有能な人間がいるかもしれないって思ったのだ


そんな人間を見つけたとしても直ぐに将にするわけにはいかない

かといって、サルリラみたいな難題をぶつけまくるのも駄目だ

ならどうするか?役職を増やせば良いのだ


兵は『平社員』だ

将は『部長』だ


なら『主任』と『係長』と『課長』を作ればいいのだ


てなわけで

数人の兵を纏める主任の『兵長』

その兵長達を指揮する係長の『小隊長』

そして小隊長を纏める課長の『部隊長』だ

因みに将は『軍団長』という新しい呼び方にした


今のヘイナスにいる奴等なら

ケーニッヒが小隊長

レルガが部隊長

ヘルド、サルリラ、オルベリンが軍団長だ


こうしていれば兵長から手柄もたてられるし、人に指示する経験も得られる

軍団長になれれば頼もしい存在だ


……あ、因みに俺は『社長』でレリスが『専務』な?現代で例えるならな?


「……後は軍団長の上の役職だな」

いや、これは役職というよりは称号かな……


徳川四天王とか五虎将軍とか円卓の騎士とか

こう……他の奴等より特別って感じの役職を作りたい

もっと人が増えたらそんな風に特別な奴等が必要だろう?


オルベリンとヘルドとルーツにはその特別な役職にしたい


「まあ、まだ人も少ないし……名前も浮かばないんだけどな……」


東方を制圧する頃には発表できるようにしないとな


そう考えてる間に城に着いた

俺は馬車を降りる


「お帰りなさいませカイト様」

「ああ、ただいま」


メイド長のヤンユが出迎える


「準備は?」

「出来ております」

「客人は?」

「レリス様がお相手しております」

「わかった」


俺は城に入る


そして客人の所に向かう



・・・・・・・・


ガチャ!


「お待たせしました!」


俺はそう言って客人の待つ部屋に入った


「お、挨拶は済んだのかい?」

「…………」


そこには褐色肌の美女と

髭面の男が居た

ナリストとゼルナだ


「はい、無事に終わりました」


「カイト様……」


レリス……なんか疲れてないか?


「それにしても良いところだね、気候もいいし、作物は育てやすいのも納得できる」


ナリストが外を見ながら言う


「ベススは確か砂漠でしたよね?」

ルノマレスはまだ普通の都だったが……ベススの本拠地は完全に砂漠だ


「そうだよ、だから中々育たなくてね……あ、以前貰った種はちゃんと育ってるよ、凄い生命力だね」

「それは良かった」


さて、なんでこの2人がここに居るかって思うだろ?

理由は単純、俺が招待した


というのも葉物を送れる目処がたたないのだ

だから、収穫祭に合わせて招き……葉物を食事に出そうと考えたのだ


これには3つの効果がある

1つ、ベススとの友好度が上がる


仲良くして損することはないからな!


2つ、他の領にオーシャンとベススの繋がりをアピールできる


これで攻めにくくする

東方で今1番強い勢力であるカイナスとかを警戒する為にも必要な事だ


3つ、さっきも言ったが葉物を食べてもらえる


こうすることでオーシャンの食べ物の良さを知ってもらえるのだ!

