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第10話 メリアスト平原の戦い

 


 馬を全力で走らせて5日

 俺とレリスとヘルドは本拠であるオーシャン領、『ヘイナス』の都に戻った


 ヘイナスはベルドルトの祖父……つまりカイトの曾祖父の名前である


 居城に入城して馬を兵に任せて玉座の間に戻る



「カイト様!戻られましたか!」

「おかえりなさいっす!!」


 玉座の間には兵に指示を出していたルーツと

 数人の兵と一緒に矢を束ねていたサルリラの姿があった


「状況は?」


 俺はルーツに近寄る


「マールマールの軍は『カヌーテ湿原』を抜けたそうです」

「思ったより速いな……あと6日ってところか」


 カヌーテ湿原とはパストーレ領の端にある湿原だ

 マールマールとオーシャンを行き来するにはそこを通らないといけない

 パストーレはマールマールを通したか……


「ルーツ、サルリラ、ヘルド!準備を!出撃する!!」


 俺がそういうと


「籠城ではないのですか?」


 ルーツが聞いてきた


「ああ、奴等を迎え撃つ」

「兵力差が倍ありますが?」

「策はある!俺を信じろ!」

「……わかりました!」


 ルーツは納得してくれたようだ


「兵は2千人連れていく!残りの700はレリスと共にヘイナスを護っていてくれ!」


 他の道から別動隊がやってくる可能性もあるからな!

 本拠を空にするわけにはいかない



「どこで迎え撃つっすか?」


 サルリラが聞いてくる


「『メリアスト平原』だ!」


 ・・・・・・・


 メリアスト平原

 ヘイナスから3日程、馬で移動した場所にある平原だ

 所々に林があるが、見晴らしは悪くない


「…………」



 メリアスト平原に俺達は布陣した

 俺はメリアスト平原の景色を眺めている

 明日か明後日にはマールマールの軍がここに着く

 もう俺達がここに居るのは知っているだろうなぁ



「カイト様!」

「どうだった?」


 メリアスト平原を偵察させた兵達が戻ってきた


「マールマールの兵はいませんでした!伏兵などの心配は必要ないかと!」

「そうか……なら予定通りに進めよう!!」


 俺は本陣に戻る

 

「さてと……」


 俺は用意された椅子に座る


「状況を確認しよう」

『はっ!』


 ルーツ、ヘルド、サルリラが返事をする


 サルリラは初陣だからか緊張しているみたいだ


「サルリラ、いつも通りでいいんだ、仲間と共に戦うだけだ」

「っす!!」

 

「ヘルド、例の準備は?」

「はっ!すぐに移動できます!明日には問題なく到着します」

「よし!サルリラは?」

「旦那と同じっす!」

「よし!」


 俺はルーツを見る


「ルーツ、マールマールは?」

「物見の兵からの報告では4千の軍が既にオーシャン領に侵入していると……早くて明日の夕方にはメリアスト平原(ここ)に到着するかと」


「そうか……夕方か……攻めてくると思うか?」

「マールマールも進軍による疲弊はしてるかと……それに罠や奇襲を警戒してると思いますから……戦うなら朝方かと……まあ攻めてくる可能性もあるので警戒は必要ですが」


「そうか……」


 俺としては朝方の方が助かるのだが……いいさ、しっかり警戒していよう


「では、全員配置につけ!!奴等を蹂躙するぞ!!」

『はい!!』


 時間は既に夜だ

 休める者は休ませよう



 ・・・・・・・・


 ーーーメビルト視点ーーー


「メビルト様!オーシャンの軍が確認できました」


「そうか……」


 我輩は前方を見る……

 小さいが確かにオーシャンの軍が見える

 このマールマールの将である我輩を相手にするには随分と少ないような……


「兵の数は確認できたのか?」

「それが……千人程なそうで……」

「千人?少ないな?」


 たったそれだけの兵で我輩を迎え撃つつもりか?


「どうしますか?」


「…………」


 我輩は空を見上げる……既に夕方……


「全員ここに布陣せよ、朝方に状況を確認してから進軍する」


「はっ!」


 たった千人で戦うなど愚かな事はするまい……何かしらの策がある筈だ

 奇襲か……伏兵か……


 夜の戦闘は危険だ……明るくなった時に戦うべきだ


 ・・・・・・・・


 翌日


「どうだ?」

「動きはありません!」


 オーシャンの軍は動かないか……


「指揮官はわかったのか?」


「偵察では前方の軍にはルーツの姿が確認できました!」

「ルーツか……妙だな」


 奴は戦闘には向いてない筈だが?

 オルベリンはカイナスに行っているからともかく……ヘルドはどうした?


「それと……カイト・オーシャンの姿も確認できました」

「なに?領主が出てるのか?」

 ヘイナスで怯えてるものかと思っていたが……

「しかし、奴が武人だという話は聞いていないぞ?」


 ヘルド以上の武人だったのか?


