第17話 北オーシャンでの内政
カイト視点です
さて、公衆浴場を提案してから3ヶ月経った
建物を建てたり
水源から水を通したり
従業員を雇ったり
色々と大変だったが2ヶ月で公衆浴場は完成した
その公衆浴場が完成して1ヶ月……
公衆浴場は………
「はい!4名様ですね!」
「エール!エールはいらねえか!!」
「マッサージ!風呂上がりにどうだい!!」
わいわい
がやがや
大繁盛していた
というのも民の家には風呂が付いていない
だから普段は水浴びや濡れた布で身体を拭いたりしていた
しかし、この公衆浴場が完成したことにより
誰でも!
安く!
広い風呂に!
入れるのだ!
更に風呂上がりにエールを飲むのがかなり好評だったりする
冷水につけて冷やしたエールを風呂上がりにグイッと飲むのが堪らないのだ!
風呂上がりのエール……いいよね
さて、そんな公衆浴場を詳しく紹介しよう
先ず建物だ
出入り口は4ヶ所……
男用の入り口
女用の入り口
従業員用の入り口
そしてお湯を沸かす為の釜への入り口だ
水源から水を通しているのだが、通ってきた水は先ず釜に入れられる
大きな釜に数人がかりで火をくべてお湯を沸かすのだ
このお湯を沸かす奴等は貧民街で雇った者達だ
1時間毎に交代で火の番をさせている
何故1時間だって?
いや、この部屋がかなり暑くてな……俺も少し入ってみたが汗が止まらなくなるのだ
長居していたら脱水症状などを起こしかねない
だから一時間で交代させて、しっかりと休憩と水分補給をさせているのだ
このお蔭か今まで倒れた者はいない
さて、ここで沸かしたお湯は管を通ってシャワーや湯船に送られる
管を通っている間にある程度冷めてくるからシャワーで出るときは少し熱めだが、湯船のお湯はちょうどいい温度だったりする
次は脱衣場の説明をしよう
脱衣場は男と女で分かれている……当たり前だよな!
其々に従業員を5人ずつ配置させている、接客と支払いを任せている
彼等も貧民街で雇った
盗みとかを心配する声もあったが……この公衆浴場の近くに屯所を建てて兵を配置しているから大丈夫だったりする
配置した兵は主に浴場の警備と付近の警戒を任せている
ほら、トラブルとかあったらすぐに対処してもらいたいだろ?
これで公衆浴場内でのトラブルは少ないのだ…………
たまに血の気の多い奴等が喧嘩するくらいだからな!
そして浴場だが
突撃!男湯!
大きな湯船が4つある!
それぞれの違いはお湯の温度だ
子供からお年寄りまで、色んな世代に楽しんでもらいたい
そんな配慮で造ってみた
女湯も同じ作りだ
そして周りにはシャワーがある
ここで身体を洗うのだ!
因みに、壁には入浴のマナーの書き出しが貼ってある
身体を洗ってから湯船に浸かるようにってね
字が読めない人の為に絵も入れてるし
従業員に簡単なレクチャーもさせている
だから皆で風呂を楽しめる!
だから好評だ
そんな工夫が評価されたのか
旅人や傭兵が他の街や領で話をして客が増えた
狙い通りである
・・・・・・
「カ、カイト様の仰った通り、か、かなりの利益が出てます!」
クンツァからの報告
「上手くいって良かった」
俺はその報告を聞いて満足する
この1ヶ月で治安も良くなった
盗みが減ったのだ
そりゃそうだ、貧民街の奴等も給料を貰えるのだから盗む必要はない
それに公衆浴場の近くに従業員の寮も建てたからな、住む場所も提供したのだから……もう貧民なんて呼べないな!
「さて、取り敢えず今は柵で囲っているが……時間をみつけて石垣にするんだぞ?」
「は、はい!」
外壁の外だからな、屯所が有るといっても賊の襲撃とか有るかもしれないからな
玉座の間を後にするクンツァ
「……さて、そろそろ戻るかな……」
内政も整ったし
公衆浴場で治安も経済も安定したし
軍備も問題ない
もう俺が居なくてもやっていけるだろう……
「……ルーツとオルベリンを呼んでくれるか?」
俺は近くに待機していたメイドに言う
「畏まりました」
メイドがお辞儀して玉座の間を後にする
……メイドと言えば、なんかメイドや兵……民からの俺の評判が異常に高いのだが……
メイド達からは『最高の領主』と影で言われてるし
兵達からは会うたびになんか感激されるし
民からは握手を求められたり万歳されたり……正直不気味だ
『カイト様の魅力なのでは?』
っとルーツは愉快そうに言っていた
『ワールがそれだけ酷かったのですよ、自分以外は道具と見てましたから』
っとメビルトは言っていた
あれだな、ブラック企業の社長が変わってホワイト企業になったようなもんだよな?
