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第133話 パストーレとの激闘 16

 ーーーメビルト視点ーーー


「ふん!」


 ギィン!


「っと! 全く……本当にやりにくいですね」


 我輩の剣に槍を弾かれたユルクルが呟く


「だろうな、お前の癖を利用しているから戦いにくいだろう」


 左手に力がこもる癖は抜けてないようだな


「やれやれ、ヘルドやレルガならまだ戦いやすいのに……よりによってメビルトとは……はぁ」


 ユルクルはため息を吐く

 槍をくるくる回しながら我輩を見る


「思い出しません? マールマールの防衛戦を」


 マールマール防衛戦……今から6年前だな


 ベルドルト率いるオーシャン軍

 そのオーシャン軍を追い返すためにパストーレとマールマールが同盟を結び、共闘したのだ


 我輩とユルクルで軍を率いて、ヘルドを追い詰めたりしていたな

 確かオルベリンはブライが止めていたんだったか……


「それがまさか敵同士として戦うことになるとは……」

「遅かれ早かれ、我輩達は敵対するのだ、時が来た……そう考えた方が良いぞ?」

「それはそうですけどね~」

「言っておくが、我輩も兵達に周囲の警戒を命じてある、いつもの手口は使わせんぞ?」

「…………っち!!」


 このユルクルが得意とする手口

 それは己を囮……餌として敵を誘導し、弓兵等の伏兵で奇襲する戦法だ


 ユルクルは将としては強くはない

 しかし、頭は回る

 今、こうしてる間もユルクルの頭では複数の策を浮かべているだろう

 その全てを……潰す


 奴に完全な敗北を与える

 そうすれば……ユルクルを捕縛することも出来るだろう


「さっきから馬の鳴き声が聞こえると思ったら……私の兵達を見つけてましたか」


 ユルクルは周囲を見る


「ふむ……」


 さて、何を仕掛けてくる


 ・・・・・・・・・・


 ーーーユルクル視点ーーー


 さてと……ここまでは予想通り


 ここから、どう攻めるか……


 1、撤退するふりをしてメビルトを誘導し、伏兵で奇襲する


 2、隠し持ってる火薬を発火させて、メビルトの馬を驚かせて落馬させる


 3、このまま話を続けて援軍を待つ


 4、考えるのを止めて、突撃する


 ……2は私も落馬する可能性がありますね

 私の馬も絶対に驚きますし


 3は現実的とは言えませんね……メビルトの援軍が来る可能性もありますし


 1か4ですが……

 1はメビルトが引っ掛かるとは思えませんね……

 なら……4……いやいや、普通に負けますね



「…………」


 困りましたね……何をやってもメビルトには看破される気がしますね



『ユルクルは何でも知ってるね!!』



「っ!?」


 なんでこんな時に昔の事を思い出しますかね……


『そう思ってもらえるなら、とても光栄です』


 まだ幼かったテリアンヌ様……あの方に色々教えてほしいと願われて……


『ねぇねぇ、ユルクル! あれは?』

『あれは流砂ですね、危ないから近寄っては駄目ですよ?』

『はーい!!』

『って言ってる側から近寄ってるじゃないですか!?』


 ……んっ?

 流砂?


 あ、そう言えばここは……


 ……狙ってみますかね



 ・・・・・・・・


 ーーーメビルト視点ーーー



「メビルト、貴方の相手をしているのは時間の無駄です……ですので」

「なんだ? 退くのか?」

「いえ、他の将を相手にします、では!」


 そう言ってユルクルは北に馬を走らせる


「むっ! 待て!!」


 我輩はユルクルを追う

 もし、ユルクルが撤退するなら伏兵を警戒して追わないが……

 ユルクルは他の者を狙うと言った……恐らく嘘だろうが……追わないわけにはいかない

 伏兵を警戒する



 ズボッ!


「むっ!?」


 馬の前足が地面に飲まれた!?

 我輩は素早く馬から降りる


「これは……流砂か!」

「あー落ちませんでしたか」


 残念そうに言うユルクル


「狙いが外れたようだな!」


 我輩は馬のかかった流砂に入らないようにユルクルに斬りかかる


「うわっと!?」


 キィン!


 剣を槍で受け止められる


「危ないじゃないですか!!」

「今は戦中だぞ? 危ないもなにもあるまい」

「そうですねっと!!」


 キィン!

 ギィン!


 我輩の剣とユルクルの槍が弾き合う


 ユルクルを落馬させたかったが……ふむ、難しそうだな


 我輩の馬は、流砂に飲まれないようにするため動かない

 周りには両軍の兵が戦っている……お互いに戦うのに必死で我輩達が目に入っていない……救援は期待できないな


 さて……どうやってこの状況を切り抜けるか……


 捨て身で突っ込むか?

 ユルクルもそこは予想できないだろう……

 奴を流砂に投げ込めれば良いが……いや、ここは欲張らずに奴を落馬させる事にしよう

 先ずは対等な状況にするべきだ



「ぬぉぉぉぉ!!」

「うぉ!?」


 我輩はユルクルに向かって突撃する

 意表をつけたのか、驚くユルクル



「真っ正面から来ますか普通!?」


 そう言って槍を突いてくる


 ドスッ!


「ぐぅ、うぉぉぉぉぉ!!」


 槍が我輩の左肩を貫く

 しかし、我輩は気にせず突っ込む


「なっ!? 捨て身ですか!?」


 槍を手離すユルクル

 我輩の身体から抜くのは諦めたようだな

 まあ、抜けぬだろうし、当たり前か


「剣は不慣れなんですけどね!!」


 剣を抜くユルクル

 そして剣を振る……


 ザシュ!


