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第1話 オーシャン領防衛戦 1

 よし、先ずは落ち着け

 状況を整理しよう



 俺は昨日、帰宅してからお楽しみの宴を始めた

 そして『サーリスト戦記』を起動して……カイトを選んで


 カイトになりましたと


「……はは、わけわかんね……」


「カイト様……絶望されるのはわかりますが……」


「あっ?わかるって?なんで?」


「おや?聞かれていませんでしたか?」


 レリスが首を傾げる


「ではもう一度説明しましょう」


 レリスがそう言って羊皮紙を拡げる


「現在我らの領地に『パストーレ』の軍が侵攻しています」


 パストーレ……確かオーシャンと同じ弱小の領主……

 だがそれは全体で見たらの話だ

 パストーレの初期兵力は5万……領地も今のオーシャン領の4倍はあったはず……


「な、何人だ?パストーレの兵は何人だ?」


 レリスの話を聞いて咄嗟に口から出た


「侵攻してきている兵は約3万です……」


「3万……」


 おいおい……いきなり修羅場かよ


「くそ……」


 ますます混乱してきた……

 あ、そうか……夢か……これは夢なんだな?


「申し上げます!!」


 バン!

 っと扉が開き、ボロボロになった男がフラフラしながら俺の前に立つ


「カイト様!敵の指揮官が判明しました……ナルールです!」


 ナルール……初期のパストーレ軍では4番目くらいに有能な将だ

 武力はC

 知性もD

 カリスマもDだったはず


「そ、そうか……あー……お前は大丈夫なのか?」


 俺はボロボロの男を見ながら言う


「わ、私の身の心配など!!わ、私は!だ、大丈……」


 ドサッ!


 男が倒れる


「おい!!」


 俺は踏ん張って立ち上がり男に寄る


「おい!どうした!?」

「…………」


 声を掛けるが反応しない


「カイト様……その者はもう……」


 レリスが俺の肩に触れながら諭すように言う


「死んだのか?今の今まで話していたんだぞ!?」


「カイト様に報告するまで気力で動いていたのでしょう……使命を果たしたのです……」


「…………」


 俺は男を見る

 男の表情は誇らしげだった……


「…………」


 男の血が手に付いていた

 ヌルリとした感触……徐々に血は冷たくなる……

 こんなリアルな感触が……夢な訳がない


「この者を弔え……」

「カイト様?どちらに?」

「少し1人にさせてもらう……」


 頭を冷やそう……


「畏まりました……おい!部屋までお送りするのだ!」


 レリスがメイドの1人に声をかける

 メイドはお辞儀をすると俺の前を歩く


「……」


 俺はそのメイドに着いていった



 ・・・・・・・


 案内された自室に入る


「…………でかい部屋だな」


 領主の部屋だもんな……


「んっ?これは……」


 壁には大きな槍が掛けられている


「これはベルドルトの槍か……」


 立派な槍だ……ベルドルトはこの槍を使って戦ったんだな


 ボスッ!


 俺は椅子に座る


「…………どうするべきか」


 これはあれか?異世界に移動したとか?はっ!ファンタジーかよ……


「漫画とかだと面白いけど実際にこうなると……」


 頭がぐちゃぐちゃする


「……んん?」


 なんだ?頭の奥に何かあるような?

 これは……記憶か?



『父上!私はどうすれば貴方の様になれるのですか!!』


『カイト……』


『皆が言っています!私は落ちこぼれだと!!』


『そんな事はない、君は優しい子だ』


『優しいだけでは駄目なんです!!父上の様に強くなりたい!!』


 ・・・・・・


『鍛えても鍛えても強くなれない……学んでも学んでも身につかない!!』


 涙が溢れる


『あぁ……無能な我が身が憎たらしい!!』


 そう言いながらまた武器を振る

 涙を流しながらも己を鍛える


 ・・・・・・


『父上……何故私なのです!?領主には他の者を選ぶべきです!』

『カイト……お前ではないとダメなのだ……わかってくれ』

『わかりません!!このままではオーシャン家は滅びます!!父上!!』

『カイト!!』

『!?』


 ベルドルトが怒鳴る

 初めて……怒鳴られた


『カイト……私は知っている……お前がどれだけ努力してきたか……お前の事を笑う者は私が許さん……』

『父上……』

『滅んだ時は滅んだ時だ……お前が継いで滅ぶのなら他の者でも滅ぶ……』


 ベルドルトはカイトの手を力強く握った


『誇れカイト!お前は立派な私の息子だ!!』

『ち、父上ぇぇぇぇ!!』


 こうしてカイトは領主になった


 ・・・・・・


 半年後、ベルドルトは死んだ……


『父上……必ずオーシャン領は守ります……どんな手を使っても……だから安心してください』


 遺体に向かって話すカイト……そしてベルドルトは埋葬された


 ・・・・・・


『申し上げます!!パストーレ領が攻めてきました!!』


『父上が亡くなった事を知ったか!』


『既に3つの砦は落とされています!』


『なに!?』


 カイトは玉座に座りこむ


『…………私では無理なのか?』


 そう呟くカイトの声は誰の耳にも届かない


『……頼む……なんでもいい……私の身がどうなろうと構わない……だから……頼む……オーシャン領を……皆を守ってくれ……神よ……』


 そう呟いた所で記憶が途切れた


 ・・・・・・


「……」


 気が付いたら俺は泣いていた

 俺が泣いているのか……カイトの身体が泣いているのか……それはわからない


「カイト……これはお前の記憶なんだな?」


 ゲームではわからなかった……カイト・オーシャンの努力……苦悩……


「……そうか……理屈はわからないが……理由はわかった……お前の願いが……俺を呼んだんだな?」


 それが正解かは知らないが……何故かそう思った


「やってやるよカイト・オーシャン!この高橋海人が!お前の願いを叶えてやる!!」


 これからは俺がカイト・オーシャンだ……

 カイト・オーシャンとして生きてやる!


「やってやろうじゃないか……カイト・オーシャンとして生きてやる!」


 だがなカイト……守るだけじゃ駄目だ……世界はドンドン変わっていく

 今は幼かったり産まれてなかったりするが強い奴等は現れる

 守るだけじゃいずれ潰される


 だから


「カイト・オーシャンは……天下を取る!!」


 それが……オーシャン領を守ることになるんだ!!



 俺はそう決意したのだった




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