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第131話 パストーレとの激闘 14

 ーーーティール視点ーーー



「ティィィィィルゥゥゥ!!」


 ペンクルが怒号を飛ばしながら突っ込んでくる


 いつもの様な余裕が感じられない……

 それだけ船での出来事が彼を追い詰めたのだろう


「はぁ!!」


 ギィン!


 彼の偃月刀を槍で受け止める

 ふむ、激情に駆られていても、強さは変わりませんか

 手強い相手ですね……



「おぉぉぉぉぉ!!」

「くっ!」


 押してきますか!!

 随分と攻撃的ですね!!


「今回は、随分と……荒々しい戦いをしますね!!」

「うるせぇ! とっとと斬られろぉ!!」


 ブォン!

 ブォン!


 振り回される偃月刀を避ける

 何ででしょうね、彼の攻撃が良く見えますね



「…………」


 それに、何故か頭が冷めてる……少し前までペンクルを見たら激怒していたのに……今は落ち着いて戦えている


 何故なのか……それを考えてみる

 今ならそんな余裕もある


 ペンクルが激怒してるから?

 相手が怒ってると自分は冷静になることってありますよね?


 もしくは……ボゾゾ殿が船でペンクルを吹っ飛ばしたから?

 それで、私の気がはれたのでしょうか?


「……いえ、違いますね」


 パストーレ軍と交戦する前に……ユリウス様と話したからですね

 思い出す……些細な会話を……


 ・・・・・・・


『ふぅ……』

『ティール、何凹んでんだ?』

『いえ、私は大した事は出来ていないので』

『? 叔父上の策を成功させたじゃないか?』

『あれはボゾゾ殿の助けがあったからです……私は……』


 そう言って落ち込んでいた私に……ユリウス様が言ったのです


『んな落ち込むなよ……僕が知る限りティールは2番目に強い奴なんだから』

『……2番目に?』

『ああ、1番はオルベリンな? アルスとかレムレも強くなったけどさ、ゲルドとかと比べても……僕はティールが強いと思う』


 真っ直ぐに私を見て言うユリウス様


『……ペンクルに苦戦しましたが?』

『あの時のティールは冷静じゃなかったからな、いつも通りに戦えばいいさ!』


 親指を立てるユリウス様


『いつも通り……ですか……』


 そう言われたら……自信も戻ってきますね


『ユリウス様』

『んっ?』

『ありがとうございます』

『んん?』


 なんでお礼を言われたかわからないって顔をしたユリウス様

 そして前を見て


『おっ! パストーレの連中が出てきたぞ!!』


 ・・・・・・・



「いつも通りに……」


「おぉぉぉぉぉ!!」


 偃月刀が迫る……私の首を狙ってますね


 槍で受け止める?

 いえ、渾身の力で振るわれてる様子の今の一撃を受け止めるのは得策ではありませんね


 しかし、避ければそれが隙になる

 なら……


「はぁ!」

「っ!?」


 攻める!

 偃月刀が私に届く前に……素早く突く!

 振られる偃月刀より、私の突きの方が速い!


「ぐっ!」


 ガキッ!


 ペンクルは無理矢理体勢を変えて、肩当てで槍を受け止めました

 偃月刀も何も無いところを通りすぎました


 そう、いつも通りに落ち着いて戦えばいいのです


「ペンクル、どうしました? 随分と弱いですね!」


 ついでです、彼は本来は考えて戦うタイプの将です

 今は力任せに戦ってますからね……挑発して更に有利に戦うとしましょうか!



 ・・・・・・・・・・


 ーーーペンクル視点ーーー


「ペンクル、どうしました? 随分と弱いですね!」


 ティールが俺を挑発する


 ……俺が弱い?


「ふっざけんなぁぁぁ!!」


 頭に血が上る


 俺は早くお前を殺さないといけない

 さっさとオーシャンの奴等を殺して……責任を取らないといけない!!



「っと!」


 ギィン!


 偃月刀が止められる

 なんでだ!? なんで苦戦する!!?


 確かにティールは強くなっていた

 リュウリで戦った時はその成長に驚いた

 だが……まだ俺の方が強かった!

 なのに! なぜだ!?


 船の上でもだ!

