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第155話 オーディン再び

 焔暦147年 4月


 春

 気候も安定し、作物の収穫が行われる時期だ


 勿論、オーシャンでも収穫をしていた



「去年よりも収穫は増えていますね、村を増やしたのが良かったのでしょう」


 俺はレリスからの報告を聞く


「そうか、カイナス地方の方はどうだ?」

「カイナス地方は……去年よりは増えてるようですが、凶作ですね」

「まだ暫くは食料を輸送しないと駄目か……」

「時間はかかりますね……まあ、餓死者の報告はありませんので、気落ちせずにいきましょう」

「……そうだな」


 さて、後はベススに輸出する食料の確認と……

 備蓄はどれだけ出来るかの確認だな……

 ……もう少し収穫が増えたら、西方とか他の地方に売るのもありかな


「そういえば……そろそろシャンバル達がやって来る時期じゃないか?」

「あぁ、そうですね」


 ベスルユ大陸からの商人シャンバル……

 シャルスの叔父で、俺の商売仲間だ


 毎年春と秋に彼はやって来る

 ……今年こそ商館を買えるだろうか?

 金を貯めてるって聞いてはいるが……


「また珍しいものがあるといいな」

「役に立つ物ならいいですね」


 そう話していたら


「失礼します!」


 兵が玉座の間に入ってくる

 またこのパターンか……慌ててる様ではないから、敵襲とかでは無いな


「どうした?」


 レリスが兵を見る


「ヤークレンから使者の方がお見えです!」

「ヤークレンから?」


 俺は首をかしげる

 一体何のようだ?

 取り敢えず、会ってみるべきだな


「通してくれ」

「通せ!」


 俺がレリスに言うと、レリスが兵に指示を出す


 兵は玉座の間を出ていき……暫くして使者を連れてきた


「はいどうも♪ お久し振りぶりですねカイト殿♪」

「オーディン殿か……」


 やって来たのはヤークレンの八将軍であるオーディンだ


「この度は東方統一、おめでとうございます♪」


 オーディンはシルクハットを脱ぐとお辞儀をする


「これはこれは、わざわざご苦労さまで……」


 俺も軽く礼をする


「それで? 用件はそれだけなので?」

「まあそうですね♪ メルセデス様からの用件は終わりです」


 オーディンはそう言いながら微笑む


「……()?」


「いや~オーシャンの都を是非とも見てみたいので、かなり立派なお城ですね♪」

「グレイク城には負けますよ」

「ご謙遜を♪ あの城は増築しまくった結果ですから」


 そう言うとオーディンは人差し指を立てた


「更にもう1つあります、貴方に会わせたい人が居まして……今は廊下で待ってもらってるんですよ」

「廊下に?」


 俺は出入口の扉に目をやる


「なんせ落ち着きの無い人ですので……彼女が居たから移動に時間がかかりましたし……」


 彼女? 女性か……


「じゃあ呼んでもらえますか?」

「ええ、少々お待ちを♪」


 オーディンは扉に向かい、廊下に顔を出す

 ……? 何キョロキョロしてるんだ?

 お、戻ってきた


「……申し訳ありません、どうやら勝手にどっか行ったみたいです……」

「……えっ?」

「妙に大人しいと思ったら……少し探してみますので城内を散策しても宜しいですか?」

「あ~俺達の寝室とかそう言う場所以外なら……兵士が止めた時は従ってもらえれば」

「わかりました……では」


 オーディンは玉座の間を出ようと扉に向かう


「あ! 会わせようとした女性って誰なので?」


 俺は聞いてみる、兵士にも探させるからな


「インフェリ・ヤークレン様……ティンク様の姉になりますね! 銀色の髪をしてるから、すぐにわかると思いますよ!」


 そう言ってオーディンは玉座の間を後にした


「……レリス」

「はい、兵達にも伝えておきます」

「頼む、俺はティンクの所に行ってくる」

「ティンク様の所に?」

「インフェリがティンクと会ったら、何をやらかすかわからんからな……」

「……わかりました、誰か将を向かわせておきますので無茶はしないでくださいよ?」

「ああ」


 俺は玉座の間を出たのだった



 ・・・・・・・・


 ーーーティンク視点ーーー


 中庭……そこでわたしは色んな人の悩み相談を受けています


「やはり気まずいと言いますかね……」


 わたしの目の前の椅子に座り、悩みを言うティールさん


「確かに辛いでしょうけど……あまり悩むのも良くないですよ? ファルちゃんも気にしてないかも知れませんし……」


 今、ティールさんはファルちゃんについて悩んでいます

 ミルムちゃんの護衛として動いているファルちゃん

 彼女が罪人として牢に居るときに、拷問を担当したティールさん

 内容は詳しく教えてくれませんが、色々としたらしく……顔を合わせづらいそうで


「仕方ない……頭ではわかってるんですよ……それでも悩んでしまうのです……」

「うーん、1度勇気を出して話してみたらどうですか? このままだと何も変わりませんし……結果がどうなるかはわかりませんが……このまま悩むくらいなら、ハッキリさせた方が良いと思いますよ?」

