表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
187/290

第184話 戦える者だから

 ーーーカイト視点ーーー




「っぅ!!」


 馬の上に降ろされた、俺は前方のコイシュナ軍を見る

 爆発が起きる

 コイシュナ軍の前線付近に連続で起きる爆発

 一際大きな爆音が響いてきた




「っ! 突撃!!」


 俺は叫ぶ

 それを合図に馬を走らせる


 俺の目の前をヘルドが走る

 ……というかヘルドの背中しか見えない

 周りが見えない……


 冑をしてて良かった……

 泣いてるとこを皆に見られないんだから


 ・・・・・・


 ーーーヘルド視点ーーー


 俺は馬を走らせてコイシュナ軍に向かう

 俺の真後ろにはカイト様……

 隠してるつもりだろうが……泣いてるのがバレバレだ

 まあ、気付かないふりをするがな……

 カイト様は自分の弱さを見せないようにしてるからな……精神面の話だ


 そんなカイト様を護るのが俺の役目だ

 ルーツが作った隙、絶対に無駄にはしない!!


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 俺は吼えながら槍を振り回しながらコイシュナ軍に突っ込んだ


「オーシャン軍だ!」

「奴等も自爆する気か!?」

「うわぁぁぁぁ!!」


 コイシュナ軍の兵は挑むものもいるが……殆んどが逃げ出した

 俺達も爆発すると勘違いしてるみたいだ……

 これがルーツの狙いか……相手の混乱を引き起こすのが……


「どけぇ!!」


 俺は逃げずに挑んでくるコイシュナの兵を槍で振り払う

 首を斬ったり、喉元や顔に突き刺したり

 奪えそうな武器をすれ違いざまに奪ったりしてな


 俺は戦える者だからな……

 いや、戦うことしか出来ない


 カイト様やルーツみたいに策を考えるのは苦手だ……

 だから戦う

 俺は戦ってカイト様を助ける

 そして、ルーツは策でカイト様を助ける


 それで良かったんだ……

 それが……良かったんだ


「ルーツ……」


 俺は見送ったが……本当は止めたかったんだぞ?

