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第149話 東方統一 4

 生きましょう……貴方の為に……


 行きましょう……どこまでも……


 逝きましょう……決着の為に……





 ・・・・・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー


 オーシャンの近くに布陣する


「よし、偵察が戻り次第仕掛けるか!」


 俺はオーシャンの外壁を見る

 全く……東方最後の戦いが自分の本拠の攻略とは……予想外だよ!!


「腕が鳴りますなぁ!!」


 楽しそうなオルベリン


「いや、オルベリンは本陣に待機だからな?」

「なっ!?」

「そんな『何故っ!?』って顔されてもな……お前は隠居したんだ! 養生しなさい!」

「むっ……厳しいですな……勢いで参戦できると思ったのですが」

「許さないからな?」


 落ち込むオルベリン……こらこら、そんな風にしても駄目なのは駄目だからな!


「さて、ルーツとレムレは本陣に待機、ルミルとテリアンヌも本陣でティンク達を守ってくれ」


「はっ!」

「はい!」

「わかりました……」

「……僕もですか?」


 レムレは俺を見る


「ああ、てかオルベリン見張っててくれ……なんか勝手に暴れそうだから」

「あー……わかりました」


 俺とレムレは槍を持とうとして兵士に止められてるオルベリンを見る


「足に何本か矢をぶっ刺していいからな?」

「それで止まればいいんですけど……」


 ……厳しいかな


「俺とアルス、メビルトとシャルス、マーレスとレストで3つの軍団を編成してから突撃だ」

「突撃? 何も考えずにか?」


 マーレスが言う


「ああ、何も考えずにな、俺達が近寄れば……門は開く」


 門を守ってるのがオーシャンの兵ってのが前提だが……

 偵察が調べてきて、傭兵とかが門を守ってるのなら作戦変更だ


「カイト様! 俺はどうすれば?」

「お前は寝てろ! 何故ここに来た!!」


 レルガをテントに戻らせる

 全く! どいつもこいつも無茶をするな!


「カイト様! 戻りました!」


 偵察兵達が戻った


「どうだった?」

「カイト様の言うとおりです、門は兵が守っていました……都の中まではわかりませんでしたが……」

「そうか……よし、なら都に突撃した後の行動を言おう」


 俺は将達を見る


「俺とアルス……それとメビルトは城を目指す、シャルスとマーレスとレストは都の中で暴れてる傭兵や貴族の兵を相手してくれ……兵達は戦う者と民や負傷した者を救助する者で分かれてくれ」


 数はこっちの方が多い筈だ


「城に入った後は?」


 アルスが聞く


「そうだな……レリスとの合流を目指そう……多分俺達を待ってるだろうし」

「マイルスは?」

「ぶん殴って気絶させとけ、俺が許す」

「わかった!」


 えっ? マイルスが関わってるってまだわからないだろうって?

 絶対に関わってる! 100%だ!!


「あの……カイト様……」

「んっ?」


 兵がやって来た……なんだ? なんか顔色悪いぞ


「その……あの……」

「どうした? 何かあったのか?」

「……ヘルド様が来ました」

「……はっ?」


 ヘルド? アイツならヘイナスに居る筈だろう?


「カイト様ぁぁぁぁ!!」

「うぉぉぉ!?」


 俺が首を傾げていたらヘルドがやって来た

 いや、なんで居る!?


「ヘルド!? なんでここに居る!? ヘイナスは!? 内乱は!?」

「それならとっくの昔に潰しました! 事後処理をサルリラに任せてこっちに向かっていたら、ゲルド達と会いましてな! 彼等にヘイナスを頼んでここに来ました!!」

「……そ、そうなのか? てか火傷はもういいのか!?」

「大分回復しました!!」


 嘘っ!? 完治に1年かかるって聞いたぞ!?


