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第176話 動き出す

「…………」

「…………」

「…………」


 ち、沈黙が……


 今、俺達は応接室に居る


 オーシャン勢は

 俺、レリス


 ヤークレン勢は

 メルセデス、ケセルド、ガリウス



「……ほぅ、いい葉を使ってるな」


 メルセデスが紅茶を飲んでから呟く


「えぇ、自慢の逸品です……メイドの腕もいいですからね」


 俺は紅茶を配るヤンユをチラリと見る

 ヤンユは紅茶を配り終わり、茶菓子をメルセデス達の前に用意した


「クッキーか……食うのは久し振りだな」

「おや? 普段は食べないので?」

「普段はチーズばかりだ」


 そ、そうっすか……


「…………」


 ど、どうする?

 本題をふるか?

『何のようですか?』って聞いてみるか?


「オルベリンが逝ったそうだな」


 メルセデスはクッキーを一口噛りながら言う


「……えぇ」

「アイツには、昔煮え湯を飲まされたからな、仕返ししてやろうと思っていたんだがなぁ」


 オルベリンは色んな人間に煮え湯を飲ませてるな……


「アイツの力を利用できると思っていたのだがな」

「……オルベリンがいなくなったオーシャンには力が無いとでも?」


 俺はメルセデスを睨む

 ケセルドとガリウスが殺気を飛ばしてくるが無視する


 てか、オルベリンの話題をあまり出さないでほしい……やっと立ち直れてきたのに……また凹みそうだ


「そうだな、俺の目の前にお前が立った時は……オルベリンくらいしか利用価値は正直なかったな……だが、今はオーシャンにも価値はあるから、同盟の方は解消しないから安心しろ」


 そう言ってメルセデスは紅茶のおかわりを要求する


「…………」


 同盟の解消の線は消えたか

 ヤークレンと敵対するのはまだ厳しいから一安心だな


「それでは、今日はオルベリンの件で訪ねられたのですか?」


 レリスが口を開く

 俺が聞きにくいのを察してくれたか


「んっ? ああ~お前は?」

「軍師をしているレリスと申します」


 さっき会ったときも自己紹介してたのにな……

 メルセデス……聞いていなかったのか?


「それもあるが、本題は別だ」


 だよな……やっぱり何かあるよな……


「その本題とは?」


 今度は俺が聞く


「…………」


 メルセデスは紅茶をおかわりを飲み干す

 そして……


「西方を攻めろ」


 一言


「……はい?」


 俺は聞き間違いかと思った


「聞こえなかったか? 西方を攻めろと言ったのだが?」

「……な、何故ですか?」

「お前、バルドナ様の頼みを断ったろ?」


 ガリウスが口を開いた


「援軍の要請でしょう? 彼個人の戦にオーシャンの兵を使うわけにはいかないので」

「それはペタンから聞いた、だからバルドナ様は大将に泣きついた訳だ」

「……まさか、その為にメルセデス殿が動いたと?」


 俺はメルセデスを見る

 予想外だった……メルセデスの性格だと、実子とはいえ『自力で何とかしろ!』って言うかと思ってた


「我輩もいつもなら無視するのだがな……お前を試すには丁度良いと思ってな」

「……試す?」

「さっきも言ったよな? オーシャンには利用価値がまだあると」

「ええ……」

「それを皆に証明して貰おうと思ってな」

「……証明ですか?」

「ヤークレン内では同盟を解消しろという意見が多く出ていてな、その声を黙らせる為だ」


 …………嘘だな

 メルセデスは、俺にチャンスを与えるみたいな事を言っているが……

 本当は何か企みがあるように感じる……

 なんだ? 何を企んでいる?


「つ、つまり……メルセデス殿はオーシャンを想っての事だと?」

「そういう事だな」


 ニヤリと笑うメルセデス……そして紅茶をおかわりする

 ……それ何杯目だ?


「…………」


 ハッキリ言って信用できない

 拒否したい

 オーシャンが西方と戦う理由なんて今は無いんだから……

 そりゃ、天下統一の為にはいつかは戦うつもりだ

 でも、今じゃない……


「少し考えさせてください……」

「ああ、構わんぞ」



 さて……どうするのが最善だ?

 どうしたら最悪を回避できる?

 俺の返事で……これからのオーシャンの命運が決まってしまう……


 援軍を拒否して、メルセデスの機嫌を損ねる……

 そうすると近々……もしかしたらこの場で同盟が解消されるかもしれない

 そうしたらヤークレンと敵対する事になる……

 今のオーシャンではヤークレンには勝てない……飲み込まれるだけだ……


 かといって援軍の要請を受けて西方を攻めるのもな……

 西方同盟は強力だ……今のオーシャンで挑むのはな……

 ヤークレンも同時に攻めるみたいだが……場所がな……

 バルドナの居る場所とオーシャンの場所からだと合流も厳しいんだよな……

 つまり共闘は厳しい……オーシャンだけで戦わないといけないかもしれない

 受ける被害は軽くないだろうな……


 くそ……メルセデスが直接来たから、時間を稼ぐのも難しいぞ……

 どうする? どうするべきだ!?



