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第159話 幽霊騒動

 焔暦147年 8月



 オーシャン城

 いつもは訪問する客人や、忙しなく働く使用人や兵達で騒がしいこの城も

 夜になると静かになる


 活動してるのは夜の時間に急な呼び出しなどに対応するメイド

 それと城の中を警備する夜警の兵


 これくらいである


 さて、その夜のオーシャン城の廊下……


「ど、どうですか?」

「ええ、とても美味しいです」


 そこには新人のメイドの淹れた紅茶を飲んでいる兵がいた

 何度か会う度に話す仲になり、今ではこうして紅茶を差し入れして貰えるくらいまで仲良くなった


 正直この2人はお互いに惚れてるのだが……

 うん、その話は今回は関係ないので終わりにしよう


 重要なのは、彼等が夜に廊下に居ることだ


「あ、あの……今日はクッキーも焼いたのですけど……」

「おお、ありがとうございます」


 甘い空気を作ってる2人


「とても美味しいです」

「よ、良かった!」

「……んっ?」


 クッキーを食べていた兵が、ふと、廊下の奥に何かの気配を感じた


「どうしました?」

「いえ……あれはなんでしょう?」

「あれ?」


 メイドも廊下の奥を見る


『…………』


 2人の視線の先には……


「ふふ、ふふふふふ♪」


 青白い女性が浮いていた

 笑いながら浮いていた

 それがドンドン近付いてくる


「き、きゃぁぁぁぁぁぁ!?」


 メイドが悲鳴をあげる


「で、出たぁ!?」


 兵が驚きながら剣を抜き、メイドの前に立つ


「ここは自分が! 君は応援を呼んでくれ!!」

「は、はい!!」


 メイドが近くの部屋に向かう

 そこには見回りの順番を待っている兵達が居るのだ


 メイドは部屋に駆け込む


「どうした!?」


 兵の1人が驚く


「ゆ、幽霊が!! 女性の幽霊が出ました!!」

「幽霊?」

「はっ?」


 兵達は何を言ってるんだ? って顔をする

 しかし、メイドが必死なのを察して直ぐに部屋を出る

 そして伝えられた廊下に向かう


「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 途中で兵の叫び声が聞こえた


「おい! 大丈夫か!? もうすぐ着く! 持ちこたえろ!!」


 応援の兵が叫ぶ

 そして廊下に到着した


「…………」

「が……ぅ……」


 そこには倒れてる兵しか居なかった


「おい、大丈夫か? 何があった!?」


 応援の兵が倒れてる兵に呼び掛ける


「……と……ま……」


 何かを伝えようとして……


 ドサッ!


 気絶した


「おい! おい!!」

「怪しいやつを探せ!! 近くにいる筈だ!!」


 兵達は周りを調べる

 空き部屋の中や置物の壺の中も調べた

 しかし、何も見つからなかったのだった



 ・・・・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー


「はっ? 幽霊?」


 俺は玉座に座っていると、レリスから幽霊の報告を聞かされた


「どうもここ数日程、夜中に幽霊が出てくると……夜警の兵達やメイド達が怯えているのです」

「おいおい……この城に住んで結構経つんだぞ? 今更そんな話が出てきてもな……てか見間違いの可能性は無いのか?」

「私もそう思うのですが……流石にこう目撃者が多いと……知らせないわけにはいかないので」

「そんなに目撃者が居るのか?」

「ええ、始めは1人の兵と1人のメイドが同時に……その次は見回りをしていた複数の兵が……昨日は夜に庭の手入れをしていた庭師が……」

「…………色んな奴が見てるわけか」


 でもなぁ……幽霊って言われてもな……



「墓場を潰して城を作ったわけじゃないんだし……出てくるような理由がこの城にあるか?」


 出るとしたら墓場とかだろ?

 もしくは事故物件

 ……んっ? 事故物件?


「まあ、死人は割りと出してますよね……」


 レリスは足下を見る……正しくは地下かな

 罪人の処刑とか地下でやってたりするからな……

 あと内乱の時に結構死人出たし……

 あれ? そう考えたら幽霊も見間違いとか言えない感じか?


「それで? その幽霊の特徴は?」

「ええっと……青白い肌の女性だと」

「服装とかは?」

「……そういえば顔の証言しか出てませんね」

「なに? 幽霊は全裸なのか?」


 それ露出狂じゃないのか?

 暗いから青白く見えてるとか


「どうします? 何か対策しますか?」


 レリスが聞いてくる


「対策ね……」


 ……どうしろと?


 ・・・・・・・・・


「てな訳だ」

「ゆ、幽霊ですか!?」


 取り敢えず保留って事にして俺は中庭でティンクとお茶を飲みながら話をした


「そんなの居るわけないのにな」

「そ、そうですねねね!」


 ティンクは震えながらお茶を飲む

 ………………


「わっ!!」

「ひゃぁぁぁぁぁぁ!?」


 大声を出すとティンクは飛び上がった


「カ、カ、カイトさぁん!!」

「悪い悪い」


 涙目になりながら俺を揺らすティンク

 そんなティンクを撫でながら謝る


(ティンクが怖がってるし……なんとかするか)


