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第182話 西方援軍戦 3

 陣を建て

 夜営を開始してから3日が経過した



「カイト様、斥候と密偵が戻ってきました……どちらの報告から聞きますか?」


 俺のテントにルーツが入りながら聞いてきた

 両手には報告書の束がある……それぞれ、斥候と密偵の報告を纏めた物だろうなぁ


「緊急の方から聞きたいが……どっちが急ぎだ?」

「では斥候から……ロンヌールの軍が動き出しました、それとシルテン、コイシュナからも軍が動き出したそうです」

「そうか、バルバルバとサタヌルスはバルドナの方に動いているのか?」


 俺達にはロンヌール、シルテン、コイシュナでぶつかり

 バルドナにはバルバルバとサタヌルスでぶつかるつもりか?


「いえ、それが密偵の話ではバルバルバとサタヌルスには動きはないと……」

「……動いてないのか?」


 妙だな……まだバルドナが攻めてないのか?

 それならそれでバルバルバもサタヌルスも俺達の方に少しは兵を出す筈だが……

 何かあったら全部の領で協力するのが西方同盟だ……


「どうしますか? 交戦してませんが、撤退するのも手かと」

「メルセデスが絶対に煩いぞ……交戦はしておかないとな……」


 さて、どうするか……

 このまま待機するわけにはいかないし……少し後退しておくか?


「…………」


 俺は考える

 そして……


「後退しよう、バルドナが動くまで交戦を避けるべきかもしれない」


 警戒はしておくべきだな


「わかりました、全軍に伝えます」


 ルーツはテントを出ていった


 こうして、俺達は現在地から東に陣を動かすのだった


 ・・・・・・・・・


 ーーーゲルド視点ーーー


「うーん……なんで後退するんだろう?」


 アルス様は首を傾げる


「何か問題があったのかも知れませんね……」


 小生は陣を崩している兵達を見守る


「…………」

「…………」


 少し離れた所でユリウスとティールが何か話している


 更に離れた所でシャルスが立っていた


「むっ?」


 シャルス? あそこで何をしているんだ?

 近くの兵から望遠鏡を受け取って覗いているな


「……!!」


 何かを見つけたのが望遠鏡から眼を離して小生を見る

 そしてこっちに駆け寄ってくる


「アルス! ゲルド! 敵だ! 北の森に敵兵が隠れてる!!」

「なに?」


 小生は望遠鏡を受け取って、シャルスの言う森を見る


 森の中……日陰の所を見ると、確かに兵がいる……あれは……バルバルバの兵?


「何故森の中に?」


 望遠鏡が無かったら気付けなかったな


「アルス様、森の中にバルバルバの兵が見えます……恐らくバルバルバの軍が潜んでるかと」

「襲撃……って言いたいけど、罠の可能性もあるからね……気づいてない振りをしよう、兄さんには伝令を送っておこう」

「はっ、ではそのように!」


 すぐにカイト様に伝令を送る


 ・・・・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー


「バルバルバの兵が? ルーツ、どういうことだ? 動きはなかったんじゃないのか?」

「私もそう聞いたのですが……」


 アルスからの伝令を聞いて俺とルーツはお互いを見る


「……」

「……」


 考えれる可能性は2つ

 密偵がミスをしたか……

 密偵が動く前からバルバルバは動いていたか


 密偵のミスなら説教で済ませるさ

 でも……もし2つ目の方なら……


「全軍撤退! この戦は義理も何も無い!」

「よろしいのですね?」


 ルーツが確認を取ってくる


「ああ! 先に約束を破ったのはバルドナの方だ!」

「すぐに第2軍団と第3軍団に伝令を出します!」


 どういうことかって?

 先ず、バルバルバはここからかなり離れた場所にある

 西方の最北だ

 そんなバルバルバの軍が俺達の進軍路に潜伏していた……

 つまり、俺達がここに来るのを知っていた事になる


 俺達の動きを予測したにしては速すぎる……

 誰かから情報を流されない限りな!


 つまり、バルドナが俺達を裏切って情報を流したって事だ!

