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第178話 残された者

 ーーーマーレス視点ーーー



「おーい! 門を開けてくれー!」


 俺は久し振りにパルンに帰って来た

 理由はメルノユ様にカイトの指示を伝える為だ


 ガガルガとパストーレの兵を国境の側に待機させる

 戦に負けても国境まで逃げたら必ず助かるようにするということだ


「お久し振りです! マーレス様!」

「ああ、ご苦労」


 門番に挨拶をしてからパルンの都に入る


 そしてさっさとパルン城に向かう


 ・・・・・・・・・


 玉座の間


「ふむふむ、国境に待機か……わかった、手配しておこう!」

「ありがとうございます」


 メルノユ様はアッサリと言った


「それで? 最近はどうだ? マーレスもテリアンヌも元気にしているか?」

「ええ、意外と待遇は悪くないです、テリアンヌも友人が出来たと喜んでいますよ……レストは夢遊病を再発させてましたね」

「そうかそうか!」


 愉快そうに笑うメルノユ様


「そちらはどうですか? 最近変わった事は?」

「ふむ……実はな……」


 メルノユ様はパストーレで起きてる問題を話してくれた


 ・・・・・・・


「邪魔するぞ!」


 俺は城下にある酒場にやって来た


「おっ! マーレスさん久し振り!」


 酒場の親父が酒を注ぎながら言う


「ああ! 親父! ブライは居るか?」


 俺はブライが店に来ているか聞く


「ブライの旦那なら奥の席に居るぜ!」


 そう言って親父は酒を俺に渡す


「サンキュー!」


 俺は酒を受け取り、飲みながら奥の席に向かった


 数段程度の階段を降りて、奥の方を見ると……

 ブライを見つけた……1人で酒を飲んでいる


「…………よぉ」


 俺はブライの向かいに座る


「……なんじゃ、マーレスか」

「なんだよ、久し振りに会ってその反応か?」

「ふん……」


 あーあ、ショボくれちまったな……

 オルベリンが死んで、競う相手がいなくなったからか……最近ずっとこうらしい

 覇気が無いというか何というか……


「そんな風にしてても、何も変わらないぞ?」


 俺は酒を飲む


「喧しい……」


 ブライも酒を飲む


「カイトが挙兵する、相手は西方だ」

「……なに?」


 俺が本題を切り出す


「あやつは何を考えておる? 西方同盟を知らんのか?」

「いや、知ってるぞ? ただな……メルセデスからの命令でな」

「ふん、東方の主になってもメルセデスの傀儡(かいらい)か」

「その不満は俺もわかるが……話を続けるぞ? パストーレからの軍はガガルガの軍と合流してから、西方との国境付近に待機しろって指示だ」

「なんじゃあ? 儂らは留守番か?」

「ああ、後ろを守っていてほしいそうだ……それにここだけの話だが……」


 俺はブライの耳元に近づいて囁く


「マトモに戦うつもりはないらしい、1度交戦したら撤退するそうだ」

「……ほぉ、義理は果たしたことにするわけか」

「ああ、そういうことだ……」


 俺は椅子に座り直す


「だからブライにも出て来てもらいたいのだが……」

「断る」


 ブライはそう言って酒を飲み干す


「……理由は?」

「儂も近々隠居しようと思ってな……軍を動かす頃には、もう隠居した後じゃろ……」

「……なんだよ、お前はそこまで腑抜けたのか?」

「……なに?」


 ブライが俺を睨む

 なんだよ、まだ現役で通じる程の殺気じゃないか


「追ってた相手が死にました~だからもう辞めます~、こんなん腑抜けとしか言いようがないだろ? 昔のお前なら『あの世で見てろよ!』って言いながら戦場を駆けたろうに……」

「…………」


 おっ、怒ってる怒ってる


「貴様に何がわかる!」


 ブライが堪らずに怒鳴る


「あのオルベリン(化物)を殺すことが儂の目標じゃった! 戦う理由だった! それが無くなったのだ! もう戦う意味など……」

「……くだらねえ」

「なに!!」


 俺の呟きに怒鳴るブライ


「戦う理由なんかな! 主を守る為で良いんだよ!!

 お前は今までメルノユ様やテリアンヌを守ってきたんだろうが!! なんだ? それはオルベリンと戦うためのただの口実だったのか!!」

「そんな訳ないじゃろ!! あの御二人に対する忠義に偽りなど無い!!」

「なら隠居なんてするな! 死ぬまで戦え! それで戦場で死ね!! そんであの世でオルベリンに自慢しろよ! お前に出来なかった事をしてやったってな!!」


 俺はそう叫んで酒を飲み干す


「そんな訳で、俺は戻る! じゃあな!」


 俺は親父に多目に酒代を払って店を出た



「……ふん、小僧が! 生意気言いおって!!」


 出るときに、ブライのそんな声が聞こえた


 ・・・・・・・・・


 さてと……もう1人、やる気が無い奴が居るんだよな……


 俺はソイツがよく居る場所に向かう

 港に行って、小船を借りて漕いでいき……到着するのは小島だ

 林があるくらいの小さな島だが……アイツはここがお気に入りだからな


「ほら居た」


 俺はソイツを見つけた


「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 ソイツは……ガイルクは大剣を振り回していた


「おい! ガイルク!」

「っ! マーレス!! 帰ってきてたのか!!」


 驚くガイルク


「ああ、カイトからの指示を伝えにな」

「カイト・オーシャン……」


 ガイルクが殺気を撒き散らす


「なんだ? まだバベルクの事を引きずってるのか?」

「当たり前だろ!」

「あのなぁ、この時代は殺るか殺られるかだぞ? いちいち恨んでたらきりが無いぞ?」

「わかってる! わかってるけどさ……やっぱり許せないんだ……オーシャンが……カイト・オーシャンが!!」

「……」


 まあ、俺からしたらバベルクはただの同僚だが……

 ガイルクは実の父親だからな……気にするなってのは酷だよな……


「……それじゃあお前はどうしたいんだ? カイトを殺したいのか?」

「っ!」


 俺はそう言うとガイルクは動揺する


「その大剣で斬りたいのか?」

「そ、そんな事したらテリアンヌ様が……」

「テリアンヌの事や国の事は考えるな! お前はカイトをどうしたいのか言ってみろ!」

「………………」


 大剣を見つめるガイルク

 ガイルクの腕は震えだす

 ……そして


「っ!!」


 ザクッ!


 大剣を地面に突き刺す


「斬りたい……でも、無理だ……くそっ!!」

「……はぁ」


 全く……世話がやける


「仕方ないな、ガイルク、お前俺と来い! 西方を攻める軍に参加しろ」

「……えっ?」

「今のお前は世界を知らない、1度カイトの戦を見てようぜ、それでお前の腹も決まるだろ?」


 吹っ切れるか

 カイトをぶった斬るか

 どっちを選ぶかはわからないが……このまま腐らせる訳にはいかないだろう?


 ・・・・・・・・


 翌日、俺はガイルクを連れてパルンを出た

 出発する時に、メルノユ様からブライが滾ってると聞かされた

 どうやらやる気を出したようだ

 アイツには働いてもらわないとな……隠居なんてさせないからな?


「ガイルク、オーシャンに戻るまでの道中でどれくらい強くなったか、俺に見せろよ!」

「言われなくても! あれから腕を磨いたんだ!」


 何か決意をしたのか、今のガイルクは力強い顔をしていた

 さて、これで西方同盟に対抗できるか……

 少しでも戦力を増やしておかないとな……








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