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第135話 パストーレとの激闘 18

 ーーーシャルス視点ーーー


「しゃあ!!」


 オイラは鉤爪を構えてナルールに襲い掛かる


「っふ!」


 ギン!


 ナルールは剣でオイラの鉤爪を受け止める


「へぇ、鉤爪か……珍しい武器を使うな」


 ナルールがオイラの鉤爪を眺める


「よっ!」


 キィン!


 オイラは剣を弾いて、後ろにバク転して距離を取る


「そんなに珍しいか? オイラの故郷じゃ皆使ってるぞ?」


 オイラは鉤爪を見る


「少なくとも、使ってる奴を見たのは初めてだな」


 ナルールが剣をクルクル回す


「ふーん……」


 オイラはナルールを見る

 ……明らかにわざと隙をつくってる

 さっきからこうやって隙をつくって『かかって来いよ』ってやって来てる……


「明らかに罠だってわかるのに、それに突っ込む程オイラは馬鹿じゃないぞ?」

「なんだ、バレていたか? 野性の勘か?」


 ナルールはそう言うと剣を構える


「オイラの直感は鋭いだろ?」


 オイラはナルールを警戒しながら答える

 さっきと雰囲気が違う

 ……今度は全く隙がない


「はっ! 言いやがる!」


 笑うとナルールが動いた


 ドン! っと踏み込み……4歩でオイラの目の前に駆け寄った

 しっかりと見えてたから余裕で反応できたけどね!


 ブン!


「っち! 速いな……」

「でしょ?」


 オイラは右手の鉤爪で突く


 ギィン!


 人差し指と中指の間の部分を剣で押さえられた

 鉤爪の先端がギリギリでナルールに届かない


「この距離で防ぐか!?」

「この距離で戦うのは慣れているからなぁ!」


 ガッ!


 左腕を掴まれる


 ダン!


「っ!」


 右足を踏まれる


「さぁ!ここからどうする!!」


 ヤバい……こいつ……強い!!


 ・・・・・・・・


 ーーーナルール視点ーーー


 猫野郎が厳しそうな顔をする

 かなり鍛えていた様だが……経験の差だな!



 だが……ここからどうするか……

 この猫の相手で結構時間を使っているぞ?

 戦況はどうなってる?


 さっさと決着をつけたいが……コイツ速いんだよなぁ……

 致命傷を与えられない……俺もどうするか……


 思えば……俺が()()()負けたからこうなったんだよな



 3年前……オーシャンを制圧するために出撃した俺は、オーシャンの兵器や策の前に敗北して捕らえられた


 3万の兵を連れていたのに……たった5千の軍に負けた

 その事実が今までの俺を苦しめた!!



『ナルール……何か言うことはあるか?』

『……申し訳ありませんでした!!』


 パストーレの領土の一部と3年間の停戦

 それと引き換えに解放された俺はメルノユ様に土下座する

 土下座した所で、俺のやらかした事は変わらない


『責はこの命を持って償います!!』


 俺は剣を自分に突き刺そうと抜く


『止めんか!!』

『止めるなブライ!!』


 両腕をブライに掴まれた


『止めろナルール』

『っ!』


 メルノユ様にも止められた


『お前が自決したら、お前を捕虜から解放した意味が無くなる……はやまるでない』

『……はっ!』


 俺は頭を下げる

 頭を上げられない、メルノユ様の顔を見れない


『……ナルール、何故お前を、生かさせたかわかるか?』

『……わかりません』


 本来なら見捨てる筈だ

 俺の命なんかより、領土の方が大事だからだ


『頼まれたのだよ、テリアンヌに……』

『!? テリアンヌ様が!?』

『やっと私を見たな……』


 ふっ、と灰色の髭を生やした初老の男性……メルノユ様が微笑む


『テリアンヌがお前はパストーレに必要だから、助けて欲しいと頼んできてな……だから私はオーシャンからの条件を飲んだ、可愛い我が子の頼みだからな』

『テリアンヌ様が……』


 まだ成人する前のテリアンヌ様に、俺は救われた


『ナルール、お前がこれからするべき事は……もうわかるな?』

『はっ! この命をかけて! メルノユ様……テリアンヌ様に尽くしてみせます!! パストーレに栄光を!!』


 俺は土下座から体勢を変えて、ひざまずく


『うむ……頼りにしているぞ』



 それから1年後、テリアンヌ様が成人すると同時に、メルノユ様はテリアンヌ様に領主を継がせた



『賊の征伐、完了しました』

『ああ、お疲れ様ナルール』


 新たな主……テリアンヌ様に報告をする


『うん……やっぱりナルールも頼りになるね』


 不意にテリアンヌ様が呟く


『ありがたい言葉です!!』


『これからも頼りにしてるよ』


 嬉しそうに言うテリアンヌ様……その姿からはメルノユ様の面影を感じた




「ぬぉぉぉぉ!!」


 おっと! 昔を思い出していたら猫が力みだした!

 無理矢理俺を引き離す気か!


