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第14話 マールの都の戦い

 ーーーメビルト視点ーーー




「申し上げます!オーシャン軍!進軍を再開しました!明朝にはこのマールに到着するかと!」


「そうか……」


 我輩はマールマール領主である『ワール・ド・マールマール』様を見る


「何故だ……何故あんな若造に……ありえぬ」


 ワール様は砦が全て奪われた報告を聞いてからずっとこうだ……


「ワール様、悩むのは後にしてくだされ、今はオーシャン軍をどうするかを」

「うるさい!!わかっている!!」


 ワール様は怒鳴る……


「そもそも!貴様が負けなければこうはならなかったのだ!!」


 そう言ってワール様は我輩にグラスを投げ付ける

 鎧に当たり砕けるグラス


「そう言われると何も言えませんな……」


「くそ……くそ!メビルト!!責任を取れ!!オルベリンも!ヘルドも!オーシャンの若造も!全員殺してこい!!」


「わかりました……奴等は南側から攻めてくるのか?」


 我輩は兵に聞く


「はい!そのようです!」


「ならば我輩は南門に行こう……『メット』と『レルガ』には東門を任せておこう」


 メットとレルガ……それと我輩……将も半分になってしまったな


「いいか!必ず殺せ!!」


 怒鳴る主の声を背に我輩は玉座の間を出た


 ・・・・・・・



「メビルト!」

「メビルトさん!」


「メット、レルガ」


 メットとレルガが我輩に駆け寄る


「あんた1人で南門を守るって?無茶だろ!?」


 メットが言う


「無茶をするしかあるまい……我等が勝つにはな」


「メビルトさんはオーシャンを攻めるのを反対したのに……」

「もうどうしようもない……我等はオーシャンを……『カイト・オーシャン』を嘗めていたのだ」


 慢心……それが敗因か……

 いや、まだ負けてはいない……ワール様が戦う限り我等は戦う


「聞いてると思うが2人には東門を任せる」

「……わかった、死ぬなよ?」

「お前達もな……まだ若いのだからな」


 我輩は南門に向かう



 ・・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー


 カッカラ砦から進軍して4日

 マールの都が見えてきた


「見えてきたな……」

「そうですね」


 俺とヘルドは外壁を見上げる

 上では兵達が弓を構えている


「全軍止まれ!」


 俺は兵を止める


「さてと……この距離で声が届くかね……」

「俺が言いましょうか?」

「いや俺が言う」


 俺は息を吸い

 大声を出す


「マールマールの者達よ!潔く降伏せよ!そうすれば命は奪わない!君達の身の安全を保証しよう!!」


『…………っ』


 兵達に僅かな動揺が生まれる


「開門せよ!!」


「?」


 外壁の向こう側……マールの都からそんな声が聞こえた

 えっ?降伏してくれるの?マジで?


 門が開く


「あ、降伏じゃないな」

「……カイト様、下がっていてください」


 門の向こうには男が馬に乗っていた

 立派な鎧を着て、剣を2つ腰に差している


 …………メビルトだ



「…………」

 メビルトが前に進む

 そして門が閉じられる


 メビルトが1人で出てきたのだ


「むっ?オルベリンは()らんのか?」


 そう呟くメビルト


「オルベリンなら東門を攻めてる」

「そうか、東門か……好都合だな」


 メビルトがヘルドを見て、俺を見る


「カイト・オーシャン!その首をもらう!」


 メビルトが駆け出す


「させるか!」


 ヘルドも駆け出す


 ギィン!


 俺達の軍とマールの都

 その間でヘルドとメビルトが戦う


 一騎討ちが始まった



 ・・・・・・・


 ーーーヘルド視点ーーー


 

「やはり邪魔をするか!」


 メビルトの野郎が叫ぶ!


