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第145話 さあ、帰ろう

 ーーーカイト視点ーーー


 パストーレに勝利してから1週間が経過した


 この1週間でやったのは先ずは民の理解を得ることだ


 今までパストーレの元で過ごしていた彼等だ

 高い民忠もパストーレに対してだ、侵略してきたオーシャンには最低の印象しか無いだろう

 ……俺、石投げられたし


 そんな訳で、民には俺達は彼等の生活を脅かすつもりは無い事


 これからはメルノユが統治する事


 出来る限り皆の暮らしを良くしたい事


 これを伝えた


 まあ言葉だけでは納得しないだろう

 だから持ってきた兵糧とパルンにある食料を使って料理を振る舞ったり


「はい! はい! はい!」

「……すげぇ」


 主にマリアットが作ってたな……


 後はパストーレの将達と話して、オーシャンの兵達で道の整備をしたり


「オーシャンとの共同作業が道の整備か……」


 ぼやくナルール


「私達も……もうオーシャンの将ですよ……割り切りましょう」


 ユルクルが諭していた


 これで民も少しは俺達を信用してくれた……筈だ

 まぁ、これから頑張って信用されていこう


 次にこれからのオーシャンの目的を話し合った


 俺とルーツとバルセとブルムン、それにメルノユ

 各地方を任せてる将達との話し合いだ

 んで、ヘルドの代わりにケーニッヒに参加させた


「これからは後ろは警戒しなくていいから、バルセとメルノユには農業や商業の開発を中心に進めて欲しい」

「オーシャン全土の食料と金を賄えるくらいにすれば……他の都は軍事に集中できますな」


 バルセが言う


「ああ、いざというときは他の都から兵を送ったり出来るしな」


 でもやっぱり食料と金は必要だからな

 他の領から離れた場所で安全に稼いで貯める……

 備蓄は多い方が良いからな


「それでマールでは今まで通り浴場で外資を得ながら……有能な人材を見つけるんですね」

「ああ、まあ人材は難しいかと思うが……見つけたら頼みたい」


 他の領で活躍していた将が追放されたり、辞めたりして流浪人になっている可能性がある

 もしくは将になる人間が旅をしていて立ち寄る可能性もある

 そんな人間を登用して戦力にする


 マールの浴場はそんな意味ではかなり使える

 今も有名になって、他の他方からわざわざ人がやってくるくらいだ

 これを活用しない理由がない


「そして、西方と北方に近いカイナス、南方に近いヘイナス……んで両方の都と連携がとれやすいオーシャン……この3つの地方で軍事力を高めていこうと思う……兵の育成や兵器の開発とかな」