 だが、他に突破する方法は浮かばなかった……

 お前の策に頼るしかなかった


「必ず……護るからな……」


 お前が命をかけたんだ

 俺も何があってもカイト様を護ってみせるからな



「貴様がゴイナルを!!」


 前方からコイシュナの将だと思える人物が突撃してきた


「どけぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 ・・・・・・・・・


 コイシュナの将バルデッタ

 西方では優れた武勇で名が広まっている男だ

 決して弱くない、逆に強いと言い切れる


 だが……

 相手が悪かった


 仲間を失ったヘルド

 主を必ず護ると誓ったヘルド

 目の前の敵を殺すと決めているヘルド


 本当に相手が悪かった


 バルデッタが剣を構える

 その前にヘルドの槍が彼の鎧を貫き、心臓を貫いていた



 バルデッタは何が起こったのか理解する前に絶命した



「バルデッタ様が殺られたぁぁ!!」

「に、逃げろ!!」


 コイシュナ軍が撤退を始めた

 もうヘルドを止めれる相手はいなかった

 ルーツとヘルドが切り開いた道


 カイトは全力でその道を駆け抜けたのだった

 こうして、カイトの軍は戦場を離脱した


 ・・・・・・・・・・


 戦場から少し離れた山

 その頂上に人影があった



「やっぱり、あと1日は必要だったか……カイト・オーシャン……勘がいいのか、ただの臆病者なのか……」


 人影……シャリオンは戦場を眺めながら呟く


「真っ先に撤退を始めた軍……カイト・オーシャンは間違いなくあそこにいるな」


 シャリオンはそう言ってから残りのオーシャン軍を見る


「あの2つの軍は殿(しんがり)か?」


 シャリオンは軍をどう動かすか考える

 その時……


「あの、シャリオン様」

「んっ?」


 1人の兵士がシャリオンに声をかけた


「本国の軍を出して良かったのですか? バルドナからの情報は真実でしたが……奴が停戦の条約を守るとは思えないんですが……」

「ああ、それなら大丈夫だ、手は打ってるから」


 シャリオンはそう答えると、思案を再開するのだった


 ・・・・・・・・



 カイト達が撤退している頃


 バルバルバのマッテリオ平原を越えた先にある都『テイレン』

 そこに向かってバルドナの軍は進軍していた


「思った通りだ! 奴等、オーシャンに向かっていったから、こっちは手薄だな!」


 バルドナは嬉しそうに言った


「おい、これはどういう事だバルドナ、なんで敵がいない?」


 そのバルドナの隣にはインフェリが居た

 彼女は不機嫌そうにバルドナに問う


「簡単な事さ! オーシャンの連中を餌にしたのさ! だから俺はこうして楽にここまで来れた!」

「…………」



 インフェリはつまらなそうな顔をする


「それに、停戦の条約をバルバルバと結んでいたからな、奴等も攻めてくるとは思わないだろ!」

「待てよ……停戦の条約? オレ聞いてねえぞ?」

「んっ? 言ってなかったか?」

「……お前ふざけてるのか?」


 インフェリはそう言うとクルリと馬を反転させた


「インフェリ? 何処に行く気だ?」

「帰る! オレは暴れられるって聞いたからついてきたんだ! 卑怯者になるつもりはねぇ!」

「勝てる戦だぞ!?」

「覚えとけバルドナ! オレは相手を真っ正面から潰すのが好きなんだ! 味方の振りをして後ろから刺すなんてのは嫌いなんだよ!」


 そう言ってインフェリは自分の軍と一緒に撤退していった


「……勝てる戦なのに、馬鹿な奴だな」


 バルドナはそう呟いてから進軍を再開した


 そしてテイレンに辿り着く

 そこでバルドナは違和感を感じた


「……? なんで敵が出てこない?」


 いくら手薄になってるからって、応戦する気配が全くないのは妙だった

 停戦の条約を結んでいても、こうやってバルドナの軍がやって来たら、少しくらいは騒がしくなってもおかしくないのに……


 バルドナはそう思って警戒する


「おい、様子を見て来い」


 バルドナの指示で小隊が編成され、テイレンに向かっていく



 1時間が経過した頃

 小隊が戻ってきた


「バルドナ様! テイレンはもぬけの殻です! 人も何もありませんでした!!」

「はぁ!?」


 小隊の報告を聞いたバルドナは軍を連れてテイレンに突撃する



 そして……


「こ、これは……」


 テイレンの中は荒れ果てていた

 家は破壊され、遠くに見えるテイレンの城もボロボロだった

 修復するにはかなりの時間とお金がかかるだろう


「賊に荒らされたか? いや、それにしては徹底的に壊してある……」


 賊でもここまでは破壊しない


「ぐぇ!」

「どうした!?」


 兵士の1人が倒れた


「井戸の水を飲んだら急に!」


 別の兵士が答えて、倒れた兵士に駆け寄る


「し、死んでる……」

「!?」


 バルドナは井戸の水を汲み上げて見てみる


「……この僅かに感じる匂い……毒か!! おい! 全ての井戸を調べろ!!」


 バルドナの指示で都中の井戸を調べる


「全ての水源に毒……」


 バルドナはその報告を聞いて察する


「やられた……くそ、またやられた!!」


 簡単な話だ、バルバルバはテイレンを捨てたのだ

 民や財を別の都に移し、テイレンは徹底的に破壊して

 これでは、テイレンを手に入れても損にしかならない

 バルバルバもテイレンを失ったが……復興はバルドナがやるよりも安易だ


「くそ……くそ!! 全軍撤退!! こんな所いるか!!」


 バルドナはキレながら徹底していった

 何も得られなかったバルドナだった













評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