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第120話 パストーレとの激闘 3

 ーーーレルガ視点ーーー


 俺達はペルールを目指して進軍する


「ねぇレルガ、何で僕達は森の中を進んでいるの?」

「パストーレ軍に見つからないためです」


 アルス様の質問に答える


「ペルールには以前行ったことがあります、森の側に作られた都で、この森を突き抜けると、見つからずにペルールの前まで行けるのですよ」


「へぇ……」


「シャルス、一応聞いておくが、俺達以外の足音は聞こえていないんだな?」

「ああ! オイラの耳には聞こえてないぞ!」


 元気よく答えるシャルス


「ふむ……ほほぉ」


 さっきからゲルドが珍しそうに望遠鏡を覗いている


「こんな物があったとはな……」

「なんだ? オーシャンに来た時に見てなかったのか?」


 俺、結構使ってるぞ?


「ああ、見張りが何か持ってるなとは思っていたが……」

「それ、オイラのおじさんがカイトの旦那に売ったんだぜ!」

「君の? シャルス、君は確かベスルユ大陸出身だったね?」

「おう!」

「こんな物がベスルユ大陸には溢れているのか?」

「ああ! ベスルユ大陸にはオイラみたいな獣族が色々いて、それぞれの種族が協力して便利な道具を作ってるんだ! まあ、おじさんは他の大陸に行って商品を仕入れるけどね」


 シャルスが得意気に言う


「そういえば」


 アルス様が呟く


「これもシャンバルから買ったらしいね」


 そう言って腰に差してる剣……刀に触れる


「ああ! ジュラハルから仕入れたやつだ! 剣よりも細いのに……凄い斬れ味でな! おじさんは売れると判断したのか、何本か仕入れた!」


「アルス様、それはどうされたので?」


 俺は聞く、確かアルス様は刀を買ってなかった様な……

 買ったのは確か……


「オルベリンから貰った」


 そうだ、オルベリンが買っていたな……


「ジュラハル出身の戦士と戦った時に知った技も見せてくれたよ……僕はまだ練習中だけどね」


 そう言って刀に触れるアルス様


「アルス様なら何れ習得出来ますよ」


 どんな技か知らないが

 無責任? いや、アルス様の才を信じてるだけだ


 ・・・・・・・・・・


 森の中を進軍して3日経過した


「っと、見えてきたな」


 兵達が止まる、俺は森の出口に近付き、ペルールを確認する


「さてと……どうするか……」


 俺は望遠鏡で警備を確認する


 門の側に見張りはいない

 外壁の上には数人の兵が居る



「どんな様子だ?」


 ゲルドの声


「警戒は緩いな……夜襲を仕掛ければ行けるかもしれない」

「敵将はわかるか?」

「いや、わからない、それだけが不安要素だな」


 俺は望遠鏡を目から離す

 そして側に居るゲルドを見て、後方のアルス様とシャルスを見る


「まあ、この面子なら兵も居るし行けるだろ、それともルーツ達も呼んで一気に囲むか?」


 時間はかかるが、そっちの方は確実だ


「うーん……」


 アルス様が考える


「夜襲を仕掛けよう」


 そして言った


「おや? 宜しいので?」


 ゲルドが聞く


「うん、敵の警戒が弱いなら弱いうちに攻めたい、それに…………うん、手柄を立てたいかな」


 それが本音でしょう?

 まあ、俺もですがね


「では編成を……どうします?」


 ゲルドが俺達を見て言う


「俺とゲルドは1万ずつの兵で北と南から攻めよう、アルス様は……シャルスと共に2万の兵でこの西門を攻めてください」

「東門はいいの?」

「ええ、敢えて逃げ場を用意します……その方が敵兵も逃げやすいですからね」

「えっ? 逃がしていいの?」


 当然の疑問だ


「宜しいですかアルス様、戦場では感情の伝染が起きやすいのです」

「うん、それは何となくわかるよ、それで士気があがったりするんだよね?」

「はい、では問題です、戦ってる最中に1人の兵が戦意を無くして逃げ出しました……するとどうなるでしょうか?」

「えっ? えっと…………」


 考えるアルス様


「……他の兵も逃げ出す?」

「その通りです!!」


 そう、恐怖は伝染する!