 俺はヘルドを見る


「…………うわ、マジで治ってる……」


 火傷の痕はあるが……もう完治してると言えるくらいだった

 ……約4ヶ月で治しやがった……


「ヘルド……なんか曰く付きの薬でも飲んだか?」


 これからの寿命を犠牲にするようなのとか


「いいえ?」

「そ、そうか……まあ、治ったんならいいが……キツくなったら言えよ?」


 病み上がりなんだからな?


「よし、ヘルドは俺達と一緒に城を目指してもらうか……」

「お任せを!!」


 元気ありあまってるな……


 ・・・・・・・・・


 出陣する


 第1軍団

 俺

 アルス

 ヘルド

 兵数 10,000


 第2軍団

 メビルト

 シャルス

 兵数 7,500


 第3軍団

 マーレス

 レスト

 兵数 7,500


 この編成で進む

 まあ、都に入れば乱戦になると思うから……あまり意味はないがな



「行くぞ! 突撃!!」

『おぉぉぉぉぉぉ!!』


 俺の掛け声で第1軍団が突撃する

 第1軍団の全員が走り出してから、時間差で第2軍団、第3軍団と走り出す


 第1軍団はアルスとヘルドを先頭に馬で駆ける

 騎馬兵は2人乗りをさせている、都に入るときに相乗りしてる方は降りて戦う手筈だ


 ドンドンオーシャンが近くなる

 もうすぐ外壁に到着する……そのタイミングで


 ゴゴゴゴゴ!!


 門が開いた

 外壁の上の兵士が手を振って合図を送っている


(みな)! 作戦通りに頼むぞ!」

『はっ!』


 都に入る

 俺は周囲を確認する

 民の姿は見えない

 オーシャンの兵が既に傭兵と私兵を相手に戦いを始めていた

 オーシャンに居た兵が俺達の突撃に合わせて戦いを始めたみたいだな


「アルス、ヘルド! このまま城を目指すぞ!」

「うん!」

「了解!!」


 俺達と数人の兵は城を目指す


「んっ?」


「大将首みっつけたぁぁぁ!!」


 俺達の前に大柄な男が大剣を振り回して現れた

 多分……傭兵だな

 狙いは俺みたいだが……


「雑魚が! どけぇ!!」

「がっ!?」


 ヘルドが槍で瞬殺した……

 ……更に強くなってないか?


 それからも、城を目指す間に何人も俺を狙ってきたが……


「おらおらおらおら!!」

「どけ!」


 ヘルドとアルスが次々と瞬殺していった

 名乗る暇も無いくらいに……哀れ、名も知らぬ傭兵達……


「ほんと、頼もしいなぁ……」




 ・・・・・・・・・


 ーーーマーレス視点ーーー


「これが、オーシャンか……へぇ」


 都に入って、馬から降りながら見渡す

 周りでは兵達が戦っている


「マーレスさん、呑気にしてないで戦いますよ!!」


 レストが言う


「はいはい、なんか張り切ってるな?」

「活躍してテリアンヌ様に褒めてもらいたいので!」


 眼を輝かせるレスト


「張り切り過ぎて失敗するなよ?」


 俺は剣を抜く

 そして一気に踏み込んで


 跳ぶ(ダン!)


 ヒュン!