俺も勤めていた会社がホワイトになったら社長に感謝して崇拝するかもしれないからな
……あ、サラリーマン時代の苦労を思い出す……俺の提案なんて無視されまくったからな……
「お呼びでしょうか?」
そう考えていたらルーツがやって来た
「ああ、来たかルーツ」
俺はルーツを見る
「ルーツ、このマールの都をどう思う?」
「?……この3ヶ月で住みやすい都になったと思いますよ?」
「そうか、ならもう大丈夫だな」
「カイト様?」
「ルーツ、俺とオルベリンはヘイナスに戻ろうと思う。このマールの都を任せていいか?」
「わ、私がですか!?よ、よろしいのですか!?」
驚くルーツ
「よろしいもなにも、お前なら任せられるから任せると言っているんだぞ?……あ、嫌だったか?」
「そんな訳ありません!大変光栄な事です!」
ルーツは興奮している
「そうか、ならここはルーツに任せる……何かあったら遠慮なく他の奴や俺に相談しろよ?1人で悩むなよ?」
「は、はい!!」
こうしてマールの都をルーツに任せた
俺はオルベリンと千人の兵と共にヘイナスに戻る
・・・・・・・・・
ーーーヘイナスーーー
数日後、ヘイナスの外壁が見えた……
「3ヶ月振りだな」
「そうですな!」
外壁に近付くと門が開く
俺を乗せた馬車が門をくぐると
『カイト様!お帰りなさいませ!!』
「うお!?」
民に凄く歓迎された
「此度の勝利!おめでとうございます!」
「カイト様ぁぁ!!」
「オルベリン様ぁぁ!!」
「なんか凄く喜ばれてるな……」
「民も此度の勝利が嬉しいのでしょうな」
なんかパレードみたいになってるぞ……
と、取り敢えず手を振っておくか
・・・・・・・
城門をくぐるとレリスや将達が待っていた
「カイト様、お帰りなさいませ!」
「ただいまレリス、これはどういうことだ?驚いたぞ?」
「オルベリン殿からカイト様が戻られると早馬が来ましたので」
「…………」
俺はオルベリンを見る
おい、目をそらすな
「さあカイト様、お疲れでしょうが何か民に一言お願い致します」
「わかった……」
俺は城壁の階段を登り、城壁の上に立つ
「……すー」
息を吸い、眼下の民達を見る
「諸君!此度のマールマールとの戦は我等の勝利だ!!」
『わぁぁぁぁぁぁ!!』
『うぉぉぉぉぉ!!』
「しかし、まだ私達はこれからだ!!更に軍備を整え……必ず次の戦も勝利する!!」
『おおおおお!!』
なんか宣言になったな……
・・・・・・
ーーー玉座の間ーーー
疲れてるから部屋で休みたかったが、レリスから報告を聞かないとな……
「それで、俺が居ない間に何かあったか?」
「他国関係では特に何もありませんでした、カイナスもガガルガもパストーレも動きはありませんでした」
「そうか……んっ?『では』?」
「はい……2人共!来なさい!」
レリスが呼ぶ
するとメイド服を着た子供2人がやって来た
双子か?似てるな
「初めましてカイト様!私はルミルと申します!!」
左の子が元気に挨拶する
「は、初めまして!僕はレムレと申しましゅ!?」
右の子が噛んだ……
「ルミルとレムレか……新しいメイドとして雇ったのか?」
そんなキャラは将として見たことない
てか子供だぞ?労働基準法大丈夫?
あ、この世界にそれはないのか
「ええ、今は召し使いとして雇っています」
「今は?」
俺はレリスから2人の事を聞く
……母親の為にか……ええ話やな
「事情はわかった……だが駄目だ」
「えっ!?」
「うぅ……」
2人が俺を見る
「いいかい?兵ってのはいつ死ぬかわからない仕事なんだよ?戦になれば殺すか殺されるかの生活……君達は人を殺せるのかい?」
「殺せます!」
ルミルが答える
レムレも頷く
「そうか、なら尚更駄目だな」
2人が俺を見る
レリスも俺を見る
「人を殺すって事はそいつの人生を背負うって事だ、罪の意識や恨まれる苦しみ……それを味わってしまう……俺はそれを子供に味わわせたくはないんだ」
『…………』
2人が落ち込む
「だから子供を兵にはしない……だからそうだな……君達は何歳だ?」
『12歳です!』
「それなら15歳になるまで召し使いとして働いてもらう……時間をみつけて兵の訓練に混ぜてもらうといい……そして君達が15歳になって、まだ兵になりたいって言うのなら……俺は歓迎しよう」
「本当ですか!?」
ルミルが俺をキラキラした目で見る
「あぁ、成人したのなら反対する理由はない……勿論召し使いとしてそのまま勤めてもいいし、どこか他の所に勤めるのも君達の自由だからな?」
選択肢は多くしてあげないとね
「あ、ありがとうございましゅ!!……痛い」
レムレ……よく噛むね?
こうしてルミルとレムレは召し使いとして働きやがら兵の訓練を受けるようになった
あとから聞いたがレムレは男の子なのに男用の服のサイズがないからメイド服を着ていたそうだ
……男だって気付かなかった