「当たり前だ!!ここで決着をつけようぜ!メビルト!!」


 俺とメビルトの剣がぶつかり合う

 響く金属音、飛び散る火花


 数回剣を交えるだけでわかる


 やはりコイツは強い


 俺の鼻先を剣が掠める

 鼻先から血が出るが気にする余裕はない


「ふん!」

「ぬぅ!」


 俺の剣がメビルトの左腕を斬る

 しかし、浅いからか少し血が出るくらいだ


「ちっ!」


 メビルトはもう一本の剣を抜く

 二刀か……


「かぁぁぁ!!」


 二本の剣が襲ってくる


 俺は体勢を低くして剣を避ける


「ふん!」


「くっ!?」


 そこに素早くもう一本の剣で首を狙ってきた


「っ!」

「なに!?」


 俺は馬をしゃがませて首の位置を低くする

 頭上を剣が走る


「はぁ!」


 俺は剣を下から上に振り上げる


「くっ!」


 メビルトの左手の剣を弾き飛ばせた


「うおお!!」


 俺は更に追撃しようと剣を振りかぶる


 その時……音が聞こえた

 矢を放つ音が


 視線を動かす

 矢が一本、俺に向かって飛んできている

 外壁の兵が放った様だ


 矢が俺に迫ってくる

 随分と遅く感じるが……いや、世界が遅い

 俺の動きも遅い……

 ああ、これが死ぬ間際に味わうと言われてる感覚か……

 オルベリンが言っていたな……


『死が間近に迫ると時間が遅くなる』


 って……それか……


 矢がドンドン近づく……もうすぐ俺の眉間に突き刺さるだろう


 ちくしょう……警戒をしておくべきだったな……



「ふん!!」


 目の前を剣が走った……

 叩き落とされる矢

 ……世界が動き出した



「なっ!?メビルトお前!?」


 メビルトが俺に迫った矢を叩き落とした


「……」


 俺が驚いてメビルトを見るがメビルトは俺を見ていない

 メビルトは外壁の兵を見ている……そして


「一騎討ちに……余計な事をするなぁぁぁぁ!!」


 怒鳴るメビルト

 矢を放った兵が驚いて腰を抜かした


「……仕切り直しだ」


 メビルトが俺を見る


「……剣を拾えよ」

「必要ない……」

「いいから拾え、俺も全力で戦う用意をさせてもらう」

「?」


 俺は馬を走らせ下がる

 カイト様の側に行く


「ヘルド、大丈夫か?鼻から血も出ているが……」

「大丈夫です、これくらい」


 俺は鎧を脱ぐ

 脱いだ鎧を近くの兵に預ける


「鎧を脱ぐのか?」

「はい、これで思いっきり戦えます」


 鎧を脱いだ俺はメビルトに向かう


「……なんのつもりだ?」


 剣を二本構えたメビルトが俺に言う


「お前と全力で戦うつもりだ……メビルト、覚悟しろよ?」


 俺は槍を構える


「これからはさっきよりも激しいぞ?」


 ・・・・・・・・


 ーーーメビルト視点ーーー


「これからはさっきよりも激しいぞ?」


 そうヘルドが言った瞬間


「ぬっ!?」


 目の前に槍が迫る

 咄嗟に身体を仰け反らせて避ける


「はぁぁぁぁ!!」


「うっ!くっ!」


 ヘルドの突きが何度も襲いかかってくる

 なるほどな、鎧を脱いで身軽にしたのはこういう理由か!!

 これが本来のヘルドの速さか!


「はぁぁぁぁ!!」

「ぬぉぉぉぉ!!」


 我輩も剣で槍をそらす

 我輩の頬を、脇腹を、左肩を槍が掠める


「うぉぉぉぉぉぉ!!」

「ぬぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 ヘルドが渾身の突きを放つ

 我輩も二本の剣で突きを受け止める

 受け止めたのだがな……



 バキィ!


 砕ける音

 我輩の剣が二本とも砕けた……

 我輩の剣を砕いた槍が迫る

 槍が我輩の胸元に突き刺さる


 襲いくる衝撃

 後ろに倒れる身体


 背中に走る衝撃


 仰ぎ見る空


 …………馬から落ちたのか……


「メビルト、俺の勝ちだ」


 突きつけられる槍


「……ふん」


 皮肉だな、こんな状態なのに

 仰ぎ見る空は綺麗な青だった


 ・・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー


 メビルトが落馬した

 ヘルドのあの様子だとメビルトはまだ死んではいない様だ

 まあヘルドの槍が刺さった胸元は鎧が厚そうだったからな

 とにかく、ヘルドが勝ったのだ


「んっ?」


 ヘルドの一騎討ちを見てて気付かなかったが

 いつの間にか外壁の兵がいなくなっている

 それに外壁の向こう側が騒がしい


 ゴゴゴゴ!!