「ぬぅ! くぅ!」


 俺は引き離されないように踏ん張る


「おおおおおおおおお!!」


 しかし、猫の方が力が強かった


「ぐお!」


 俺は引き離されてしまった


「ちっ、馬鹿力が!」

「おっらぁぁ!!」

「っ!?」


 猫が蹴りを放つ


 ゴスッ!


「ぐぅ!!」


 とっさに左腕で受けたが、なんって威力だ!

 骨が折れるかと思ったぞ!


「仕切り直しだな!」


 猫が言う


「っち!!」


 ・・・・・・・・・


 ーーーシャルス視点ーーー


 ナルールと離れられた!

 また捕まったら厄介だ……


 でも、近づかないと倒せない


 どうするかな……


『不意打ちのやり方?』

『ああ! 教えて!!』


 オイラはオルベリンに聞く


『ふむ、そう言われてもな……不意打ちは教えて何とかなるものではないからな……』

『そんな事言わずにおせーておせーて!』

『ワシから言えることは……相手が予想してない事をやれとしか言えんな』

『相手が予想してない事?』

『たとえば……』



「……武器を……よし、やってみるか!」


「なんだ? 何か企んでのか?」

「そう思うか?」


 オイラはニヤリと笑う


「そうとしか思えんな!!」


 ナルールが剣を構える


「うぉぉぉぉ!!」


 オイラはナルールに突っ込む


「…………っ!」


 ギィン!


 オイラの左の鉤爪を受け止めるナルール


「おおおおおお!!」


 右の鉤爪でナルールの心臓を狙う


 ギィン!


 っが、剣を少し動かされただけで防がれた

 まあ、ここまでは予想通りだ!!


 オイラは鉤爪を両手から外す


「っ!?」


 ナルールが目を見開く

 よし! 不意をつけた!!


 オイラはそのまま右の拳でナルールの顎を狙って殴る


 バキッ!


「ぐっ!」


 ナルールが後ろにふらつく

 一撃で仕留めるつもりだったのに……身体を仰け反らせて、オイラの拳の勢いを少しだけ受け流したのだ


 でも……


「ぐっ!」


 足にきてるみたいだ!!

 すかさず畳み掛ける!


「どりゃぁぁぁぁ!」

「っぐ!」


 左の拳で顔面を狙う


 ガッ!


 ナルールが剣を離して右手で受け止める

 お互いに素手だ


「この!」


 また右の拳を振る


「っ!」


 ナルールが左手で受け止める


「おらっ!」


 ガン!


「いっ!」


 ナルールが頭突きをしてきた

 兜同士がぶつかる、これが頭に響いて痛い


「もう一発!」


 ナルールがもう1回頭突きをしてくる


「このっ!」


 それをオイラは身体を仰け反らせて避ける

 そのまま勢いを利用して……


 バキッ!


「ごぶっ!」


 身体を回転させてナルールの顎に蹴りをいれた

 えっと、なんだっけ? サマーソルトだっけか?

 無理矢理曲げたから両腕が少し痛むが問題ない!


 てかナルールが蹴られた衝撃で手を離した!

 この隙を逃さない!!


「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 ガシッ!


 オイラは思いっきりナルールにぶつかる


「がっ! てめっ!」


 ふわりと、ナルールとオイラの身体が浮く

 ナルールが後ろに倒れるみたいだ

 オイラはそのままナルールに馬乗りみたいに乗って、ナルールの頭を右手で掴む


「落ちろ!!」


 ドゴォ!


「がっ!?」


 そして、ナルールの頭を地面に叩きつけた


 ドサッ!


 ナルールの身体が地面につく


「……か……こ……」


 思いっきり頭を打ったからか、ナルールは身体を痙攣させながら気絶した


「はぁ、はぁ……よっしゃ!! 勝ったぁぁぁぁぁぁ!!」


 オイラは叫びながら両腕を挙げる


 ズキッ!


「いっ!?」


 そして直ぐに下ろした

 ヤバい、両腕……てか肩が痛い!!

 これ外れた? 関節外れた!?


「ナルール様を助けるぞ!」

「うぉぉぉぉ!!」


 パストーレの兵が数人駆け寄ってくる


 ヤバい……今は戦えそうにないんだけど!?


「兵長を救援するぞ!」

「数はこっちの方が多いんだ!!」

『ぉぉぉぉぉ!!』


 オーシャンの兵達も駆けつけてきた

 数はパストーレの3倍くらいいる


 オイラの目の前でお互いの兵達が交戦する


 その隙に別の兵がナルールを縄で縛る


「撤退します! 兵長はどうしますか?」


 兵が聞いてくる


「オイラも一旦さがる、関節はめないと……」


 いや、本当に痛い……これからは無茶しないようにしよう



 こうして、オイラは本陣に撤退した


 ついでに、少し後でオイラを救援した兵がパストーレの兵を数人程捕縛して戻ってきた





 シャルスVSナルール


 シャルス 勝利


 ナルール、気絶した所を捕縛される……兜が凹んでいた模様


 シャルス、軍医に関節をはめられてから戦線に復帰













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