第105話 酔ったら饒舌になるよね
1時間
飲みが始まってそれくらい経っていた
つまみを食べて、酒を飲み、全員がほろ酔いの状態になっていた
「トマトとチーズってなんでこんなに合うんだろう……」
レムレが少し焦げ目がつくまで焼かれたトマトに一緒に渡されたチーズを乗せながら食べる
「昔から好まれてる組み合わせだからな……」
レリスがワインを飲みながら答える
「兄さん、この魚のソテーは食べた? 美味しいよ」
「あぁ、頂こう……ふむ、塩のみの味付けだが……エールと合うな……進む進む」
俺は酒としては4杯目のエールを飲む
ワインとエールで2杯ずつ飲んでるぞ
「少し腹に入れると、パスタかパンが食べたくなる……おねえさーん! 一口パンとハム追加ねー!!」
「はーい!!」
ユリウスが料理を追加する
部屋の出入り口に従業員が待機して、いつでも注文を受けれるようにしているようだ
因みに今、俺達は丸いテーブルを使っている
席は俺から時計回りにアルス、ユリウス、レリス、レムレ、そして俺に戻る
どうしてこんな並びかと言うと、いざという時にアルス達が俺とレリスを守れるようにだ
どこから襲撃されても誰かが俺とレリスを守れるようにしている
……まあ酒を飲んでるから護衛も何も無いと思うがな
「それにしても、アルス……なんかいつもよりペース早くね?」
ユリウスがアルスを見ながら言う
「そう思うか?」
アルスが聞く
「僕もそう思いますね……どうしてかは察してますけど♪」
レムレが言う
「何でだ?」
俺が聞く
普段のアルスのペースを知らないけどな
こうして一緒に酒を飲むのは初めてだし……いやアルスの成人した誕生パーティーの時も飲んでいたか?
あれはパーティーだからノーカンだな
「カイト様と一緒ですからね♪ 嬉しいんですよ♪」
「おまっ! レムレ!!」
アルスが赤くなりながら叫ぶ
「良いじゃないですか~♪ 嬉しいんですよね♪」
……レムレって酔うとこうなるのか
てかアルスは嬉しかったのか?
「アルス?」
俺は隣のアルスを見る
「うっ……」
「お兄ちゃんと一緒で嬉しいかい?」
頬が弛む
「……う、うん」
真っ赤になるアルス
「そっかぁ! 俺も嬉しいぞ!」
「に、兄さん! 苦しいって!」
感極まってアルスを抱き締める
もう、可愛い弟だな!! よしよし! 撫でてやる!!
「やれやれ」
レリスが苦笑しながらワインを飲む
……お前それ何杯目? 瓶が大量に転がってないか?
・・・・・・・・
さて、それから更に1時間経過
皆だいぶ酔ってきた……いや、レリスだけ平然としてるな……1番飲んでるのに
そんな飲み会だが……酔うと人って大胆になるよな?
そしてここには野郎しかいない
だから……
「ねぇねぇカイト様、夜は上なんで? それとも下?」
こんな会話が始まってもおかしくないな
ユリウスが俺を見る
ドゴォ!
ガン!
「ごふっ!」
そしてアルスに胸元を、レリスに頭を殴られる
「?」
レムレはなんでユリウスが殴られたのかわかってない
ユリウスの質問の意味を理解してないのかもしれない
「両方♪」
俺はニヤリと答える
「答えなくて良いから!?」
アルスのツッコミ
「いやいや、この際だ、腹を割って語ろう、こんな話は酔ってないと出来ないだろ?」
俺はそう言ってアルスを見る
「てな訳でアルス、気になる女性とか居ないのか?」
「えっ!?」
アルスが目を丸くする
「お前も16だからな、そろそろ惚れただの惚れられただの、そんな話は無いのか?」
「な、ななな無いよ!?」
首を振って否定するアルス
「なんだ? ルミルとかとそんな話は無いのか?」
「なんでルミル!? ルミルは友人だよ?」
いや、1番仲良く接してるだろ?
