表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/290

第15話 北オーシャン領

 翌日



「カイト様……ではお先に!」

「あぁ!」



 ヘルド達を見送る


 これでヘイナスの防衛は大丈夫だろう


「さて、旧マールマール領の内政をやるか」


 俺は玉座に座る


「その前によろしいですか?」


 ルーツが俺に手を挙げる


「どうした?」


「この旧マールマール領をこれからは北オーシャン領と呼びませんか?」

「北オーシャン領ねぇ……まあヘイナスから見たら北にあるしな……」

「マールマールは滅んだのです、これからは新しい名にした方がよろしいかと」

「そうだな……よし!これからはここを北オーシャン領と呼ぼう!」


 あ、でも都の名前はマールのままで良いよな?


「じゃあそう決まった所で先ずは現在の北オーシャン領の内政はどうなってる?」


「こ、こここ、こうなっております!」


 クンツァが紙の束を持ってくる


「ふむ……」


 そこには数年の農産物の収穫量

 民からの税収

 治安関係の報告が載っていた



「……なんだこの税収は?」


 取りすぎじゃないか?これじゃ民の生活が苦しいだろ?


「ワールさ……ワールはその税を指示しておりましたので……」


「余程の贅沢をしない限りこんなに金は必要ないだろ……」


 それこそ金を湯水の様に使わない限りな!!


「今度から税収は三分の一だ、この収穫量と支出ならそれで充分やっていけるだろ」

「は、はい!ではそうします!」


 ……あとは……貧民街の治安が悪いな……

 盗みに強盗か……


「……見廻りを増やすか」

「み、見廻りをですか?」

「あぁ、三時間毎に廻ってるのを二時間毎にするんだ、それだけでも抑止力にはなる」

「は、はい」

「それと……ふむ……」

 マールマール……っといけね!北オーシャンだった!

 北オーシャン領は水源が多いな……

 …………


「なあ、公衆浴場って造れないか?」

「公衆……浴場?」


 クンツァが首を傾げる


「デカイ風呂の店だ、金を払えば誰でも入浴できるという」

「と、土地はどれほど?」

「ふむ……人口を考えたら広めな方がいいから……この城の庭くらいの広さは欲しいな……」

「み、都の外に新しくなら……か、可能です」

「ならそこに建てて貰おう、詳しい構造は後で送る」

「は、はい」

「それと……貧民街の者に希望者を集って従業員として働いて貰おう」

「ひ、貧民街の連中をですか!?」


 クンツァが驚く


「何故驚く?」

「ひ、貧民街の奴等は盗みとか!す、するんですよ!?そ、そんな奴等を雇うなんて!!」

「あのなクンツァ……彼等だって好きで盗みをしてる訳ではないだろ……いやもしかしたらそんな奴もいるだろうが……それはまあ今はいい、取り敢えず彼等が盗みをするのは金が無いからだ、更に言うなら仕事が無いからだ」


