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第187話 護る者と護られる者

 ーーーティール視点ーーー


「本当に良かったのかティール?」


 ユリウス様が聞いてくる


「ええ、私は貴方を護る為に戦っているので……」


 私はユリウス様に答える

 そして私達の周りにはオーシャンの兵が……ガガルガ出身の兵達が居た


 目の前にはバルバルバの軍


「それに、貴方だけに殿(しんがり)を任せて逃げるなんて出来ませんから……」

「全く……死ぬのが決まってるような無謀な戦いなのに……お前らも馬鹿だよな」


 ユリウス様は笑う


 いきなり反転してバルバルバ軍に向かった貴方が言いますか……


「よし! これからこの戦力でバルバルバ軍に挑むぞ! 難しいと思うが……僕から出す命令は1つ! 死ぬな! 生き残れ!! ヤバいと思ったらさっさと逃げろよ!! 時間稼ぎが目的なんだからな!!」

『はっ!!』


 兵達が答える


「ティール、お前もヤバくなったらさっさと逃げろよ?」

「その時は貴方も一緒ですよ」


 私もユリウス様も武器を構える

 そして、近くまで迫ってきたバルバルバ軍に突撃する


 ・・・・・・・・


 ーーーユリウス視点ーーー


 正直嬉しかった


 兵から前方にロンヌール軍が現れたと聞かされた時

 このままだとバルバルバ軍との挟み撃ちにあうと僕は判断した


 そうなったら全滅の可能性がかなり高くなる

 それだけは避けたかった……

 だから1番後ろに居た僕はすぐに馬を旋回させてバルバルバ軍に向かった


 1人で挑むつもりだったのに……ティールが追いかけてきて、兵達も追いかけてきた

 心強かった……


 こんなにも頼もしい奴等が居るんだ!


「負けられないよな!!」


 僕は剣を振るう


「がっ!?」


 目の前にやって来たバルバルバの騎馬兵の首を落とす


 1人

 2人

 3人


 次々と斬り落とす


 視界の端でティールの槍が敵兵を一気に貫く

 相変わらずいい腕だな


 兵達も士気が高いのか、それとも日頃の訓練の賜物か……連携して敵を倒していく


 いい感じだな


「おおおおおおおお!!」


 そんな時に、咆哮をあげながら突っ込んでくる敵が居た

 バルバルバの将だな!


「ふん!!」

「っと!!」


 ガキィ!


 バルバルバの将は鉄槌を振り下ろしてきた

 剣で受け止めるが……うわ、ヒビ入った!?


「オーシャンの将と見たぁ!!」

「ああ! オーシャンの将、ユリウス・ウィル・ガガルガだ!!」


 キィン!


 鉄槌を逸らして少し離れる

 そして側に居たバルバルバの兵を斬る

 そのタイミングで剣が折れた

 倒れるバルバルバ兵の剣を手から奪い取る


「ほぅ、手慣れてるな」

「戦場では使えるものは使わないとな!」

「そうだな! まだ若いようだが、よくわかってるな!!」


 鉄槌を振り回す敵将


「俺は『ブランク』!! バルバルバの将!! 覚悟しろ! ユリウス・ウィル・ガガルガ!!」


 ブランクは馬を走らせて突っ込んでくる

 あの鉄槌を受け止めるのは危険だ……

 上手く避けて斬るしかないな!


「ユリウス様!」


 そこにティールがやって来た


「ティール!?」

「こいつは私が! 貴方は退いてください!」

「むぅ!?」


 ガキィィン!


 ブランクの鉄槌をティールは槍で受け流した


「ほぉ! 綺麗に捌いたな!!」


 ブランクは愉快そうに笑う


「さぁユリウス様! もう皆も長くはもちません!!」


 そう言われて周りを見る


「くっ!」

「はぁ……はぁ……」


 最初は優勢だったが多勢に無勢……兵達も追い詰められていた……既に何人かは殺られている


「限界か……まあ数分でも稼げた、アルス達なら何とか逃げ切れるくらいの時間は稼げたか!」


 僕は剣を高く掲げる


「皆退け!! これ以上は無理だ! さっさと逃げるぞ!!」

『了解しました!!』


 僕の指示を聞いた瞬間に兵達は一目散に逃げ出した

 うんうん、それでいいぞ


「ティール! お前も……」

「私はこいつを仕留めてから行きます! さあユリウス様!!」

「俺を仕留める? 面白いことを言うな!!」


 ブランクが鉄槌を振り回す

 それをティールは何度も受け流す


「さぁ早く!! ユリウス様!!」

「……ああ、わか……?」


 いつもなら素直にティールに任せるんだが……

 何か違和感を感じた……なんか余裕が無い?

 いや、今劣勢なんだから余裕がないのは当たり前なんだが……なんかそれでもいつものティールと違うような……


 ドロ……


「!?」


 ティールの右脇腹くらいの鎧の隙間から血が出てきた


「ティールお前負傷してるのか!?」

「……少しへまをしただけです!!」


 へま? ティールが?

 いや、違う……僕が原因なんだろ?