「どうしますか?」

「ふむ…………」


 このまま数日睨み合いをするか?

 しかし食料がもつか?


「…………進軍する!」


 何が来るかはわからん

 今わかっているのはこちらは4千、向こうは千の兵しかいないという事実


 このまま進んで潰してしまおう


「周りの警戒は弛めるなよ!」


 ヘルドがいないのはやはり妙だ

 伏兵の可能性は捨てきれないな



 ・・・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー


「カイト様!マールマールの軍が動きました!」

「動いたか……」


 兵が報告に来た


「敵の将の確認も出来ました!メビルトです!」

「メビルトかぁ……」


 武力も知性もBのキャラだ……不味いな……策を読まれる可能性がある


「……伏兵はバレてると考えるべきかな……どう進軍してる?」

「4千の軍は微速ですがこちらに向かっています」

「よし、なら大丈夫だ」


 兵を分けられていたらヤバかった……いっぺんに来ているならこのまま行こう


「カイト様!」

 別の兵が来た


「どうした?」

「ベススからの援軍が到着しました!!」

「お、来たか!」

「軍はこちらの指示した場所に待機しているそうです!」

「よしよし……この戦が終わったら挨拶に行かないとな!」


 誰が来ているのか……


「カイト様……」


 ルーツが来た


「そろそろか?」

「はい、もうまもなく範囲内に到着します」


「よし……」


 俺は兵達の前に出る


「諸君!我等の戦力は僅かだ!だが我等は勝利する!!奴等に目にものを見せてやろうぞ!!」

『ウオオオオオオオオ!!』


 士気高!?

 パストーレ戦の勝利も影響してるのか?

 まあいい、高くて悪いことは無い!


「仕掛けるぞ!!」



 ・・・・・・・


 ーーーメビルト視点ーーー



「メビルト様、前方の軍に動きが……」

「仕掛けてくるか?」


 我輩は周りを見る


 前方にはカイト・オーシャンの軍

 左右には林……


「……伏兵を仕掛けるならここだな……」


 左右の林に仕掛けて、三方向から攻める


「全員止まれ!ここで奴等を返り討ちにするぞ!」

『ウオオオオオオオオ!!』


 伏兵が来るとわかっているなら待ち構えれば良い……さあ来い!


 我輩は前方の軍を見る


「…………むっ?」


 なんだ?前方の軍から何かが飛んでくる?

 2つ?


 それはこちらに向かって飛び


 ドスン!


『ぎゃあああ!?』


 我輩の後方に落ちた

 兵達の叫び


「何だ!?」


 振り返るとそこには岩があった

 数人の兵が下敷きになっていた……死んだ者もいる

「早く岩を退けろ!」

「は、はい!」


 2人で岩を持ち上げ、負傷した者を救助する


「メビルト様!」

「むっ!?」


 兵が前方を指差す

 振り返るとまた岩が2つ飛んできた


「全員散れ!!」


 ドスン!


 岩が落ちる音と兵の断末魔


「なんであんな岩が飛ぶ!?奴等は巨人でも従えているのか!?」


 混乱する……しかしこのまま止まってる訳にはいかない

 被害が出るだけだ……攻めるか、退くか……


 我輩の答えは


「全軍……突撃!!奴等を潰せぇぇぇぇ!!」


 攻める事だった

 このまま退けば何もわからないままだ……少しでもオーシャンの事を知らなくては



『ウオオオオオオオオ!!』


 我等は駆ける


 ドスン!

 ドスン!


 そうしてる間も岩が飛んでくる

 少しずつ減る兵


『ウオオオオオオオオ!!』


「むっ!?」


 左右の林から伏兵が出てきた

 右からヘルドが

 左からは見知らぬ女が


「やはりいたか……我等の突撃を待っていたか!」


『ウオオオオオオオオ!!』


 カイト・オーシャンの兵も前進してきた


「やはり三方からの攻撃か!」

 我輩は振り返る


「……ちっ!」


 兵達はバラバラだ

 負傷した者

 それを救助する者

 我輩と共に突撃した者

 左右の伏兵の迎撃に向かう者


「これが狙いだったか……」


 纏まりの無い軍程脆いものはない……


「メビルト!覚悟!」


 ヘルドが我輩に向かう


「ほざけ!」


 キィン!


 我輩はヘルドの剣を剣で受け止める


 カン!

 ギィン!


 馬の上で剣を交える


 こうしてる間も兵が減る

 我が軍は混乱していた


「くっ!」


 被害がでかい……


「ふん!」

 キィン!

「ぬぉ!」




 ヘルドの剣を弾き飛ばす

 ヘルドは槍を取り出す


「はっ!」

「くっ!」


 キィン!


 槍を剣で防ぐ


 このままでは……


「今だ!!合図を!!」


 若い男の声が聞こえた

 合図?


 ガンガンガァァァン!!