 ・・・・・・・・・・・


 ーーーレルガ視点ーーー



「……はぁ」


 俺はため息を吐く

 そして外壁を見上げる


「厄介なことになったな……」


 そう呟いていたら……


「レルガさん! 来ました!」

「おっさん、どうしたんだ?」


 レムレとユリウスがやって来た

 兵を使って呼んでおいたんだ


「来たか……お前達に見せたいものがあってな、ついてこい」


 俺は外壁の階段を登り、外壁の上に向かう

 レムレとユリウスも俺に続く


「見せたいもの?」


 ユリウスが呟く


「今、メルセデス・ヤークレンが来てるのは知ってるな?」

「はい、シャルスに聞きました」


 レムレが答える


「お前達はヤークレンがどんな所か知ってるか?」

「大陸の半分を手にいれてるんだろ?」


 ユリウスが答える


「そして、オーシャンとは同盟を結んでるんですよね?」


 レムレが答える


「そうだ、だが……それくらいしか知らないだろ? お前達は」

『…………』


 2人は黙る


「いいか? ヤークレンは信用できない、かといって敵に回す事も避けないといけない……脅威なんだよ……この大陸の」


 階段を登り終わる……

 そして目の前の光景を見る


『っ!?』


 レムレとユリウスも上がってきた

 そして、目を見開いた……


「わかるか? ()()()()()()()()()


 目の前の……都の外の光景……

 そこにはヤークレンの大軍が野営をしていた


「なっ!? なっ!?」


 ユリウスが前に出て見回す


「ここだけじゃない、他の方角も同じ様子だ……オーシャンは包囲されてる」


「か、数はわかるんですか?」


 レムレが震える声で言う


「正確な数はわからん……だが……最低でも30万は居るだろうって報告だな」

「30!? 嘘だろ!?」


 30万……オーシャンの全勢力と同等かそれ以上だ


「これがメルセデスの護衛としてついてきたんだ……わかるな? この兵の数はほんの一部だって事が」


『…………』


 2人は真っ青になる


「な、なんでこれを僕達に?」


 レムレが聞いてくる


「んっ? お前達にヤークレンってのを見せるため……それと、死ぬ覚悟をさせとく為だ」

「死ぬ覚悟……」


 ユリウスが呟く


「カイト様とメルセデスの話の結果によっては……これからコイツらと戦わないといけなくなる……俺はカイト様を守るために死ぬ覚悟は出来ているが、お前達はヤークレンを知らなかったからまだだったろ?」

『…………』

「だから見せとこうと思ってな」


 ヤークレンの兵力に……八将軍……勝ち目はハッキリ言って無いな


 さて……どうなることやら……


 俺はオーシャン城を見るのだった


 ・・・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー


「……わかりました、受けましょう」


 俺はそう答えた

 そう答えるしかなかった……


 どう考えてもヤークレンと敵対する方が危険だと判断した

 ガールニックには悪いが……この状況で断るのは無理だ……彼もメルセデスが動くのは予想外だと思うし……


 メルセデスがその気になれば……オーシャンを一気に侵略して、東方を手に入れてから西方を侵略するなんて事も出来るんだからな……


 従うという選択しか出来なかった……


「そうか! なら準備もあるだろうからな、半年以内に動いてもらおうか! バルドナには我輩から伝えておこう!」


 メルセデスは上機嫌だ


「わかりました……それで? メルセデス殿はこの後はどうするので? 城に泊まりますか?」

「いや、帰る! 用も済んだしな!」


 そう言って立ち上がるメルセデス

 ケセルドとガリウスも立ち上がった


「見送りはいらんぞ! じゃあな!」


 そう言って応接室から出ていった……


「…………くそっ!」


 俺は頭を抱える


「仕方ありませんよ……カイト様は正しい判断をしました」


 レリスが俺を慰める……


「それでも……悔しいな……レリス、皆に伝えてくれ、西方を攻めると……2ヶ月以内に準備を整えてから出るぞ」

「畏まりました……」


 こうして、不本意ながらも西方と戦うことが決まってしまった


 後で兵からヤークレンの軍の事を聞いた

 ……30万って……最初から脅迫する気だったって事かよ!!



 ・・・・・・・・・


「……そうでしたか」


 夜、寝室でティンクと話す


「お父様がいらっしゃったのは聞きましたが……そんな事を……」


 メルセデスが来たことは伝えていた

 でも、会わせるつもりはなかった……

 いや、ティンクが望めば会わせたが……


「また、忙しくなる……悪いなティンク」

「いえ、カイトさんは悪くありません…………わたしこそ、迷惑をかけてしまって……」

「? なんでティンクが?」

「元々、同盟もカイトさんがわたしを助けてくれる為に結んだものですから……わたしがむぐっ!」


 俺はティンクの口を塞ぐ


「それ以上は言わせないぞ? いいか? ティンクの事が無くても結局はこうなっていた、メルセデスは利用できる物は利用するからな……同盟なんて関係ないんだよ」


 俺は手を離し、ティンクの両肩を掴む


「ティンクは何も悪くない! むしろ俺にとっては助けになってるんだ!」


 実際……オルベリンが死んで凹んでた俺をずっと慰めてくれた

 ティンクが居たから立ち直れた様なものだ


「だから自分が悪いとかそんな事は絶対に思うな! いいな!」

「は、はい!」

「よし!」


 俺はティンクを抱き締めて頭を撫でる


 取り敢えず……もう決まったことだ……嘆くのはここまでにしておこう

 これからはどうやって攻めるか……それを考えていかないとな……


 ……あー、頭が痛い!







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