表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/290

第126話 パストーレとの激闘 9

 ーーーテリアンヌ視点ーーー



「…………来たか」


 外壁の上で私は呟く

 遠いが、確かにオーシャンの軍を確認した


「テ、テリアンヌ様……ど、どうしましょう?」


 見張りの兵が怯えている……

 それもそうだろう……オーシャン軍は大軍……数で我々を圧倒している


「安心しなさい、勝つのは私達です」


 私は領主……堂々としていなくてはならない


「…………」


 マーレスが私を見ている


「どうした?」

「いーえ、何にもありませんよ?」


 やれやれっと頭を振るマーレス

 それは何にもない人間の行動ではないだろうに……


「テリアンヌ様、兵器の準備はどうします?」


 1人の女性が駆けつけてくる

 彼女は『レスト』

 ブライの孫で、ペンクルからは姪にあたる


「いつでも使えるようにしていてほしい……オーシャンが攻めてきたら起動してくれ」

「わかりました!! マーレスさん! 手伝ってください!」

「わかった……テリアンヌ様」


 マーレスが私の背後を通る時に呟く


「手が震えてますよ……深呼吸して落ち着いてください」

「……これは武者震いだ」

「それなら良かった」


 大丈夫だ……勝てる

 この時の為に準備してきたのだ


「バベルク……」


 ブライの報告で彼が自爆した事を聞いた

 ……命をかけてくれたのだ……彼の覚悟に報いたい……



「……」


 私はオーシャン軍を見続けた


 ・・・・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー



 パルンに少しずつ近付く

 そして見晴らしのいい場所で布陣した

 ここが拠点になるな……


「さて、どう攻めるか……」


 相手の動きがわからない


 ここまで襲撃は無かった

 パストーレが仕掛けた抵抗なんて、トルリでのバベルクの火計くらいだ

 それが不気味だった……普通は襲撃したり、伏兵で奇襲したりして抵抗する

 それをしない理由がわからない


「そんな訳で4人に来てもらった訳だ」


 俺は目の前に立つ4人を見る


 ルーツ、ゲルド、ブルムン、バルセ


「どう思う?」


 俺は聞いてみる


「普通に考えるならば……必要が無かったのでは?」


 バルセが言う


「必要が無い? どういうことで?」


 ゲルドが聞く


「我々オーシャン軍がパストーレから見たら大軍なのは奴等も知っているでしょう、襲撃も奇襲も無意味と判断したのでは?」


 バルセは答える


「ヒヒヒ、それでも抵抗するのが普通だと思うがね?」


 ブルムンが言う


「では他に理由が浮かぶのか?」


 バルセが問う


「自分は、トルリに誘い込むためにしたと考えてる、見事に引っ掛かったお方が居ただろ?」


 やめろブルムン、その口撃は俺に効く


「…………」

「ルーツ?」


 ルーツは黙っている

 話題を変えてほしいんだが……


「どちらにせよ、1度攻めてみないと判断はしづらいですな……奴等の狙いはそれで少しはわかるのでは?」

「そうか?」


 バルセにそう言われたら……そんな気がする

 うーん……


「一気に攻めるべきかな?」


 兵の数は多いし……物量作戦でいくか?


「待ってください」


 ルーツが口を開いた


「どうした?」


 俺はルーツを見る


「先ずは少数……3万程度で攻めてみましょう」

「むっ? 数の有利を捨てるのか?」


 バルセがルーツを見る


「様子見ですよ、パストーレもバカではありません、何か用意してると思います……ですので先ずは少数で攻めて、それから一気に攻めましょう」

「どうせ攻めるのなら最初から数で攻めればよいのでは?」

「いえ、パストーレの手の内が読めない今は、慎重にいくべきです!」


 なんかヒートアップしてきてない?


 言い合う2人……と、止めるべきだよな?