 1人の兵が逃げ出した、それを見た他の兵も怯えて逃げ出す

 そしてそれを見た他の兵も……っとドンドン増えていく

 たまに向かってくる奴もいるが……経験上10人に7人は逃げ出すな


「つまり、わざと逃げ道を作ることで、パストーレの兵が逃げて数が減るように仕向けるって事?」

「そうです、敵の数が減る、それだけ我々の犠牲も減ります……無駄な戦いも減りますね、これはこれからの戦でも使えますし……我々にも当てはまります……覚えていてください」


 そう、これは俺達にも言えることだ

 兵が逃げ出したら、その軍は間違いなく壊滅する

 それだけは()けないといけない


「わかった」


 頷くアルス様

 アルス様はまだ若いのだから……こうやって少しずつ戦を知っていけばいい


 ・・・・・・・・・・


 さて、夜だ

 案の定というか、予想通りというべきか……敵の警戒は弱い……松明も少ない


「……曇りだから、俺達の姿も見えないだろうに……」


 星や月の明かりが無い曇り空

 俺はそんな空を見ながら呟いた


「レルガ様、ハンマーと丸太と準備できました」


 兵が俺に伝える


「よし……アルス様の準備は?」

「先程伝達が……アルス様もゲルド様も準備が完了したそうです」

「そうか……ならやるか……全軍!! 突撃!! 騒がしくいくぞ!!」

『うおおおおおおおお!!』


 兵達が咆哮しながら突撃する

 えっ? 騒いだら夜襲の意味がない?

 そんな事ない、不意の大声で敵は驚くし……俺達が目立てば、西のアルス様や南のゲルドが気付かれにくくなる


 ドォン!!


 丸太が激突する音

 数人の兵が持って突撃するからか、豪快な音だ


 丸太を持った兵達が勢いをつけるために下がる

 その間にハンマーを持った兵が門を殴る


 ガン!

 ゴン!


 ドォン!!


 そうしてる間に敵兵が集まる

 おっ! 弓兵が矢を射ってきたな


「怯むな!! 門を壊せぇ!!」


 俺は叫ぶ

 お、松明を集めてきたか、もう手遅れだがな! 最初っから用意しとけ!


 ドォン!!


 ガン!

 ゴン!


 ドォン!!


 お、門が歪んできたぞ!


「よし! そろそろやるか! お前ら! いけ!!」

「はっ! 行くぞ!!」


 数人の騎馬兵が縄に繋がれた丸太を掴んで駆けていく


 馬の速度で門に迫る丸太

 門の手前で兵達が縄から手を離す

 あ、1人離し損ねて落馬した……まあ死にはしないか

 取り敢えず、離された丸太は勢いをそのままに門にぶつかる


 ドゴォン!!


 そんな轟音をあげて、門が開いた


「よし! 突撃!! パストーレの奴等を殲滅しろ!!」

『うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』


 俺はペルールに突撃する

 さっき落馬した奴は……お、他の兵に救助されたな


「ふん!」

 ドスッ!

「ぎゃ!?」


 俺は門をくぐり、目の前に居たパストーレの兵に槍を突き刺す


「はぁ!!」

 ブン!

「うわぁ!?」

「ぐっ!?」


 そして、突き刺した兵を槍を振り投げ飛ばす

 近くに居たパストーレの兵2人が投げ飛ばした兵にぶつかる


 ドゴォン!!


 鈍い音が響く

 恐らく、西の門が開いたな


「お前ら遅れるな!!」

『うおおおおおおおお!!』


 俺達はペルールの城を目指す

 道中で向かってくるパストーレの兵は殺し、逃げる奴は無視する


 城門が見えてくる


「んっ? 城門が……開いている?」


 なんだ? 閉め忘れたのか?


「っと!」


 俺は脚を止める

 城門の先に人影を見つけたからだ


「…………」

「ナルールか!」


 ペルールの守りを任されたのはナルールだったようだ


「よぅ、レルガか」


 ナルールは剣を構える


「ナルール、ちょうどいい……お前を捕らえて、手柄にさせてもらおう!」


 俺は槍を構える


「そう簡単にいくと思うな!」


 ナルールが突撃してくる

 俺はナルールが槍の射程内に入るのを待ち


「ふぅ!」


 腹部を狙って突く


「はっ!」


 ギィン!!


 槍がナルールの剣に弾かれる

 俺はすぐに槍を引き、連続で突く


「ほっ! はっ!」


 ギィン!!


 首を狙った突きをそらされる


 ギィン!!


 脚を狙った突きを弾かれる


 ギィン!!


 胸を狙った突きを受け止められた


 カチカチカチ!


 俺の槍とナルールの剣が競り合う


 ギィン!!


