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第142話 パストーレとの激闘 25

 パルン城


 オーシャン城よりは小さいが……立派な城だ

 10段階で見るなら……5くらいかな?

 オーシャン城は7だ

 ついでに、かつての住処だったヘイナス城は3くらいだ


 さて、そのパルン城に入ったわけだが……


「……」


 俺はテリアンヌに着いていきながら周囲を確認する


 出来る範囲で地理を把握しようとしてる

 最悪、逃走劇が始まるからな、逃げ道を考えておかないといけない

 敵はパストーレの兵や民だ……全力で逃げないとアッサリ捕まるだろうな


 そう考えてるうちに玉座の間の前にたどり着いた


「…………」


 テリアンヌが兵に合図を出し

 扉が開かれる


 先に進むテリアンヌ

 俺も続こうとしたが……


「……」

「っと!」


 ブライに制止された


 その間も玉座に向かうテリアンヌ


「……ふぅ」


 テリアンヌが玉座に座る

 そうすると、ブライが俺の前に出していた腕を引っ込めた

 ……入っていいんだよな?


「さっさと来い」


 そう言って歩きだすブライ

 お前……お前ぇ!!


 いや、落ち着け……ペースを乱されるな……


「…………」


 テリアンヌの前まで移動する

 そして礼をする……

 礼儀は大事だからな


「それで? 何を話すつもりだ? 降伏するつもりはないぞ?」


 そう切り出すテリアンヌ


「そうだな……まぁ、話を始める前に……冑を取ってもらえないか?」


 俺はそう切り返す


「貴様っ!」


 ブライが凄む


「落ち着けブライ」

「むっ……」


 テリアンヌがブライを制止する

 そして俺を見て……


「冑を外す必要はない……話は出来る」


 そう言った


「いやいや、外してもらわないと困る……今、目の前にいるのが本当にテリアンヌ・パストーレかわからないからな」

「…………」


 俺がそう言ったら、テリアンヌは黙った

 数秒ほど間を空けてから言う


「私の素顔を知らないのだから、外してもわかるまい?」

「少なくとも、替え玉かどうかはわかるんじゃないのか?」

「……」


 ふむ……この説得じゃ無理そうだな……

 じゃあ、攻め方を変えよう


「なんだ? 俺はお前が女性だって事はわかってるぞ?」


 テリアンヌに向けて言う


「っ!?」


 明らかに動揺するテリアンヌ


「何を言っておる!!」


 怒鳴るブライ


「嘗めるなよ、それくらい見ればわかるさ」


 俺はブライを見て言う

 そして、再びテリアンヌを見る


「……」


 沈黙するテリアンヌ


「何故……そう思った?」


 そう聞いてきた


「そうだな……先ずはその鎧だ、都の中に居るのにずっと着ているだろう? 身を守る為って言うよりは……自分の姿を隠すために着てるように思えた」

「……」

「それで、確信したのはさっきだな……お前の歩き方だ……男性と女性で歩き方に違いがあるんだ、知ってたか?」


 俺はカイトになってから色んな人間と接してから知ったよ


「…………はぁ」


 溜め息を吐くテリアンヌ……

 そして……


「それなら……もう必要ないな」


 冑を外した

 バサッと炎の様な赤い髪の先が肩まで落ちる

 そして顔を隠すように落ちた前髪を退けて、顔を出した


 その顔立ちは、少し幼い印象だ

 確か……今は17歳の筈だが……13……いや、12くらいに見えるぞ?

 でも大分整ってるし……普通に美人だと思う


「顔を隠す必要があったのか?」


 つい、口から出てきた疑問


「私が女だと知ると、騒ぐ連中がいるのでね……」


 テリアンヌは冑を玉座の横にあった台に乗せた

 ……その為の台か


「さあ、冑を外した……さっさと本題を言ってもらおう」


「ああ、そうだな……まあ予想はできてると思うが……降伏しろ、テリアンヌ・パストーレ」

「さっきも言ったな……する気は無いと」


 強気に言い返すテリアンヌ


「捕虜がどうなってもいいのか?」

「全員……覚悟していた、好きにすれば良い」

「それは……お前の本心なのか? 無理してるんじゃないのか?」


 テリアンヌに聞く

 俺が知りたいのはそこだ

 配下を見捨てる……テリアンヌはそれを本心で言っているのか?

