第127話 パストーレとの激闘 10
将を集めて軍議を始める
取り敢えず伝えたことは
1、パストーレには戦意があること
2、パストーレの将は死んだバベルク以外が集合していた事
3、パストーレは投石器を持っていること
「将が全員いるなら……伏兵は無いと考えた方が良さそうですね」
ペンテリウスが言う
「何故ですか?」
レムレが問う
「伏兵部隊を仕切る者が居ませんからね、オーシャンくらいですよ? 兵長とか小隊長とか階級を細かくしてるの」
「仕切る人が居ないと伏兵は無いんですか?」
「仕切る人物が居ないと、部隊は纏まりません、烏合の衆ですね、驚異にならない」
烏合の衆……その考えは俺も同意するが……
「一応警戒はしていてくれ、何か仕掛けとかあると嫌だし」
「畏まりました」
俺はペンテリウスに言っておく
「さて、話を区切りますかね」
パンっと手を叩いてルーツが会話を切る
「将がパルンに集まっている……籠城の構えと見ても良いのでは?」
ルーツが続けて言った
「そうだな……その為に投石器も用意したんだろう」
あれは厄介だ
いや、ごり押せば勝てるだろう……こっちは大軍なんだ、一斉に攻めれば確実に勝てる
しかしだ、被害が大きくなるのは間違いない
兵も将も大勢死ぬだろう……甘いかもしれないが俺は被害を出来るだけ出したくない
だから突貫は考えていない……
「んんー? んー?」
マリアットが頭を抱える……なんだ? 考えるのは苦手か?
「カイトさま、きになる」
「んっ? ボゾゾ? どうした?」
意外だな、ボゾゾが意見を言うとは……
「パルン、みやこ」
「ああ、都だな」
「でかい」
「そうだな、パストーレで1番デカイらしいな」
リュウリとペルールを見てないから良くわからないが……
「はいる?」
「……んん?」
はいる? 何が?
都に入るのかって事か?
「ボゾゾ……ちょっといいか?」
ルーツがボゾゾの側に行く
そして何か話す
そして……
「ああ、そうか! つまりボゾゾはパストーレの人口がパルンに収まるのかって思ったんだな?」
『っ!?』
ルーツがボゾゾの言葉を分かりやすくしてくれた
それを聞いて全員が驚く……いや、これは『あ、確かに!』って感じだな
ボゾゾに言われるまで気にしてなかった……確かにおかしい
いくらパルンが大きくて首都だからって……民が全員入るとは思えない……
「……シャルス!」
「へい!?」
俺はシャルスを見る
「以前パルンに行った時に街の様子はどうだった?」
「どうだった? ……いや、普通でした!! 活気はありましたけど……何か可笑しいと思うところは無かった筈……」
シャルスはそう言って考え込む……
時間がかかりそうだな
「……うーん」
消えたパストーレの民
パルンに居るのは間違いない
だって他に安全な場所なんて無いんだからな
……見過ごしたって言ったらそれまでだが
人に1人も会わないってのは流石に可笑しいからな……
「でもパルンに収まるとは思えない……」
俺も考え込む
他の将達も考える
「高い建物を作って、そこに住まわせてるとかは?」
ユリウスが言う
「流石に限界があるから、全ての民ってのは無理よ」
ルミルが言う
「間引いたってのは無いよな?」
メットが言う
「そんな領主の元で安心して暮らせるのか?」
バルセが言う
「ヒヒヒ、案外他の領に輸送したのかもしれないな!」
ブルムンが笑う
「戦が終わった後に呼び戻すのか? 手間がかかるだけだろ?」
ゲルドが否定する
「…………」
ルーツが考え込む
「ルーツ、何かわかったか?」
「……あと少し……あと少し何か情報が欲しいですね……もう答えが見えてる気がするのですが……」
喉まで答えが出かけてるって感じか?
「あっ! 思い出した!!」
「っと!?」
シャルスが叫ぶ
アルスが突然の事に驚いていた
「どうしたシャルス!」
俺はシャルスを見る
「使者の仕事を終わらせて、玉座の間から出るときにテリアンヌか軍師と話してたんだ!」
「……何を?」
アルスが聞く
「あー、確か……テリアンヌが『港、民』で軍師の……名前何だったかな……」
「軍師の名前は後で良いから!」
俺は急かす
「軍師は『出来て』とか言ってました!!」
なんだそりゃ?
意味がわからない……
「港……民……」
ルーツ、聞き流していいぞ
大したことじゃないから
俺はそう思ったが……
「っ!?」
「うお!? ルーツ!?」
ルーツは違ったのかテントから飛び出して行った
「ど、どうしたんだ?」
マリアットが驚く
「……花摘ですかね?」
ペンテリウスが言う
ああ、尿意とか急に来るときあるよな
って違うだろ!