 風が頬を撫でる

 一気に世界が動く


「よっと」


 そして止まる


 後ろからボトボトと落ちる音が聞こえる


「うへぁ!?」


 兵士の驚きの声が聞こえる

 まあ、目の前で戦っていた敵の頭がいきなり落ちたら驚くわな……


「さて、俺らの仕事は雑魚狩りだったな……さっさと済ませるぞ」

「あ、置いていかないで下さいー! マーレスさん!!」


 ・・・・・・・・


 ーーーメビルト視点ーーー


「……何故貴様がここに居る」


 我輩は目の前に立つ傭兵に言う


「賢いあんたならわかるだろ?」


 傭兵……『ヲールト』

 ワールが良く利用していた傭兵

 ワールと共に消息を絶っていた男だ


「……居るのか? ここに……ワールが!!」

「それを自分で確かめてみたらどうだ? まあ、邪魔するがな!!」


 ヲールトが手斧を投げる

 我輩は剣を振り、手斧を叩き落とす


「なんだ、俺の戦い方を覚えていたか」

「貴様の斧は戻ってくるからな! 落とさなければ痛い目をみる!」


 最高で8本の手斧が飛び回り、相手を徐々に切り刻む


「それじゃ、これから俺がどうするかもわかるよな?」

「これ以上、我輩が距離を離すと思うか?」

「離すさ! そら!!」

「!?」


 ヲールトが手斧を投げる

 投げた先には民家の窓

 あのまま手斧が中に入れば……家に住む者が被害を受ける可能性が高い


「くっ!」


 我輩は手斧を叩き落とす為に民家の前に移動する

 目の前に迫る手斧

 我輩は手斧を叩き落とそうと剣を振る


 ブン!


 しかし、我輩の剣は空を斬った


「!?」


 手斧が我輩が狙った場所に届く前にヲールトの元に戻っていったからだ


「よっと! さて、追ってこいよ!!」


 ヲールトを手斧を取ると走り出した


「待て!!」


 我輩はヲールトを追いかける

 野放しにするわけにはいかない


 ・・・・・・・・・


 ヲールトを追いかけた先には広場があった


「ここか……」


 木々が少しあるが……路地よりも障害物は少ない

 奴にとっては戦いやすい場所だ


 ヒュンヒュンヒュン!


 右側から手斧が迫る音


「ふん!」


 キィン!


 剣で叩き落とす


 ヒュンヒュンヒュン

 ヒュンヒュンヒュン


 後ろと左から迫る音


「2本か!!」


 キィン!


 音が近い後ろの手斧を叩き落とす

 左の斧は回避する


 ヒュンヒュンヒュン

 ヒュンヒュンヒュン

 ヒュンヒュンヒュン


 上、前、右

 3方から手斧が飛んでくる


「くっ!」


 同時に迫ってくる斧を伏せて回避する


 ヒュンヒュンヒュン


 その音が周りから聞こえてくる


「さあ! 8本の手斧を捌いてみろよ!!」


 ヲールトが姿を現した


「嘗めるな!!」


 我輩はもう1本の剣を抜き、双剣で手斧を叩き落とす

 1本が右肩を掠めたが、この程度なら気にならない!


