第181話 西方援軍戦 2
橋を渡って、東方の国境を越えて10日くらい経過した
「お、『デルト』が見えてきたな、やっと半分くらいか」
俺は遠くに見える都を見る
中央都市デルト
ノースブリード大陸の中心にある都だ
結構重要な都だったりする
というのも、ノースブリード大陸の領はヤークレン以外は基本国を名乗ってはいない
いや、たまに物の例えとかで国って言ってるけど
公には国を名乗らずに領を名乗ってる
その理由がデルトにある
あそこにはノースブリード大陸をまとめる王が居た
つまり、ノースブリード大陸が1つの国だったのだ
そして今色々ある領は領として管理を領主に任されていた
それで? その王はどうしたのかって?
ずっと昔に死んだよ、200年くらい昔に
それからノースブリードは荒れた、先ず王の後継者が居なかった
子供は居なかったし、親族もドンドン死んでいった
最終的に領主達が土地を奪い合う形になって、今に至る
つまり、今は戦国時代だと思って貰えればいい
まあ帝とか居ないけど……
ゲームでも、大陸を統一出来たら『王』の称号が手に入るんだよなぁ
そして、今その立場に1番近いのがメルセデスなんだよなぁ……
「カイト様、デルトに使者を送りました」
「ああ、悪いなルーツ」
何の使者かって?
デルトには何もしませんよって使者だ
王は居ないが、中立を保つ都だからな
不安にさせて後々色々言われるのが嫌だからね
こうやって連絡をちゃんとしておくんだよ
こっちは何もしないから、そっちも気にしないでくれってな
・・・・・・・・・
デルトを過ぎてから数日
やっと西方……ロンヌールの国境に到着した
西方の地理は
北側にバルバルバ
バルバルバの南西にサタヌルス
バルバルバの南東にロンヌール
つまりサタヌルスの東にロンヌールがある
そしてサタヌルスとロンヌールの南にシルテンがあって
シルテンの更に南にコイシュナがある
規模で言うならコイシュナが1番デカイな
次いでシルテン、バルバルバ
サタヌルスとロンヌールは同じくらい
それが西方の領だ
ロンヌール以外はそれぞれ港を持っていたかな
……パストーレの時みたいに小島に民を移してたりしてないよな?
「さてと、今日はこの辺りで夜営するべきか……」
俺が呟く
「そうですね、少し早いかも知れませんが……ロンヌールが動いてる可能性もありますから、斥候からの報告を待ちますか……編制の確認もしたいですね」
ルーツが同意する
因みに、俺の側には基本はルーツとヘルド
たまにアルスとユリウスがやって来る
そんな訳で夜営の指示を出す
斥候が戻ってくるまでの拠点にするか
「ルーツ、ついでに何人か村や街の様子を見に行かせてくれないか、噂話でもいいからロンヌールが動いてるのか知りたい」
「既に旅人の装いをさせて放ってます、5日以内には戻ってくるかと」
「流石」
仕事が早くて助かるな
そんな訳で木で囲いを作ってテントを建てたりする
俺も手伝おうとしたら全力で止められた……
いや、止められるってわかってたけどさぁ……1人だけなんもしないのって申し訳なくならない?
大きめのテントを建てられたのを確認して
俺と数人の将で軍議だ
「軍を分けようと思うんだが、どう思う?」
俺の最初の提案
これは全員が賛成した
「軍は5つくらいに分けるか?」
この俺の提案をヘルドは賛成したが
他の将達は反対の様だった
「流石に5つは分けすぎです、3つくらいが良いと思いますよ」
ルーツの提案、ヘルド以外は同意見の様だった
「それじゃあ軍は3つにしよう」
俺はルーツの提案を採用する
こういうのは戦慣れしてる皆の意見の方が確実だからな
「それじゃあ軍の編制とそれぞれの大将を決めたいんだが……」
俺は周りを見渡す
「まあ、第1軍団は俺だよな?」
総大将だし……
「兵の数は……平等に分けて2万くらいか?」
「2万5千……いや3万でいきましょうか、貴方に何かあったら困りますし……それに敵を誘導する餌にもなるでしょう、ヒヒヒ」
ブルムンが提案する
「おい! 餌ってどういうことだ!」
「落ち着けヘルド」
机を殴りながら怒鳴るヘルド
俺はヘルドを後ろから引っ張る
「今のはブルムンの言い方が悪かったな……ヘルド、ブルムンはカイト様の身を案じているんだ」
ゲルドが話す
「どういう意味だ?」
ヘルドが耳を傾ける
「ここは既に敵地だ、何処に敵兵が潜んでいるのかもわからない、だからカイト様の周りに兵を多く残すのだ、餌……っていうのは照れ隠しとかだろう」
そんな照れ隠しがあるのか?
