第143話 パストーレとの激闘 26
ーーーテリアンヌ視点ーーー
玉座の間、私は皆を退室させて、1人で玉座に座っていた
「…………」
何故、こうなってしまったのだろう
いや、理由はわかってる
私が未熟だったのだ
「もっと……もっと早く決断していれば……」
オーシャンが攻めてくる前にこちらから仕掛けておけば……
もっと早く援軍の要請をしていれば
「いや、そもそも戦おうとしなければ良かったのか?」
カイナスと同盟を結んだ……
あの時はそれが最善だと考えた
オーシャンが脅威だと考えたからだ
「何故、オーシャンを利用しようと考えなかった……」
カイナスではなくオーシャンと同盟を結めば……
少なくとももう数年は平穏だった……
オーシャンへの対策をする時間は充分に稼げた
「……私は……くっ!」
私の浅はかさが今回の事態を招いてしまった……
バベルクを始めとした、戦死した者達に顔向けできない……
「降伏……そんな事……出来るわけがない……」
頭では理解している
悔しいが……最早パストーレに勝機は無い
だが……それで降伏したら……今まで戦ってきた者達はどうなる?
何のために彼等は命懸けで戦ってくれたのだ?
しかし、これ以上、戦を続ければ民に被害が出るのも事実だ
「私は……どうすれば……」
こうやって悩む事しか出来ない自分が憎らしい……
マイルス兄様ならどうしてただろう?
父様ならどうしてただろう?
「…………何故、こんなに違うんだ……」
カイト・オーシャンの顔が浮かぶ
私は最初は彼に憧れを持っていた
領主になって最初は領土を奪われていたが
父様がナルールにオーシャンを攻める為に出撃させたのを返り討ちにしてから
彼の快進撃が始まった
彼の話題が耳に入る度に、私は感心していた
『同じくらいの歳なのに……そんな風に出来るんだ……』
そう、思っていた
その後、父様が隠居を決めて、私は領主になった
その頃にカイト・オーシャンに持った感情は……嫉妬だった
女である自分が領主になった時、貴族の一部が内乱を起こしたりしてきた
今も不服に思ってる者が多いだろう……
それでも、私は必死に領主の務めに励んだ!!
でも、結果はこれだ……
「う、うぅ……」
自分が情けなくて涙が出る
何のために……マイルス兄様は自分の立場を犠牲にして、私を領主にしてくれたのか
何のために、バベルクは自爆までして戦ってくれたのか……
何のために……何のために!!
「そうやって重く考えるのが、お前の悪い癖だな」
「!?……父様」
目の前に、メルノユ父様が立っていた……
全然気付かなかった……
「テリアンヌ……すまなかったな」
「何故、謝るのです? こうなったのは私の責です……」
「辛い時期にお前に領主を任せてしまった……責任を全て押し付けた様なものだ」
「いいえ、父様は出来る限りの事をしてくれました……私が未熟だっただけです……」
『……………』
沈黙……
「……テリアンヌ、戦うのか、降伏するのか……選べないのだろう?」
「……はい」
「……私が決めようか?」
「……えっ?」
「私が、再び領主となって、全てを背負おう……それくらいしか出来そうにないからな」
父様は笑って言った
全てを? 今回の戦の責任を……全て父様に押し付ける?
「そんな事、出来ません!」
玉座から立ちあげる
「私は! 父様から領主を任された時に誓いました! 逃げる様な情けないことはしないと! 父様に責を押し付けるなんて……出来るわけがありません!!」
「しかしな……今回の事はお前に背負いきれるものではないだろう?」
「背負ってみせます!!」
今、本当にたった今……覚悟を決めた
悩むのは止めた……
「むっ? 何処へ行く?」
「カイト・オーシャンに再び会います……そして決めます……」
今度はぶつかってやる!!
そして抗うか、降伏か、決めてやる!