「ヒュー! やるね!」


 ヲールトは余裕な表情だ

 理由は……あー、周りから聞こえる音で察する


 ヒュヒュンヒュンヒュンヒヒヒュン


 先程よりも多いのがわかる……音がダブって聞こえる


「昔と一緒だと思うなよ? 俺の大技だ!! 四方八方から迫る20本の手斧! これで終わりだ!!」


「ヲールト……」


 我輩は口を開く


「なんだ?」

「昔と違うのは我輩も一緒だ」

「…………おいおい、まさか……」


 我輩は左足を軸にして身体を回転させる

 そして双剣を振り、手斧を弾く

 剣で直接弾く

 弾いた手斧で他の手斧を更に弾く

 ヲールトの投げた手斧を全て落とした


「さて、これで終わりか?」

「……マジかよ」


 ヲールトは予想外だと言う表情だ


「では、決着をつけるか」


 我輩はヲールトに迫る


「その必要は無い」


 ヲールトは言う


 そして……


「降参!! アレを防がれたんだ! もう勝ち目がねえよ!!」


 両手を挙げて、膝をついた


「アッサリと負けを認めるんだな?」

「命あっての人生だ! あのオッサンには世話になったが……死んでまで守りたいとは思ってねえよ!!」

「ふむ、そうか……なら縄にかけるとするか」


 ヲールトを縄で縛り、少し離れた場所で戦っていた兵を手助けしてから引き渡す


「あ、メビルト!」


 城に向かおうとした我輩をヲールトが呼び止める


「なんだ?」

「ワールのオッサンなら玉座の間に居るぞ! なんか玉座が気に入ってたから!」

「そうか、それを伝えても減刑はせんぞ?」

「なんだよちくしょう!!」



 我輩は城に向かう


 ・・・・・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー


 城に到着した

 城門は全開だった


「よし、城になだれ込め!!」

『おおおおおお!!』


 城に入ると……


「おや、お帰りなさいませカイト様」

「おう、ただいまレリス」


 レリスが待っていた

 周りにはオーシャンの兵と……縛られてる傭兵や私兵達が居た


「なんだ? 城の中は片付いた後なのか?」

「ええ、主要人物達は今頃酔い潰れてるかと」

「……なにしたんだ?」

「大したことはしてませんよ? 内乱が起きてから主要人物を呼び集めて……適当に持ち上げながら酒を飲ませて酔い潰す……それだけです……カイト様が戻られた事も知らないでしょう」

「そ、そっか……」


 さらりと言っているけど……凄いことしてるからな?


「なんだ……マイルスをぶん殴ろうと思ったのに……」


 残念そうなアルス


「それは後でいくらでも」


 止めないレリス

 寧ろ勧めてる


「ではカイト様……どうなさいます? 部屋まで行きますか? それとも玉座の間で待たれますか?」

「そうだな……」


 俺が冑を脱ぎながら答えようとした時


 ヒュッ!


「っ! カイト様!」

「うお!」


 レリスに引っ張られた


 ドス!


「つぅ!」

「レリス!」


 ヘルドが叫ぶ


「大丈夫です! 腕に刺さっただけです」


 俺はレリスを見る

 俺を庇うように伸ばしたレリスの左腕に矢が刺さっていた


「ちっ!」


 矢が飛んできた方を見る

 そこにはマイルスが居た、弓を構えていた


「貴族と一緒に酔い潰れてると思ったのですけどね……」


 レリスが矢を抜きながら言う


「そう簡単に酔う体質ではないからな……物音がすると思えば、やはり演技をしていたか」

「あ、バレてました?」

「父親だからな……」

「父親らしいことは何一つしてないくせに言いますね」


 睨み合う2人


「マイルス! 大人しく降伏しろ! 勝ち目がないのはもうわかってるだろ!」


 俺が叫ぶ


「なんだ? 降伏したら許すつもりか?」

「許しはしないさ……ただある程度の減刑くらいな「甘いな」」


 最後まで言わせてくれよ……


「他の者ならその甘さに惹かれるかもしれんが……私は違う」


 矢をつがえる

 狙いは俺だ

 しかし、ヘルドが槍を構えて俺の前に立った

 叩き落とすつもり満々である


「……ちっ」


 舌打ちするとマイルスは奥に逃げていった


「追います!」


 ヘルドが数人の兵と一緒に追いかける


「レリス、怪我は……」

「大丈夫です、そんな慌てる程じゃありません」


 そう言ってレリスは兵から布を受け取り止血する


「さて、カイト様……マイルスはヘルドに任せるとして……」

「いいのか?」

「はい?」


 俺はレリスを見る


「このままだとマイルスは間違いなく処刑だ……それで」

「構いませんよ、何も感じません……わかりますよね?」

「……ああ」


 レリスは本当にマイルスに対しては良い感情は無いみたいだ


「それでは玉座の間に向かいましょう、マイルスを捕らえたら終わりです」


 ・・・・・・・・


 玉座の間に到着する


 あー、長かった……凄く久しぶりに感じる


 兵士が扉を開ける


 そして中に入ると……


「…………」

「…………」


 なんか男が玉座に座ってた……

 あれ? こいつ……


「お前……ワールか?」

「貴様、カイト・オーシャン!! 何故ここに居る!」


 いや、ここ俺の本拠だし……逆になんでお前が居るの?



「む、レリス! そうか! そういうことか!!」


 ワールが何かわかった様に言う

 自分の敗北がわかったのか?