 援軍を裏切るとか意味がわからない……そう思ったが……


「バルドナめ……俺達を餌にしたな……」


 今、バルバルバの軍がこっちに来ている

 つまりそれだけバルドナの相手が減るって事だ

 もしかしたら何か取引をしてる可能性もある


 とにかく、バルドナは俺達を……オーシャンを裏切ったのだ

 それなら俺達も戦う理由はない

 さっさと撤退する



 もし、もし仮に偶然バルバルバが来ていて、バルドナが裏切ってなかった場合だが……

 その時は多勢に無勢って事で撤退したことにしよう

 ……あながち嘘でもないし



 そんな訳で……さっさと撤退だ!!


 ・・・・・・・・・


 ーーー第3軍団の陣ーーー


「ヒヒ、撤退ね、了解っと……あーでも少し遅かったみたいだ」


 ブルムンはそう言って南側を見る


 そこにはシルテンの軍が見えていた

 こっちに向かって突っ込んでくるのが見えていた


「全員撤退!! 交戦する前に他の軍団と合流して逃げるぞ!!」


 ブルムンはそう言って撤退を始める

 兵や将達も荷物をそのままにして撤退を始めた



 ーーー第2軍団の陣ーーー


「全軍撤退!!」


 伝令を聞いたアルスは叫ぶ

 それを聞いて兵達が撤退を始める


「まずい、バルバルバ軍が動き出した……」


 森の中からバルバルバ軍が突撃してくる


「うわ、多いなぁ」


 ユリウスが呟く


「急いで合流しましょう……このまま交戦するのは厳しいですよ」


 ティールは馬を引いてユリウスに言う

 ユリウスはその馬に跨がり、アルス達も馬に乗って走り出したのを確認してから走り出した



 ・・・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー


「カイト様! 前方にコイシュナの軍が現れました!!」


 先に行って、退路を確認していた兵からの報告


「ちっ! 北にバルバルバ、南にシルテン……東にコイシュナで」

「西からはロンヌールとサタヌルス……完全に包囲してから突撃するつもりだったみたいですね」


 並走しながらルーツが言う


「どんな奴が来ても! 俺達が守りますよ!」


 ヘルドが並走しながら言う


「ああ、頼もしいな! よしっ! コイシュナの軍を突き抜けるぞ! すぐにアルスやブルムンの軍も追いつく! そうしたら……」


「カイト様ぁ!!」


 後ろから兵が馬を走らせて追い付いてきた


「どうした?」

「後ろからロンヌールの軍が現れて、他の軍団と分断されました!!」

「なにぃ!?」


 ロンヌール軍が!? バカな! 早すぎる!

 まだこの平原に到着すらしてないはずだぞ!

 いや、それよりも……


「アルス!! 皆!」


 俺は手綱を引き、引き返そうとする


「カイト様!? 戻る気ですか!?」


 ルーツが驚く


「当たり前だろ! 皆を見捨てられる訳がない」

「アルス様達ももう立派な将です! 自力でなんとか出来ます! それよりも貴方だ! 貴方は絶対に生き延びらなきゃいけないんです!!」

「しかしだな……」

「カイト様! 貴方は! 何を犠牲にしてでも! 必ず生き延びらないといけないんです! それをいい加減理解してください!」

「ぐっ!」

「貴方は私達の主である、東方の領主です! 貴方がもし亡くなるなんて事になったら……東方はまた荒れますよ! アルス様の安否がわからないなら尚更です!」

「……で、でも」

「でもじゃない!!」


 ルーツが怖い!!


「ヘルド! 無理矢理でもカイト様をオーシャンに帰しますよ!」

「ああ! 任せろ!!」


 2人は俺が戻るのを絶対に認めないようだ……


「…………くっ!」


 俺は馬を走らせる……オーシャンに向かって


「そうです! それでいいんです!!」


 ルーツが叫ぶ


 アルスすまない!

 どうか……どうか無事に帰ってきてくれ!!



 俺はそう願いながら馬を走らせた

 ……のだが


「おい、なんだよこれ……」


 コイシュナの軍が見えた

 ……大軍だ

 ざっと見て5万は居るんじゃないか?



「これを……俺たちだけで突き抜けないといけないのか?」


 こっちは3万……しかし足並みは揃ってないしマトモに戦えるとは思えない


 そんな……そんな状態でここを切り抜けないといけないのか?



 はは……ヤバい……

 俺……帰れないかも……










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