「カイト・オーシャンなら第2応接室に居るぞ」
「わかりました!!」
私は第2応接室に向かう
途中でブライが待っており、ついてこようとしてくれたが
「ブライ、待ってて欲しい……」
「しかし……」
「お願い……彼は1人で来たんだ、私も1人でぶつかりたい」
「……わかりました……何かあったら大声で呼んでくだされ、直ぐに駆けつけます」
「うん、ありがとう……」
そして、第2応接室に着いた
「…………よし」
腹を括る
カイト・オーシャン……お前の人間性を見せてもらう!!
私は扉を開いた
・・・・・・・・
ーーーカイト視点ーーー
扉が開いた
「……テリアンヌ?」
そこにはテリアンヌが立っていた……1人か?
兵士を連れてる……様子はないな
「1人で来たのか? 俺を呼びに来た……ようではないな」
「お前と話に来た……」
そう言うとテリアンヌはさっきまでメルノユが座っていた椅子に座る
「話か……望むところだ」
俺も向かい合うように椅子を動かして座る
机を挟んで向かい合う俺とテリアンヌ
ある意味領主同士の一騎討ちだな……カッコつけすぎかね?
「それで? 何から話す? 俺の目的はさっきも言ったが……降伏をしてもらいたいって話だ」
それ以外に話題はないぞ?
「その話の前に、私はお前に色々と聞きたいことがある」
「聞きたいこと?」
テリアンヌの顔を見る
そして気付く……さっきとは眼が違う
覚悟を決めた眼だ……何をどう決めたのかはわからないが……
彼女は覚悟を決めてここにいる……それは間違いない
なら、俺はそれに答えるべきだ
「いったい何を聞きたい?」
俺はミルムの話を聞く時の様に優しく聞いてみる
「先ずは……何故『戦を起こした?』だね」
「……それは今回の戦……だけの話では無さそうだな」
「ええ、全部、マールマールを始めとした全部を」
「…………」
何故そんな事を?
そう思ったが……俺は彼女の問いに全て答えるとさっき決めたんだ
ここは普通に答えていこう
「そうだな、それはオーシャンを……自分の領地を守るためだ」
「守るために戦を起こす?」
「ああ、矛盾してる様に聞こえるかもしれないが、俺はオーシャンの全てを守る為に戦を起こした」
俺は人差し指を立てる
「先ずはマールマール……ここは当時のオーシャンと同じくらいの戦力だった……唯一勝てる可能性がある領だった……丁度、向こうから仕掛けてきたからな、戦力を増やすために戦った」
「そして勝った……」
「ああ、将を始めとした皆の活躍で勝つことが出来た、それでオーシャンはやっと他の領と戦える戦力を手にいれた」
そういえばマールマールの領主だったワールは今はどうしているんだ?
レリスが捜索を続けてるそうだが……まだ見つかってない
……死んだのか?
「次はガガルガでしたね」
「ああ、ガガルガと戦ったのは……うん、攻め時だった……ってのが大きいかな?」
「攻め時だった?」
「オーシャンがマールマールと戦う少し前に、ガガルガはカイナスと戦をしていた……それで国力が大分低下していてね、マールマールの領土を手にいれた当時なら、勝てる可能性があると考えたんだ」
「そしてそれも勝ったと……」
「ああ、ギリギリの戦いだったな……」
ユリウスが戦慣れをしていたら……
ルーツ達がガガルガの都の攻略に時間がかかったら……
一手でも間違えれば負けたのは俺達だ
「まあ、それでオーシャンは東方地方でも、大きな領になれた」
「何故、そこで満足しなかったのだ? もう自衛をするには充分だろうに……」
「……それは、相手が東方だけだったらの話だろ? 他の地方が攻めてこないとは限らない」
「…………」
「次に攻めたのはカイナスだな……理由は……カイナスの民を救うためだ」
「他の領の民を救う? その為に動いたのか?」
意外そうな顔をするテリアンヌ
「おかしいか? まあ無関係とは言えなかったからな……俺の部下には元カイナス領出身の者が居たし……ガガルガから奪われた村もあったからな……放っておけなかった」
だから俺は新しい都……オーシャンを作って、周りに新しい村を作り、難民を受け入れた
「……人が良すぎる」
「たまに言われる」
間
「どうやってカイナスに勝ったので? 戦力はカイナスが圧倒的だったでしょう?」
