第16話 ヘイナスにて
レリス視点です
「もっと速く走って~!」
「了解っすぅぅぅ!!」
ミルム様を肩車してサルリラが城内を走る
「……何をやっているんだ」
全く!気楽なものだな!こっちはカイト様達がどうなったか心配してるというのに!
「はい、内政はこんな感じで」
「了解しました」
兵に指示を書いた紙を渡す
「周りの様子は?」
「サイナスもガガルガもパストーレも動きはありません!」
「よし、警戒を続けてください」
今、このヘイナスには千人の兵とサルリラしか戦えるのがいないんだ
速やかに動かないとやられてしまう
「今度はあっちー!!」
「うぉぉぉぉぉっす!!」
「……………」
はぁ……
「レリス様!!」
「どうしました?」
兵が駆けつける
「ヘルド様が兵を連れて戻られました!!」
「本当か!?」
「旦那がっすか!?」
「うひゃう!?」
ヘルド帰還の報告
聞こえたのかサルリラも側に急停止
ミルム様が前のめりに落ちそうになってサルリラにしがみついた
「ヘルド殿は?」
「今、城に向かっています」
よし、迎えよう!
城門に急ぐ
・・・・・・・
城の門が開く
「ヘルド殿!」
「おお、レリスか!」
駆け寄るとヘルド殿は馬から降りる
「状況はどうなりました!?カイト様は!?」
「落ち着け!」
ヘルド殿に肩を掴まれる
「…………」
ヘルド殿が周りを見渡す
「レリス!ヘルド!」
アルス様が駆け寄る
「ヘルドの旦那!」
「あ、ヘルドだ!」
サルリラとミルム様もやってきた
「よし、揃ったな……」
ヘルド殿が呟いて大きく息を吸う
「此度の戦!我々の勝利だ!!」
『うぉぉぉぉ!!』
ヘルド殿の叫び
兵達の歓声
そうか……勝ったのか……良かった
身体から力が抜けて座り込む
「良かった……あぁ、良かった!!」
ヘルド殿を見上げる
「ところでカイト様は?」
「マールの都にて新たな領地を整えている、落ち着いたら帰られるそうだ」
「そうですか……よっと」
立ち上がる
「レリス!兄さんは勝ったの?」
「そうですよアルス様、カイト様はマールマールを倒したのですよ」
「やっっった!!」
喜ぶアルス様
「お兄様はまだ帰ってこないの?」
ミルム様がサルリラから降りて私の足下に駆け寄る
「ええ、もうしばらく彼方で領地を整えるそうですよ、終わったら帰ってきますよ」
「寂しいな……サルちゃん遊ぼ!!」
「了解っす!では旦那!お疲れ様っす!!」
ミルム様がサルリラに肩車される
サルリラはヘルド殿と話をしていたが、それを中断して走っていった
「……ヘルド殿、詳しい説明をしてもらっても?」
「ああ、構わん」
・・・・・・・
玉座の間
玉座には誰も座ってないが、そこで話を聞く
「成る程、だからレルガ殿が……」
「……」
レルガ殿は気まずそうだ
「そしてケーニッヒ殿ですか、初めまして」
「こちらこそ」
ケーニッヒ殿と握手する
「さて、お二人にも早速働いてもらいましょう……レルガ殿、貴方には内政を手伝ってもらいますよ」
「わかった」
「ヘルド殿とケーニッヒ殿は兵の訓練をお願いします……一気に増えましたからね」
4千人の兵……これなら防衛はなんとかなる
・・・・・・・・
翌日
「レリス様!」
「どうしました?」
執務室で資料を読んでいたら兵が入ってきた
「マイル村から民が訪ねて参りました!カイト様に礼を伝えたいと!」
「マイル村?……ああ、カイナスから貰った土地の村でしたね」
カイト様の指示で兵と医者と食料を送ったんだったな
「ふむ、礼を言いに来た民を無下にするわけにはいかないな……カイト様はいらっしゃらないが、私が会いましょう」
私は大広間に向かう
民とはいえカイト様が不在の玉座の間に連れていくわけにはいきませんからね
「おお、貴方様がカイト様ですか?」
そこには老人が1人と、子供が2人いた
「いいえ、私は軍師のレリスと申します、カイト様は現在マールマールの方に滞在されています」
「おお、此度の戦で勝利されたそうですね、おめでとうございます」
老人が頭を下げる
「ええ、えっと、貴方は?」
「あ、失礼しました、私はマイル村の村長をしている『ペイス』と申します」
ペイスが挨拶をする
続けて左の子供が挨拶をする
「マイル村の『ルミル』ともうします!」
そして右の子供
「マ、マイル村の『レムレ』ともうしましゅ!?」
………噛んだね
「そうですか、それで用件は?」
「此度のマイル村への支援……ありがとうございました、お蔭で皆助かりました」
「そうですか、助かったのなら良かったです」
カイト様が聞いたら喜ぶでしょう
「今回はそのお礼を言わせていただきたかったのです」
「そうでしたか、カイト様も喜ばれますよ」
「あ、あの!」
「はい?」
えっとルミルでしたかね?
「わ、私達を軍に入れてください!!」
「お、お願いします!!」
「お前達!諦めたのではないのか!?」
「……んん?」
子供達2人が入隊を希望する?
「何故です?」
「私達もカイト様の役に立ちたいのです!」
「つ、強くなって活躍してみせましゅ!」
取り敢えずレムレは噛むのをどうにかしません?
「お前達、それはダメだと皆が言っただろ!」
ペイスは反対していた
皆っというとマイル村の村人達も反対しているんでしょうね
「ふーむ……」
ルミルとレムレ……2人の目は本気みたいですが……何か引っ掛かりますね
「君達は何歳ですか?」
『12歳です!!』
「随分と若いですね……ご両親は?」
「えっと……」
黙るレムレ
「お父さんはケーミストに処刑されました!お母さんは病気で動けません!」
ルミルが答える
「処刑?」
「……実は」
ペイスが事情を話す
2人の父親はカイナスの兵だったのだが、ケーミストの機嫌を損ねてしまい、処刑されて晒し首にされたそうだ
母親はそれから病気がちになってしまい、壊れた身体を無理矢理動かしながら働いて2人を育てていたそうだ
「…………要するに君達はお母さんの為に働こうとしてるんだね?」
『うっ……』
カイト様の為に戦うって言うのは建前でしたか
「君達の心掛けは立派だと思います、しかし私の判断で決めるわけにはいきませんね」
12歳の子供を兵として勝手に雇うわけにはいきません
「そ、そんな……」
「うぅ……」
落ち込むルミルと泣き出すレムレ
……流石に不憫ですかね
「ではこうしましょう、君達には召し使いとして働いてもらいます、カイト様が戻られたら正式に雇うか決めましょう」
『は、はい!』
「よろしいのですか?」
「ええ、取り敢えずカイト様が戻られるまでですよ」
早く帰って来て欲しいですね