第144話 戦後の処理と八将軍
将達に指示を出したり、オーシャンとメイデル港に向けて伝令を走らせる
オーシャンには今回の戦の勝利を
メイデル港には……てかその場に待機してる筈のボゾゾには船をパストーレに返す為に持ってくるように指示を出した
船がないとパストーレは物資が小島から運べないからな
「……あの」
「んっ? なんだ? もういいのか?」
不意に声を掛けられて、振り向いたらテリアンヌが立っていた
少し気まずそうだ
「は、はい……もう大丈夫です……」
「そうか、ならパルン城に移動するか」
パルン城の玉座に俺が座る
それで本当にこの戦はオーシャンの勝利で終わる
そして、その後はパストーレをどう統治していくのか……それを決めていかなきゃいけない
そんな訳で、俺達はパルン城に向かった
メンバーはパストーレ勢に
俺とアルス、ルーツにゲルド、バルセとティール……それについて来たいと喧しいユリウス、更にルミルとレムレ
それと数百人のオーシャンの兵達だ
留守の奴等は本陣とパルンの外壁の側に新しい陣……ていうか野営地を作って待機だ
城下町の宿にも複数人ほど宿泊させてる
いくら戦が終わったからといって、パストーレの連中が裏切らないって決まってるわけじゃないからな
警戒はまだとかない
・・・・・・・・
「では、カイト様」
「ああ」
ルーツが玉座に罠が無いか確認してから俺を呼ぶ
呼ばれた俺は玉座に座る
……少し小さいな……
「これで……パストーレの領地はオーシャンの物になった、これで東方はオーシャンが統一した……って言っていいんだよな?」
俺は右隣に立つルーツを見る
「ええ、遂に……遂に果たせましたね」
ルーツは涙ぐんでいる
「ああ……長かったな……」
俺は前に向き直って思う
この世界に来た時……パストーレに攻められて滅ぶ寸前だったオーシャン
それが……今はパストーレを降して、東方を統一した
ずっと支えてくれていたルーツなら、まあ……泣くわな
オルベリンやヘルドもここに居たら……泣いてたかもしれないな……
「さてと……感動するのはここまでにしよう……続きはオーシャンに帰ってから……まあ、うん、オルベリンとヘルドが居るときにしよう……なっ?」
「はい!」
ルーツは返事をすると涙を拭い、仕事モードに入る
「じゃあ話を変えよう……」
俺は目の前で膝をついてるパストーレ勢を見る
「待たせたな」
「いえ……」
テリアンヌが答える
「先ずはテリアンヌの身柄だが……処刑はしないから、そこは安心してくれ」
「そ、そうなのですか?」
首を傾げるテリアンヌ
平気そうに振る舞っているが、内心は不安でいっぱいだろうから……少しでも安心させよう
「では投獄でもするのですか?」
テリアンヌは聞いてくる
なに? されたいの?
「しないしない、そういう処分は無い」
「…………」
テリアンヌは呆気にとられている
「ただし、何も無いわけではないけどな……テリアンヌには俺達と一緒にオーシャンまで来てもらう、理由は……わかるよな?」
俺が聞くと……
「……人質……ですか?」
テリアンヌは少し考えてから答えた
「そうだ、パストーレの者達が反乱を起こさない様にテリアンヌにはオーシャンで過ごしてもらう……どっかの誰かより理解が良くて助かるな」
俺はそう言って
『あれ? ひょっとして僕も?』って表情でバルセとティールを見て、頷かれてショックを受けてるどっかの誰かを見る
お前……まだ気付いてなかったんだな……
「ちょっといいか?」
マーレスが声を挙げる
「なんだ? マーレス……いや、マイルス?」
「マーレスで構わない、マイルスは追放された男だ」
「そうか、それは助かる……マイルスって名前の奴は他にも居たからな」
レリスの父親でカイト達の叔父のな?
最近はなんか大人しくしてるが……なんか企んでそうで不気味なんだよなぁ
「それで? 用件は?」
「俺もテリアンヌと共にオーシャンに行きたいのだが、構わないか?」
「敬語を使えマーレス」
ルーツが睨む
「ルーツ……大事なことかもしれないが、そういうのは後にしよう」
「……はい」
「それで? マーレスもオーシャンに? 理由は?」
「テリアンヌを1人だけで行かせるのは心配だからだ」
まあ、そうだよな……
「別に構わないぞ、寧ろ歓迎しよう」
マーレスは強力な戦力になる
東方の端であるパストーレよりも、オーシャンに居てもらった方が色々と助かる
「なんならもう1人くらいなら一緒に来てもらっていいぞ? 誰か来るか?」
俺は他のパストーレの連中を見る
ナルールは……マーレスが居るなら良いかって感じだな
ユルクルはこれからの事でも考えてるのか上の空だ
ブライは……出来ればパストーレに残って欲しいな、民や兵を落ち着かせる役目を任せたいし
ガイルクは……あ、駄目だ、凄い睨んできてる……今すぐ斬りかかりたいのを抑えてる感じだ……
ペンクルは……
「わ、私も行きます!」
レストが口を開いた
「一応理由を聞いておこうか?」
ぶっちゃけ理由なんて何でもいいが……
「テリアンヌ様をお護りしたいって言うのと……それと、もっと自分を鍛えたいからです! オーシャンに行けば、その機会も多いかと!」
「そうか……だそうだが? 叔父と祖父はどう思う?」
俺はペンクルとブライに話題を振る
「儂は構わん、レストのやりたいようにやればいい」
「俺も同意見だ……だが……レスト、姉貴や義兄貴には自分で言えよ?」