「ケーミストは自分の欲を満たす為だけに動いていた……だから配下から嫌われていてね……そこを利用した」
俺は時間をかけてカイナスの将達を寝返させた事を話した
「それで、マトモに戦わずにカイナスを制圧したと」
「そうだな……犠牲が出なくて良かった……」
何もせずに真っ正面からぶつかっていたら……ボロボロだったろうな
「そして最後にパストーレですか……」
俺を睨む様に見るテリアンヌ
「ああ……」
「攻めてきた理由は……パストーレがカイナスと通じて攻めたからですか?」
マルスヒ平原の事を聞いてくる
「……いや、それは違う、あの時はお前はオーシャンが脅威だと感じたから攻めてきたんだろ? 俺も似た状況なら同じ事をする……それを責める事はしない」
「ではなぜ?」
「……さっきも話したろ? 他の地方から攻められるかもしれないって……もしそうなったらオーシャンはパストーレを背にして戦うことになる……後ろに敵か味方かわからない奴がいるのは安心できないだろ? だから俺は今回の戦を仕掛けた」
俺はテリアンヌを見る
「だから正直に言うぞ? 俺は領土も都もいらない、欲しいのは味方だ」
「それなら同盟でも良かったのではないか? 何故降伏を勧めてきた?」
「同盟はいつかは終わる……俺の代か、次代か……それよりも降伏をさせて配下にした方が良いと思ったんだ」
「…………」
俺は沈黙するテリアンヌの眼を見つめる
「だから、降伏して欲しい……パストーレの将も兵も……これ以上殺したくはない……」
俺は正直に想いを口にした
・・・・・・・・・
ーーーテリアンヌ視点ーーー
「……」
カイトの話を聞いた
彼の眼は嘘をついてるようには見えなかった……
「…………」
驚いた……
この男は、自分の民だけではなく……他の領の民……人を想っている
だから……恐ろしいと感じた
私よりもずっと先にこの男はいる
私は……追い付けるのか? 追い越せるのか?
彼を……越えれるのか?
「どうして……そこまで人を想える?」
「…………俺は、弱いからな……戦えないし、頭も良くない、領主の仕事も軍師のレリスや将達に助けられないと上手く出来ない……農業も出来ないし、マトモに商売をしたこともない……人に手助けをされてるから生きていられる……だから俺も出来る限り応えたい……そう思って行動してるだけだ」
自分が弱い……1人では何もできない
それを理解してるから……受け入れてるから……
そうか……
「……多分、自分が弱いと思ってるのは貴方だけですよ……オーシャンの将はそう思ってないでしょうね」
そう言って私は考える
彼は……パストーレの民を受け入れるだろう
差別もしない……蔑ろにしない
今以上に暮らしやすくなるように必死に努力してくれるだろう
降伏することで……私は様々なものを失う
己の立場
配下からの信
民からの信
もしかしたら己の命も……
……でも、人は生きる
私が守るのは立場じゃない……人だ
だから……私は……
「1つだけ……条件があります」
・・・・・・・・・
ーーーカイト視点ーーー
テリアンヌは1つの条件を言った
「……それは……厳しくないか?」
「今の状況だと釣り合う条件とは言えません……ですがこれだけは譲れません」
「……他の奴なら断るだろうな……だが、俺は受け入れる……」
俺がそう言うとテリアンヌは立ち上がる
俺も立ち上がる
「……では……パストーレは降伏します……」
そう言ってテリアンヌは頭を下げた
「……ありがとう……テリアンヌ、覚悟を決めてくれて」
俺も礼をして答えた
・・・・・・・・・
ーーーアルス視点ーーー
兄さんがパルンに入って数時間経った
「兄さん……」
僕は本陣から出てパルンの門を見ていた
「アルス様……大丈夫ですよ! カイト様なら絶対に帰ってきます!!」
レムレが励ましてくれる
「そうそう、あの人は妙にツイてるからな!」
大分回復して歩けるようになったユリウスが言う
「うん……」
僕だって大丈夫だと思ってる……それでも心配するよ
家族なんだから……
そう思っていたら……パルンの門が開いた
「!!」
僕は持ってきてた望遠鏡を覗く
「カイト様だ!!」
覗いた瞬間にレムレが叫んだ……裸眼で見えるの!?