そこから交流の幅が拡がらないかな~とか考えてたり


「では、準備も出来ましたのでこちらに」

「ああ、頼むよ」


俺は2人と一緒に食事の会場に向かう



・・・・・・・・


会場に着く

そして俺達は席に着く


席は上座に俺、左隣にミルム、そしてアルス

俺の右隣にナリスト、ゼルナ

俺に近い席から順にレリス、オルベリン、ヘルド、サルリラ、レルガ、ケーニッヒと並ぶ

ナリストに近い席にベススの兵達だ


「こちらが前菜になります」


ヤンユがメイド達を連れて料理を運ぶ


さあ、食事会の始まりだ



最初は葉物を使ったサラダだ


「ふふ」


隣で嬉しそうに笑うナリスト

ナリストから見たらいきなりメインが来たような物だろう


フォークでサラダを口に運ぶ

……野菜が甘い、そして僅かな苦味がくる

ビネガーの酸っぱさが食欲を煽ってくる


オーシャンで主に使われる調味料は砂糖と塩と酢だ

横文字にするならシュガーとソルトとビネガーだな

たまに胡椒も使われるが……一般的ではない


「スープです」


次の料理が運ばれる

根菜を小さく切ったのを具材にした野菜スープだ

振る舞う前に乗せたのだろう……見るからにシャキシャキしてるレタスが上に乗っていた


「へぇ?スープなのにレタスがこんなに歯応えがあるのかい?」

「普通ではないのですか?」

「以前食べたのはシナシナだったよ?」


ナリストが不思議そうに言う


「それは恐らく一緒に煮込んだのでしょうね……レタスは火が通りやすいので、完成したスープに乗せるだけで充分に食べれます」


てか生で食えるし


「ほぉ……うん、美味しい……やはり乾燥してない野菜はいい」

「ベススでは乾燥しているのですか?」

「干して乾燥させるのが一般的だね、長持ちするし、味も濃くはなる……けどなんか味気ないと言うか……いや、飽きてきていたって言った方が正しいかな?」


ドライベジタブルってやつか

まあ暑そうだし乾燥はしやすいだろうな……


「魚料理となります」


次の料理だ

魚のムニエルだな

お、チーズかけてるな


「へぇ、チーズか」

「ベススでもありますよね?」

「ああ、主食みたいなもんさ、よく食べるよ」


砂漠だからラクダとかの家畜を飼っているのか?


「魚は珍しいから嬉しいね」

ナリストはそう言って美味しそうに食べる


砂漠じゃ魚は厳しいのか?

ベススには港が無いから手に入りにくいのかもな

……送れるから魚も送るか?……いや難しいな


「肉料理となります」


牛肉のステーキが運ばれる


「ステーキか、やはりこういうのはどこも変わらないもんだね」

「肉のメインといえばやはり牛がイメージしやすいですからね」


ステーキを一口食べる

うまい!……いやうまいんだけど……


「ちょっと味気ないね……」

ボソリと呟くナリスト

そうだよな、ソルトで味付けはしてるが……うーん……物足りない


「ふむ……シェフには悪いけど……使わせてもらおうかな」

「使う?」


ナリストは豊満な谷間から木の小瓶を取り出した

…………なぜそこから?


「それは?」

「ベススで使われてる調味料さ」


そう言ってステーキに振り掛ける


「使ってみるかい?」

「では……」


ナリストから小瓶を受け取る

……この温もりは手の温もりだよな?そういうことにしようぜ?


ステーキに振り掛ける……あ、これって……


「ブラックペッパーですか?」

「なんだ?知ってたのかい?」


つまり黒胡椒……そうかベススでは一般的なのか


俺はステーキを一切れ食べる

……うん!これだ!


「美味いですね!」

「そうだろう?オーシャンじゃ流通してないのかい?」

「こっちではなかなか……」

「へぇ、だったらベススから売ろうか?」

「良いんですか?」


ナリストは愉快そうに微笑む


「構わないよ、その代わり……塩を売ってもらえないかい?」

「塩を?……あーなるほど」


港が無いから塩も手に入りにくいか……


「今は港を持ってるアレキスから買ってるんだけど……足元を見られていてね」

高額で買わされてるのか……


「良いですよ、適正な価格で売りましょう」


俺は了承する

断る理由なんてないからね


「助かるよ」


いつの間にか肉料理を食べ終えてしまった……



「デザートです」


ケーキが運ばれてきた



・・・・・・・・



食事会の後は宴会だ……てか飲み会?

酒を飲んでお互いを労っている


ミルムとアルスは未成年だから紅茶や水だ

俺?俺は成人してるからワインだよ


「なんだい?照れてるのかい?ほれほれ!」

「ちょ!やめ!?」

「きゃー!」


そのミルムとアルスは酔っ払ったナリストに絡まれていた

抱き締められて胸を押し付けられて……羨ま、えふん!


「カイト……」


ゼルナが俺の隣に来る


「はい?」

「今回の招待……感謝する」


頭を下げられる


「そんな喜ばれる事はしてませんよ?」

「いや、あんなに笑う姉上は久しぶりに見た」

「そうなんですか?」

「ベススでは『氷の女』と呼ばれているからな……ニコリともしない」

「へぇ、意外だ……」

「……お前が初めてだ……姉上を見て最初から対等に接してきた者は」

「……女性だから下に見られてるんですね?」

「ああ、それで姉上は苦労してきた……だからお前には感謝する」

「いいですよそんなの、友人なら当たり前です」

「……友人?」

「ご不満でした?」

「いや、嬉しいな……だから敬語は止めろ」

「あ、そう?」

「そっちの方がお前らしい……」

「そりゃどうも……まあこれからもよろしく」

「ああ……」


カチン

俺とゼルナはグラスを当てた
















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