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第186話 歴戦の猛者

 ーーーゲルド視点ーーー


 アルス様達が無事に離れていくのを確認する


「さて、今からは小生が相手をしよう」


 小生は敵将を見る……確かケイランと名乗っていたか?


「…………あぁ」


 ……なんだ?

 身体を抱き締めて震えている?


「イイ……凄くイイ!! こうして向かい合ってるだけでわかる!! あんたは強者だ!! ヤバイ! 凄い興奮する!!」


「…………」


 成る程、そういうタイプか……

 たまにいる、性癖がイカれてる者がな……


「興奮しているところ悪いが……さっさと終わらせたい」


 小生は槍を振るう


「っと!」


 ケイランは槍を受け流す

 ……ふむ、今の動きで口だけではないのが理解できる


「それそれ!!」


 ケイランが鎌を振り回す

 小生は槍でそらしながら隙を窺う


「イイ! 全く隙を見せないでこれを捌くなんて!!」


 ケイランが更に高揚している……


「おおおおお!!」


 そんなケイランの背後からオーシャンの兵が斬りかかっていった


「っ!」


 ダメだ! ケイランは兵に気付いている

 それを伝えようと叫ぼうとしたが


 ザシュ!


「ぐぎゃあ!?」


 間に合わずに鎌に首を斬られた


「おいおい、邪魔するなよ……今、俺はお楽しみの最中なんだから」


 くっ!!


「皆! 手を出すな! こいつは小生が倒す! お前達は生き延びる事を考えろ!!」


 小生は叫んで周りの兵士に指示を出す

 これ以上犠牲を増やさないために


「そうそう! 一対一でじっくりと殺り合うのがイイのさ!!」


 そう言って鎌を構えるケイラン

 ……?

 なんだ? 鎌の刃に付着した血……

 妙に多いような……


「ふふ!」


 ニヤリとケイランは笑い、鎌を振るう

 小生は鎌を槍で受け止める


 ベチャ!


「むっ!?」


 その時、鎌から血が飛んできた……

 明らかに通常よりも多い血は小生の目に付き、視界を奪った


「こいつにはこんな仕掛けもあるのさぁ!」

「こんなもの! 拭えばいいだけのこと!」


 小生は左腕で顔を拭おうとするが


「そんな暇を与えると思うか?」


 ケイランが鎌を振り回す


 ヒュン! ヒュン!


 鎌が風を斬る音が聞こえる


「成る程……こうやって相手を切り刻むのがお前の戦法か」


 小生は拭うのを諦めて槍を構える


「今まで戦った奴等は、これでバラバラさ! あんたは何等分にしてあげようか……そう考えたらたってきたよ!!」


 気分は最高潮……って感じだな

 勝利を確信した態度だ……

 まあ、普通なら勝つと思うか……


 だが、相手が悪かったな


 ヒュン!


 鎌が左上から迫る


 キィン!


 小生は槍で防ぐ


 鎌が引かれて……


 ヒュン!


 次は右下から迫る


 キィン!


 それも防ぐ


 ヒュン!

 左

 キィン!

 ヒュン!

 左下

 キィン!

 ヒュン!

 右上

 キィン!

 ヒュン! ヒュン! ヒュン!

 上、右下、左下

 キィン! キィン! キィン!


「おいおい、あんた見えてるのか?」

「目が見えなくても、視る方法はいくらでもある」


 小生は幾度もの戦場を戦い抜いた

 その経験からわかる


 鎌が風を斬りながら迫る音を拾う聴覚

 小生に迫る血の匂いをかぎ分ける嗅覚

 身に迫る驚異を感じとる触覚


 全てを総動員することで出来る芸当


 そして、小生の視覚を奪った優越感から気を抜いた相手の隙を突くことも出来る


 ドスッ!!


「いっ!?」

「ふむ、急所はそらしたか……だが、どちらが優勢かは理解できたな?」


 小生の槍はケイランの身体を貫いた……感触からして脇腹あたりか?


「ごほっ! はは……へぇ、イイね、挿入()れられるのもたまにはイイね……」

「まだ続けるのだな?」

「いや、退かせてもらう……流石にまだ逝く気はないんでね……また相手してもらいたいなぁ……」


 ケイランの身体から槍を抜く

 ケイランの気配が離れていくのを確認してから目元を拭う


 そして小生は周りを見て確認する……


 マーレスの姿を確認した


 ・・・・・・・


 ーーーマーレス視点ーーー


「はぁ!」


 ショウキュウが振るう槍を紙一重で避ける


 ブオン!

 頭上を通りすぎる槍の音で、力強いのがわかる


「ふっ!」


 距離を詰めて斬りかかるが……


 キィン!


「ちっ! 随分と硬い鎧をしてるんだな!!」


 俺の剣はショウキュウの鎧に弾かれる

 普通は間接の部分は装甲が薄いんだが……こいつのは逆に厚い

 そんな鎧で動けるわけがないのに……ショウキュウは平然と動きまわる……

 西方で作られる鎧は何か特殊な加工でもしてるのか?


「ふむ、さっきの猫よりはマシだな……速さもあるが、戦い方も理解している」

「そりゃどうも!」


 さてと……どうするか……

 方法が無いわけではない

 奴の鎧がどんなに厚くても

 冑との隙間……首付近は流石に隠しきれてない

 僅かだが隙間がある……そこに剣を突き刺せば……殺れる!


 問題は、奴が馬に乗っている事か……

 跳ばないと奴の首に届かない……しかし跳べば俺も回避ができなくなる……

 無謀な賭けはしたくない


 ……馬の脚を斬るか?

 いや、その隙をつかれて殺られる……

 しかし、こうやって避け続けるのも限界が来る

 俺の力じゃ奴の槍を弾くのは無理だしな……



「はぁぁぁぁぁぁ!!」


 そうやって考えてる間もショウキュウは槍を振ってくる

 ……あ、そうか、こうすればいいのか


「ふっ!」


 ガキィン!


「ぬっ!?」


 俺はショウキュウが槍を振った後、体勢を立て直す前に槍を上から剣で叩く

 一瞬だがショウキュウに隙が出来る


 その隙を逃さずに一気に近寄り、跳ぶ

 そして首を狙って剣を振る


「ふん!」

「っと!」


 しかし途中で剣を止める

 ショウキュウが頭と肩で剣を挟もうとしたからだ

 首を狙われた時の対策も考えていたか……


「ふー……」

「…………」


 着地した俺とショウキュウは睨みあう


 どう攻めるか……そう考えていたら


「ショウちゃん、ごめんやられた! 退こう!」


 ケイランがショウキュウの側を馬で駆けながら伝えていった


「……ちっ、ここまでだな……まあいい、目的は果たした」


 ショウキュウはそう言うと撤退していった


「……目的は果たした?」


 ショウキュウが最後に言った言葉に胸騒ぎを覚えた

 そうしてるうちにゲルドが側に来た


「無事か?」


 聞いてくるゲルド


「ああ、俺はな……なぁゲルド」


 俺はさっきのショウキュウの言葉をゲルドに伝える


「目的は果たした?」


 考えるゲルド……そして


「しまった!! 奴等は囮か!!」


 そう叫んでアルス達が逃げて行った方に馬で走っていった


「……おいおい! 1人で行くな!! 兵を置いていくなっての!!」


 くそっ! 俺が兵を纏めるしかないか!!









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