 怪我や勉強ができないって理由でどこも雇わない

 だから彼等は金がない

 だから生きるために盗む、奪う


 なら仕事を与えればいい

 そして報酬を与える

 そうすれば彼等も金が手にはいる

 そうすれば盗みをする必要も無くなる

 更に従業員用の風呂も作れば彼等も風呂に入れる……そうすれば衛生面も解消されていく


「つまり風呂は世界を救うんだよ!」

「は、はぁ……」

「更にだ!」

「ま、まだあるんですか!?」

「民以外にも傭兵や旅人が利用する、その傭兵や旅人が他の街で公衆浴場の話をする……するとどうなる?」

「きょ、興味を持った人がやってくる?」

「そうだ!つまり客が増える!交易も増える可能性があるぞ!収入も増える!!」

「…………あ、あああ!!」


 公衆浴場を建てる、これだけで……

 治安

 経済

 人口

 この3つが解消される可能性があるのだ


 ……可能性の話だがな



「どうだ?良いと思わないか?課題は多いが利益はデカイと思うぞ?」

「た、確かに……それに上手く利用すれば……しょ、職人達を集めてみます!!」


 クンツァはそう言うと走って玉座の間を出ていった


 ……恐らく彼の頭の中では様々な商売が駆け巡っている事だろう


 ・・・・・・・・



「構え!もっと腰を落とせ!!」


 内政の話を終えて俺は訓練所に顔を出す


 そこではメビルトとメット……そしてオルベリンが兵達を鍛えていた


「順調か?」


「カイト様、はい、順調です!」


 メットが答える


「騎馬の訓練か?」

「えぇ、マールマール……北オーシャンでの訓練とオーシャンの訓練を交互に(おこな)っています」

「そうか、大変だろう?」

「いいえ、新たなことを学べて……楽しんでおります」


 みたいだな……オルベリンが凄く楽しそうに走ってるぞ……

 元気だな……


「ここはお前達に任せた方が確実だな」

「光栄です」


 俺は訓練所を後にする




 ・・・・・・


「ふぅ……」


 城の屋上で一息つく


「お、あれはハルイド達か……今から出発か?」


 ハルイドには3つの砦の守護を任せた

 彼だけはマトモに砦を守っていたからな

 彼に任せて砦同士で連携をとらせた方が良いと判断した


「まあ敵が攻めてきたら援軍を速やかに送るがな」


 マールマールの敗因は連携がとれていない事だと俺は思う


 俺達が出撃したら直ぐに砦に兵を送っていたら時間を稼げただろう

 その稼いだ時間を利用してガガルガとかに援軍を要請して援軍を連れてくれば俺達は勝てなかった

 領土は少しガガルガに奪われるが……滅亡よりはマシだろう


「連携は大事だよな……」

 あと同盟も……今度ベススの二人を食事に招いてみるか……

 葉物を食わせてやりたいし……


 ・・・・・・・


 さて、今日やることはやったな……どうするか……

 あ、図書室とか資料室とかあった筈だ!そこで少しでも情報を集めるか!


 俺は廊下を歩く……


 パリン!


「んっ?」


 物が割れる音

 音がした方を見ると


「あ、あぁ……」


 メイドが真っ青になって床に散らばる破片を見ていた

 あれは壷か?


「おい大丈夫か?怪我はないか?」


 俺が駆け寄ると


「ひ!カ、カイト様!も、申し訳ありません!!」


 メイドは震えながら頭を下げる


「気にするな、そんな事より怪我はしてないか?」

「だ、大丈夫です……で、でも壷が……」


 メイドは涙を流す


 なに?この壷そんなに高いの?


「たかが壷だ、気にするな」

「しかし!」

「あのな、物なんていつか壊れるんだ、高い物も安い物もそれは変わらないんだ……この壷は割れた、それだけだ」

「で、でも……」

「もう一度言うぞ?気にするな!わかったな?」

「は、はい!!」

「取り敢えず、怪我をしないように片付けるんだぞ?破片で切ったら痛いからな」

「あ、ありがとうございます!!」


 メイドは頭を下げる

 そんなお礼を言われるような事か?



 ・・・・・・・・


 ーーー自室ーーー


 後からメビルトに聞いたのだが

 ワールは壷等を収集しており、割った者は立場に関わらずに処刑していたそうだ


 どうりで怯えるわけだ……そんな怒ることか?俺にはわからん


「ふぅ……」


 俺はベッドに横たわる


「流石に疲れたな……」


 だがやることはまだ盛りだくさんだ

 明日は都の様子を見て……明後日は領内の村を見て……


「帰るのはまだ大分先になりそうだな……やれやれ」


 まあ領土を奪ったのだ……これぐらい忙しくなるわな


「……そういえば」


 この身体で疑問に思ったことがある

 俺がこの世界に来た日でも有ったが……カイト・オーシャンの記憶があるのだ

 何て言うんだ?今の俺には高橋海人としての記憶とカイト・オーシャンとしての記憶が両方あるみたいだ


 高橋海人としての記憶はすぐに頭に浮かぶ

 カイト・オーシャンとしての記憶は数年前の記憶を思い出すようにしたら頭に浮かぶのだ


「……この記憶も活用しろって事か?」


 高橋海人としての記憶と知識

 カイト・オーシャンとしての記憶と知識

 それをフルに使えと……


「まあそうでもしないと生き残れないか……」


 これからはそこら辺も意識していこう



 コンコン


「んっ?」


 扉がノックされる


「カイト様、失礼してもよろしいでしょうか?」


 女性の声だ……多分メイドだ


「いいぞ?何があったのか?」


「失礼します」


 ガチャと扉が開く

 やはりメイド……ってうおぃ!?


