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第160話 ティールの見合い 1

 焔暦147年 10月



「全隊! 構え!!」


 オーシャンの都を少し離れた平原では訓練が行われていた


 訓練を指揮しているのは



「そこの! 槍の角度が高い! 相手を牽制するなら目の前に刺し出せ!!」


 槍兵をレルガが


「よし、山を往復してくるぞ! 走れ!!」


 騎馬兵をユリウスが


「距離が離れてるなら角度を利用するんです、そうしたら……よっ! 当たりますから」


 弓兵をレムレが鍛えていた


 この基本訓練は毎日行われている

 いつ、戦いが始まるかわからない……少しでも兵を戦える様にしないといけない


「ユリウス! そっちはどう?」

「やっと慣れてきたって感じだな」


 山を往復してきたユリウスにレムレが聞く


「なら、そろそろ交代かな?」

「そうだな、それにしても……カイト様も結構無茶なことを言うよな……騎馬弓兵を仕上げろなんてさ」

「時間があるんだから無茶でもないよ」


 彼等は騎馬弓兵を用意するために訓練をしていた

 文字通り騎馬に乗る弓兵……言うだけなら簡単だが、乗馬をしながら弓を扱うのだ

 部隊として利用するならそれ相応の訓練が必要なのである


 この訓練の目的はこうだ


 槍兵としての訓練を行うことで、最低限の筋力を手にいれる

 弓兵としての訓練で矢の命中率を上げる

 騎馬兵としての訓練で乗馬に慣れる


 この全てを余裕でこなせる様になるまで続ける

 そうしたら、次はいよいよ騎馬弓兵としての訓練である

 乗馬をしながら弓を使い、平原に立てられた人形に矢を放つ


 そうして、騎馬弓兵を完成させようとしていた



「騎馬弓兵って……そんな必要なのか?」


 ユリウスが疑問を呟く


「必要だな、もし実現出来たら……一方的に敵軍に矢を放てるからな」


 レルガが答えた


 騎馬弓兵の利点は素早く移動しながら敵を射ぬける事だ

 騎馬兵にも追い付かれずに一方的に有利な距離で戦えるのだ


「これからの戦いは更に厳しくなるだろうしな……戦力や切り札は増やした方がいい」

「兵器にも限界があるしな」


 ユリウスは空を見上げる


「さて、そろそろ装備の交換は終わったか……」

「じゃあまた行ってくるか!」

「気を付けてね」


 夕方になるまで訓練は続いた……



 ・・・・・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー


「それでは失礼します」

「ああ、気をつけて、誰か! 家まで送ってやれ!」


 俺は玉座に座りながら、目の前の老人を見送る


 彼は城下街に住む民である

 俺はたまにこうして民の声を聞いている

 何か不満はないか?

 困ってることはないか?

 やってほしいことはないか?


 それで出た意見を参考に政策を提案したり街の状態を改善させたりしている

 民忠を下げないようにするためだ

 民を怒らせたら怖いからな



「ふぅ……レリス、あと何人だ?」

「予定では彼で最後です」

「そうか……あー疲れた……」


 何十人の相談を受けたんだろうか……

 内容はレリスや書記官が記録してるから後でまた確認しておこう……


「……もう夕方か」


 俺は窓を見る、外は夕焼けで真っ赤に染まっていた


「そろそろ休まれてはどうです?」

「そうだな……レリスも休んだらどうだ?」


 記録を残す作業とかで俺より疲れてるだろうに……


「そうですね、これの内容を確認してから休ませてもらいます」


 レリスは紙の束を見ながら言った

 ……それ終わるのか?


 そう話していたら


「邪魔するよ!!」

「うぉ!?」


 なんか元気なおばさんが玉座の間に入ってきた

 だ、誰だ?


「あんたがカイト様だね!! いつも娘がおせわになってます!」

「……は、はぁ」


 おばさんが俺の前まで来て頭を下げる

 娘? 誰の事?

 あ、レリスが少しイラついてる……


「貴様は何者だ? いきなり無礼だと思わないのか?」


 レリスが咎めるように言う


「なんだい? 随分と痩せてるね……ちゃんと食べてるのかい?」

「…………」


 ヤバイ……レリスの額に青筋が見える


「母さん!!」


 そこにティールが駆け込んできた

 た、助かった……んっ? 母さん?


「ああティール! 今カイト様に挨拶をしてて……」

「勝手な事はしないでくれと頼んだよね!?」


 ティールはおばさんを俺達から離す

 そして俺に頭を下げる


「カイト様、母が何か無礼を働いたようで……」


 ティールはレリスを見る


「…………」


 レリスは苦虫を潰したような顔をしている

 ティールが来て、ティールの身内とわかって、怒るに怒れなくなったって感じだな


「いや、気にしなくていい……それよりもティールの母親なんだな?」

「はい……今日突然やって来まして……」

「何処に住んでるんだ?」

「ガガルガ地方にある『ワユコヌ村』です」

「そうかそうか……」


 俺は玉座から立ち上がっておばさんに近寄り、お辞儀をする


「わざわざ遠くから御苦労様、大した歓迎は出来ませんが……ゆっくり寛いでください」

「あらまぁ、こんなおばさんにもここまで礼を尽くしてくれるなんてねぇ! なかなか良い男じゃないかぁ!」

「母さん!!」


 本当に元気なおばさんだ……


「それで? 貴女は何故ここに?」

「何も連絡を寄越さない娘の顔を見に来たのさ!」

「成る程……」

「…………」


 ティールは顔を押さえている

 職場に突然親がやって来たら気まずいだろうな……


「母さん、いい加減帰るよ! これ以上私に恥をかかせないで!!」


 そういってティールはおばさんの手を引いて去っていった


「……少し意外だったな、あんな元気な親だったとは」

「本当ですね……」


 俺とレリスは目を合わせて苦笑した


 ・・・・・・・


 ティールの家


 ーーーティール視点ーーー


 あー!! もう最悪だ!

 明日からどんな顔してカイト様達に会えばいいんだ!


「ティール、何落ちこんでんだい!」

「母さんのせいだからね!?」


 この人は本当に……自重しない人だ!


「はぁ……」


 私はため息を吐いてから椅子に座る


「それで? 何のようでここまで来たの?」

「あんたの顔を見に来たって言っただろ?」

「それなら……その荷物は何? 顔を見に来たにしては多くない?」


 私は母さんの持っていた荷物を指差す


「これかい? これはね……あんたのお見合い相手の絵さ」

「ごふっ!?」


 私は噎せる


「お、お見合い!? なにそれ!?」


 私は呼吸を整えて叫ぶ


「あんたももう26……もう少しで27だよ? いい加減結婚したらどうだい?」


 そう言って母さんは絵を私の前に並べる


「前も言ったでしょう! 私は今の生活が気に入ってるの! 結婚する気はない!」

「何言ってんだい! 村のあんたの友達も皆結婚してるんだよ! そろそろ結婚したらどうだい!」

「周りは周りでしょう! とにかく! 私はお見合いなんてしません!!」


 私はそう言って母さんを睨む


「そんな事言わずに! ほら、この人なんてどうだい?」


 しつこい!!


「母さん、冷静に考えてよ、私はオーシャンの将だよ? 腕っぷしが強い女と誰が結婚したがるの?」


 私は母さんが諦めるように言ってみる


「そんな女と結婚したがるのならいるよ」

「はっ?」


 母さんはそう言って1枚の絵を私に見せる


「その人はあんたとの結婚を望んでる人だよ!」

「……はっ? …………はぁぁぁぁぁぁぁ!?」




どうしよう……面倒な事になってきた









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