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第147話 東方統一 2

 最初はただの子供だと思ってた


 泣き虫で、じっとしてられなくて


 弱くて、頼りない


 こんなのが後継者なのかと


 不安になっていた



 ・・・・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー


 バルセ、ゲルド、ブルムン……この3人を主将にして3つの軍団を編成し


 バルセにガガルガ

 ゲルドにヘイナス

 ブルムンにカイナス


 それぞれの内乱の鎮圧を任せた


 今、俺の軍は兵が30,000人

 将は俺と、アルス、ルーツ、レルガ、ルミル、レムレ、シャルス、メビルト

 そしてテリアンヌとマーレスとレストだ


 だいぶ戦力が減ったな……


「もうすぐマールを越えますね」


 ルーツが言う


「ああ、マールでは内乱は起きてないようだが……一応様子を確認した方が良いかもしれない」


 これから起きる可能性もある


「では、兵を数人ほど送っておきます」

「頼む」


 俺達はオーシャンを目指す


 ・・・・・・・


 ーーーアルス視点ーーー


「兄さん大丈夫かな……」


 レリスの謀叛を聞いてから……顔色が真っ青だ

 ショックだよね……僕もいまだに信じられない


「アルス君、その……レリスって誰ですか?」


 テリアンヌが並走して聞いてきた


「あ、そうだよね、パストーレ勢は知らないよね……レリスはオーシャンの軍師で兄さんや僕の従兄弟なんだ」

「そうなんですか? 軍師が謀叛……」

「だから兄さんもショックみたいでね、レリスは兄さんの右腕だったから」


 兄さんはレリスを信頼していたし

 レリスも兄さんを信頼していた


 なんで謀叛なんて……兄さん、なんかレリスを怒らせることでもしたのかな?


「私にとってのミーティみたいなものですね」


 ミーティ……確かパストーレの軍師だっけ?


 そう話していたら


「うーん?」


 レムレが後ろから速度を上げて近付いてきた

 目線は僕達から見て右側を見ている……


「レムレ? どうしたの?」

「あ、いえ……ちょっと……」


 僕達を追い越す速度で馬を走らせるレムレ

 視線はずっと同じところを見ている

「あれは? いや、でも……うーん?」って呟いてる


「?」


 レムレが何を見ているのか、気になって僕は望遠鏡を近くの兵から受け取り……右側を見る


「…………?」


 何も無いよね?


「…………あれ? なんか動いた?」


 望遠鏡で見てもわかりずらい……かなり遠くで何かが動いた……様に見える


「…………」

「アルス君?」


 テリアンヌが聞いてくる


「ごめん、ちょっと列から抜ける」


 僕は兵達に道を開けさせて、軍の列から抜け出す

 レムレも同じように抜け出す


 そして馬を走らせて……やっと動いている物が何かわかった


「馬車ですね……」

「ああ、しかもオーシャンの馬車だ!」


 見覚えのある馬車……

 僕や兄さんとかがよく使う馬車


「あの方向だと……マールからオーシャンに向かってるみたいですね」

「……レムレ」

「はい」

「君は馬車を見ててくれ、僕は兄さんに伝えてくる」

「わかりました!」


 僕は列に戻って兄さんの元に向かった


 ・・・・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー


「俺……何かやらかしたのか?」


 レリスが謀叛を起こした理由をずっと考えていた


 そもそも謀叛を起こす理由は


 1、主に対する不満が爆発する


 待遇の悪さだったり不当な扱いを受けてたりな


 2、主を見限った為


 この主では先が無いと判断したって事だな

 カイナスがこれだ


 3、己の正義のため


 主が(あく)どすぎて、良心が耐えられずに立ち上がったって事だな


 4、単純にぶちギレた


 1と違って、その場の気持ちでの行動だな


 まあ、大きく分けたらこの4つだ

 この、どれかに俺は当てはまるのか…………


「…………結構身に覚えがあるな」


 特に1が!


 昔、ティンクを連れてくる前……レリスは俺に相応しい相手を探してくれていた

 俺は知らなかったとはいえ……それを無下にした


 あの時のレリスは怖かった……


 それにレリスの勤務時間も問題だな

 レリスは1人で20人分くらいの働きをする

 だから全然休まないし……労働に対して報酬が少ない


 休めって言っても休まないし……

 報酬も普通の5倍くらいじゃ少ないよな


「……くっ! 言ってくれればもっと待遇を良くしたのに……」


 いや、それに甘えていた俺が悪いな……

 内乱を静めたら……うん、待遇を良くしよう……必ず!