 剣が我輩の右肩に食い込む

 しかし我輩は止まらない


「ふん!」

「くっ!! この!!」


 ユルクルの元にたどり着き、我輩はユルクルの腰を掴む

 ユルクルは左手で我輩の頭を殴り、右手は剣を引き抜こうとしている


 それでも我輩は止まらない、1度やると決めたなら……目的は果たす!!


「ふん!!」

「うわぁぁぁぁ!?」


 我輩はユルクルを投げる

 いや、横に落としたと言うべきか?

 ……いや、やっぱり投げたと言おう



「ぶっ! こんなことするって、正気ですか!?」


 ユルクルは身体を起こし、剣を構える


「不利な状況を覆すには、時には無茶も必要だ」


 かつてのヘルドとの戦いで、我輩はそれを学んだ


「はぁ、はぁ……それで? 私を馬から落とすために貴方は両肩を負傷しました……その状態でマトモに戦えるので?」

「見くびるなよ……お前になら充分勝てる」

「っ! 貴方こそ、私を嘗めてますね! 私だってパストーレの将です! 弱いままではないんですよ!!」


 ユルクルは剣を構えた

 我輩も剣を構える……ふむ、左腕は動かさない方が良さそうだな……右だけで戦うか


「はぁ!」


 ユルクルは踏み込み、突きを放つ


「ふん!」


 ギィン!


 我輩はユルクルの剣を横に弾く


「くっ! はぁ!」


 ユルクルは直ぐに立て直し、剣を振るう


「ふん!」


 ギィン!


 我輩の剣がユルクルの剣を受け止める


「っ!!」


 距離を取るユルクル


「ユルクル、降伏しろ、お前に勝ち目は無いのだ……わかるだろ?」

「う、五月蝿いですよ! 降伏なんてするわけない! 降伏するくらいなら……死んだ方がマシです!!」


 そう言ってユルクルは何かを投げた


「ふん!」


 我輩は飛んでくる何かを斬る


 バサッ!


「むっ!? これは!」

「火薬ですよ! 吹っ飛べ!!」


 そう言ってユルクルは火種を投げた


「!?」


 ドゴン!!


 そんな爆音が響いた


 ・・・・・・・・・


 ーーーユルクル視点ーーー


「ぐぅ!」


 爆発の衝撃で私は尻餅をついた


 少し弱かった様ですが……メビルトはマトモに爆発を受けた!

 私は勝った!! あのメビルトに!!


 テリアンヌ様!! 勝ちましたよ!!


『震えているのか?』


「っ!?」


 あれ? 私はなんで泣いているのです?


『怯えることは恥ずべきことではない、怯えて、全てを捨てることが恥ずべき事だ』


 なんで思い出すのです?

 かつてメビルトと共闘した時の事を……なんで今!!


「わ、私は勝ったんだ!! 私は……私は!!」


 違う……本当はわかっている

 私はずっと怯えていた! メビルトと戦う時、ずっと震えていた!


 その恐怖に打ち勝てぬまま……私は彼を爆破した

 そういう意味で言ったら……私は彼に負けたのだ

 勝負には勝った……しかし精神(こころ)では負けたまま……

 この敗北感は、ずっと私を縛り付けるだろう


「…………」


 私は目の前を見る……黒煙で良く見えないが……黒煙が晴れたらバラバラになったメビルトの亡骸があるだろう


 ……彼の亡骸は丁重に埋葬しよう……

 余裕があれば……ですけどね


「結構……憧れてましたよ、貴方のことは」


 殆んど無意識の内に口から出た本音(ことば)

 ああ、私は彼を尊敬していたのですね



「そうか、それは誇らしいな」

「っ!?」


 黒煙の中からメビルトが飛び出してきた


 ガッ!


「ぐぁ!」


 そして首を掴まれて押し倒される


「ぐぅ! な、なぜ!? マトモに受けたはず!?」

「ああ、我輩も死ぬかと思った、鎧も殆んど吹っ飛んだよ……咄嗟に薙ぎ払ったのが良かった様だ」


 くっ! 火薬が少なかったか!!

 もっと……量が……あれば……

 テリ……アンヌ……様……



 ・・・・・・・・・・


 ーーーメビルト視点ーーー


「ごほっ!」


 大きく咳き込み、ユルクルは気を失う


「最後の火薬……あれは効いたぞ……ぐっ!」


 我輩は横に転がる

 ユルクルの左に倒れこむ


「最後の最後に無茶をしたか……身体がもう動かん……」


 意識はある……しかし動けない

 困ったな……このままだと我輩は死ぬな

 両肩の傷も軽くはない……それに爆発でボロボロだ


「……我輩の天命もここまでか……」


 ふむ、まあ……最後にカイト様に仕えられたのは幸福だったか……


 少なくとも……彼は部下を見捨てはしない……

 その様な人物に仕えられたのだ……

 うむ……悪くはなかった


『私は……強くなりたい』

「…………」


 6年前のユルクルの言葉を思い出す


「お前は充分強いぞ」


 我輩は隣で気絶してるユルクルに向けて言った


 これが……最後の言葉になるのか


「メビルト様!!」


「むっ?」


「良かった! 意識がある! おい! 生きてるぞ!!」


 オーシャンの兵達が駆け寄ってきた


「早く陣に運ぶぞ! 馬もだ!」

「ユルクルはどうする?」

「捕縛だ! 急げ! パストーレの奴等が来る前に済ませるぞ!!」


 我輩は兵に担がれる


 ふむ……どうやら、天はまだ我輩を生かすらしいな

 なら、今度は奴の意識がある時に言ってやろう


『お前は強いぞ』っとな




 メビルトVSユルクル


 引き分け


 メビルト、重傷の為撤退

 ユルクル、気絶してる所を捕縛される




































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