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第125話 パストーレとの激闘 8

 ーーーカイト視点ーーー


「ではカイト様、行って参ります」

「ああ、頼んだメビルト、ティール」


 8,000の兵と2人の軍医を連れて、メビルトとティールはレルガをペルールに護送する


『必ず復帰して参ります!』


 そう言っていたレルガ

 その心意気は嬉しいが……無理はしないでほしいものだな


 レルガが完治する前に決着をつけてしまおう



「よし、俺達も進軍しよう」


 陣を片付けてパルンを目指す

 因みに軍は3つに編成した

 理由はパストーレからの襲撃に備えてだ

 これなら挟撃されたり、最悪包囲とかされても対応できるからな

 ……いや、まあ包囲されるのは物理的に無いと思うがな


「ここからパルンにはどれくらいだ?」


 俺はゲルドに聞いてみる……知ってる?


「確か……4日ほどだったかと……この速度なら6日はかかりそうですが」

「6日か……ふむ」


 時間が結構かかるな

 6日……軽傷の者なら傷を癒せるかな……

 でもなぁ、士気とか戦意がな……

 バベルクの自爆で大分下げられたんだよな……

 鼓舞したら上がるか?

 俺の鼓舞で上がるのか?


 ・・・・・・・・・


 ーーーアルス視点ーーー


「兄さん、困ってるな……」


 僕は先を行く兄さんを見て呟く


「大規模な戦ですからね、考えることが多いんでしょうね」


 レムレが聞こえたのか答える


「うーん、兄さんの負担を減らせないかな?」

「流石に厳しくないですか? アルス様も僕達も経験が少ないですし……大したことは出来るとは思えませんよ?」

「そうだけどさぁ……何かしたいんだよ」

「うーん……」


 僕とレムレは悩む


「ヒヒヒ、悩んでるな若者!」

「うわっ!? ブ、ブルムン!? あれ? 第3軍団にいたんじゃないの!?」


 いつの間にかブルムンが近くにいた

 彼は第3軍団を任されて、この第1軍団からかなり南に居る筈なのに!


「カイト様にちょっと提案をね、ヒヒヒ!!」


 そう言うとブルムンは兄さんの所に向かった


 そして兄さんと話すブルムン

 何を話してるのかな?

 兄さんが目を見開き、考え込んでいる

 少ししてから、ブルムンに頷いて何か言った


「?」


 僕はその様子を見て首をかしげた


 話が終わったのかブルムンは戻って行った


 気になる……兄さんに聞いてみるべきかな?

 …………


 いやいやいや! 何か重要な事なら後でわかる筈だ!

 ここは気にしないようにしよう!



「…………」

(気になるんですね……)


 レムレが僕を見ているが気にしない



 その後、夜になったので野営をする

 暗いのに無理に進軍して夜襲を受けましたってなったら笑えないからね


「ふっ! はっ!」

「しゃ! でりゃ!」


 僕はシャルスと模擬戦をしていた

 シャルスの調子を見るのと、僕が身体を動かしたかったからだ



「はぁ!」

「っと!」


 バキィ!


 僕の棒での突きをシャルスは仰け反りながら避ける

 そしてそのまま足を上げて、1回転しながら僕の顎を蹴りあげた


「がっ!?」


 ドサッ!


 堪らずに倒れる僕


「よし! オイラの勝ちだな!」

「いっ、つぅ~!」


 顎を押さえる……今のなに?


「へぇ、随分と器用な事が出来るな」

「お、カイトの旦那!! 見てたんで?」

「ああ」


 兄さんがやって来た

 僕に手を伸ばす


「ほら、立てるか?」

「うん、ありがとう兄さん……」


 僕は兄さんの手を取り立ち上がる


「しかし綺麗にサマーソルトが決まったな……」

「サマーソルト?」


 なにそれ?


「んっ? ああ……えっと、あれだ、今の技はなんかそんな名前だって聞いてな」

「へぇ……そんなのがあるんだね」

「オイラも初めて知った!」


 えっ? 知らないでやったの?


