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第172話 ミルムの悩み

 焔暦148年 2月



 バルドナ・ヤークレンが率いるヤークレン軍が西方同盟に敗北した


 その話は大陸中に広まっていた


 そんな頃である



「うぅ~……」


 ミルムはテーブルに突っ伏していた

 場所が自室とかだったら何の問題も無いのだが……


「ふむ……先程から何を悩まれてるのです?」


 場所がオルベリンの屋敷なのだから問題なのである


 目の前で悩んでいますってポーズをされたら……反応せざるをえないオルベリンである


「じいじ……私ね、今年で成人なんだ……」

「そうですな、あの幼かったミルム様が成人……ワシも老ける訳だ!」


 はっはっは! っと笑うオルベリン


「それで? 成人されることに何の悩みが? 大人になりたくないって話では無いのでしょう?」


 ふざけるのを止めて、真剣に向き合うオルベリン


「うん、あのね、私は何をしたらいいのかなって……」

「うむ?」

「カイトお兄様は領主として働いてるでしょ?」

「そうですな」

「アルスお兄様は将として働いてるでしょ?」

「今では立派な将ですな」

「……私は何が出来るんだろうなぁ……って思って」

「……ふむ」


 オルベリンはミルムの悩みを理解した

 仕事は何をしたらいいのか

 自分の役割は何なのか?

 それがわからないからミルムは悩んでいるのだ


「本当ならね、何処かの貴族とか将とかのお嫁さんになって、家の繋がりを作ったりするでしょ?」

「ええ、そうです」


 基本、貴族の女性は政略結婚等で利用されるのが殆んどだ

 それが嫌な人間は他の役割を見つけ、当主に自分が結婚よりも役に立つと証明して結婚を回避している


「でも、お兄様はそんなのは求めてないって……私は好きな人と結婚すればいいって……」

「坊っちゃんはミルム様の幸せを願っているのでしょう……」

「それは嬉しいんだけど……じゃあ、私はどうしたらいいの? ってなって……」

「ふむ……ミルム様は勉学の成績は良かったと聞きましたが?」

「うん、もう教えることは無いって言われたよ」

「それならばレリスに言えば何か仕事を任せてもらえるのでは? 文官等は人手不足だと聞いてますが?」

「もう拒否されたよ……」

「……なんと」


 役に立たなかったのか?

 オルベリンはそう思った


「何でも私が居ると皆集中しないんだって……」

「ああ……そういう……」


 内政をしている文官も男性が多い

 そんな所に美しく成長したミルムが来る

 文官達が余計なことを考えたりして集中出来なくなるのは簡単に想像できた


「そうなったら……難しいですな」


 オルベリンは他の案を考える

 兵に志願する……っていうのは無理だと判断した

 ミルムも剣を教わってはいる……しかし、それは護身の為であり、戦などで戦うためではない

 何より、危険だ、カイトが許すわけがない


 カイト本人は否定しているが、ミルムにはかなり甘いのだ

 少しでも危険な事には絶対に関わらせない

 過保護なのである


「う~む……今まで通りに過ごすのは?」

「大人になっても遊んで暮らすの? それは……何か嫌だな……」


 ミルムは今は街に出掛けたり、ファルと一緒に走り回ったりと遊ぶことは多い

 しかし、それはまだ子供だから出来るのだ

 成人したら流石に自重する……それはミルムの考えだった


「ふむ……ならワシは何も言えませんな……ワシに出来ることは、一緒に坊っちゃんに頼みに行くことくらいですかな」


 そう言ってオルベリンは椅子から立ち上がる


「いいの?」

「ええ、それくらいしか出来ませんからな」

「ううん! 充分だよ! ありがとうじいじ!」


 ミルムはオルベリンに抱きつく


「はっはっは! では行きましょう」


 オルベリンとミルムはカイトの元に向かうのだった


「……どうなるんだろ」


 それをファルは黙って見てたのだった


 ・・・・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー


「そんな訳でお兄様! 私も何かしたい!!」

「いきなりだな!?」


 レリスと予定の確認をしていたらミルムがオルベリンと一緒に玉座の前まで来た

 てかオルベリン……あんまり無茶するなよ?


「えっと? つまりミルムは何か仕事をしたいと?」

「うん!!」


 俺はレリスとオルベリンを見てから頭を抱える

 んないきなり言われてもな……以前レリスが内政の仕事をやらせてみたら、ミルムはしっかりと出来ていたのだが……他の文官達がへまをしまくるようになったらしいし


 変なこと言ってないで出ていけ!!

 何て言おうにもオルベリンが一緒に来てるしな……

 多分俺への説得とかしに来たんだろうな……

 そんなオルベリンの顔も立ててやらないと……

 あーー!! くそ! 取り敢えず落ち着け俺!!


「……すぅ……ふぅ」


 深呼吸……深呼吸


「ミルム」

「はい!」

「仕事なら何でも良いのか?」

「うん! 私が役に立てるなら何でもやるよ!!」


 気楽に何でもやるとか言わない!!


「少し待ってろ……レリス」

「はっ!」


 レリスが俺の側に来る


「何かミルムに任せる仕事ってあるか?」

「いえ、正直邪魔です……」


 はっきり言うなぁ……


「こう……なんか……ない? 邪魔にならないで役に立てる……こう……」

「浮かびませんね……もう有力な貴族に嫁がせた方が良いのでは?」

「それは嫌だ」

「しかし……」


 その時、俺はレリスの持ってる紙に目が行く


「……これだ!!」

「っと!」


 俺は紙を引き抜く

 その紙は提案書だ……オーシャンの都の側に村を増やすというな


「レリス、この計画はまだ始まってなかったよな?」

「え、ええ……まだ提案されただけなので」

「これならいざという時は俺達で支援できるよな?」

「ええ、馬で10分くらいの場所ですから……」

「ならさ、これをミルムに任せてみないか? 失敗しても経験が積めるし……上手く行ったら万々歳だろ?」

「……まあ、そうですね」

「よし! 決定!!」


 俺はミルムを見る


「ミルム!」

「はい!」

「お前に村作りを命じる! この紙に書いてある場所に村を作るんだ!」

「村作り……」

「難しい仕事だってのは……わかるよな?」

「うん!」

「出来るか?」

「やったみたい!!」


 やる気に溢れてるミルム


「よし、なら任せた! 何かあったら俺かレリスに聞けよ?」

「はい!!」



 こうして、ミルムは村作りを始めたのだった


 ところで、オルベリンは何しに来たんだ?

 ※カイトの説得













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