「……そう、ですね……問題はその勇気が出ないことですね……」

「それは……うーん……どうしましょう?」


 そんな風に話していたら


「ティール、そろそろ訓練の時間じゃないの?」


 ルミルちゃんが言う


「あ、そうだね、それではティンク様、相談にのってくださり、ありがとうございます」

「いぇ、対して役に立てなくてすみません……」

「そんな、色々と考えれましたし、助かりましたよ」


 そう言ってティールさんは中庭から離れて行った


「ティールさんとファルちゃん……どうにかしたいですね……」

「こればっかりは本人達の問題では?」


 ルミルちゃん……


「それは……そうですけど……何か手助けできたらなって……」

「そのファルって人にどう思ってるのか聞いたらいいのでは?」


 テリアンヌちゃん、それは駄目ですよ……余計ややこしくなりますから


「うーん……」


 カイトさんに相談してみましょうか……

 あっ、勿論ティールさんにカイトさんに話していいか聞いてからにしますよ?


「へぇ、随分と元気そうじゃねえか」

「!!?」


 今……後ろから声を掛けられましたよね?

 凄く……聞きたくない声だったのですけど……

 いや、まさか、そんな、あの人が居るわけないですよね?


 わたしはゆっくりと振り返る


「久し振りだな、ガキ」

「イ、インフェリ……お姉さま……」


 わたしは椅子から立ち上がり、インフェリお姉さまを警戒する……

 そんなわたしの前にルミルちゃんとテリアンヌちゃんが立つ


「どちら様で? 随分と無礼な方ですね」


 テリアンヌちゃんが言います


「あっ? なんだ随分と弱そうな奴だが……まさかこれが護衛か?」

「弱そうなのは否定しませんが……礼儀知らずな貴女よりはマシですよ?」


 テ、テリアンヌちゃん!?


「礼儀知らずはてめぇの方だろ? 認めたくないが、血縁だとオレはそいつの姉になるんだが?」

「それなら相応しい礼儀を身につけたらどうですか?」


 い、一触即発って言うんですかこれ!?


「テリアンヌちゃん! 大丈夫ですから少し静かにしてください! わたしは大丈夫ですから! ねっ?」


 インフェリお姉さまは強いです

 テリアンヌちゃんが酷い目にあう前に止めないと!


「ふざけた事を言う奴だな……それが遺言って事でいいなぁ?!」


 インフェリお姉さまが腰に差してる剣に手を伸ばします


 ガッ!


 剣を掴んだお姉さまの手をルミルちゃんが押さえます


「えっと、インフェリさんでしたっけ? 流石に剣を抜いたら大事になりますよ? ヤークレンの……同盟国の人間だったらそれが問題なのはわかりますよね?」

「同盟ねぇ、そんなの親父が勝手に決めた事だろ? オレには関係ないね!」

「色んな人に迷惑がかかるんですけど?」

「知ったことか!! こいつの教育が先だ!」

「貴女にそんな権利はありません!」

「うぜぇ、てめぇもついでに教育してやるよ!」


 そう言ってルミルちゃんの手を払いのけて、インフェリお姉さまは剣を抜きました


「や、止めてください!! そんな事しても……良いことなんてありません!!」


 わたしは前に出て、テリアンヌちゃんとルミルちゃんを庇うように腕を広げて叫んだ


「どけ! ガキ!!」

「嫌です!!」

「このガキが!!」


 インフェリお姉さまが剣を振り上げます

 あ、これ……わたし、死……


「そこまでだ!! てか何してんだよ!!」


 叫び声が中庭に響きました……あっ……


「カ、カイトさん!!」

「んっ? あぁ、アイツが……」


 インフェリお姉さまの後ろからカイトさんが走ってきました


「ティンク! 怪我はしてないな?」

「は、はい!」


 そしてわたしとインフェリお姉さまの間に立ちます


「はぁ、はぁ……あー焦った……よし、取り敢えずインフェリ・ヤークレン殿……その剣を仕舞おうか?」

「あっ?」

「その剣を仕舞ってもらえませんか?」


 カイトさんが言います……あ、怒ってますね


「てめぇに指図される覚えは……」

「良いから仕舞え!! お前は自分が何をやってるのかわかってるのか!!」


 カイトさんが怒鳴りました……


「っ!」


 インフェリお姉さまが怯んだ!?


