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第185話 生きれば勝ち

 ーーーアルス視点ーーー


「はぁ!!」


 僕は剣を振り、ロンヌールの兵を殺す


「どりゃあ!」


 僕から少し離れた場所でシャルスが敵を引き裂いた


「くっ、ゲルド達とはぐれたか!!」


 周りを見渡す

 兵達は頑張ってロンヌール兵と戦っていたが

 ゲルド、ユリウス、ティール、マーレスの姿を見失っていた


「はぁ!!」

「ぎゃあ!」


 近くにいたロンヌール兵を斬り殺す

 周りのロンヌール兵が怯む


「シャルス!」

「あいよ!!」


 その隙にシャルスとの距離を近付けておく


「シャルス、他の皆はどうなったかわかるか?」

「オイラでもこう騒がしくて匂いが混じっていたら、流石にわからん!!」

「そうか……どうする? 少し戻ってみるか?」

「止めといた方がいいんじゃない? バルバルバの連中も近付いてきてるんだろ?」

「なら、僕達だけでここを抜けるのか?」

「……そっちの方が助かる可能性はあるんじゃない?」


 そう話していたら


「ほら、ショウちゃん、俺の言った通りだろう?」

「……はぁ、お前のその勘の良さが時々不気味だよ」


 ロンヌール兵の後ろから2人の男が馬に乗って現れた

 姿から見てロンヌールの将なのは間違いない


「何者だ!!」


 僕は叫ぶ


「あれ? そう言う君こそ何者なんだい? 戦場は子供の遊び場じゃないんだよ?」


 男の1人が言う


「鎧も着てない奴にそんな事を言われる筋合いは無い!!」


 僕は男の格好に驚く

 黒を基準とした服を着ていた、鎧も冑も着けてないのだ……戦場を嘗めてるのか!?


「あら? 子供に怒られちゃったよ?」

「だから着ろと言ったのだ……」


 もう1人の男が呆れた様子で顔に手を当てる

 こっちはしっかりと武装していた


「ふむ、馬鹿の事は放っておいて……名乗っておくか」


 武装した方の男が僕達を見る


「私は『ショウキュウ』、ロンヌールの将を務めている」


 そう言ってショウキュウは槍を構える


「ほら、お前も名乗っておけ」

「はいはいっと」


 軽装の男が武器をくるくると回して、両肩に持ち手を乗せて組む

 武器の持ち手が左肩、首の後ろ、右肩と続くように置いている

 あの武器は……鎌?


「俺は『ケイラン』、ショウちゃんと同じロンヌールの将だ」


 ケイランは名乗ると僕とシャルスを見比べる


「うーん、坊やに猫ちゃんか……残念だ、うん実に残念だ……君達程度じゃ興奮しないなぁ……」

「……はぁ?」


 シャルスが何言ってんだ? って顔をする


「ケイラン、お前の悪癖を戦場に持ち込むな、私達の果たすべき事を果たす」

「はいよ、敵はさっさと始末する!! ……俺としてはじっくりといたぶりたいんだけどね……」


 そう言うとショウキュウとケイランは馬を走らせて突っ込んできた


「!? シャルス! ショウキュウの相手は任せた! ケイランは僕が殺る!」

「あいよ!!」


 僕は剣を仕舞って槍を取り出す

 あの鎌は剣だと間合いの差が大きすぎる!

 刀も使わない方が良い!


「はぁ!」

「よっ!」


 僕の槍とケイランの鎌がぶつかる


「とりゃあ!!」

「ふん!」


 少し離れた場所でシャルスとショウキュウも交戦を始めた



 ・・・・・・・・・


 ーーーシャルス視点ーーー


「よっ! はっ!」


 オイラはショウキュウの槍を避けながら近付いて蹴りを放つ


「ふっ!」


 オイラの攻撃をショウキュウは槍の全てを利用して受け流す

 ……コイツ強いなぁ!!


「これならどうだ!!」


 オイラは一気に踏み込んで鉤爪で×(バツ)の形に切り裂こうとする


「甘い!」


 ショウキュウはオイラの腕が重なる瞬間に槍で鉤爪の間を突いてきた


「っと!」


 後ろに飛ばされるオイラ

 着地してショウキュウを見る

 あー、馬上の相手はやりにくい!


「ふむ、獣人は珍しいから、どれ程の実力者かと期待したが……速さだけの猫だったか……」

「んっ? なに? オイラを挑発してるのか?」

「いや、普通に落胆しているだけだ……強力な技でもあるのかと思っていたのだがな」


 そう言ってショウキュウはチラリとアルス達を見る

 余所見とは余裕だ……なら、オイラの本気の速さを見せてやるか!!


 一気に駆けて跳ぶ

 時間は1秒もかかってない!! ……体感は!!


「だから貴様は速さだけなのだ……」

「!?」


 ショウキュウはオイラの方を見ずに、槍の先端をオイラの目の前に突き出した


「うっお!?」


 身体を無理矢理そらして避ける


 ザシュ!


 しかし避けきれずに右の脇腹を抉られた


「いっ!!」


 地面に倒れるがすぐに体勢を立て直す

 そして顔を上げたら


「!?」

「よく今まで生き残れたな……」


 ショウキュウの槍が目の前にあった


「マジか……」

「動くなよ、この状態なら私の槍の方が速い」

「…………」


 さて、どうする……後ろに跳ぶか?

 それとも槍を掴むか?

 ショウキュウに突かれるより先に動けるか?