「カイトは大人しく降伏したのだな! そして新しい領主である儂の前に差し出しに来たのだな!」


 …………うわぁ


「なんだその眼は? 早く膝をつかないか!」


 ここまでくると哀れみすら覚える


「兄さん……いい?」

「許す……思いっきりやってこい」


 アルスが歩き出す

 ぶちギレてるな……怒気が凄い


「んっ? なんだ若造? おい! そこで止まれ!! 儂の前に立つとは無礼にもほどが」

「喋るな、不快だ」


 そう呟いてアルスの右こぶしが


 ボギャ!


「げぶぅ!?」


 ワールの左頬にめり込んだ

 玉座からぶっ飛ばされて転がって倒れるワール


「……よし、玉座は新しいのに変えよう!」


 振り返ってそう言うアルスの表情は晴れやかだった



 ・・・・・・・・・


 さて、俺は今は玉座……代わりの椅子に座っている

 前の玉座は俺は気にしないって言ったのに……アルスとレリスが新しいのに交換すると言って兵士に持っていかせた


 内乱を起こした者達は全員捕らえられた

 他の都の内乱も無事に鎮圧したそうだ、バルセ達が主要人物達を連行してくる……数日には全員揃うだろう


 因みに本陣に待機していた皆は既に都に入っている


 兵を総動員して残党が居ないか調べて

 安全が確認されたからティンク達も城に入って今は休ませている


「…………」


 そんな俺の前にはマイルスとワール

 貴族が数人、拘束されている

 周りには将達が集まっている


 マイルスは頭から血を流してる……ヘルドに痛い目に合わされたみたいだな

 俺を睨み付けてやがる


 ワールはいまだに状況が理解できてないのか、落ち着きなく周りをキョロキョロしている


 貴族どもは真っ青だ


「さて、取り敢えず何か言いたい事あるか? 聞いてやるよ」


 俺は目の前の連中に声をかける


 貴族どもが一斉に口を開く


 内容は命乞いだ……

 本当はこんなことしたくなかった

 マイルスに誘われたから仕方なく

 そもそもお前(カイト)が悪い!

 等々……あぁ、イライラする……


「よし、一旦黙れ……黙れ!!」


 騒ぐ貴族どもを黙らせる


「全く、内乱を起こした理由を聞きたかったのに命乞いばかり……情けないな、お前達はこうなる事を覚悟してなかったのか? 何かを起こすなら、相応の覚悟が必要だ……結局の所、お前達は器じゃなかったって事だな……レリス」

「はい」

「マイルスとワール以外は邪魔だから投獄、処罰は落ち着いてから決めよう」

「畏まりました……その前に少し宜しいですか?」

「んっ? どうした」

「いえ、私も彼等に一言だけあります」

「なんだ? まあいいけど」

「ありがとうございます」


 レリスは俺に礼をすると貴族達を見る


「貴方達の子供達は賢い選択をしましたよ?」


 そう言ってにっこりと笑った


 ……どういうこと?

 後で聞いてみよう


 貴族達は連行されていった


「さて、マイルス……頭は冷えたか?」

「…………何故、貴様なんだ」

「えっ?」


 マイルスは呟く


「何故、兄上ではなく貴様が生き延びたんだ……何故アルスではなく貴様が後を継いだのだ!!」


 マイルスの呟きは叫びに変わる


「……何故お前は俺をそこまで否定するんだ?」

「貴様ではオーシャンに未来は無い!!」

「そのオーシャンも今は東方を統一したぞ?」

「貴様の力では無い!! 周りの助けが無くては何も成せないではないか!!」

「まあ、そうだが……」

「兄上は違った!! 兄上には全てを制する力があった!! アルスにも兄上と同じ様に力がある!! 貴様にはそれが無い!!」


 ……カリスマ的な意味か?