「……あ、良かった……」
僕も兄さんの姿を確認する……馬に乗ってこっちに向かってる
「んっ? 隣の可愛こちゃんは誰だ?」
ユリウスの声、僕は兄さんの隣を見る
左……はいないな、右か……あ、確かに可愛い……
赤い髪で……少し幼い印象だ……誰だ? 何で兄さんと一緒に?
何? お嫁さんでも増やすの? ティンクさんが泣くよ?
僕は怒るよ? 多分レリスも怒るよ?
「……ひょっとしてテリアンヌ・パストーレじゃないんですか? あの鎧は見覚えありますよ?」
レムレが言う
「……あー、そういえばあんな鎧だったな!」
ユリウスが言う
「えっ!? テリアンヌって女だったの!?」
驚く僕
望遠鏡を離す
「いやいや、女と決まった訳じゃないだろ? 男かもしれないぞ?」
ユリウスが望遠鏡から眼を離して言う
「あんな可愛らしい男がいる?」
レムレが言う
「おーい! 誰か鏡持ってこい!! レムレに見せてやれ!!」
ユリウスが叫んだ
そして兵が本当に鏡を持ってきた
「あのね……僕だってもう昔と違うんだから!! 成長して大分男らしく……らしく……なれてますよね?」
「……僕は何も答えない」
言えない……いまだに女に間違えられてるぞ、なんて
「取り敢えず皆に兄さんの無事を伝えよう!」
そう言って本陣に僕達は戻った
・・・・・・・・・・・・・
ーーーカイト視点ーーー
テリアンヌと2人でオーシャンの本陣に戻った
本陣に出入り口に将達が集まっており、迎え入れられた
「お帰りなさいませカイト様」
ルーツがそう言って俺が馬から降りるのを手助けする
「ああ、そっちの状況は? 何もなかったか?」
「ええ、捕虜の連中が騒いでるくらいです……そちらの女性は?」
ルーツはテリアンヌを見る
テリアンヌは将達を見て警戒していた
「ああ、彼女がテリアンヌ・パストーレだ」
「!?」
ルーツを始めとした数人が身構える
「落ち着け」
俺はそれを制する
テリアンヌが馬から降りるのを確認する
「諸君! パストーレは降伏した! 我々の勝利だ!」
『うぉぉぉぉぉ!!』
周りの兵達が歓声をあげる
「あの、捕虜にされた皆に……」
テリアンヌが呟く
「わかってる、こっちだ」
俺はルーツ達に指示を出してからテリアンヌを連れて捕虜を幽閉してる牢に連れていく
アルスとゲルドが護衛として一緒についてくる
「テリアンヌ・パストーレが女性だったとは……少し驚きましたな」
ゲルドが呟く
「そ、そう?」
警戒してるテリアンヌ
気まずい空気だなぁ……
「あ、今向かってるのは男性用の牢だが……レストとか数人は別の女性用の牢にいれてるが……そっちから行った方が良かったか?」
「いえ……無事だとわかってるのでどちらからでも……」
そうか? ならいいや
「兄さん、本当に会わせるの? 大丈夫なの?」
アルスが聞いてくる
色々と警戒してるんだろう
「大丈夫だろ? 何かあってもお前とゲルドが居るからなんとかなるだろ?」
俺はアルスの頭を撫でる
「ま、まあね……」
少し照れながら笑うアルス
「仲が良いですね」
それを見てテリアンヌが言った
「まあな、兄弟仲はかなり良いぞ、お前も兄妹仲は悪くないだろ?」
「ええ、私はそうだと思ってます」
テリアンヌが答える
まあ、悪かったら自分の立場を捨てて、わざと追放される様な事はしないだろ
そう話していたら牢に到着した
「!? テリアンヌ様!!」
真っ先に気付いたのはナルールだ
ナルールの声に反応して、捕虜全員がこっちを見る
「テリアンヌ様!? 何故ここに!!」
驚くガイルク
「あーそうなりましたか……」
察したユルクル
「……っ!」
歯を食い縛るペンクル
「…………」
何を考えてるのか全然読めないマーレス
捕虜の兵達も動揺している
「さて、捕虜諸君……もう察したと思うが……テリアンヌ・パストーレは降伏した、よってこの戦はオーシャンの勝利だ……状況が理解できたか?」
ざわつくパストーレの兵達
「皆さん……申し訳ありません」
前に出て、頭を下げるテリアンヌ
『…………』
誰も何も言わない……言えないのか?