「わかりました!!」
「うぉ!? もう戻ってきた!?」
メットが驚く
俺はルーツを見る……ルーツの右手には紙が握られていた
「ルーツ、それって……」
「地図です! これを見てください!」
ルーツは地図を机に拡げた
ノースブリード大陸の地図だ
「これがどうしたのだ?」
バルセが聞く
「ここですよ! ここを見てください!」
ルーツが差す
「パストーレがどうしたんで?」
ユリウスが言う
「もっと東!」
……?
俺は地図を良く見る
えっと……ここがオーシャンで……ここがガガルガで……その南にパストーレが有って
更に東?
…………んん?
……っ!!
「おい、ルーツ……まさか……」
俺はルーツを見る
「恐らく、今カイト様が考えた事が正解だと思います、てかもうそれしか考えられません」
ルーツが差した場所
そこには無数の小島が描かれていた
地図では小さな島だが……実際は人が住むのには困らない広さがあるだろう
それこそ、島1つに村が1つ作れるくらいの……
「おいおいおい、まさか島に村を移したとか言うのか? そんなの数ヶ月で出来るのかよ?」
マリアットが言う
「簡易的なのなら出来るでしょうが……とても現実的だとは思えませんよ?」
ペンテリウスも言う
そんな2人をルーツは見る……そして……
「数ヶ月では無いとしたら? 数年で用意していたとしたら?」
そう言った
「ヒヒヒ、ルーツはパストーレが数年前からこうなるって予測してた見たいな言い方だな」
「いや、流石にそれは無理だろ、パストーレは現在の状況になるとは思ってなかったと思う……でも……考えてみてください、首都からの船でしか気軽に移動できない場所にある村……そこの農業を発展させれば? 商業を発展させれば?」
…………暫くの沈黙
「敵に攻められない収入源が出来る?」
レムレが言った
「その通りだ!」
ルーツがレムレを見る
「恐らく、本来は食料や商売の安全な収入源としようとしたのでしょう……しかし、オーシャンに戦を仕掛けられた事で、テリアンヌは予定を変えたのでしょう……籠城の為の供給源にした」
「ってことはあれか? パストーレは食料の心配をせずに籠城出来るってことか!?」
メットが叫ぶ
「ええ、いや厳密に言えばいつかは食料は尽きるでしょう……しかし、先にこちらの兵糧が尽きる可能性が高い……パストーレは新鮮な食料を手に入れられますが……我々には無理ですからね」
そうだな、もうボソボソのパンは飽きたぞ……
保存食だから仕方ないけどな!!
「それでは、パストーレの狙いは籠城で我等の兵糧が尽き、撤退させる事か……」
バルセが言う
「そうですね、それと援軍がオーシャンを攻めるまでの時間稼ぎでしょう……オーシャンが攻められたら私達も戻らないといけませんからね」
勿論、ある程度の軍団は残せる
しかし、それは数の利を無くすって事だ
20万の大軍には挑めないが、10万の軍のなら挑めるだろうからな
「なんだよ! 打つ手ないのかよ!?」
頭を抱えるユリウス
『…………』
困ったな……ルーツの予想が正解なら……このまま布陣していても時間の無駄だ
かといって突貫は……でも他に打つ手が……
「ふむ、ではパルンの港を無効化すれば良いのだな?」
バルセが言った
「えっ? で、出来るのか!?」
俺はバルセを見る
「ええ、私の策が上手くいけば……ですがな」
「流石叔父上!!」
ユリウスが歓喜する
「ど、どうするんだ?」
俺は聞く
港を無効化……パルンに入れないのにどうやって……
「簡単です、海から港に攻めればいい」
「はっ? いや理屈はわかるが無理だろ? 船がないぞ?」
パルン以外の都で近い港はパストーレとの共有だ……つまり中立地点で、今回の戦で利用することは出来ない
「あるじゃないですか、北に……『メイデル港』が」
「!? あそこか!?」
メイデル港……以前視察した北の港の名前だ
「あそこから船を出すのか!? 時間がかかるぞ!?」
「それは仕方ないでしょうな」
「漁師を巻き込むのか!? 死ぬかもしれないぞ?」
「ご安心を、彼等に危害はありません、必ず無事に帰します」
「…………」
俺はバルセを見る
バルセは力強く頷く……自信があるんだな
「……バルセの考えはわかった……任せてもいいか?」
「はい、必ずパストーレの港を無効化させましょう」
「……皆もいいな?」
俺は将達を見る
反対は無かった
当たり前だ……だって他に策は浮かんでいないんだからな
「よし、ならバルセに任せる、何か必要なのはあるか?」
「それでしたら……」
俺はバルセから必要な事を聞き
利用することを許可したのだった
頼むぞ……バルセ!