 開く門


「むっ?終わっていたのか?」


 門の向こうにはオルベリンが居た


「オルベリンか」


 ヘルドがオルベリンを見る


「……あいつらも負けたか」


 メビルトの残念そうな声


「オルベリン!」


 俺は3人の側に駆ける


「坊っちゃん!」

「そっちの状況を簡潔に!」

「東門を攻略しました、敵将のメット、レルガを捕らえております、ルーツは現在、都の民に被害を出さないように誘導をしております」


「そうか……」


 兵達がメビルトを捕らえる


「…………」


 大人しく縛られるメビルト


「よし、あとはワールだな……」


 メットとレルガも捕らえたのならもう敵将はいないはず……


「行くぞ!!」


『はっ!』


 オルベリンと鎧を着たヘルド、更に数十人の兵と城を目指す



 ・・・・・・・


 城に到着した

 城門は容易く開いた


「突撃!!戦えない者は安全な場所に避難させろ!」

『はっ!』



 俺達は城の前で馬から降りて、城に乗り込んだ


「ひぃ!」

「きゃああああ!!」

「あわわわ!?」


 メイドや召し使いが俺達を見て怯える


「彼女達を避難させろ!紳士的に振る舞えよ!」


 俺は兵に伝えて走る


「お嬢さん、こちらへ」

「坊主歩けるか?おんぶしようか?」

「じいさん運んでやるから!ほら!」


 後ろからそんな声が聞こえた



 ・・・・・・


「玉座はどこだ!?」


 俺は走りながら言う


「坊っちゃん!こちらです!」


 オルベリンが分かれ道の右に走る


「オルベリン知ってるのか?」

「この城には何度も来ましたからね」


 あ~ベルドルトの時に使者とかで行ったりしてたな……



「ここですな!」


 オルベリンが立ち止まる


「やはりどこも玉座の間の扉は豪華だな……」


 俺は扉を見て言う……明らかに造りが違う


「よし、俺が開けます」


 ヘルドが扉に近付く

 数人の兵がヘルドの側に寄る


「…………ワール!観念しろ!!」


 そう言ってヘルドがドアを蹴り開けた

 おい!?なにやってんの!?

 あ、いや、両手を塞がないようにしたのか?それだったらこれは正しい開け方なのか?


「……んっ?あっ?」

「?」


 ヘルドと兵が突撃して立ち止まる

 周りを見渡している


「どうした?」

「坊っちゃん、お気をつけを」


 俺とオルベリンが玉座の間に入る


「…………あれ?」


 玉座の間には誰もいなかった


「……ワールの姿がないな……兵もいないか……」

「お前ら探せ!」

 

 俺が呟くとヘルドが兵に指示を出した


 ・・・・・・

 