「取り敢えず約束を果たすか……全員を……ってのは人数的に厳しいな……将達だけ先に出すか」
俺は周りの兵に指示を出す
牢からパストーレの将である5人
ペンクル
ユルクル
ナルール
マーレス
ガイルク
を出す
レストは後で解放するように指示を出しておく……別の牢だしな
「っ!」
牢から出た瞬間にナルールが不意をついて俺に向けて突撃する
「ふん!」
「ぐっ!」
それをゲルドが槍の棒の部分で腹を突き、動きを止める
「はぁ!」
「がはっ!」
そして一気に距離を詰めて、足を払い地面に叩きつける
「流石にこれは許せないな」
そう言って槍をナルールの喉に突き刺そうと
「止めろゲルド!」
したけど俺は止める
「っと!」
俺の指示を聞いて槍を止めるゲルド
喉に突き刺さる寸前で槍は止まった
「……何故です? 貴方様に危害をくわえようとしましたが?」
聞いてくるゲルド
「不問だ不問、パストーレの降伏には条件があってな」
「条件?」
そう言うとテリアンヌが口を開いた
「私の命を差し出しますから、捕虜と民の身の安全を願いました」
『!?』
驚くパストーレ勢
「……カイト様はその条件をのまれたので?」
「ああ」
「わかりました」
ゲルドが槍を仕舞い、ナルールを解放する
「ちくしょう……またかよ! また俺は……」
ナルールはショックを隠せない
「…………っ」
テリアンヌは何か言おうとしていたが……何も言えないみたいだ
「テリアンヌ……」
マーレスがやっと口を開いた
「マイルス……兄様」
そしてマーレスはテリアンヌの目の前に立つ
テリアンヌは震えるがすぐに止まる
糾弾される覚悟は出来たようだ
「…………」
黙ってテリアンヌを見つめるマーレス
「……大丈夫です、どの様な非難も受ける覚悟は出来ています」
しかしテリアンヌの声は震えていた
……俺らは離れていた方がいいのか?
そう考えていたら
グイッ!
「きゃあ!?」
マーレスはテリアンヌの手を引き、抱き締めた
「……頑張ったな」
たった一言……たった一言だけ呟いた
その声は優しく……妹を励ます兄の声だった
「……っ! 兄……様……私は……私は……」
「……出るぞ」
俺はアルスとゲルドを連れて牢があるテントを出る
出た瞬間にテリアンヌの泣き声とマーレス達があやす声が聞こえてきた
「小生達は残らなくてもよろしかったので? 装備を奪ってるとはいえ……」
「大丈夫だと思うぞ……今は彼らだけにしてやろう」
もし暴れようとしても兵達がなんとか出来るだろうし……
てか敵の本陣で丸腰で暴れても無意味なのはわかってるだろ?
「…………」
「どうしたアルス? さっきから黙ってるが?」
「べ、別に……」
「なんだ? 羨ましかったのか? うん? 抱き締めてやろうか?」
「い、いいよ!」
俺はアルスをからかいながら将達の元に戻る
さてと、テリアンヌが泣き止んだらパルンに入って……やることは多いな
まあ、先ずは……やっと戦が終わったのを喜ぼう
パストーレ戦
オーシャン軍
勝利