「……はい!!」
「よし、ならテリアンヌ、マーレス、レストが一緒にオーシャンに来ると……」
これで1つの課題が終わった
なら次だ
「次は俺達がオーシャンに帰った後……このパストーレ地方を誰に任せるかだ」
オーシャンを出発した時はレルガに任せようと考えていたが……
大怪我してるから無理だしな……ルーツとブルムンとバルセは既にそれぞれの地方を任せてるから無理だし
後はゲルド辺りが適任なんだが……パストーレを任せるって事は前線から離れるって事だからな……他の地方から1番離れてるし
ゲルドにはまだ前線に居て欲しいんだよな……
そう考えたらパストーレ出身の奴から決めるしかないのだが……
知性とかならユルクルか
経験ならブライだよな……
でもなぁ、どっちもなんかしっくりこないんだよなぁ
そう悩んでいたら……
「私に任せてもらえないか?」
入口から聞こえてきた声
見てみるとメルノユが立っていた
「お父様!?」
テリアンヌが驚く
メルノユは気にせずに歩き出し、俺の目の前で立ち止まる
「……隠居したんだろ?」
メルノユの眼を見ながら聞く
「娘や部下が頑張ったんだ、私もまた働きたくなってね」
そう言って笑うメルノユ
「……そりゃあ、メルノユがやってくれるなら願ってもないが……良いんだな?」
「ああ」
「それじゃあ、任せた!」
俺は玉座から立ち上がり、メルノユを手招く
そして、メルノユを玉座に座らせる
この玉座は相応しい者が座るべきだから
「よし、じゃあ陣の片付けや準備やらしていくぞ! 2週間後にオーシャンに帰還する!」
『おおっ!!』
ふぅ、やっと終わった……やっと休めるな……
・・・・・・・・・
ーーーヤークレンーーー
オーシャンがパストーレと戦をしていた頃
ヤークレンの首都グレイク……の城内の一部屋
そこには長方形のテーブルがあり
8人の人間が椅子に座って雑談をしていた
そんな彼等の周りには兵達が緊張した様子で立っていた
「メルセデス様……遅いですね」
1人がテーブルに突っ伏しながら呟いた
ヤークレンの最高戦力……八将軍の1人、オーディンである
「どうせ奥方様達とお楽しみをしてるんでしょ、あの人の性欲の強さは並みじゃないからね」
オーディンの隣に座る女性が水を飲みながら呟く
彼女も八将軍の1人である、名前は『フレイヤ』
他の者達も『うんうん』っと頷く
「だぁ! もう待ってられねえ!! おい! 酒持ってこい!!」
1人の大柄な男性が叫ぶ
彼も八将軍の1人である、名前は『ガリウス』
「会議も始まってないのに飲む気か? 止めとけデカブツ」
鳥の姿をした八将軍の『ダック』が悪態をつく
「あぁ? 鳥頭がなんか言ったか?」
「止めとけデカブツ、と言ったのだが? 聞こえなかったのか?」
にらみ合うガリウスとダック
「…………」
タンタン!
それを見て、幼い女性が指でテーブルを強く叩いた
八将軍の『シャルラーン』である
『…………』
ガリウスとダックはシャルラーンを見てから気まずそうに沈黙した
「シャルちゃんつよーい、すごーい」
愉快そうに笑う男性『ピーリル』
もうわかってると思うが彼も八将軍である
「…………」
「…………」
その彼等の騒ぎを気にせずに沈黙している2人の八将軍
男の老人『ワムーカ』
そして……メルセデスより少し若い見た目の男性『ケセルド』
彼等がヤークレンの最高戦力である
普段、彼等がこうして集まることはあまりない
というのも、彼等は普段はメルセデスの子供達
第一王子『カシルナ・ヤークレン』 男性
第二王子『バルドナ・ヤークレン』 男性
第三王子『キュルシ・ヤークレン』 女性
第四王子『ガールニック・ヤークレン』 男性
第五王子『マンルース・ヤークレン』 男性
第六王子『メアリー・ヤークレン』 女性
第七王子『アマーリス・ヤークレン』 男性
第八王子『インフェリ・ヤークレン』 女性
が各々任されている領地で王子達の補佐をしている
それゆえ、メルセデスの呼び出しでもない限りはこうして集まったりはしないのである
「あ、そういえばオーディン、なんかインフェリ様が激怒したとか聞いたけど?」
フレイヤがオーディンに聞く
オーディンはインフェリの補佐をしているのだ
「えぇ、メルセデス様がインフェリ様の結婚相手を用意したのですけどね……『オレより強いやつじゃないと認めねー!!』っとか言ってボコボコにしましてね」
「うわ、お気の毒……」
「あのやんちゃガールより強い奴って俺ら以外にヤークレンに居んの?」
フレイヤとピーリルが呟く
「いっそお前が相手になったら?」
ダックがオーディンに言う
「嫌ですよ、メルセデス様の娘じゃなかったら関わろうとも思いません」
「確かにな!」
オーディンの発言にダックが同意する
そうしていたら……
「待たせたな!」
バン! とメルセデスが扉を開けて部屋に入ってきた
「お、やっと来たか大将!!」
ガリウスが叫ぶ
メルセデスは自分の椅子に座る
「なかなか満足できなくてな!」
何が? とは誰も聞かない
「メルセデス……俺達だって暇じゃない……もっと手早く済ませろ」
漸く、ケセルドが口を開いた
「すまんな!」
豪快に答えるが……全く反省していない
「それでは会議を始めるか! 遅れた分……手早く済ませるぞ!」
メルセデスがそう言ったとき
(いや、遅れたのはお前のせいだからな?)
っと八将軍全員が思ったのだった