 俺はそう考えた


 ・・・・・・・・


 そして夜


「そんな訳で幽霊の正体を掴もうと思う」

「……はぁ」

「あほくさ」


 俺は目の前に立つ2人の将を見る


 ゲルドとマーレスだ


 ゲルドはちょうど夜警の責任者として城に泊まり込んでいた

 マーレスは城にある部屋に住んでるからな、巻き込んだ


 因みにティンクはテリアンヌとミルムとファルの4人で今日は眠ることにした

 怖がるティンクを部屋に1人にする訳にはいかないからな


「しかし、幽霊ですか……小生はそういった者を相手したことはありませんが……槍で貫けますかね?」

「幽霊なんて居るわけないだろ? どうせメイドか何かを見間違えんだろ」


 槍を撫でるゲルド、呆れてるマーレス


「よし、取り敢えず目撃されてる廊下に行こう」


 幽霊が出る場所は決まっているらしい

 現在は空き部屋が多い6階の廊下だ


「それで……その幽霊の特徴はどのような?」


 ゲルドが聞いてくる


「えっと……青白い肌の女性……としか聞かされてないんだよな……」


 その幽霊と直接接触したのは最初の目撃者の兵だけらしい

 その兵はいまだにうなされてるらしく……話が聞けないそうだ


「青白い肌の……女性ね」


 マーレスが呟く


「マーレス? どうした?」

「いや、なんでも」


 ゲルドが聞くがマーレスははぐらかした


 そうしていたら例の廊下に着いた


「さてさて……幽霊はっと……」


 俺は廊下を見回す……とくに変わったところはないな


「ふむ、特に変わった気配は感じませんが……」


 ゲルドも周囲を警戒する


「窓も閉まってますし……」


 窓を1つ1つ確認する


「空き部屋には誰もいませんね」


 空き部屋も確認する


「じゃあ、何処かに隠れてるって事はないんだな?」

「鍵がかかっている部屋以外には……ですね」


 鍵がかかっているのは使われてる部屋だ

 夜だし、鍵を閉めて寝てるんだろうな


「ふーむ……あれ?」


 なんか違和感が……


「あ、マーレスは?」

「むっ? おやっ? いつの間に?」


 いつの間にかマーレスの姿が消えていた

 ……部屋に帰ったのか?


「くそ、後でとっちめてやる!」

「カイト様では返り討ちにあうのでは?」

「じゃあゲルドも手伝ってくれよ?」

「わかりました」


 そんな風にふざけてみる


「……ふ」


「……今」

「声がしましたね」


 何処から?

 周りを見る


「ふふふ」


 ハッキリと聞こえた

 声が近付いてきている


「ふふふ、ふふふふふ」


「…………」

「…………」


 俺とゲルドは声のした方を見る

 そこには青白い女性が立っていた……


「うぉ!?」

「あれが幽霊……成る程」


 驚く俺と観察するゲルド


「お前随分と冷静だな!?」


 俺はパニックになりながらもゲルドに聞く


「幽霊に足があるのが見えますからね……」


 そう言ってゲルドは槍を構えた


「ふふふふふ」


 笑いながら幽霊が近付いてくる

 その時、タイミングが良いのか悪いのか……いや、悪いな!

 月を雲が覆ったのか一気に廊下が暗くなった


「っ!」

「うお!」


 幽霊の姿を見失う

 しかし近付いてくる音は聞こえる

 いや怖い怖い!?


「カイト様、後ろに向かって走ってください!」


 ゲルドの声


「わかった!」


 俺は振り返って走る

 くそ、今度から廊下にも明かりを点けさせよう!!


「むっ! はっ!」


 後ろから戦闘音が聞こえてきた

 ゲルドが幽霊と戦ってる!


「おっ!」


 雲が退いたのか月明かりが入ってきて、廊下が明るくなった

 俺は振り返ってゲルドの様子を確認する


「ぐっ……がふっ!」

「……マジかよ!?」


 そこには膝をついているゲルドがいた

 ま、負けたのか!?


「ふふふ」


 幽霊がこっちに向かって歩き出した

 いやぁぁぁぁ!! 来ないでぇぇぇ!!



「全く……世話がやける」


 後ろから声がして俺の隣を通り過ぎた

 マーレスだ


「マーレス! どこ行ってたんだ!?」

「木刀を取りにな」

「気を付けろ! あの幽霊強いぞ!」

「幽霊なんていねえよ!」


 そう言ってマーレスは構える

 幽霊はいない? いや、目の前にいるじゃん!?


 ドン!


 そんな音がするとマーレスの姿が消えた


「!?」


 これが話に聞いてたやつか!


 幽霊の方を見るとマーレスが幽霊の目の前に現れて


「いい加減にしろ!! この馬鹿が!」


 バキィ!


 木刀で幽霊の頭をぶん殴った

 倒れる幽霊……お、終わったのか?


「もういいぞ!」


 マーレスはそう言ってゲルドの側に行き、手を貸して立ち上がらせる

 俺はそれを見ながら恐る恐る近付く


「幽霊を一撃で……」

「だから幽霊じゃないっての、よく見ろ」


 俺は幽霊を見る……あれ?


「……レスト?」


 幽霊だと思ったのは寝間着のレストだった……彼女も城に住んでるけど


「なんでこいつ暴れてたんだ? ……んっ?」


 俺はレストをよく見る……あれ? こいつ……寝てる?


「こいつ夢遊病なんだよ……最近は大人しいと思ったんだがな……」


 マーレスがレストを背負う


「む、夢遊病!? えっ? つまりずっと寝てたって事か!?」

「ああ、本人は全くわかってないんだよな……」

「小生も驚いたぞ……顔が見えたと思ったらレストとはな」


 驚いて隙が出来たゲルドは不意をつかれた訳か……


「ひ、人騒がせな……」



 こうして、幽霊騒動は幕を閉じた

 後日、事情を聞いたレストは申し訳なさそうにしていた

 暫く、夜はレストの部屋は外から鍵を閉める事になったのをここに報告しておこう



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