 まだ俺の方が強かったんだ!!

 この短時間で成長したのか!?



 ギィン!

 ガキッ!


 くそっ! 決定打が与えられない!

 くそっ! くそっ!


 ・・・・・・・・


『ペンクル……』


『テリアンヌ様!?』


 港まで泳ぐのに体力を使いきり、休んでいた俺の所にテリアンヌ様がやって来た


『テリアンヌ様……申し訳ありません!! 全ては俺の慢心の』

『いや、君は悪くないよ……私も船への襲撃なんて考えてなかった……もっと警戒するべきだった』

『いえ、それでも守りぬくのが俺の仕事です……俺は役目を果たせなかった! こうなったら捨て身で突撃し、カイト・オーシャンの首を取り、責任を取ります!』


 食糧の補充が難しくなった以上……俺は命を捨ててでも責任を取るべきだと考えた


『馬鹿を言うな! そんなの許すわけがない!』


 怒鳴るテリアンヌ様


『しかし! そうしなければ俺は!』

『もう一度言う、馬鹿を言うな!』


 テリアンヌ様が俺の頭を両手で掴む

 冑の奥で俺を見つめる瞳が見えた


『ペンクル……君は充分責任を取った、苦しい思いをしてでも、船を奪われたことを伝えてくれた……それで充分だ』

『…………』

『今、ユルクル達と話し合いをしている……君の体力が回復しだい、オーシャンに決戦を挑む』

『!?』


 理屈はわかる

 籠城が難しくなった以上……戦うしかない

 しかし……


『兵力の差は明白です……それならやはり俺が……』

『ペンクル! 戦うなら皆一緒だ! 君だけを死地に行かせない!』

『っ!!』


 手に込められる力……

 俺が無茶を言うなら更に力を強めるだろう……

 絶対にやらせないって意思を感じる


『しかしテリアンヌ様……それでは俺の気が済みません……俺は責任を果たしたと思えません……』

『なら……勝て! 死にに行くんじゃなく、勝ちに行け!!』


 テリアンヌ様の瞳から涙が落ちた……俺にはそう見えた

 ……よく感じれば、俺の頭を掴む両手も震えている


 ……ああ、この方は本当は不安なんだ

 考えたら当たり前だ……まだ17歳の若さ……それに……この方は……

 それなのに不安なのを必死に隠そうとして俺に語りかける


『……わかりました、テリアンヌ様……このペンクル、必ず勝利をテリアンヌ様に届けます』

『うん……そうしてほしい』


 冑で見えないが……微笑んでくれている

 それはよくわかった


 ・・・・・・・・


 俺は勝たなければならない!

 テリアンヌ様の為に! パストーレの為に!!


 なのに……こんな手間取って!!


「はぁぁぁ!!」

「うぉぉぉぉ!!」


 ガキィン!!


 偃月刀を弾かれる


 何をやっているんだ俺は!!

 ああ! くそ! むしゃくしゃする!

 頭がこんがらがる!!


「うおおおおおおおお!!」


 ゴスッ!


「なっ!?」


 ティールが驚く

 それでも気にせず……俺は()()()()を殴る


 ゴスッ!

 ゴスッ!

 ゴスッ!


 額から血が出る

 鼻血も出たし

 口も切っちまった!


「えっ? はっ?」


 ティールは困惑している


「はぁ……はぁ……」


 ぺっ!

 俺は血を吐き捨てる


「な、何をしてるんです?」


 ティールが聞いてくる


「……なに、少し自分を罰しただけだ……戦いに集中してなかったからな」


 すぅぅぅぅはぁぁぁぁ


 俺は深呼吸をする


「さてと……ティール、いい加減終わらせようぜ」


 俺は偃月刀を構える


「…………ええ、そうしましょう」


 ティールも槍を構えた


「っ!」

「はぁ!!」


 俺とティールは同時に馬を走らせて


 キィン!


 お互いの攻撃をぶつけ合う



 ・・・・・・・・


 ーーーティール視点ーーー


 ペンクルがいきなり自身を殴ったときは驚きましたが

 どうやら自分を落ち着かせたみたいですね……


 挑発しすぎましたかね?