「なんだその格好は!?」

「えっ?ふ、不審な所がおありでしたか!?」

「不審っていうかおかしいだろ!?」


 メイドの格好は布が極端に少ないメイド服……いや服じゃねえ!紐だ!!

 メイドキャップをつけてなかったらメイドだなんてわからない!


「な、なんの用なんだ!?」

 訳がわからない!


「え、えっと……御奉仕に……参りました」

「なにそれ?」

 はぁ?御奉仕?


「メイドの役目で主の欲を満たせと……前領主であるワール様が……」

「……あの野郎」


 つまりメイドに性処理をさせていたと……

 スケベ野郎が!!

 いや、メイドがエロいなぁとか、そういうのはいいなぁなんて俺も思ったことはあるよ?

 でもそれは創作物とかそんな感じの話でだな?

 雇ったメイドにそんな事させるのは違うだろ?


「あー……そういうのは必要ないから」

「そ、そうですか?」

「あぁ、他のメイド達にも伝えていろ、夜の御奉仕は不要だと」

「畏まりました、失礼しました」


 メイドがお辞儀をしてから部屋を出た

 …………


「……ここで理性を選ぶから俺は魔法使いなんだよなぁ……」

 30を過ぎてるから童貞は魔法使いにジョブチェンジしている……はぁ

 少し惜しかったな……いや、でもなぁ……


「よし、さっさと寝て忘れよう……」


 仕事をしてたらそんな事を考える余裕もなくなるよな?



 俺は布団に潜って眠った



 ・・・・・・・・・・



 オーシャンがマールマールを滅ぼした

 その話は1ヶ月で大陸中に広まった




 ーーーベススーーー


「へぇ、カイトの奴が?」

「……姉上」

「そうだね!私達も負けてられないよ!!」


 ーーーシルテンーーー


「オーシャン?」


 シルテンの領主、『ナッツクーペ・シルテン』が聞き返す


「はい、マールマールを滅ぼして北オーシャン領としたと」

「ふーん……」


 ナッツクーペはどうでも良さそうに珈琲に砂糖を入れる


「東方の事なんてどうでもいいさ、どうせ僕達には勝てないんだから」


 そう言いながらミルクを珈琲に入れるナッツクーペ

 彼にとっては他の国など眼中になかったのだった



 ーーーヤークレンーーー



 大陸の半分を手中に治めているヤークレン


 そのヤークレンの本拠である『グレイクの都』にてヤークレンの当主『メルセデス・ヤークレン』は兵の報告を聞いていた


「オーシャンねぇ……ベルドルトか?」

「父上、ベルドルトは1年ほど前に病死したかと」


 メルセデスに彼の息子である第1王子『カシルナ・ヤークレン』が言う


「そうか、そうだったな……」


 どうでもよさそうなメルセデス


「それで?今は誰だったか?」

「カイト・オーシャンです……16の若者です」

 兵が伝える


「カイト・オーシャンねぇ……しかしマールマールだったか?あんな弱小を滅ぼしたからなんだと言うのだ?」

「そういえば面白い話を聞きましたわよお父様」

 メルセデスの娘、第3王子の『キュルシ・ヤークレン』が話しかける


「確かパストーレの3万の軍勢を5千の兵で撃退したとか」

「ほぉ……」


 メルセデスが興味を持つ


「今回のマールマールとの戦も兵力差は2倍ほどある不利な状態だったとも」


「ふむ…………」


 メルセデスは頬をつく


 そして


「少し……見てみたいな……カイト・オーシャンか」


 そう呟いてニヤリと笑った











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