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第177話 準備と埋葬

 翌日


 俺はアルスと数十人の兵を護衛にヘイナスに向かっていた


 目的はオルベリンの埋葬だ

 俺とアルスが乗ってる馬車とは別に、オルベリンが眠っている棺を乗せた馬車を走らせている


「……兄さん」

「なんだ?」


 アルスが話し掛けてきた


「本当に西方を攻めるの?」

「……ああ、今はそれしか出来ない……そうしないとヤークレンに潰される」


 どう立ち回るべきか……必死に考えたんだぞ?

 南方と西方と協力してヤークレンを倒すのも考えたが……現実的ではなかった

 多くの領をまとめられないし……盟主とか取り分とか色んな事で揉めそうだし

 烏合の衆じゃ勝てない



「……西方同盟に勝てる?」

「正直自信はないな……今までと規模が違うしな……」


 東方制圧は……1つずつの領を相手にできた

 でも西方は違う……西方同盟は領のどこかを攻められたら……全軍で迎え撃ってくる

 西方全てを相手にすることになる……


 バルドナが兵を動かすから、その分は敵は分散されるかも知れないが……

 それでも今まで以上の敵と戦うのは確実だ

 あー、胃が痛い……


「はぁ……なんでメルセデスが動くかなぁ……まだオーディンとかを使者に出してきたら時間稼ぎは出来たのに……本人来ちゃうからなぁ……」

「遠くから見たけど……そんな強そうには見えなかったよ?」

「目の前に居るときの威圧感は凄いぞ?」


 あれだ、圧迫面接された時に似てる……


「……そんなに厄介なの?」

「そうだな……レルガとかから聞いてないか? 昨日来たときは、都の外に30万の兵で包囲してきたし……」

「さっ!!?」

「それにな……八将軍はオルベリンと互角に戦えるくらいの奴等だ」

「そ、そんな馬鹿な……」

「1対1ならオルベリンが勝てるけど2人以上は厳しい……昔、言ってたな……」



 数字で例えるならそうだな……

 オルベリンが100だとしたら……

 八将軍は85から90くらいか?

 そんなのが8人……勘弁してくれ……


「オルベリンを失って……ただでさえ凹んでるのに……はぁ……」

「…………僕が、オルベリンの代わって戦うから……」

「アルス……気持ちは嬉しいが、焦るなよ? お前はじっくりと腕を磨けばいい、俺には……出来ないことだからな……」


 戦いは任せる

 他は全部任せろ

 アルスなら……いつかオルベリンみたいに強くなれるって信じてるからな


 ・・・・・・・・


 ーーーアルス視点ーーー


 数時間後、ヘイナスに到着した


「…………」


 僕達はオルベリンの棺を埋葬する……

 そして神父の祈りに合わせて祈る


 ……オルベリン


 強くて

 頼りになって

 優しくて

 でも、時々厳しくて……


「…………うん、大好きだったよ……」


 父上が亡くなってからは……色んな相談を聞いてくれたなぁ

 ゆっくり……眠っててよ、後は任せて



「カイト様、よろしいですか?」


 マールの都から先にヘイナスに来ていたルーツが兄さんに声を掛ける


「ああ……アルス、俺はルーツと話があるから、自由にしててくれ、夜中までには城に来いよ?」

「わかってるって……もう子供じゃないんだから」

「それでもだ、お兄さんは弟の事がいつになっても心配なんだよ」


 そう言って兄さんはルーツと一緒に去っていった……

 本当はまだオルベリンの冥福を祈りたいだろうに……

 忙しいから仕方ないんだけどね……


 代わりに僕が祈っておこう



 …………………


 気が付いたら夕方になってた……


「……そろそろ城に向かうかな」


 オルベリンの冥福を祈った後に、父上や母上のお墓にも祈っていたら時間が掛かった


「……んっ?」


 振り向くとオルベリンの墓の前に茶髪の男が立っていた

 いつの間に居たんだ?


「…………」

「…………?」


 なんだ? 知らない筈なのに……なんか懐かしく感じる……


「……何か用か?」


 男が話し掛けてきた


「……いや……別に」


 僕は墓地を出るために歩く

 そして男の横を通る


『………………』


 お互いに無言


 いったい誰なんだろ?

 オルベリンに助けられた人とかかな?


 ・・・・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー


「ふむ、まあ妥当と言ったところでしょうか」


 俺の提案にルーツが頷く


「オーシャン、ヘイナス、マールマール、カイナス……4つの地方から出撃して、パストーレとガガルガの兵を西方との国境付近に待機か……」


 ヘルドが地図を見る


「出撃さえしたら義理は果たしたことになるけど……半端な戦力だとメルセデスは黙ってないだろうからな……」


 援軍に出たのに怒らせて攻められるなんて嫌だからな……やるからには全力だ


「何が起こるかわからないからな……防衛線を作った方がいいだろ? もし負けても……これなら助かる確率は上がるだろ?」


 何が起こるかわからないから、準備はしっかりとしないとな


「カイト様の考えは理解できました、特に反対しようとも思いません、しかし……うーん」

「どうした? ルーツ」


 ルーツを見る


「いえ、バルドナと連絡が取りにくいのは厳しいなと……連携が大事ですからね、西方との交戦が早すぎても遅すぎてもいけませんからね……」

「使者は送ってるんだがな……時間はかかりそうだな」


 バルドナが本拠にしてるユルドュナとは距離があるからな

 どうしても時間がかかる



「取り敢えず! ガガルガとパストーレに伝令を出せばいいんですよね!」


 ヘルドが聞いてきた


「ああ」


 俺が頷くと、ヘルドは兵を呼び、伝令の指示を出した

 だいぶ慣れてきたな……


「皆の準備が整い次第、西方に向けて進軍する!」

『はっ!!』


「あ、でも……『デルト』は避けような」

「わかってます!」


 デルト……これは大陸の中心にある都だ

 何処の勢力にも属さない完全に中立な都だ

 まあ、ここについては、いつか詳しく話そう



 さてと……明日にはオーシャンに帰って準備を進めないとな……

 出発する前に墓地に顔を出してから行こう……







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