「何言ってるんだ!! 兄さんは凄いんだ!!」


 アルスが叫ぶ


「アルス、その気持ちは嬉しいが……今はマイルスに言わせておけ、俺は聞かなきゃいけないからな」

「……うん」


 アルスは黙る……後で撫でてやろう


「……つまり、マイルスは俺には父上と同じ様な領主としての器がない……そう言いたいんだな?」

「…………」


 睨んでくるマイルス


「お前がどれだけ父上の事を尊敬しているかは良くわかった……ただ……何て言うかな……俺と父上が違うのは当たり前だな、違う人間なんだから、父上と同じ器じゃないのは仕方無いだろう?」

「そんなもの……幼少から鍛えればどうにでもなったのだ! それなのに貴様は!」

「俺の努力不足は認めよう、それでも俺は必死に出来ることをやってきた……皆の力を借りて、ここまでやってきたんだ……それは認めてほしいな」

「…………」


 俺はマイルスを見る


「どうだマイルス、心を入れ替えて……俺を支えてくれないか?」

「カイト様!?」


 レリスが驚く

 レリスがマイルスを嫌ってるのはわかってる

 それでも彼が使える人間なのは事実だ……人手は少しでも多くしたい


「断る!! 私は……貴様のその甘さが気に入らない!!」


 マイルスは縛られながらも立ち上がる

 周りの兵が押さえようと駆け寄るが、振り切って俺に向かってくる

 将達が動こうとしたのを俺は止めた


「貴様の弱さが気に入らない!」


 1歩1歩と近付いてくるマイルス


「貴様の姿が! 存在が! 貴様の全てが気に入らない!!」


 俺の目の前に立つマイルス

 その目には涙が流れていた

 ……今、彼が何を想っているのか……それは俺にはわからない

 ただ、これだけはわかった


 彼も彼なりにオーシャンという領を守ろうとしていたのだ

 やり方に問題がありまくるがな


「どうしても相容れないみたいだな……レリス……確認しておく、謀叛を起こした者……首謀者の処罰は?」

「処刑ですね……場合によっては一族も」

「一族ってなったら俺達も入っちゃうな……なら、処罰の対象は本人だけだな」


 俺は立ち上がる


「剣を! 俺が殺る!」

「カイト様が? 他の者に任せても……」


 レリスが言うが


「いや、俺がやらないといけないんだ」


 兵士から剣を受け取る

 剣を抜いてマイルスの首元に当てる


「さっさと斬れ……」

「ああ、1回で決めてみせるから安心してくれ」


 俺だって何回も人を殺したんだ

 もう躊躇いは無い


「マイルス……お前の事は面倒な奴だとは思ってたが……嫌いになった事はないんだぞ?」


 俺もカイトもな


「私はお前が嫌いだ」

「だろうな」


 最後まで自分を曲げない奴だな

 俺はそう思いながら……


 ザシュ!