 マーレス達が説得したから、自分を殺して言っているんじゃないのか?

 俺はそう考えた


「…………私の考えだ」

「嘘だな」


 テリアンヌの目には涙が溜まっている

 それに……唇から僅かに血が出ている……泣かないように必死に我慢してる様にしか見えないぞ?


 冑を外させて正解だったな……

 わかりやすい!!

 直ぐに顔に出るタイプだな


「嘘ではない……」


 んな涙目で言われても……

 ああ、もう……さっさと話を済ませるか……ブライが凄い睨んできてる


「テリアンヌ、もう勝ち目が無いのは理解できてるだろう? 船も無く、食料の補充も出来なくなったんだ……籠城も長くはもたないだろ?」

「まだだ、まだ戦える!」

「将だってブライしか残ってないだろ? いくらブライが強くてもな……多勢に無勢だぞ?」

「っ!」


「それにな……テリアンヌ、お前は援軍を待ってるかもしれないが……援軍は来ないぞ?」

「……なに? そ、そんな筈はない!!」


 テリアンヌが玉座から立ち上がる


「家の軍師は優秀でね、既に対策をしていたんだ」


 俺はテリアンヌにレリスが行った対策を話す

 コイツらに伝えたところで、何も出来ないしな


「そんな……そんな馬鹿な……」

「テリアンヌ様! 信じてはなりません! そう都合よく事を進められるわけが……」

「援軍がいまだに到着してないのが証拠になるんじゃないのか?」

「っ!」


 ブライが睨んでくる


「……くっ!」

「わかったか? もうパストーレに勝ち目は無いんだ、大人しく降伏しろ、悪いようにはしない」

「その言葉を信じろと?」


 睨んでくるテリアンヌ


「何が話しに来ただ……脅迫じゃないか……」

「そうだな、これは脅迫だ」


 総攻撃されたくなかったら降伏しろ

 命が惜しいなら降伏しろ

 そう言っているんだ


「圧倒的な戦力差、捕らえられた将達、潰された補給、来る期待ができない援軍……諦めて降伏しろテリアンヌ、誰もお前を責めはしない」

「っ!!」


 テリアンヌが俯く

 ……やったか? テリアンヌの心をへし折れたか?


「……さい」

「んっ?」

「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!」


 駄々をこねるように叫ぶテリアンヌ


「ブライ! そいつをここから追い出せ!」

「はっ!」

「うおっ!?」


 ブライに右腕を掴まれる

 そして力強く引かれる


「ちょ! 自分で歩けるから引っ張るな!!」


 そうして俺は玉座の間から追い出された



 ・・・・・・・・


「ふん!」

「っと!」


 玉座の間を出たら、ブライが手を離した


「全く……乱暴だな」

「貴様が言うのか?」


 睨むブライ

 俺はそれをスルーする


「さて、待たせてもらおうかな」

「なに? 待つだと?」


 ブライが腕組みをして俺を見る


「あぁ、まだ降伏するかしないかの返事を聞いていないからな」


 少なくとも……今すぐ俺をどうにかするって気配は感じないからな


「……ここで待つ気か?」

「そのつもりだが?」


 …………


 沈黙


「はぁ……」


 溜め息を吐かれた


「そこの君、コイツを応接室に連れて行け」

「あ、はい!」


 たまたま通りかかったメイドに指示を出すブライ


「こちらです」

「これはどうも……」


 俺はメイドに着いていく



 ・・・・・・・・・


 応接室に着く


「では……えっと……水をお持ちしますね!」

「お構い無く」


 メイドが応接室を出ていった


「さてと……」


 俺は先ず、窓を開ける

 そして外を見る


「結構高いな……だが、飛び降りれない高さじゃない……かな?」


 少なくとも飛び降りて死ぬような高さではないな

 ……怪我はするかもしれないが


「あそこの木をクッションにすれば上手くいくか?」


 真下から少し左にある木を見る

 ギリギリ届く……よな?