 ・・・・・・・


 ーーーアルス視点ーーー


「そらそら! どうしたんだい坊や? その程度かい?」

「くっ!」


 ケイランの鎌を僕は槍で防ぐ

 くそ! 鎌ってここまで厄介な武器なのか!

 草刈りをするような鎌の形状ならここまで苦戦しない!

 ケイランの鎌は()の部分に槍の穂の様な物が付いている

 だから……突く、振る、引く

 全ての動作が攻撃になっている


 そしてその鎌を軽々と扱うのだ……速くて、防ぐので精一杯だ


「全く、だから坊やの相手はそそられないんだ……まだ猫ちゃんの方が良かったなぁ……」

「嘗めるな!」


 僕は槍を右手に持ち、左手で剣を抜く

 ちかづ

「近付いたら鎌よりも剣の方が速いって思ってるだろう?」

「!?」


 考えをアッサリと読まれた……くそ、わかりやすかったか!!


「いいぜ、こいよ! 俺を楽しませてくれ!!」

「くっ!」


 鎌を引いて、大きく両手を拡げ、誘ってくるケイラン

 どう考えても罠だ……


「どうした? 来ないのかい?」

「そんな見え透いた罠に引っ掛かるか!」

「……ふーん、突然だけど、君、経験人数は何人だい?」

「なぁ!?」


 い、いきなり何を言っているんだ!!?


「アレは良いものだよ……満たされるんだぁ」


 ケイランは恍惚な表情を浮かべる


「そ、そういうのは生涯を共にすると誓った伴侶だけとするべきだ!! 多ければ良いって話ではないだろ!!」

「…………」


 僕が答えたらケイランはポカーンとした


「……あー、そっか、そう聞こえたか……悪いね童貞君、俺は殺しの人数を聞いたんだよ」

「!!?」


 こ、こいつ!!


「その口を閉じろぉぉぉ!!」


 僕は馬を走らせる


「それ!!」


 ケイランは僕に向けて鎌を振るう


 ガキィン!!


 僕は槍で鎌を防ぐ

 このまま近付き、剣で斬り捨てて……


 ガチャン!


 ?

 なんだ? 今の音は?


 シュルルルル


「なっ!?」


 ケイランの鎌の持ち手が短くなる

 そして一定の長さ……僕との距離くらいの長さになった


「これ、こんな仕掛けがあるんだよ、はい死んだ♪」


 ヒュン!


 ケイランの鎌が僕の首めがけて振られた

 ごめん……兄さん……


 僕は目を瞑る


 ・・・・・・・・


 …………?


 鎌がこない?


「アルス様、戦場では何があっても目を開くのです……死ぬ瞬間まで諦めてはいけません」


 僕の真後ろからそんな声を聞いた

 凄く聞き覚えのある声


 僕は目を開く


 鎌は僕の首に触れる寸前で止まっていた

 鎌の口金部分に僕の後ろから伸びてきた槍が触れていた


「…………」


 ケイランは今度は本当に呆気にとられていた

 僕は後ろを見る


「間一髪……って所ですね」


 そこにはゲルドが居た

 ゲルドが槍でケイランの鎌を止めていた



 ・・・・・・・・


 ーーーシャルス視点ーーー


「むっ、あれは……ゲルド」


 ショウキュウがゲルドを見る

 良かった、合流出来たのか!

 よし、今ならオイラも後ろに跳べば……


 脚に力を込めた瞬間


「動くなと言っただろ?」


 ショウキュウが槍をオイラの眉間に向けて突いてきた

 嘘!? 反応早すぎだろ!?

 ヤバイ! 刺さる!!


 キィン!!


「むっ!?」

「うぉぉぉぉ!?」


 ショウキュウの槍が目の前で上に弾かれた

 こわ! 危な! 生きてるよね!?

 オイラ生きてるよね!?


「どうやら、俺が最速の様だな」


 後ろに跳んだオイラの目の前にアイツが立っていた

 オイラを1度ぶった斬ったアイツ……


「マーレス!!」

「お前も案外しぶといな……」


 マーレスはオイラに言うとショウキュウを見る


「さて、俺が相手だ、時間が無いからさっさと済ませるぞ」


 そう言ってマーレスは剣を構えた


「オイラも一緒に!」


 2人で挑めば!


「お前は馬鹿か? 後ろにはバルバルバの連中が迫ってるんだぞ? さっさとアルスを連れて撤退しろ」

「それなら尚更2人で……」

「足手まといだって言ってんだ!!」


 怒鳴られた……


「……勝てるのか?」

「俺を誰だと思ってる?」

「アルスに負けた奴」

「お前帰ったらしばく」


 こわ!?


 でも……ここまで言うなら自信があるんだな……

 大人しく従っておこう

 アルスは絶対に死なせたら駄目だしな!


 オイラはアルスに駆け寄る


「アルス! 今のうちに撤退!!」

「シャルス!」


 ケイランが鎌を引いたのを確認してアルスに駆け寄る

 オイラとアルスの前にゲルドが移動する


「ゲルドとマーレスを置いていくのか!?」

「オイラ達じゃ足手まといだ! 何よりアルスは絶対に生き残るべきだ!!」

「シャルスの言うとおりです、小生はカイト様に貴方の事を任されました……必ず生き延びてください、後で合流しますので」

「…………」


 アルスは少し悩んでから


「わかった……絶対に追い付けよ!!」


 そう言って馬を走らせた

 オイラも走ってアルスを追う


 ……ユリウスとティールの事が気になるが

 今はアルスを護ることが1番重要な事だ!!

















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