 マイルスの首を斬り落とした


 マイルスの首がワールの目の前まで転がる


「ひぃ!?」


 ワールが怯える


 頭を無くしたマイルスの身体が倒れる


「……彼の骨はヘイナスにある父上の墓の隣に埋めてくれ」


 俺は死体を回収してる兵士に伝える

 そして玉座(椅子)に座る


「カイト様……ありがとうございます」


 レリスが俺にだけ聞こえるように呟く

 何を想って言ったのから俺にはわからない

 ただ……

『何も感じません』

 ってのは嘘だったってのはわかった


「さて、ワールの処罰だが……どうするメビルト?」


 俺はメビルトに聞く


「少し宜しいですか?」

「ああ」


 メビルトがワールの前に立つ


「メ、メビルト……久し振りだな」


 ワールが口を開く


「我輩が聞きたいのは1つだけだ、何故我輩達を見捨てて逃げ出した? 領主なら最後まで部下を信じるべきではないのか?」

「貴様らが弱いのが悪いのだろう!! 儂は悪くない!」

「…………ふざけるな!!」

「ごふっ!」


 メビルトの左こぶしがワールの右頬にめり込んだ

 両方の頬が腫れるワール……おたふく風邪みたいだな


「貴様を守るために……我輩も、レルガも、ハルイドもケーニッヒもメットもクンツァも戦ったのだ!! その覚悟を! 想いを!! 貴様は踏みにじったのだ!!」


メビルトが俺に向き直り


「カイト様! この者の処刑は……我輩に任せてください!」

「……ああ、任せた……ただ、少し待ってもらって良いか? どうやって逃亡したのかとか吐かせたいから」


 ワールの協力者とかの情報を手に入れたい


「いくらでも待ちましょう!」

「すまんな、よし! ワールを牢に連れてけ!!」

「嫌だ……嫌だぁぁぁぁ!!」


 レルガは叫びながら連行されていった


「ふぅ……」


 これで……全部終わったな


「カイト様……まだ仕事が残ってますよ?」

「なんだ? 戦果の確認と報酬なら全員が揃ってからの方が良いだろ?」

「その前に……民に伝えるべきでは?」

「……ああ、そっか、うん……そうだな……じゃあ早速」

「お待ち下さい! まさか血まみれの状態でやる気ですか?」

「っと! そうだな……洗わないとな……よし、一旦解散!! 準備ができたら城壁に集合!!」


 俺はそう宣言して風呂場に向かう


 ・・・・・・・・・


 風呂場に向かったらティンクが扉の前で待っていた


「ティンク? 休んでないのか?」

「カイトさんを待ってました! 一緒に入りたくて……なんで血まみれなんですか!?」

「あ、気にするな、返り血だから」


 俺は血まみれの上着を脱いでメイドに渡す

 そしてティンクと一緒に脱衣場に入った


「あー、ティンク……」

「なんですか?」

「自分で脱げるから手伝わなくていいんだぞ?」

「わたしがやりたいんです!」

「そ、そうか……」


 そして一緒に浴場に入って身体を洗う

 のだが……うん、戦でな……暫くご無沙汰だったからさ……


「あのさ、ティンク……言いにくいんだが」

「はい!」

「その、今は抱き着くのやめてもらっていいか? 抑えきれなくなるから」

「抑えなくていいんですよ?」

「いや、でもさ……」


 内乱とかあった日に盛るのは……

 ……問題ないのか?


「カイトさん……わたしも寂しかったんですよ?」

「……ティンク」


 頬を赤くするティンク

 今すぐ抱き締めて押し倒して色々とアウトな事をしたい衝動にかられるが……

 必死に抑える!!

 もう少しだけ耐えろ!!


「ティンク、もう少しだけ我慢してくれ」

「……駄目、ですか?」

「いや、駄目とかじゃなくてな……この後さ、民の前で東方を統一したって宣言しなきゃいけないからさ」

「あ、そうなんですか?」

「そうなんです……だからそれが終わってからな? 寝室で……うん、今まで我慢した分……張り切ろうな?」

「は、はい!!」


 ・・・・・・・・・


 風呂から出て服を着る


「んん? なんだこれ?」


 俺は着た服を見る

 なんだろ……なんかいつもより豪華な様な……

 いつものが3万くらいの服って感じなら

 これは30万くらいの服って感じ……


「わたしの服も何か違いますね?」


 ティンクの服も豪華だ


『???』


 お互いに首を傾げながら脱衣場を出る


「あ、カイト様」


 ヤンユが廊下に居た


「どうした?」

「レリスからの伝言です、ティンク様と一緒に来て下さいとの事で」

「ティンクもか? わかった」


 俺とティンクはヤンユに城壁まで案内される


「カイト様、お似合いですよ」


 城壁に着くとレリスがそう言ってきた


「レリス、なんか豪華になってないか?」


 俺は自分の服を見ながら言う


「ええ、豪華にしてますよ」


 したんだな……


「カイト様はもう東方の主です! 服装も相応しくしなくては!」

「そ、そうか……」

「さあ、カイト様! 民に宣言を!! ティンク様もカイト様の隣に!」

「なんか生き生きしてるな……」

「凄く楽しそうですね……」


 俺とティンクは城壁の真ん中に立つ

 そして……眼前に集まる民に向かって……東方の統一を宣言した




 ・・・・・・・・


 焔歴 146年 12月末


 この日、カイト・オーシャンを主としたオーシャン領が『ノースブリード大陸』の東方地方を統一した




















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