「いくら何でも好き勝手が過ぎるぞ! 同盟相手の城を勝手に彷徨いて、挙げ句に剣を抜くとはな!」

「てめぇの兵が礼儀を知らねえからだろうが!」

「お前が言うな!! 最低限の事も出来ない人に礼儀を語る資格は無い!!」

「このっ!」


 あ、インフェリお姉さまが剣を振りかぶって……


「そこに今すぐ座れ!!」

「っ!?」


 怯まずに怒鳴るカイトさん

 その反応に驚いたのか……お姉さまは剣を落としました


「な、なんだよ……そんな怒鳴らなくても」

「座れ……今すぐ!!」

「っ!!」


 こ、ここまで怒ってるカイトさん……初めて見ました……

 インフェリお姉さまが正座しましたよ!?


「オーディンから聞いたが、無理矢理ついてきたらしいな? それで? 更にあちこちで問題を起こしたそうだな?」

「それは町の奴等が生意気だから……」

「生意気だからって暴れて良いわけ無いだろ!! お前は我慢ってものを覚えろ!! 人の上に立つって事はだな!」


 それから数分間……カイトさんのお説教が続きました……


「わかったな!?」

「……はい」


 す、凄い……あのインフェリお姉さまを……傍若無人で有名なお姉さまを大人しくさせました!?


「畜生……なんでこんなやつに……」


 お姉さま……泣いてます?


「いや~凄いですね……インフェリ様を大人しくさせましたか……」

「オーディンさん!?」

「お久し振りです、ティンク様♪」


 いつもと変わらない笑顔で礼をするオーディンさん


「オーディン殿、こいつを甘やかし過ぎじゃないのか?」

「インフェリ様はこの傍若無人な所でメルセデス様に気に入られましたからね……こう振る舞うことしか知らないんですよ」

「オーディン! 余計なことを言うんじゃねえ!」


 あ、お姉さまが復活しました


「はいはい、ではカイト殿……御迷惑をお掛けしました」


 オーディンさんはカイトさんに礼をすると……


「あ、おい! オーディン! てめぇ!」


 袖の中から鎖を伸ばしてインフェリお姉さまを拘束しました


「また勝手に彷徨かれたら困るんですよ、ヤークレンに着くまで拘束してますから」

「いでででで! 引っ張るな! 歩ける! 歩けるから引っ張るなぁぁぁぁ!!」


「…………」


 そしてインフェリお姉さまを引き摺って行きました


「結局なんだったんですか?」


 テリアンヌちゃんが呟きます

 多分……それは誰にもわかりません


 ・・・・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー


「全く……なんだったんだアイツら?」


 夜……俺とティンクは自室で休んでいた


「全然わかりません」


 ティンクはそう言うと俺にくっついてくる


「それにしても……カイトさんは凄いですね……インフェリお姉さまを圧倒したんですから」

「いや……頭に血が昇っててつい……」


 冷静に考えたら……よく斬られなかったな俺……


「そういえばオーディンさんは何の用事で来ていたのですか?」

「ああ、東方統一の祝いを言いに来たんだよ、同盟国として礼儀を通しただけだな」


 新年の挨拶とかそういう感じの礼儀だ

 大した意味はない


「てか、オーディンも大変だな……あんなのをおもりしてるのか……」


 インフェリ・ヤークレン……見た目はティンクを勇ましくした感じだったが……性格は野蛮だったな

 あ、あと胸元が寂しかったな……ティンクと凄い差だった

 これは言ったら怒られそうだから言わないが


「きっと惹かれるところがあるんじゃないんですか?」

「あるの?」

「……」


 眼をそらすティンク……浮かばないなら無理してフォローしなくていいんだぞ?


「なんか今日はいつもより疲れたな……」

「もう休みますか?」

「そう……だな……」


 時刻は20時

 寝るにはまだ早いが……明日も仕事だしな


 俺は灯りを消す


「ティンク、おいで」

「はい!」


 そしてティンクを抱き締めて休む

 明日の予定を思い出したりしながらな
































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