 結局ワールは城では見つからなかった


「…………」


 俺は玉座に座りながら兵達の報告を聞く


「宝物庫は空でした」

「馬車が3台無くなっているそうです」

「北に馬車が走っていったのを民が見ていました」


 そんな報告を聞いて俺は理解した


「ワールの野郎……逃げやがったな……」


 いや、逃げるのを責めるつもりはない

 逃げるってのは後の勝利の為に必要なことだ……

 だが奴は……


「民や兵を見捨てたか……」


 捕らえた兵や将はそれを聞いて驚いていた……


 メビルトなんか

『我輩はなんのために……』

 なんて呟くくらいショックを受けていた……気の毒だな


 つまりワールは裏切ったのだ……民を、自分のために戦ってくれていた兵や将達を

 それが俺には不愉快だった


「さて、お前達はどうする?」


 今、俺の前には縛られているマールマールの将達がいる


「……」

 カッカラ砦のハルイド


「くそ!くそ!」

 ワールが逃げたと聞いて怒っているメグルノ砦のケーニッヒ


「あわわわ」

 周りを見てビクビクしているヤーメル砦のクンツァ


「はぁ……」

 溜め息を吐くメット


「ちっ……」

 不快そうなレルガ


「…………」

 ショックを受けているメビルト


 この6人だ


「私としては登用に応じてもらえるとうれしいのだがな?」

 俺はそう言って6人を見る


「ぼ、ぼぼぼ僕は応じます!」

 クンツァがそう言って少し前に出る


「クンツァか……」

 クンツァ……内政がBのキャラだ、戦闘には不向きだが……なんでワールはコイツを戦場に出したのか……


「ぼぼ、僕は戦いは不得手ですが、内政なら、役に、た、たてます!」

 必死だな……まあ死にたくないだろうしな……


「いいだろう、お前には内政を整えてもらう」

「あ、ありがとうございます!!」


 クンツァの縄が解かれる


「さて……」


 あとの5人はだんまりか……


「…………」


 俺は1人の将を見る

 レルガだ……


「久しいなレルガ」

「っ!」


 俺がそう言うとレルガは俺を睨んだ


 レルガ……かつてはオーシャンの将だった男だ

 ベルドルトが死んでカイトが領主になった時にカイトを見捨てて放浪に出た男


「まさかマールマールに仕官していたとはな」

「……裏切り者は殺すか?」

「んっ?裏切り?そんなつもりはないが?」


 単純に転職しただけだろ?それを裏切りだなんて思わないが?


「昔の私は頼りなかっただろう……お前が見捨てるのも仕方ないさ……だが……今の私ならどうだ?……またオーシャンに仕えてくれないか?」

「……裏切り者にもう一度チャンスを与えると?」

「いやだから裏切ったなんて思ってないからな?」

「……はぁ、器がでかいことで……それならば……貴方に従いましょう」


 レルガの縄が解かれる……

 ヘルドが縄を解いたのだが……解いた後に蹴りを入れていったぞ!?


「さてと……後の4人はどうだ?」


『…………』


 …………一瞬ハルイドとケーニッヒとメットがメビルトを見た

 そうか……メビルトだな


「メビルト」

「……」

「メビルト!」

「っ!?」


 メビルトが俺を見た


「どうだ?俺に仕えてくれないか?お前ほどの実力者なら相応の待遇をするぞ?」

「……我輩は……ワール様に仕えた身だ」

「全てを見捨てた男に忠を尽くすのか?それでいいのか?」

「…………」

「…………」


 だんまりか……


「おいメビルト!」


 ヘルドが前に出る


「いい加減にしろよ!カイト様はお前の事を惜しんでいるんだぞ?お前を失いたくないと思って下さっているんだぞ?」

「…………」

「お前は、捨てた奴に従うのか?俺ならそんな奴は見捨てるな!カイト様は1度ドン底に落ちたんだぞ?それなのにここまで這い上がったお方だ!」


 言い方!言い方!!


「お前は……どっちに従うんだ?」


「……我輩は……」


 メビルトが俺を見る

 俺は真剣な表情でメビルトを見る


「………参りました……」


 ヘルドがメビルトの縄を解く

 メビルトは俺に平伏す


「メビルト……これからはカイト・オーシャン様に忠を誓いましょう」


 こうしてメビルトが俺に仕えた

 他の3人も俺に忠誠を誓った




 ・・・・・・


「さて、マールマールはオーシャンの領土になった」

「ここまでこれましたな……」


 オルベリンが嬉しそうに言う


「あぁ、だがまだ始まったばかりだ……天下を取るにはまだ弱い」


 取り敢えず今は旧マールマール領の内政や軍備を整えよう



「ヘルド!」

「はっ!」

「レルガとケーニッヒと3000の兵と共にヘイナスに戻ってくれ」

「カイト様は?」

「もうしばらくここで指示を出す、落ち着いたら戻るから、先に戻って皆に勝利を伝えてくれ」

「わかりました!!」

「あ、明日でいいからな?今日は休めよ?」

「はっ!!」



 さーて……また忙しくなるぞ!!







対マールマール領

完勝








将のステータス


ハルイド



性別 男

年齢 26


武力 72 C

知性 86 C

カリスマ 51 D

内政 34 E

忠誠 68


ケーニッヒ


性別 男

年齢 23



武力 86 C

知性 45 E

カリスマ 50 E

内政 32 E

忠誠 56



クンツァ


性別 男

年齢 19


武力 10 F

知性 32 E

カリスマ 18 F

内政 120 B

忠誠 83



メット


性別 男

年齢 24


武力 62 D

知性 45 E

カリスマ 53 D

内政 42 E

忠誠 65



レルガ


性別 男

年齢 28


武力 89 C

知性 99 C

カリスマ 76 C

内政 68 D

忠誠 73



メビルト


性別 男

年齢 35


武力 103 B

知性 111 B

カリスマ 90 C

内政 111 B

忠誠 69

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