第116話 『親子』の絆 2
数日の旅路
道中で獣を狩ったり
賊の討伐をしていた兵と合流して賊を狩ったり
狩りまくりの旅路だった
そして、リユの都で1泊した
リユを任されてるヤンカと話して
案内された部屋で熟睡して
そして翌日、身嗜みを整えて出発する
ここまで来たらガガルガまではもうすぐだ
・・・・・・・・・
ーーーバルセ視点ーーー
「ふむ……」
「バルセ、どうした?」
考え込んでいた私に、ボゾゾが話しかけてくる
「むっ? いや、カイト殿からユリウスがここに向かってると連絡があってな……どう歓迎するか悩んでいたのだ」
豪勢な食事を用意するか……
曲芸師を呼んで曲芸してもらうか……
「……ふつうが、いい」
「そ、そうか?」
そうだな、慣れないことはするものではないな
……好物を用意するだけにしておこう
「いやー、しかし楽しみだな、ユリウスが前来た時は、ゆっくり話す時間など無かったからな」
オーシャンでどの様に過ごしているか
友人は出来たか
寂しくはないか
色々と話したいな
「ボゾゾ、わからない」
「そうか……それは残念だ」
「でも」
「ん?」
「ユリウス、いいやつ」
「だろう? 自慢の息子だよ」
「バルセ、ユリウスのはなし、たのしそう」
「うむ、楽しいぞ?」
「なぜ?」
「あの子は私にとっての全てだからな……あの子は私に恩を感じているが……先に救われたのは私の方なんだ」
「?」
首をかしげるボゾゾ
「聞くか? 今は気分が良いからペラペラ話すぞ」
「……ながい?」
「うむ! 長い!」
「なら、いい」
「短く話そう! だから聞いてくれ!!」
「……すこし、だけ」
「うむ、あれは数年前……ユリウスが5歳の時だった」
・・・・・・・・
「…………また、この日を迎えたよ……」
私は目の前にある墓に語りかけた
「『シャラ』……君と子供を失って……もう20年も経ってしまった……だいぶ立ち直れたと思ったんだがな……」
私は花をそえる
「周りの者は後妻を娶れと言うが……君以上の女性は居ないよ……」
涙が溢れてくる
「…………むっ?」
後ろから人の気配を感じた
振り返ると……
「……叔父さん」
「ユリウス? 何故ここに? それにその花は?」
ユリウスが立っていた、いくら城の近くだからといって、5歳の子供が来るところではない
更に、ユリウスは両手いっぱいに花を抱えていた
「お父さんから聞いたの、ここには叔母さんと僕のいとこ? って子が眠ってるって! それでね! お花をいっぱい持ってきたの!! 喜んでくれるかな?」
無邪気に言うユリウス
「ああ、そうだな……喜んでくれるさ」
「やった!」
ユリウスは墓に花を飾り付けていく
「……ふふ」
その姿が可笑しくて、笑ってしまう
「あ、叔父さん笑った!」
駆け寄ってきて笑うユリウス
ほんの些細な出来事だった
ユリウスも忘れている出来事だった
そんな出来事だったが……
『私は1人ではない』
それを実感するには充分な出来事だった
・・・・・・・・・
「それで私がどれだけ救われたか!!」
「…………」
「……ボゾゾ?」
「……ぐぅ」
…………寝ている
むぅ、そこまで興味が無かったのか!?
「全く……ふむ、好物の用意でもしておくか」
ユリウスは数日以内にはここに来るだろうし
・・・・・・・・・
ーーーユリウス視点ーーー
「見えた! ガガルガだ!」
「へぇ、あれが……」
「立派な門が見えるね」
「おぉ~」
アルス、レムレ、シャルスがそれぞれ感想を言う
皆来るのは初めてだったよな
「どうだ? 凄いだろ? 難攻不落の都なんて言われてたんだぞ!」
「でも兄さんは攻略したよね?」
「……ち、違うし! あれは違うし!」
ルーツ達の策に嵌まっただけだし!
……いや、僕も人形に騙されたけどさ!! ダメだ! 思い出すな僕! 泣きたくなるから!
