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第129話 パストーレとの激闘 12

 ーーーペンクル視点ーーー



「……ふぅ~」


 船の上で俺は煙草を吸う


「…………」


『なんだ? お前も吸うのか』

『文句あんのか?』

『いや、自分以外にも吸う者が居て喜んでいる……隣、いいか?』

『……勝手にしろ』



「……ちっ!」


 自爆した馬鹿を思い出す

 他にも方法はあった筈なのにな……


「くたばりやがって……」

「ペンクル様!」


 兵が駆け寄ってきた


「なんだ? もうすぐ出港だろ?」

「またオーシャン軍が攻めてきたようです!」

「……アイツらもしつこいな……親父が相手してんだろ? 任せておけよ」

「し、しかし……」

「おい、俺達の仕事はなんだ?」

「はっ! 村から物資を輸送することです」

「そうだ、それが俺達の仕事だ、籠城には食料も水も必要だからだ、俺達はやるべき事をやる……わかるな?」

「は、はっ!!」

「さっさと出港させろ、防衛して腹を減らした連中に飯を食わせてやるぞ!」


 3隻ある船が出港する


「松明をしっかり灯せよ! 今夜は暗いからな!!」

「はっ!!」


 ・・・・・・・・・


 ーーーティール視点ーーー



「……バルセ様、パストーレの船です」

「うむ、見えてる」


 私達は小船に乗りながらパルンの港を目指していた

 そうしていたら、前方に灯りが見えた

 望遠鏡を覗くと、灯りは松明だった

 照準を合わせて拡大率を合わせて、やっと船だと確認できた


「どうやら3隻あるみたいですね」

「ふむ……」


 バルセ様が少し上に望遠鏡を動かす

 私も同じようにする


 船の甲板が少し見えた

 松明を持ったパストーレの兵が見える


「将の姿は見えないな……船室に居るのか?」

「わかりませんね……」


 さて、このまま近付いたらどうなる?


「あんなに照らされたらバレますよね?」

「そうだな、雨でも降ってくれれば松明の火も弱るのだが」


 空は曇り……降るかどうかはわからない


「雨乞いでもしますか?」

「私はそういうのは信じない主義だ」

「そうなのですか?」


 意外だった……バルセ様は信仰とか好んでると思っていた


「信仰するのを否定はしないが……私は家族を失ってからは信じなくなってな」

「……あっ」


 そうだ、バルセ様は奥様にお子様

 更に妹様に義弟を病で失ってしまったのだ

 恐らく色んな手をうったのだろう


 医療、信仰、迷信

 それでも助からなかった……

 唯一残った肉親はユリウス様だけだ……


「その、申し訳ありません」

「謝る必要はない、もう吹っ切れたのだからな」


 ふふふ、と笑うバルセ様


「まあ、私としては、ユリウスに早く結婚して孫を見せてほしいのだがな」

「少し厳しそうですね」


 ユリウス様はナンパをしているが成果は芳しくない


「ティール、どうだ? ユリウスと結婚する気は無いか?」

「ご冗談を、ユリウス様が嫌がりますよ」

 

 最近、自分でも口喧しい存在になったと思うんですから

 ユリウス様からしたら面倒な見張り役でしょうね


「ふっ、そうか」


 バルセ様はそう言うと望遠鏡を覗くのに集中する

 雑談はここまでだって事ですね


 ・・・・・・・・・・


 ーーーペンクル視点ーーー


「…………」


 俺は物見台の上に座り、夜空を見る


 月も星も見えねえな……


「はぁ……」


 ……思い出す


『ペンクルは星が好きかい?』

『んぁ?』


 夜、眠れずに外で星を見ていた時に声を掛けられた


『テリアンヌ様……城から出てきたので?』

『うん、眠れなくて……』


 そこにはまだ幼い頃の主


『ペンクルは星が好き?』

『いや、わかんねえっすわ、ただ……』

『ただ?』

『見てたら……なんか落ち着くんですよ』

『そうか……うん、わかるよ』


「……星……見えねえかな……」


 俺は夜空を見続ける


 ガッ!


「!?」


 なんだ? 今の音は!?