って思ったが黙っておこう
ヘルドも一応は納得したみたいだし……ブルムンも考えたうえでの発言だろうしな
「まあ、理由はともかく……いいのか? そうしたら他の軍団は兵が少なくなるぞ?」
平等に分けて1万5千ずつ……
だ、大丈夫なのか?
「いや、少ない方が動きやすくはなるな……」
マーレスが呟く
「そうか……他の皆も異論は無いんだな?」
『…………』
「なら第1軍団は兵を3万と……将は」
「俺が『私が』!!」
ヘルドとルーツが同時に立ち上がった
「……やる気すげえな」
マーレスが呆れる
「ま、まぁ2人は元々俺の護衛だしな……うん、後は……」
「兄さん! 僕も!」
アルスも手を上げる
「そうか? ならアルスも……」
「なんだ? アルスは兄にベッタリか?」
マーレスがアルスに一言
「……なんだと?」
アルスがマーレスを睨む
「いや? 兄弟仲が良くて羨ましいとね」
とてもそんな風には見えないが?
「……マーレス、何か思う事があるならハッキリ言ってもらえないか?」
俺はマーレスを見る
「そうか? なら言うが……アルスはカイトにベッタリしすぎて気持ち悪い」
「様をつけろ金髪野郎!!」
「ヘルド、ややこしくなるから少し黙ってて」
「ぐぐっ!!」
マーレスが俺に敬語を使わないのはいつもの事だ
「そんなにベッタリか?」
「そうだな、何かにつけて兄さん兄さん、正直引いたわ」
…………まあ、確かに想われ過ぎてる感はあったけど
そ、そんなに?
「アルスはあれだろ? カイトに何かあった時の後継だろ? そんなんで務まるのかねぇ?」
「お前に僕達の何がわかる!!」
怒るアルス
「………………」
俺は考える
思えば……確かにアルスはしっかりしている様で、重要な時は俺に依存してるような……
『兄さん! 兄さん!』
別に嫌な気はしない
むしろ兄としてはかなり嬉しい……
でも、さっきマーレスが言ったように……俺が死んだらアルスが次の領主だ……
そんなアルスが俺の代わりを…………
嫌な想像をしてしまう
領主の重圧、民の声……そんなの関係なしに攻めてくる他の領
ドンドン弱っていくアルス……
「……そうだな、言い方は悪いが、マーレスの意見に一利あるな」
「兄さん!?」
「アルス、何が起こるかわからない世の中だ……お前もそろそろ軍を率いてみないか?」
「え、えっ!?」
「お前に第2軍団の大将を任せたい、ゲルドとマーレス……後2人くらい将を編制してくれ」
「で、でも兄さん! 僕は……」
「アルス、お前ならできる、マーレスを見返してやれ!」
「…………わ、わかったよ」
アルスは渋々応じた……こらこら、マーレスを睨むな
「それじゃあ第1軍団の編制の話だが……その前に第3軍団の大将を決めとくか……ブルムンに任せたいんだが……」
「ヒヒヒ、任されましょう! 将ですが……」
こうして話し合った結果
第1軍団 兵数 30,000
大将 カイト
将
ヘルド
ルーツ
レムレ
ガイルク
ガイルクは俺が誘って編制した
危険もあるかもしれないが、和解する機会を見つけたい……難しいか?
第2軍団 兵数 15,000
大将 アルス
将
ゲルド
モルス
マーレス
ユリウス
ティール
シャルス
第3軍団 兵数 15,000
大将 ブルムン
将
グラドス
マリアット
こんな感じ
基本は第2第3軍団で交戦してから撤退
そう決まった
さてと……後は斥候の報告待ちだな……
・・・・・・・・・・・
カイト達が夜営を始めた頃
ーーーロンヌールの都ーーー
「ねえねえ、パキラ、オーシャンの軍が国境を越えたって」
「だねだねポムラ♪ 罠があるとも知らないで入ってきたね」
双子は笑い合うと同時に喋る
『さあ、狩りを始めよう♪』
こうして、ロンヌールの軍が行動を開始したのだった