「と、兎に角入らない?」
レムレが言った
僕達は馬を走らせて門に近付く
そして、門番の兵と話をして門を開く
僕達はガガルガに入る
「おお、賑やかだ!」
アルスが城下街を見て言う
「だろ? ヤンカやルスーンが色々と発展させたんだ、ほら、あの広場の噴水とか名所なんだぜ!」
「八龍をモチーフにしてるのかな? 鱗が1枚1枚丁寧に彫られてるね」
レムレが噴水の八龍を見ながら言う
「でしょ? 加工師ってのが居て、銅像やら宝石やらも腕の良い奴等が加工してくれるんだ」
「ああ、だから兄さんはこれを持ってけって言ったのか」
アルスが荷物から大きな真珠を取り出す
漁港の視察で手に入れたらしい……ゴツゴツしてるな
「それなら、ルスーンが城に居る筈だから、頼めば信頼できる加工師に依頼してくれると思うぞ?」
「そうか、ならそうさせてもらおう」
何に使うかは知らないけど……球体に加工して貰えって話だっけ?
「あーあ、僕もガンルガンを食べたかったよ」
漁港には昔から何回か行った事あるけど……ガンルガンは食べたこと無いんだよな……羨ましい
「凄く美味かったぞ! オイラ、貝はあまり食べなかったけど……あれは凄かった……魚よりも美味いとは思ってなかったな……」
「シャルスなんか、あまりの美味しさに気絶してたよね」
「言うなよレムレ!」
そ、そんなに美味いのか!?
あーくそ! 仕事が無ければ行ったのに!!
「そろそろ城に行かないか?」
アルスの一言で城に向かうことになった
あー、そろそろ腹をくくらないと……
・・・・・・・・
城門が開き、城の目の前まで移動する
「…………うぅ」
目の前の城の扉を開くのが怖い
こ、心が準備できていない!!
「ユリウス? 何してんだ?」
アルスが僕を見る
「あ、いや……」
「ユリウス!」
レムレが僕の右腕を抱える
「ちょ!?」
「行くぞ!」
シャルスが僕の左腕を抱える
「まっ!?」
アルスが城の扉を開く
「や、やめ!?」
そして連行される僕
「うわぁぁぁぁ!! 歩ける! 歩けるからぁ!!」
僕の叫びはむなしく響いただけだった
・・・・・・・・
「おお! ユリウス! 帰って来たか!! …………どうしてそうなった?」
叔父上が両腕を抱えられて連行されてきた僕を見る
「えっと、これには……その、色々事情がありまして……」
「城の前でビビってたので運びました」
「アルゥゥゥゥス!?」
もっとマシな言い方あるよね!?
「アルス? ふむ、貴殿がカイト殿の弟君か」
「えぇ、初めまして、アルス・オーシャンと申します」
「うむ、初めまして、バルセ・クッツ・ガガルガと申します」
叔父上とアルスが挨拶をする
レムレとシャルスが僕の腕を離す
そして……
「初めまして、レムレと申します」
「初めまして! オイラはシャルス!!」
「おお、噂を聞いておるよ、君は素晴らしい弓の腕を持ってるそうだな」
「い、いえ、僕なんてまだまだ……」
「君も、成る程……確かに猫だな……魚は好きかい?」
「大好物!!」
「それは良かった、夕食には魚のメニューがあるから、楽しんでくれ」
「しゃあ!!」
2人も挨拶を終える
「さて……ユリウス? 何故私から離れるんだ?」
「いや、その……えっと……」
足が震える
「あ、あの……その……」
言葉が出ない……何を言おうとしてたのか……わからなくなる
「……あ、あぁ……」
あ、ヤバいヤバい……目の前が真っ白になってきた!!
「ふむ……」
叔父上が近付いてくる気配
そして……
ギュウ!