「いつパストーレへの援軍が来るかわからない今! 速やかに決着をつけるべきだ!!」


 バルセ


「オーシャンにはレリスを始めとした優秀な将が残っています! 彼等なら必ず耐えてくれる! 我等は焦らずに挑むべきだ!!」


 っとルーツ


 どちらの言い分もわかる


「…………」


 どうする? どちらの案を採用する?


 悩む俺……そこに


「ヒヒヒ、どちらも先ずやるべき事を理解してないな!」


 ブルムンが言い放った


『なにぃ!?』


 2人がブルムンを見る


「先ずは降伏の勧告をするべきじゃないか? パストーレに戦う意志があるか確認してからでも遅くないだろ?」


 ここで新たな選択肢!!

 余計ややこしくなった!!


「小生もブルムンの意見に同意する」


 ゲルドがそう言う


「お前もか……」


 俺はゲルドを見る

 ゲルドが俺を見る

 その眼に『ここはお任せを』っと言われてる気がした


「パストーレはリュウリとペルール……そしてトルリを失いました……残りのパルンだけで戦えるとは思えません……もしかしたら降伏する機会を待っているのかも知れません」

『………』


 ルーツとバルセが黙る

 俺も黙って聞く


「ヒヒヒ、パルンをこの大軍で包囲すれば、パストーレの兵達は畏縮する……恐怖は伝達するのは……あんたらもわかってるだろ?」


 ブルムンが続けた


「た、確かにそうだが……」


 ルーツが答える


「そんな状態のパストーレに降伏を勧告する……上手くいけば戦わずに勝てる、どうだい? ヒヒヒ!!」


「ブルムン殿の考えはわかった……では誰が行くんだ? 兵士に行かせるのか?」


 バルセが聞く


「勿論、カイト様さ」

「そうか、俺かぁ……俺ぇ!?」


 えっ? 俺が行くの!?


「お前は何を言っている! カイト様を危険な目にあわせるのか!!」


 怒るルーツ

 

「安心してくれよ、このゲルドがしっかりと守るから、ヒヒヒ!!」

「小生に任せて欲しい」


 自信満々なゲルド

 だ、大丈夫だよな?


「不安だな……ボゾゾも同行させよう」


 おお! バルセ!


「レムレとシャルスも同行させましょう、いざというときにレムレの弓とシャルスの速さは役に立ちます」


 ルーツ!!


 うん、お前達の気持ちは嬉しいぞ!!


「俺が行くことは決定事項なんだな!!」


 それだけが引っ掛かるぞ!!



 ・・・・・・・・・


 そんな訳で俺達は少数でパルンに向かう


「カイトさま、かぶと、ちゃんと、する」

「あ、ああ……」


 ボゾゾに言われて、俺は冑の目元を下ろす

 うーん、視界が悪いなぁ……仕方ないけどさ


「パルンってどんな所なんだ?」


 ユリウスがシャルスに聞く

 そうだよな、気になるよな


 …………ん?


「ユリウス!? お前いつの間に!?」


 ボゾゾの後ろからユリウスが出てきた


「最初から居ましたよ?」

「……いた?」


 ボゾゾも今気づいたようだ


「えっ? ユリウスはメンバーじゃなかったんですか!?」


 驚くレムレ


「ええい! ここまで来て引き返すのは時間が勿体ないな! ユリウス! 大人しくしとけよ!」

「了解!!」


 大丈夫か本当に?