 物を叩く音

 それが戦場に響いた



 …………

『ウオオオオオオオオ!!』


「!?」


 大量の叫び声が響く

 ヘルドの攻撃を防ぎ、離れる


 そして声のした方を見る


「なっ!?」


 その方向には赤を特徴にした兵達が見えた

 ベススの兵だ……何人いる?何千だ?

 2千……いや3千!!



「…………」


 軍は崩壊……数の有利も無くなった……

 これ以上の戦闘は犠牲が出るだけだ


「全員退けぇぇぇぇ!!」


 我輩は叫び、馬を走らせる


「う、うわぁぁぁ!!」

「逃げろぉぉ!!」

「いてぇ……いてえよ!!」


 兵達も散るように逃げる


 この戦は……我輩の敗北だった……



 ・・・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー


「カイト様!メビルトが逃げました!追いますか?!」


 ヘルドが俺に聞く


「いや、そのまま逃がせろ……もう攻めては来るまい……」


 俺は大きく息を吸う


「そこまでだぁ!!貴様らの将メビルトは逃げたぞ!大人しく降伏せよ!!」


「そんな……」

「うぁぁ……」

「ひ、ひぃ!」


 逃げずに戦ってた兵達の戦意が無くなる


「……負傷した者を治療せよ!マールマールの兵もだ!無傷の者は捕らえよ!」


 俺は大声で指示を出してからベススの軍を見る



「……ゼルナか」


 ベススの将はゼルナだった……ルノマレスから戻ってからここまで来たのか……大変だったろうに


「おい」

「はっ!」


 俺は近くの兵に声をかける


「昨日持ってきたアレを運ぶ準備を」

「了解しました!」

「あ、それと()()()も運び出しておいてくれ」

「はっ!!」


 投石器……止まったマールマールの軍に向けて使った兵器だ


 2つしか持ってきてなかったが効果は抜群だったな

 マールマールの兵は良いようにバラけてくれた

 バラバラな軍なんて大したことないからな



「んっ?終わったようだな」


 戦場を見ると兵の捕縛が終わっていた……無事なのは400くらいか?後は負傷か逃げたか……まあいい



「勝鬨をあげよ!!我等の勝利だ!!」


『えい!えい!おぉぉぉぉぉぉぉ!!』



 ・・・・・・・・


「ゼルナ殿、援軍感謝する」


 俺は数人の兵と共にゼルナの陣にやってきた


「……なんの……つもりだ?」


 ゼルナが俺を見て開口一番の発言


「何がです?」

「何故、俺達に()()を見せた」


 ゼルナの視線は遠くに運ばれて豆粒程度の大きさの投石器を見ていた


「おや?仲間に手の内を見せることが可笑しい事で?」

「……今は同盟を結んでいるが……いつか敵になる……そんな世だ」

「そうでしょうね……しかし私はベススとはずっと仲間でいたいと思っていますよ?」


 半分本当だ……潰さなくても同盟を結んだままなら気にせずに大陸を制覇できる


「…………そうか」


 ゼルナはそう言って俺の後ろを見る


「その……荷物は?」


「手土産ですよ……とりあえず保存のきく作物を」


 兵達が荷車を引いてベススの兵達に渡す


 ベススの兵は荷車の中にある箱を開けて中を覗く


「うぉ!こんなにあんのか!?」

「ゼルナ様!凄いっすよ!」


「……金を持ってきてないが?」


 ゼルナが俺を見る


「今回の援軍の報酬ですよ……葉物はまだ無理ですが、必ず送れるようにするとナリスト殿にお伝えください」


「……わかった……」


 ゼルナは振り返って歩き出した


「…………」


 しかし立ち止まる……

 そして振り向き俺を見ながら


「これから……宜しく……」

「ええ!」



 そう言って去って行った



 ・・・・・・・・


 ヘイナスに戻って戦勝を祝う


 兵達に酒や食べ物を配って皆が思い思いに食べて飲んだ



 玉座に座りながら俺もワインを飲んでいた

 この世界では15歳が成人だからな……飲酒も問題ない

 てか中身は30間際のオッサンだ……いやもう30になったか?


「さて……これからの事だが」


 俺が言うとレリスとルーツ、ヘルドとサルリラが俺を見る

 全員酒を片手にしている


「オルベリン達が戻ってくるのを待つぞ……彼等が戻り次第、軍備を整え……マールマールを攻める!」



「遂に……ですね」


 レリスがそう言ってワインを飲み干す


「腕がなる!メビルトの奴との決着をつけてやる!」


 ヘルドが豪快にエールを飲み干す


「私も様々な策を披露したいですね」


 ルーツがエールを飲む


「今度こそ敵将を倒すっす!」


 兵士しか倒せなかったのが不満なサルリラがワインを飲み干す


「うむ……全員やる気だな!!……………言っておくが1人はレリスと共にヘイナスの防衛だからな?」


『!?』


 3人の将がこの後、自己アピールを始めたのはここだけの話だ














メリアスト平原の戦い

完勝






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