「そのうちソニックブームとかしそうだな……」


 なんか兄さんがよく分からない事を呟く


「それより兄さんは何してるの? 休んでると思ったけど」

「流石に寝るには早すぎるからな……少し陣内を歩いていた所だ」

「……護衛もつけずに?」

「大丈夫、ちゃんと人が多いところだけ選んださ……さっきまでルミルと話しててな」

「あ、そうなんだ」


 ならいいや

 兄さんはたまに自分の立場を忘れてるのか単独で動くからね

 平時ならまだ良いけど……戦時中は控えて欲しいよ


「さて、2人は模擬戦をしてたんだろ? 続けるなら続けてくれ、俺は見物しとくから」


 そう言って兄さんは少し離れて木箱に座る


「どうする?」


 聞いてくるシャルス


「やるさ、もう動けるし」


 兄さんの目の前だ……勝つところを見せたい


「よっしゃ! ……そう言えばカタナは使わないのか?」


 シャルスが僕の腰に差してる刀を指差す


「あー、模擬戦で使うのは危なくない?」

「刃とは逆の峰を使えばいいだろ?」

「それでもかなり痛いぞ? 鉄の塊だぞ?」

「いいからいいから! アルスの全力を見たいんだって!!」

「ならちょっと待って……こうしてっと」


 僕は刀の向きを変える

 抜いた時に峰打ちになるようにする


「なんだ? アルスが刀を持ってるのか?」


 兄さんが聞いてくる


「うん、この間オルベリンに会いに行った時にね」

「へぇ……」


 兄さんは興味深そうに見てくる


「よし! やろうぜアルス!!」

「ああ!」


 僕はシャルスと模擬戦を再開した

 それを見物する兄さん


 ・・・・・・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー


「ふっ!」

「はぁ!」


 俺の前でアルスとシャルスが模擬戦を繰り広げる


「おぉ……」


 槍の代わりにしてる棒を巧みに扱うアルス

 シャルスも負けじと素手で棒を受け流す

 こうして見ると逞しくなったな2人共


「…………」


 特にアルスは本当に強くなったな……

 いや、昔から俺より強かったけどさぁ……


『兄さん……』

『兄さん!!』


 昔のアルスを思い出す……ミルム程ではないが結構ブラコンだったなぁ

 ……今も割りとブラコンか? レムレやユリウスみたいな友人が出来てからはマシになったが……


「はぁ!!」

「うぉ!?」


「おお!」


 アルスの突きがシャルスのガードを崩してぶっ飛ばした


「今度は僕の勝ちだね」

「まだまだ! もう1回!!」


 シャルスがすぐに立ち上がって次の戦いが始まった


「元気だな……んっ?」


 いつの間にか見物人が増えていた

 ルーツ、レムレ、ルミルに……おっ、マリアットも来てら

 兵も増えてきたな……


「うぉぉぉぉぉ!!」

「のりゃああああああ!!」


 そうしていたら2人の戦いもヒートアップしていた


 ガキィン!!


 ぶつかり合った2人が距離をとる


「……ふぅ」


 アルスが棒を投げ捨てる

 そして刀に手を伸ばす


「お、いよいよ使うか!」


 シャルスが楽しそうに言う


「うん、試してみたいからね」


 アルスが答える


「よっしゃ! ならオイラも全力だ!!」


 シャルスが両手を地面につける

 4足走行……それがシャルスの本来の速さを引き出す


 ヒュン!


 風が吹いた

 今のは、シャルスが動き出して起きた風だ


「……消えた」


 俺は呟く

 シャルスの姿が消えたのだ……えっ? そんなに速いのか!?


 ダン!


「うぉ!?」


 近くの木箱が吹っ飛んだ

 なんだなんだ!?


 ドン!


 離れた木からそんな音がした


 バン!


 俺の目の前の地面が抉れた

 足跡がある……あ、シャルスの奴、跳びまわってるのか!?


 そして……


「……」


 シャルスの姿が見えた

 アルスの真後ろから飛び掛かる


「っ!!」


 しかし……アルスは反応していた

 何? 見えていたのか?


 そしてアルスが動いて……

 ビュウ!!


「っ!?」


 風が吹いた

 今度は自然の風だ……くそ! 目にゴミが!!



『おおおおおおおお!!』

「えっ? なに?」


 わき上がる歓声


「がふっ!?」


 ドサッ!


「うお!? シャルス!?」


 目にゴミを取って目を開いたら、目の前にシャルスが飛んできた


「いっつつつつ……ヤバイ、鎧に当たったけど痛い! なんっつう威力だ!」

「だ、大丈夫かシャルス?」

「大丈夫です!」


 元気そうだな……

 な、何が起きたんだ?

 くそっ! 見逃した!!


「兄さん!!」


 アルスが駆け寄ってくる


「どうだった?」


 ヤバイ……見逃したなんて言えない!!


「あ、ああ! 凄いなアルス! いつの間にそんな事が出来るようになったんだ?」


 兎に角! 話を合わせる!


「今だね! 兄さんが見てる、負けられないと思ったら……やっと出来たよ!」


 嬉しそうなアルス……うぅ、見逃したなんて口が裂けても言えない!!


「そうか、頑張ったなアルス」

「へへへ……」


 アルスの頭を撫でる

 りょ、良心が痛む!!


 ・・・・・・・・・


 2日後


 さて、パルンを目指している俺達だが

 今日の野営ではいつもと違うことをする


「よし! ドンドン配れ!」

「はっ!!」


 兵達が陣内の人間に酒を配る


「兄さん? これは?」


 アルスが酒を持って困惑していた


「2日前にブルムンから提案があってな、3つの軍で順番に宴をしようってな……盛り上げて騒げば、下がっていた士気も上がるだろうって話でな」

「そっか、あの時の……」


 アルスが納得する


「2日前はブルムン達第3軍団が……昨日はバルセ達の第2軍団が……今日は俺たちの番だ」


 さて、全員に酒がまわったな?


「諸君! もうすぐパルンに到着する! そこを攻略すれば我等の勝利だ!! 今回の宴は……あれだ! 前祝いだ!!」


 これでは士気を上げてくれとは言えないからな

 俺は酒を掲げる


「是非楽しんで、英気を養ってくれ!! 乾杯!」

『乾杯!!』



 こうして盛大に宴は開かれた

 飲んで食って

 騒いで暴れて……勿論陣内でな?


 そして翌日には……


「うぉ……兵達のやる気が凄いな……」


 進軍しながら俺は兵を見る

 昨日は疲れきっていた様な顔だったのに……今は全員がやる気に満ちた顔だ


 ……宴の効果すげぇ



 それから更に3日後

 俺達オーシャン軍はパルンを目視できる場所に辿り着いたのだった
















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