「…………うぇ!?」
抱き締められた
「よしよし、良く帰って来た!」
そして頭を撫でられる
「お、叔父上!?」
「何を怯えているかわからんが……ここにはお前の味方しかおらんぞ?」
「……あっ」
そう言われて……頭が冷えてくる
懐かしい……叔父上の温もり……『家族』の温もり
「叔父上……この前は……その……怒鳴って、申し訳ありませんでした!!」
謝罪の言葉……それを言った時……自然と涙が溢れていた
「なんだ? そんな事を気にしていたのか? あれは私を想っての事だろう? 謝る必要など無いよ」
また頭を撫でられる
「う、うぅ……うわぁぁぁぁぁぁん!!」
「全く、泣き虫なのは治ったと思ったのだがな……」
叔父上は僕が落ち着くまで、頭を撫で続けてくれた
・・・・・・・
僕が落ち着いたのを確認して
叔父上は夕食の準備をすると言って歩いていった
「ねっ? 言った通りでしょ?」
レムレに言われる
「お前結構泣くよな」
とはアルス
「やーい! 泣き虫!」
シャルス、お前後で覚えてろよ?
「レムレ、アルス……その、ありがとう」
シャルスの「オイラは!?」って叫びは無視する
「いいよ、僕達の仲でしょ?」
「そうそう、今更だって」
2人はそう言ってくれた
シャルスは無視だ
・・・・・・・・・・
夕食を終えてから僕は叔父上と叔父上の部屋に居た
「それで、2日程滞在するんだな?」
「はい、明日はアルス達のガガルガ観光の案内をします」
「そうか……例の真珠はルスーンが加工師の所に持って行った、2日後には終わってるだろう」
「ありがとうございます、叔父上」
久し振りに叔父上とゆっくり話す
2年……そうか、もう2年は経ってるんだよな
「なんだか、不思議な気分です」
「んっ? 何がだ?」
「カイト様に負けて、ガガルガ領は無くなったのに……こうして昔みたいに過ごせるなんて……」
「……そうだな……私達はカイト殿と……民に救われたのだ……その恩を返さなくてはな」
「はい!」
「それで、ユリウス? オーシャンではどの様に暮らしているんだ? たっぷり聞かせて貰おうか」
「良いですよ! 僕も叔父上に話したい事がたくさんあります!!」
僕と叔父上は語り合った
離れていた時間を取り戻すように……お互いに何が起きたのか……
夜が明けるまで……ずっと……
・・・・・・・・・
数日後
ーーーカイト視点ーーー
「ユリウス・ウィル・ガガルガ! ただいま帰還しました!!」
ユリウス達がガガルガから帰って来た
俺は玉座で帰還の報告を聞く
「ああ、お帰り4人とも」
ふむ……ガガルガの観光は楽しかったみたいだな
それに……
「ユリウス、悩みは解決したみたいだな? スッキリした顔をしてるぞ」
「はい!! もう大丈夫です!! もう恐れるものなんてありませんよ!」
これは力強い返事で
「よし、今日は自由に休んでくれ、明日からまた働いてもらうからな?」
『はい!!』
「あ、シャルスはレイミルに診察してもらえよ?」
だいぶ治ってるって聞いたが……念入りに調べないといけない
「あ、兄さん、真珠を加工してもらったけど……これどうするの?」
「んっ? ちょっとな」
アルスはレリスに真珠を渡す
これは、今造らせている水龍の銅像に持たせるつもりだ
縁起物だからな……御利益があるようにってね
さて、ユリウスも本調子になった
他の皆も回復してきた
やれるだけの事はしたつもりだ
相手はパストーレ……勢力で考えたらオーシャンが圧倒的に有利だ
だが……俺は知っている
追い詰められた連中がどれ程手強いか……
油断はしない、確実に勝つ!!
・・・・・・・・・・・
ーーーパストーレーーー
「これだけ時間が経っても……オーシャンは攻めてこない……」
テリアンヌは玉座に座って呟く
「皆はどう思う?」
そして、目の前の将達に問う
「はっ!」
ブライが前に出る
「恐らく兵糧が用意できないのでは? カイナスとの戦を終えたばかりじゃしな」
「では、いつ攻めてくると思う?」
攻めてこないとは全く考えないテリアンヌ
「恐らく、収穫を終えた後でしょう」
他の将も同意見なのか頷く
「そうか、ならば時間はあるな……今のうちに、全ての用意を済ませよう……勝つのは我々だ!」
『おぉぉぉ!!』
戦が始まる
この戦を制した者が、東方を制する
決戦の火蓋は切られる