 そうしてる間にパルンの門の前に到着した



「おい! あれって……」

「間違いない! カイト・オーシャンだ!」


 外壁の上で騒ぐ兵達

 さてと……


「パストーレの兵達よ!! 私はカイト・オーシャン! 諸君らに降伏を呼び掛ける!」


 言いたいことはシンプルにだ


 ざわつくパストーレの兵達


「おい、降伏だってよ!」

「ど、どうするんだ?」

「見てみろよ、あの大軍を……」

「ひぇぇぇ」


 動揺してるな……


「パストーレに勝機はない! 速やかに降伏せよ!」


 兵達が門を開けてくれてら楽なんだけどな……


 兵達が包囲してる軍を見る

 そして顔色を悪くする

 もう少しだ……


「適当なことを言うのはやめてもらおうか」


 そんな声が聞こえた

 さっきまでざわついていた兵達が黙る

 そして、奴が姿を現した


「テリアンヌ・パストーレ……」


 シャルスが呟いた


「へぇ、あれが……」


 ユリウスも呟く


 外壁の上に姿を見せたテリアンヌ

 ゴツい鎧を着て、厳つい冑を被っている

 肌を一切露出してない完全装備だ


 俺は何処の慈母星だと思いながら見上げる


「よぉ、初めましてだな、テリアンヌ・パストーレ!」


 俺は声をあげる


「ふん、憎たらしい顔だな……カイト・オーシャン」


 恐らく、俺を睨んでるんだろうな……


「ほお、本当に総大将自らやって来たか」


 ブライが顔を出す

 ぞろぞろとパストーレの将がやって来た


「あれは何しに来たんだ?」


 ペンクル


「降伏の勧告らしいですよ?」


 レスト


「けっ! 降伏なんて誰がするかよ!」


 ナルール


「猫野郎が居るな」


 マーレス


「6人で来るとは……嘗められてますね」


 ユルクル


「あれが……父上の仇……」


 そして……あれはバベルクの息子の『ガイルク』だな


 パストーレの将が全員揃ったか……


「テリアンヌ・パストーレ! 大人しく降伏しろ!」


 俺が叫ぶ


「断る……」


 テリアンヌが答える


 ここで俺に芽生える悪戯心

 昔の仕返しでもするかね……


「貴様にはこの軍勢が見えないのか? 20万の大軍だぞ?」

「それがどうした!」

「おい! ナルール! 無謀って言葉をテリアンヌに教えてやったらどうだ?」


 俺がそう言うと……


「あ、あの野郎!!」


 ナルールが顔を真っ赤にして怒る

 昔、アイツが言ったことを言ったからな

 結構根にもつタイプだったのかね……俺って


「カイト・オーシャン……私の返事はこれだ!!」


 テリアンヌが手を挙げる


「ふん!」


 するとブライが矢を放つ

 矢は俺に向かって飛んでくる


「ふっ!」


 パシン!


 ゲルドが槍で矢を叩き落とす


「そうか、なら戦うしかないな!」


 いやー残念だなー

 なんて呟きながら俺達は撤退を開始する


「陣に戻ったら投石器を使うぞ、門や外壁を破壊する」

「あとは全軍で突撃すれば勝てますね……流石にパルンまで燃やすとは思えませんが……」


 俺とゲルドが会話する

 すると……


「っ!? カイト様! パルンから何か飛んできます!」

「えっ?」


 レムレの叫び

 俺は振り返る


 おー、何か飛んでるな

 大きくて、丸くて……ってあれは!


「岩ぁ!?」


 岩が飛んできた

 岩はグングン迫ってくる


「全員走れ!!」


 俺が叫んだが遅かった


 ドシン!!


 岩が着弾した……俺達の後方で

 届かなかったのか、狙いを外したのかわからないが……

 次が来る前に急いで戻る!


 ・・・・・・・・・・・


「兄さん! さっき岩が飛んでなかった!?」


 陣に戻るとアルスが駆け寄ってきた


「ああ、どうやらパストーレは投石器を用意した様だ……」


 オーシャンの投石器をパクったのか?

 それとも独自に作ったのか……

 どちらにせよ厄介だ……


「近寄りづらいですね」


 レムレが言う


「ああ……」


 くそ、予定が狂ったな……

 投石器で門と外壁を破壊する予定が……パストーレも投石器があるなら厳しくなる

 だってこっちが用意してる間に岩が飛んでくるからな……

 こっちの投石器が破壊されるかもしれない


 そうなったら打つ手が……

 くそっ、テリアンヌが強気なのはこれが理由か!


「他にも何かあるかもしれないな……」


 取り敢えず全員集めよう……パストーレが攻めてくる様子はないし

 今のうちに対策を考えよう


 あー、頭が痛い……


















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