 北方のヤークレンは形式上はオーシャンと同盟を結んでいるが……警戒はした方がいい

 西方は今のところ動きはないが……どうくるか……

 南方はベススと同盟を結んでいる……ヤークレンよりは遥かに信用してるが……他の領がベススを出し抜いて攻めてくる可能性があるからな


「……こちらから攻める予定は無いのですか?」


 ケーニッヒが聞く


「今のところはな……統一したばかりだから……先ずは領内の安定を目指したい……まあ、ベススから援軍の要請が来たら答えるくらいかな」


 今回の戦でもベススには助けられたんだ

 恩を返さないとな


「あと西方とを繋ぐ橋を作り直さないとな……」

「あれを壊すとは……ヒヒヒ! レリス殿も大胆な事をする」


 ブルムンが笑う


 いやぁ、レリスがやったことは足止めとしてはこれ以上は無いってくらいの策だけどさ……

 後が面倒なんだよな……橋の作成と……橋が使えなくて商売が出来なかった商人達への賠償……

 賠償は無視しても良いが……そうしたら商人を敵にまわすことになる……それは面倒な事になるからな……

 相応の金を払おう……うん、仕方ない


「あ、そうだそうだ……メルノユ」

「んっ?」


 俺はメルノユを見る


「もし港に他の大陸の船が来たら、その都度報告をしてほしいんだが」

「それは構わないぞ、寧ろしない方がおかしい」

「だよな」


 他の大陸の情報は出来る限り集めたい

 どこの大陸はどこの領が統一した……これはかなり重要な情報だからな

 統一した領が好戦的なら防衛力を高めないといけないし

 逆に対話を望むなら……一時的でもいいから同盟を結びたい

 そうする事で、攻められるリスクや攻められた時の被害を最小限にしたい


 さて、大きな議題はこれで終わりだな

 後は細々とした話を纏めないとな



 こうして会議は長く続いた



 ・・・・・・・


 ーーーアルス視点ーーー


 兄さん達の会議は今日も長い


「今日も会議か……」


 僕は外から兄さん達が会議をしている部屋の窓を見上げる


「必要な事ですからね」


 僕の向かい合う形でテリアンヌが答えた

 僕は今、テリアンヌと模擬戦をしていた

 目的は彼女の実力を把握するのと……彼女を鍛える事だ


『テリアンヌには俺の妻であるティンクの護衛を任せたい』


 兄さんはそう言っていた

 それは逆にティンクさんが危なくないか聞いたら


『流石にいきなり二人っきりとかにはしないさ、ルミルにも暫くティンクの護衛を頼んでいる』


 そう答えた


 そう言われたらもう反対できない

 実際、ティンクさんも危ない目には何度かあってるから……専属の護衛は必要だと思うし……


 そんな訳でテリアンヌの実力を確かめたのだが……


「はぁ……はぁ……」

「まあ、うん……弱いね」

「すいません……」


 ハッキリ言って弱かった

 まあ、型とかはしっかりしてるから……並の兵士よりは戦えるだろうけど……正直、将としてなら頼りない


「マイルス兄様やブライに鍛えてもらってはいたのですが……」

「うーん、実戦経験が少ないからってのも理由にあるのかもしれないね……暇な時は誰かと模擬戦をしまくると良いかもね」

「そ、そうですか?」

「うん、筋は悪くないよ」


 兄さんより希望はあるよ


「まあ、もう体力も尽きてるみたいだし……休憩しよっか?」

「ありがとう……ございます……」


 テリアンヌはその場に座り込む……キツかったんだね

 彼女の前に座る


「そう言えば、テリアンヌ……君の口調がかなり違うってレムレやユリウスから聞いたけど?」


 僕は彼女の前の口調を知らないからわからないけど


「あ、その……前のは領主として堂々としてないといけなかったので……それに女性の領主と他の領に知られたら厄介ですし……だから演じていました」

「そっか……大変だったね」


 つまり、今の彼女が本当の彼女って事か


「……」


 呼吸を整えてるテリアンヌを見る


「テリアンヌ、何か引きずってる感じがするけど……降伏したのを後悔してる?」

「……」


 テリアンヌは少し驚いた表情で僕を見た


「そう……ですね、後悔……というよりは、申し訳ない気持ちが強いです」


 彼女は口を開く


「マイルス兄様も、ブライも、ナルールも、ユルクルも、ガイルクも、レストも……皆必死に戦ってくれました……バベルクは自分の命を犠牲にして……パストーレを守ろうとしてくれました……民も兵も……皆、パストーレの為に戦ってくれました……私はそんな皆の頑張りを……決意を踏みにじったんです……だから」

「それを誰かが責めたのか?」

「……えっ?」


 思わず口から出た


「その事で誰かがテリアンヌを責めたのか? 罵倒した?」

「い、いえ……そんな事は……」

「なら、気に病まなくていいんじゃないかな? パストーレにとっては今回の結果は残念だったかもしれないけど……最悪じゃなかったんだよ」

「…………」

「そりゃあ、気にするなとは言わないけどさ……何て言うか……引きずらない方が良いよ、君は生きてるんだから……これから頑張って皆の期待に答えれば良いよ」

「あ、ありがとうございます…………ふふ、優しいんですね、アルス様は」

「そうでもないよ……あと"様"はいらないから、慣れてないでしょ? それに君の方が1つ上なんだから」

「わかりました、アルス君」


 テリアンヌは微笑む


「うん、そうやって笑ってた方がいいよ、可愛いんだから」

「あ、え? あぅ……」


 照れるテリアンヌ、面白いな


 ゾクッ!


「っ!?」


 凄い殺気を感じた

 振り向く


「…………」


 振り向いた先にはマーレスが居た

 結構離れてるけど……こっちを睨んでるのがわかる……

 えっ? なに? なんでそんな睨んでるの!?

 怖いんだけど!?


「アルス君? どうしたのですか?」

「あ、いや、な、なんでもない……」


 ……夜道には気を付けよう



 ・・・・・・・・・



 ーーーカイト視点ーーー



 パストーレに勝利してから10日経過した

 後4日でパルンを出発する……そんな時にボゾゾがパストーレの船を港に停めてやって来た


「カイトさま、ふね、おいてきた」

「お、おう……随分と早かったな」


 1ヶ月はかかると思ってたが……


「ボゾゾ、まってた」

「うん?」


 ボゾゾ曰く、バルセを降ろした後

 その場に船を停めて、野営をしながら俺達の勝利を待っていたらしい

 俺達が勝てばパストーレは船が必要になる

 それならすぐに返せるようにした方がいい


「カイトさま、かつ、しってた」

「そうか、俺達の勝利を信じてくれてたんだな」


 その気持ちは嬉しい!