 槍をそらされる

 俺は後ろにさがり、距離を取る


「ちっ!」


 そうだった……コイツ、ヘルドと互角に戦えたな……

 さて、どうするか……


「レルガ!」

「お、ナルール!」


 アルス様とシャルスがやって来た


「げっ! 猫野郎! 生きてたのか!」


 驚くナルール


「ああ、殺せなくて残念だったな!」


 鉤爪を構えるシャルス……やる気だな


「ちっ! 流石に不利か!」


 そういうとナルールは口笛を吹く


 ナルールの後ろから走ってくる馬

 ナルールを追い越すとき、ナルールは馬に飛び乗り、こっちに向かってくる


「っと!」

「うお!?」

「あぶな!!」


 俺達は轢かれないように飛び退く


「じゃあな! 間抜けなオーシャンの諸君!!」


 そう言って去ろうとするナルール……


「させん!!」


 ドスッ!


「ヒヒーン!?」

「ぬぉわ!?」


 そんなナルールの馬に横から槍を突き刺した人影

 てかゲルドだな……門をこじ開けてからここまで来たか

 んで、逃げるナルールの馬を刺したと


 馬は倒れ、ナルールは勢いよく前方に投げ出された

 そして転がり、地面に倒れる

 …………死んだか?


「いってぇ!!」


 生きてたか


「ナルール、ここまでだ」

「ゲルド! てめえも居たのか!!」


 ゲルドが槍を構えて、倒れているナルールに近寄る

 俺達も駆け寄る


「降伏しろナルール」


 ゲルドの発言


「はん! 誰がするか!」


 倒れながらも後ろにさがるナルール

 もう逃げようが無いと思うが……


「ナルール様!」


 左側からパストーレの兵が馬に乗って突撃してくる


「この馬を使ってください! でりゃあ!」


 そう言って、馬から飛び降りて、ゲルドに斬りかかる


 ドスッ!!


 しかし、兵の剣はゲルドに届かなかった、心臓を槍で貫かれたのだ


「ぐっ! がふっ!」


 血を吐き出す兵

 そして……


 ガクッ!


 身体を宙に浮かせたまま、絶命した


「ちっ!」


 ゲルドは槍を下ろし、兵を足で踏みつけて押さえ、兵から槍を抜く

 その間に俺達がゲルドの側に着く


「じゃあな!!」


 そうしてるうちに、ナルールは馬に乗って既に逃げていた

 俺達も馬に乗っていたら追いかけたが……今からではとても追い付けない


「くっ! この兵が邪魔をしなければ!!」


 怒るゲルド


「自分の命を犠牲にして、ナルールを助けたか……」


 見上げた忠誠心だな


 ナルールは逃したが、パストーレの兵はまだ居る

 俺達は気を取り直して都の中と城の中の兵と戦った


 ・・・・・・・・・・


 朝日が昇る


「なに? 民の姿がどこにもない?」


 パストーレの兵を殲滅したのを確認した俺達は民の姿を探していた

 どこかに避難してると思っていたが……ペルールのどこにも居ないのだ


「はい、どこにも」

「……どういうことだ?」


 1人も居ないのは奇妙だ……


「レルガ」


 ゲルドがやって来た


「ゲルド、民がどこにも」

「いないのだろう?」


 なんだ、聞いていたのか


「レルガ、どうやら小生達は敵の策に嵌まったのかもしれない」

「……なに?」


 ゲルドが言う


「民家を調べたが、埃の量や痕跡から……2ヶ月は人が住んでないと見た」

「……2ヶ月? その調べた民家だけじゃないのか?」

「他の民家も調べたさ、多少の差はあれど……少なくとも、この数日で避難した訳ではなさそうだ」

「つまり? ここにはナルールと少しの兵だけしか居なかったと?」

「ああ、そして逃げ出したナルール……恐らく目的は時間稼ぎだ」

「時間稼ぎ? 何のためにだ?」


 時間を稼いでも何か出来る訳じゃないだろ?


「そこまではわからない、情報が少なすぎる……ただ、小生達は早くカイト様に合流するべきかもしれない」

「…………」


 確証も何も無いが……

 まあ、ペルールは攻略できたし、カイト様と合流するのは構わない


「そうだな、じゃあカイト様と合流しよう……今回の事を報告したら、何かわかるかもしれないしな」


 バルセ達の方もリュウリを攻略してるかもしれないし


 ここはルーツ達に任せるか



 こうして、俺達はカイト様の陣に向かった









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