「それにしても妙ですね」

「んっ?」


 さっきから考え込んでいたルーツが呟く


「謀叛を起こした理由はともかく……何故、このタイミングで謀叛を起こしたのか……」

「それは……パストーレとの戦で消耗していたから……じゃないのか?」

「いくら消耗しているからと言っても、兵力が多いのは変わりません……戦に勝利した今は士気も高いですし」

「その兵力を分散させる為に他の都でも内乱を起こしたんじゃないのか?」

「そう……でしょうけどね」


 なんか腑に落ちないって顔してるな

 まあ、俺も何かもやもやした違和感? ってのを感じてるのだが


「兄さん!!」


 そこにアルスがやって来た

 

「んっ? どうしたアルス?」

「マールのある方向から馬車が!」

「馬車?」


 少し詳しく聞いたら、俺達の馬車がマールからオーシャンに向かって走ってるらしい


 俺達の馬車って事は……えっ?


「その馬車の所に向かうぞ! 何人かついてこい!!」


 俺はアルスとルーツ、そして数十人の兵士を連れて馬車に向かう


「カイト様! こちらです!」


 途中でレムレと合流して馬車まで案内される


 そして


「見えた!」


 肉眼でバッチリと馬車を確認した

 近付くと馬車が止まった


 俺は馬から降りて馬車の側に向かう

 アルスとレムレが俺の側につく


 ギィっと馬車の扉が開き……


「カイトさん!!」


 中からティンクが出てきた


「ティンク! 無事だったんだな!!」


 駆け寄ってくるティンクを抱き締めようとして……


「おっと!」


 ティンクの両肩を掴んでティンクを止める


「えっ? カイトさん?」


 抱きつこうとしたティンクが首を傾げる


「あ、いや……最近水浴びも出来てないから……」


 俺はティンクに言う……身体は拭いてるが……それじゃやっぱり綺麗とは言えないだろ?


「そんなの気にしません!! 夫の無事を喜ばせてください!」

「そ、そうか? なら……」


 俺が手を離すと、ティンクはおもいっきり俺に抱きついた

 俺もティンクを抱き締める


「カイトさんが無事で良かった……」

「ティンクも無事で本当に良かった!」

「? さっきも言ってましたよね? わたし何も危ない目にはあってませんよ?」

「……んん?」


 なんだ? なんか話が噛み合わない?


「えっと……ティンク、聞いていいか?」

「はい」

「マールに居たんだよな?」

「はい、ミルムちゃん達と一緒に!」


 俺はそれを聞いて馬車を見る

 馬車からちょうど人が降りてきた

 ミルム

 ファム

 ヤンユ

 そして……オルベリン


「んんん? オルベリンもか?」


 ヤンユはまだ世話役としてついてきたってわかるが……


「ティンク……今、何が起きてるのか知っているか?」

「えっ?」


 ……知らないようだ

 えっ? 何も知らないのか?


「坊っちゃん、パストーレに勝利したそうですな、おめでとうございます」


 オルベリンが近寄ってきて言ってくる


「あ、あぁ……」

「遂に東方を統一しましたな! ……と言いたいのですが……何やら慌ただしいですな……何かあったので?」


 オルベリンも知らないようだ……


 つまり、ティンク達は謀叛が起きてる事を全く知らないっと……


 どういうことだ?



 ・・・・・・・・・・・


 オルベリン達に今の状況を伝えた


「えっ? レリスが? ないないない」


 ミルムがアッサリと言う


「だってレリスが私達をマールに行かせたんだよ?」


 そう続けた


「……レリスがか?」


「はい、ティンク様達を連れてマールで暫く過ごせとレリスが」


 ヤンユが口を開いた


「…………」

「カイトさん?」


 俺は考える……レリスの行動がわからなくて……

 俺を見るティンクの頭を撫でながら思考をめぐらせる



 何故、ティンク達をオーシャンから離れさせたかだ


 オルベリンはまだわかる……厄介だから離れさせたんだ

 しかし、ティンクやミルムまで離れさせたのはわからない

 2人なら人質にした方が効果的なのに……


「謀叛を成功させる気が無いって感じですね」


 ルーツが呟く


 謀叛を成功させる気が無い?


「……まさか……そんな……」


 俺は呟く……


 レリスは……ルーツの言うとおり、謀叛を成功させる気が無いのではないか?


 失敗するための謀叛?

 意味がわからない……そんな事をする理由が…………


 ……………………………………あっ



「あ、あ……ああ!!」

「カイトさん!?」


 俺の大声に驚くティンク


「そうか……そういう事か!! 全く……回りくどい!!」

「兄さん? 何かわかったの?」


 アルスが聞いてくる


「ああ、やっと全部な……取り敢えず軍に戻るぞ」

「なに? またもったいぶるの?」


 アルスが呆れたように言う


「いや、道中でちゃんと話すさ」


 単純な事だ

 俺は……最初から『レリスを信じていれば』良かったんだ

 






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