 僕がブランクと交戦を始めて、直ぐにお前は助けに来た……

 ずっと僕を見てたんだろ? それで隙が出来てしまって……


「ティール退け!! こいつは僕がやる!!」

「いえ! ユリウス様が退いてください!」

「いやお前が!」

「おい! 面倒だから2人で挑んできても良いんだぞ?」


 口論する僕達にブランクが言う


「2人でね……」


 周りを敵兵に囲まれそうな状況でか?

 ブランクに集中したら、包囲されて終わりだ!

 2人で挑むのは罠だ、それはティールも理解してる筈だ!

 1人が退いて、退路を確保しておくべきなんだ!


「ユリウス様! 速く退いてください!」

「いい加減にしろティール!! 僕はいつまでも護られる人間じゃないんだ!! 今は負傷してるお前より、僕の方が強い!! それとも何か? お前から見て僕はずっと未熟なお坊ちゃんなのか?」

「っ!?」


 そう言ったらティールは黙った……そして……


「退路を確保します……そして待っていますから……」

「ああ!!」


 ティールが退いてくれた


 そして僕はブランクを見る


「待たせたな!」

「本当にな!」


 ブランクは楽しそうに鉄槌を振り回す


「さて、じゃあお坊ちゃんを仕留めてからあの女も討つとするか!」


 ブランクは僕に向かってきた


 ・・・・・・・・


 ーーーブランク視点ーーー


「ふん!」

「はぁ!」


 ユリウスが俺の鉄槌を受ける

 今度は軌道をそらしてきたか!

 そして剣が駄目になったら近くの俺の部下を斬って奪うか……槍は使わないのか?


「お前ら! 離れてろ! お前達じゃ勝てないのがわかるだろ!!」


 兵達をユリウスから離れさせる

 これでもう剣の補充は出来ない

 落ちてる剣は馬から降りないと拾えない

 今使ってる剣を折れば……槍を出させる前に脇腹にでも鉄槌を叩き込んで終わりだな


「これで終わりだ! ユリウス・ウィル・ガガルガァ!!」


 俺は鉄槌を振り上げて馬を走らせる

 胴ががら空きだが……奴が剣を振る前に俺の鉄槌が奴の頭を砕ける!

 護りにまわって剣で鉄槌を防いだら、剣が折れて、どっちにしろ俺の勝ちだ!


 ・・・・・・・


 ーーーユリウス視点ーーー


 ブランクが鉄槌を振り上げて突撃してくる

 あれは防いでも無視しても駄目だな!


 胴を狙っても奴の鉄槌の方が速い

 鉄槌を防いだら剣が折られる!

 そうしたらまた鉄槌がきて終わりだ!


 槍を出して剣を片手で扱っても力負けする……


 攻めても守っても駄目!!


 なら……こうするしかないよな!!



 ・・・・・・


 ーーーブランク視点ーーー


「じゃあな!!」


 俺は鉄槌を振り下ろす


「うおおおおお!!」


 ユリウスが叫ぶ


 ガキィン!


 鉄がぶつかる音

 防ぐのを選んだか!!

 このまま剣を折ってやる!!


「!?」


 待て、なんだこの感じ?

 鉄槌が……止まってる?

 いや、押し戻されてる?


「うおおおおお!!」


 キィン!

 バキィ!



「うお!!」


 鉄槌が俺の右手から飛ばされた

 俺は飛ばされる鉄槌を見てからユリウスを見る


「っ!!」


 ユリウスは両手で剣を握っていた……いや、あの体勢は……

 剣で受け止めたんじゃなくて……突いてきたのか!?

 振り下ろされる鉄槌を剣で突いて飛ばしたのか!?

 いやいや! どんな力だ!? いくら何でも無茶苦茶過ぎるだろ!?

 流石に剣は砕けたみたいだが……


「じゃあな!!」


 ユリウスは俺を一瞥すると馬を旋回させて逃げだした


「……はは、マジかよ……あの状況で生き延びるとか……」


 ユリウス・ウィル・ガガルガ……

 この名前は覚えておこう……ん?


「ガガルガ……って言ったら『バルセ』だよな? アイツには子供は居なかった筈だ…………!!」


 ああ、そうか!

 確か奴がバルセの妹と結婚していたな!


「『クラウス』の子か!! そうか!! アイツの!!」


 何の因果か……おいクラウス! 俺とお前の因縁は終わってないみたいだな!!


「おい! お前ら! 奴等を追うぞ!!」


 俺は兵が拾ってきた鉄槌を受け取る

 そして馬を走らせるのだった


 ・・・・・・


 ーーーユリウス視点ーーー


「ユリウス様!」


 ティールと合流する


「ティール! 速く逃げるぞ!」

「はい! ……ユリウス様、右腕をどうされたのですか?」


 ティールが俺の右腕を見る

 手綱を握ってないからな!


「多分骨が逝った!! 感覚が無い!!」

「っ!?」


 必死だった

 ブランクの鉄槌をぶっ飛ばそうと決めて……全力で突いた

 失敗すれば死ぬ……そう思ったらいつも以上の力が出せた

 その反動がこれだけどな!!

 流石に槍を出して仕留める余裕は無かった!!



「さっさと逃げて安全な状態で治療受けるぞ! 俺もティールもな!」

「そうですね! 兵達も無事に逃げ切れた様ですから……私達も急ぎましょう!」



 こうして、僕とティールの撤退劇が始まった








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