 逆に手強くなりました


「はぁ!」

「ふっ!」


 私の槍とペンクルの偃月刀が交わる


 ペンクルが次にどう動くか予想して攻撃し

 それを予想されて防がれる


 ペンクルがどう攻撃してくるか予想して

 その攻撃を受け止める


 キィン!

 ギィン!

 ガッ!

 カツン!

 コッ!

 カキン!


 一手……一手でも多く相手の先を読む

 それが出来た方が勝つ……


「ふん!!」


 ペンクルが偃月刀を力強く振るう

 これは避けるべきで……いや


「はぁ!」


 ガキィン!!


「ちっ!」


 受け止めるべきですね!

 見た目よりも力がこもっていませんでした!

 避けていたら、素早く振りなおすか、軌道を変えられてやられてましたね


 ギギギギ!


 しかし、どうしましょうかね

 膠着状態になってしまいました


 弾き飛ばす?

 流す?

 何か不意をつける一手を……


「…………」


 そうだ、試してみよう

 一歩間違えれば私は死にますが……そうでもしないとペンクルには勝てない……

 なら……試す!!

 サルリラ! 貴女のやり方! 真似しますよ!!



 カッ!

 ザシュ!!


「何!?」


 私は力を抜く

 偃月刀が私の鎧を斬り、刃が左の脇腹に入ります

 ここです! 私は左手で偃月刀を掴み、脇腹に力を込めます


「ぐっ!」


 偃月刀が抜けなくて焦るペンクル

 手を離せば良いのですが、そうしたらペンクルは武器が無くなりますね

 知ってますよ? 偃月刀以外を持ってないの


 手を離したら、この偃月刀は私が使わせてもらいます


「ごふっ!」


 いや、でもこれかなりキツいですね……痛いし、吐血しましたよ?

 あ~内臓までいきましかね?


 でも、その価値はありましたね


「がぁぁぁぁ!!」


 私は右腕に力を込めます

 そして全力の突きを放ちます


「くっ!」


 ペンクルは偃月刀から手を離して避けようとします

 回避を選択しましたか……でも、もう遅いですよ!!


 ドス!


「ぐぅ!?」


 ペンクルの胸元を狙いましたが、腹部に槍は刺さりました

 狙いは外れましたが……このまま……ペンクルに槍を掴まれる前に!!


「うぉぉぉぉぉ!!」


 ズブ!


「ごぅ!? がぁぁぁぁ!!」


 ドスン!


 ペンクルは私の槍を掴みます

 しかし、その直後に落馬しました

 刺さってた槍も抜けました


 ペンクルが体勢を立て直す前に駆け寄り、首筋に血に濡れた槍を当てます


「がっ! ぐっ……くそ……」


 腹部からの出血

 首筋に当てられた槍

 武器の偃月刀は私の脇腹に……これもう抜いていいですよね?


 まあ、どう見ても私の勝ちですね

 満身創痍ですけど……


「……はぁ……はぁ……殺せ」


 ペンクルが呼吸を乱しながら言います

 殺す……ええ、それが私の望み……()()()


「いいえ、殺しません、捕らえます」

「……昔の……仕返しか?」

「いいえ、このまま殺すより、捕らえた方が戦の勝利に近付くと判断しました……私は1人の武人である前に、オーシャンの将ですからね……個人の意思より国の為です」

「……はっ、そうかよ……」


 数人のオーシャンの兵が縄を持って駆け寄り

 ペンクルを捕らえます

 腹部に布を当てて、止血も試みます

 捕らえるんですからね、死なれたら困ります



「ふぅ……私も陣に撤退しますか……流石に……これは……き……つ……」


 ドサッ!


「ティール様!? おい! ティール様も運ぶぞ!!」

「おう!!」



「させるか! ペンクル様をお助けするぞ!」

「おおおおおおお!!」


 朦朧とする意識の中……オーシャンの兵とパストーレの兵が戦う音が聞こえて……遠退く……

 意識を失う直前に……声が聞こえた


「あんたらさっさと行きな!! ここは私に任せな!!」

「マリアット様!!」


 そんな声だった




 ティールVSペンクル


 勝者 ティール


 ティール、重傷により撤退

 ペンクル 捕縛


























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