「敵襲! 敵襲ぅぅぅ!」


 兵士の叫び声

 俺は下を見る


「ぐわぁ!」

「くっ!」


 賊か?

 ……いや……あれは……


「オーシャン軍!?」


 なっ!? どうやってこの船に!?

 アイツらが使える港は中立地帯の筈だ!!


「くっ!」


 考えるのは後だ

 俺は飛び降りる


「おおおおおおお!!」


 そして真下に居たオーシャンの兵を


 ザシュ!!



 偃月刀で縦に真っ二つに斬り捨てた


「全員! 応戦せよ!!」


 俺は指示を出す


 ザシュ!!

 ズシュ!


 近くに居たオーシャンの兵を殺す


 奴等の狙いは船みたいだな……

 俺達の籠城策に気付いたみたいだな!!


「船を守れ!! オーシャンの兵は殺せ! 難しそうなら突き落とせ!!」

『おおおおおおお!!』


 だが生憎、俺達は船上の戦いには慣れてんだよ!

 その証拠に、俺達の方が優勢だ


「ペンクル!!」


 名前を呼ばれた


「んっ? ほぉ、ティールか……お前が親玉か?」


「貴様と雑談するつもりはない!」


 鋭い突きが迫る


 キィン!


「っと! 余裕がないなティール!」


 まあ、襲撃が失敗してるんだ、慌てるなって方が無理だな


「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 ティールが何回も突きを繰り出す


 キィン!

 ギィン!

 カッ!

 ガッ!


 俺は全ての突きをさばく


「いい加減決着(けり)つけるか!!」


 俺は偃月刀を振り回す

 狙うは胴体! かっさばいてやるよ!!



 ゴスッ!


「うぐっ!?」


 ティールに向けて偃月刀を振ろうとしたとき

 真横から何かが飛んできて俺にぶつかる


「ちぃ!?」


 それは死体だった……パストーレの兵の死体

 それが飛んできた?

 俺は横を見る


「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「!?」


 そこにはデカイ男が迫ってきていた

 後3歩程の距離!!


「くっ!」


 俺はティールから意識を外して男を見る

 ティールよりもコイツがヤバイ!


「ふん!!」

 

 ガキィン!!


「ぐわ!?」


 男の一撃を防ぐ

 防いだのだが……力が強すぎて、無理矢理後退させられた


「てめぇ……ボゾゾ!!」


 やっと顔を確認できた

 コイツは確か昔オーシャンに居た奴だ


「ペンクル、落とす!!」


 そう言って突っ込んでくるボゾゾ


「ざけんな! この筋肉野郎が!」


 俺は偃月刀を振るう


「ふん!」


 ザシュ!!


「なっ!?」


 左腕で受け止めやがった!?


「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 そしてボゾゾの拳が迫る


「ちっ、くしょおがぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 俺は咄嗟に左腕を出すが

 そんなの関係ないのか……ボゾゾの拳が俺の左腕を殴る

 拳の勢いは衰えず、俺の左脇……左の胸元まで衝撃が伝わる


 そして、俺の身体が吹っ飛んだ



「がぁぁぁぁぁぁ!?」


 ザブン!


 俺は海に落ちた

 ちくしょう……あの筋肉馬鹿が! 脳みそまで筋肉でできてんじゃねえのか!?


「ごぶっ!」


 くそ! 鎧が……重くて……

 しず、む!


「がぶ!? ごぼ!」


 ざけんな! こんな最後なんて認めねえ!

 認めてたまるかぁぁぁぁぁぁぁ!!


「がっ! ごっ! ごぁぁぁ!!」


 俺の身体は……海に沈んでいった


 ・・・・・・・


 ーーーティール視点ーーー


「…………」


 ペンクルが沈んでいった


「ティール、ぶじ?」

「え、ええ……助かりました」


 本当は私の手で倒したかった……でもこれは戦……個人の事情なんて後回しにするべきだ

 