「よし! 腹減ったろ? 食堂でなんか食おう! 思う存分食え!!」

「くう」


 ・・・・・・・・


 そんなこんなで勝利してから2週間が経過した



「じゃあ、任せたからな」

「うむ、任された」


 俺はメルノユと少し会話をしてから馬に跨がる


「それではお父様……行って参ります」

「身体には気を付けるんだぞ? あと無理はしないように!」

「はい!」


 テリアンヌが話終わるとマーレスが近寄る


「メルノユ様……」

「うむ……」

「行って参ります」

「ああ、任せたぞ、()()よ」

「!! ……はい!」


 レストも彼女の両親と話していた

 1度紹介されたが……まああまり関わらないだろうな……


「カイト殿」

「んっ?」


 ブライが寄ってきた


「オルベリンに伝えて欲しいことがあるのですが」

「オルベリンに? 何だ?」

「近々会いに行くと」

「……ああ、わかった、伝えておこう」

「頼みます」


 ブライはオルベリンの隠居を知ってショックを受けていた

 オルベリンに勝つのが目的だったからな……まあ立ち直ったみたいだが……

 でも何かを直接伝えたいみたいだ……

 いったいどうなる事やら……



「よし! 皆準備は出来たな?」


 準備完了の報告を受けてから最終確認をする


『はい!!』


「よし! オーシャンに帰るぞ!! 出発!!」


 帰ったらティンクを力一杯抱き締めよう!!


 俺達は帰還を開始した



 ・・・・・・・・・・・


 行軍を開始してから数日

 俺達はトルリの近くを通る


「よし、他の都の兵達と合流するか」


 俺は伝令を出す

 リュウリとペルールの防衛をしていた兵と将に帰ることを伝える

 既にパストーレの兵達が民を連れて今まで通りの生活を始めてる筈だしな


 ……レルガの容態はどうなったのか気になるな

 完治は……まだしてないだろうなぁ

 悪化は……してない筈だ! そんな報告は無いからな!


「あの、カイト様」

「んっ? どうしたテリアンヌ?」


 テリアンヌが並走してきた


「その、我が儘を言わしてもらっても良いですか?」

「我が儘?」

「トルリに寄らせてもらえませんか?」

「トルリに? あそこは完全に廃墟になってて……ああ、そういう……わかった、いいぞ」


 今、復興作業を進めているトルリに寄る

 まだ瓦礫ばかりだ……


「…………」


 テリアンヌ、マーレス、レストはそんなの気にせずにトルリ城に真っ直ぐ進んでいく


 トルリ城……バベルクが俺を始末するために自爆した場所

 彼の死体は結局見付かっていない……恐らく爆発の威力が凄まじくて跡形も無く消し飛んだんだろう……

 玉座の間付近は崩壊していたが……高さ的に3階かな? そこから下は多少の損傷はあるが

 ドン!! と立派に建っていた


 そして城の前で祈る


「バベルク……申し訳ありません……私が不甲斐ないばかりにパストーレは滅びました……ですが()は残ってます……私はこれからも()を護っていきたいと思います……どうか……どうか、見守っていてください……」


 …………黙祷


「……行きましょう」


 テリアンヌ達が戻ってきた


「いいのか?」

「はい、伝えたいことは伝えましたから」

「よし、なら行こうか」


 俺達は帰還を再開する



 ・・・・・・・・・


 パルンを出発して1週間が経過した

 リュウリやペルールの皆も無事に合流出来た

 レルガは無事に回復に向かっていた……


「俺はもう動けるんですが……」

「いや休んでろって」


 普通に動こうとする彼を軍医用の馬車に乗せる

 完治するまで働かせないからな!!


 そんな風に進んでいたら


「カイト様!」


 兵が軍の前から駆けつけてきた


「どうした?」

「緊急事態です!!」

「? 道でも塞がってたか?」


 俺は馬を降りる

 ルーツやゲルドも馬から降りて俺の側に寄る


「詳しくは彼に!」


 そう言って兵は別の兵を呼ぶ

 うん? こいつは……オーシャンに勝利を知らせに行った奴じゃないのか?

 出発する時に転けたりしてたから覚えてるぞ

 てか……ボロボロじゃないか!?


「カ、カイト様」

「どうした!? 何があった!?」


 俺は兵の肩を掴む


「む、謀叛です!!」

「何!?」


 えっ? 謀叛!?

 誰かが俺を裏切ったと!?


「だ、誰だ!? 誰が裏切った!!」


 俺は出来る限り良い上司でいようとした

 期待には答えてきたつもりだし

 不満もしっかりと聞いて改善したりした!

 それでも……駄目なのか!!

 誰なんだよ! 何が不満だったんだよ!!


「…………落ち着いて聞いてください」


 そして兵が口にした名前は……あり得ない人物の名前だった



「……レリス様です……レリス様が……謀叛を起こしました!!」


 …………


『はぁ!?』


 俺とルーツが同時に叫んだ



 ・・・・・・・・・・・


 ーーーオーシャンーーー


「今頃、カイトの奴は慌ててる頃だろうな」


 マイルスが愉快そうに呟く


「実に見事な手際ですな!! いや流石流石!」


 その向かいでワールが酒を飲む


「油断はしないことですね……策が全て上手くいってるとは限らないのですから」


 レリスはそう言うと部屋を出る


「……さてと、ここまでは計画通りだ……後はカイト様が気が付いてくれるかだな……」


 そう呟くとレリスは廊下を歩いていった









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