「他に出入り口は無さそうだし……」


 次に応接室を見渡す……

 出入り口になりそうなのは、さっきの窓と応接室の扉くらいだ


「よし、もし兵士が捕まえに来たら飛び降りよう」


 窓の少し右に立つ

 パストーレの兵士が俺を捕まえに来たら……斜め左に走って、窓から飛び降りる

 そして木をクッションにして着地する!


「……上手くいけば良いが」


 絶対に怪我するよな……


 ガチャ


「!」


 扉の開く音

 俺は振り返る

 誰が開けた?

 メイドならセーフ!

 兵士なら2人までならセフト!!


「ほぉ、大きくなったものだなぁ、カイト」

「あ……えっ?」


 扉を開けたのは見覚えのある顔

 パストーレの前領主、メルノユ・パストーレだ

 うん……なんだ? 小さい?

 3頭身? それくらいの大きさしかないぞ!?


「どうした? 私を覚えてはいないか? まあお前も子供だったからな」

「いや、その……えっと……お、お久しぶりです」


 駄目だ、混乱して頭が働かない


「うむ、久しぶりだな」


 メルノユは俺の目の前までやって来る


「話は聞いたぞ、降伏を勧めに来たらしいな?」

「えぇ、パストーレに勝ち目が無いのは……わかるでしょう?」

「……確かにな、ふぅ……こうなるとは、全く予想していなかったよ」


 そう言って近くの椅子に座った

 あー、なんか小さいと思ったら……メルノユ用か……


「ほら、君も座りなさい」

「あ、いや俺は……」

「私が居る限り、兵達に捕らえさせようとはさせんよ、安心しなさい」


 …………俺の考えを読まれた?


 言われた通り……椅子に座る


「ふむ……ふむふむ」

「?」


 俺の顔をじっと見てくるメルノユ


「ベルドルトの若い頃にそっくりだな」

「それはどうも……」


 なんだ? 世間話をしに来たのか?


「カイト、知っているか?」

「何をです?」

「私とベルドルトは親友だったんだ」

「その親友が死んだら、直ぐに攻めて来ましたよね?」

「君達を保護しようと思っていたのだよ、カイナスに侵略されたら……君達は助からないからね……まあ結果は見事に返り討ちにされた訳だが」


 笑いながら言うメルノユ


「……それで? 用件はなんですか?」

「そう警戒するな、君の顔を見に来ただけだ」

「……それを信じろと?」

「無理かい?」

「難しいですね」


 元とはいえパストーレの領主だったんだぞ?

 信じろって言われて信じれるわけない


 ………………


 そして沈黙……


「そういえば、テリアンヌにどんな風に降伏を勧めたんだい?」


 メルノユが聞いてくる


「……降伏しないと総攻撃を仕掛けるって脅迫したんですよ」


 俺は答える


「そうか……そうか……君は優しいね」

「はい?」


 俺はメルノユを見る


「わざと悪どいように言っているが……要するに『オーシャンに脅迫されて、仕方なく降伏させられた、テリアンヌは悪くない』……そんな理由を与えようとしたのだろう?」

「っ!?」


 言葉が詰まった


「ち、違っ!」

「隠そうとしなくてもいい……私はもうわかっている」


 そういうとメルノユは語り出す


「例えば……テリアンヌが降伏を拒否した場合……君は捕虜にしたマーレス達を説得するつもりだったろう?」

「っ……」


 完全に読まれてる……


「ふむ、どうやら、ベルドルトに似たのは見た目だけでは無さそうだな」


 そう言うと、メルノユは機嫌を良くして椅子から降り

 歩き出した


「ど、何処に行く気だ?」

「んっ? 部屋に戻るだけだよ?」


 そう言って……メルノユ・パストーレは応接室を出ていった

 ……なんだったんだ?








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