「ボゾゾ殿、他の船は?」

「将が、いなかった、らくに、せいあつ、できた」

「つまり、これが最後の船ですね?」


 そう言うとボゾゾ殿が頷く


 そして丁度制圧が終わったのか兵達の勝鬨が聞こえた


「よし、では早速この船で帰りますか!」

「うっ!」



 私達は船を動かしてメイデル港を目指した



 ・・・・・・・・・・


 少し船を動かしてから1つの船が小船を作っていた場所に止まった


「?」


 私は止まった船を見る

 そうしていたらもう1つの船と乗っている船も止まった


「ティール! 聞こえるか!」


 別の船の甲板からバルセ様が叫ぶ


「はい! 聞こえます!!」


 私も叫ぶ


「お前とメビルトは先にカイト殿の元に戻ってくれ!! 私とボゾゾで船を運ぶ!」

「よろしいのですか!!」


 私は聞く


「ああ! 直ぐにカイト殿に策の成功を伝えてくれ!!」

「わかりましたぁ!!」


 私は兵に小船を降ろさせる

 そして小船を利用して陸に上がり、先に上がっていたメビルト殿と数名の兵と共にカイト様の元に向かった



 ・・・・・・・・・


 ーーーパルンの港ーーー



 そこには見張りの兵士が数人居た


 彼等は船を見送った後、焚き火をして暖をとっていた


 そんな時だ

 

 バシャ!


「んっ?」


 水音がした

 波の音とは明らかに違う


「?」


 兵の1人が音のした海面を見る


 ……………

 ザバン!!


「ぶはっ! がはっ!」

「うわぁぁぁぁぁ!?」


 半裸の男が上がってきた

 驚いて尻餅をつく兵士



「こぶっ! ぐっ!」


 男は苦しそうに仰向けになり


 ドゴォ!


 自分の腹、そして胸元を殴る


「ぶふぅ!!」


 そして水を吐き出した


「はぁ……はぁ……」


 苦しそうに呼吸をする男

 兵士が松明を持って近づき……男の顔を見る


「ペ、ペンクル様!?」


 男はペンクルだった



 ・・・・・・・・


 ーーーペンクル視点ーーー


 鎧を脱いで、必死に港まで泳いだ

 飲み込んだ水は吐き出した……

 次にやることは……


「ペ、ペンクル様!?」


 丁度兵士が来たな


「おぃ……」


 俺は指をくいくいっと動かして近寄るように合図する


「は、はい!!」


 兵士が顔を近づける


「テリアンヌ様に、伝えろ……オーシャンに、船を……奪われた!」

「っ!?」

「早く伝えろ!」

「はっ!」


 兵士が走っていく


 くそ、俺も早く動きたいが……身体が動かん



「くそっ……」


 油断していた……奴等は海には来れないと思っていた!


「くそ……」


 ボゾゾの力を甘く見ていた……避けていれば……


「くっそぉぉぉぉ!!」


 殺してやる!! オーシャンの奴等を!


 ・・・・・・・・


 ーーーテリアンヌ視点ーーー


「……それは本当か?」

「は、はい!」


 兵の報告を聞いた


「船が……奪われた……」


 頭が真っ白になる……そんな、折角父上が準備していた長年の策が……

 いや、それよりも!


「ペンクルは無事なのか!? 他の兵達は!?」

「戻られたのはペンクル様だけです!」

「……くっ!」


 戻らなかった兵は……捕らわれたか……或いは……


「わかった……ペンクルを休ませてやれ」

「は、はい!!」


 兵が走っていった



「良いのですか? あの馬鹿に罰を与えなくて?」


 黙って聞いていたブライが言う


「ペンクルは必死に戦った筈だ、そして今回の事を伝えてくれた……そんな彼に罰など与えない……」


 ブライを見ながら答える


「そうですか……申し訳ありません」


 ブライが謝る

 なんで謝るのか聞きたかったけど……今は先にやることがある


「ミーティ、食料の在庫は?」

「恐らく1月分かと」

「……新しい船は?」

「完成には早くても半年はかかりますね」

「そうか……」


 …………こうなったら……覚悟を決めるしかない


「ペンクル以外の将達を集めてくれ……ペンクルが復活しだい……オーシャンに攻撃する!!」


 一か八か……戦うしかない

 そして……勝つしか……


 身体が震える……

 違う、これは……武者震いだ!!

 ……武者震い……なんだ……



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