「って言ってるけど、そこんところどうなの?」
俺はレムレとユリウスを交互に見る
「んーと……普通ですね、僕やユリウスと接する時と同じです」
レムレが答える
「この間ナンパに誘ったら断られました」
ユリウス……お前な……
「なんだ、本当に何もないのか……」
「そう言ってるでしょ!?」
何もないなら仕方ない
「いつかお前が好い人を連れてくるのを期待するかな」
「う、うん……」
これ以上アルスを弄るのはやりすぎだよな
「レリス、お前は何か無いのか? そんな気配は感じないけど」
レリスに話題をふる
「全く無いですね、今は仕事に専念してますよ」
「お前、見た目も中身も立場も良いんだからモテるんじゃないのか?」
現代なら副大統領とか副総理とかそんな立場だし
見た目もイケメンだと思うが……気もきくし
「えぇ、モテますよ? 貴族から娘を嫁にって話が何件も来てます」
「マジで!?」
ユリウスが驚く
「全て断ってますがね、今は色恋にうつつをぬかす時ではありませんから」
「……なんかすまんな」
色恋にうつつをぬかす俺……
「貴方は構いませんよ、むしろドンドン励んで……早く跡継ぎ様を作ってください、年齢を重ねたら厳しくなりますよ? 体力的に」
「お、おう……」
じゃあ遠慮無く、ティンクとイチャイチャさせてもらおう
……イチャイチャって死語だよな?
「レムレはどうだ? お前もモテるんじゃないのか?」
可愛らしい見た目からの頼りになるギャップ!
これはハートを掴まれる女性は多いのでは?
「いや、僕は、その……」
「この間男に告白されたんだよな」
「アルス様!?」
レムレが叫ぶ
「えっ? マジで? まだ女性と間違えられるのか?」
「いや男と知ってて告白されてた」
……マジかよ、ビックリだよ
「えっ? 受けたの?」
「断りましたよ!! 僕にそんな趣味はありません!!」
だよね~
いや、同性愛を否定するつもりは無いが……色々と大変だろうからなぁ
「じゃあ、気になる女性とかは?」
「……い、いませんよ?」
目が泳いでるぞ?
「ほぅ? ほうほう?」
俺はジーとレムレを見る
全員の視線がレムレに集まる
「う、うぅ……」
顔を反らすレムレ……少しずつ赤くなり
「わかりました! 言いますよ!」
観念した
「ヤンユさんに初恋してました!!」
『嘘ぉ!?』
俺達全員……レリスですら驚いた
「い、今は違いますよ? 子供の頃の話ですから!」
なんだ、今は違うのか……ってホイホイ納得するかよ!
「どこに惚れたんだ?」
俺は聞く
だってヤンユだぞ? 最近は暴走しがちなヤンユだぞ?
「その、優しいですし……メイド時代も色々教えてくれて……」
「へぇ……」
レリスが微笑みながらレムレを見る
「それで、その……告白して……振られました」
「ごふっ!?」
そして噎せたレリス
「告白してたのか?」
俺はレムレを見る
「はい、成人して少し経ってから……」
「でも振られたんだな……」
意外だ、ヤンユもレムレの事は気に入っていただろうに
「はい、『レムレの事は好きだけど、想い人は別に居るから……今まで通り、友人でいて欲しい』って……」
「そっか……あー、なんか悪いな……言いたくなかったろ?」
重い話をさせてしまった
「い、いえ! 何か話したらスッキリしました!!」
笑顔で答えるレムレ……無理してないよな?
「よし、飲もう! そして忘れよう!!」
俺達は再び乾杯して酒を飲む
「…………あれ? 僕には聞かないの!?」
ユリウスが言う
「いや、お前はどうせナンパに失敗してるからさ」
『その通り!』
アルスとレムレに同意された
「ちくしょう!! たまに成功してるさ!!」
「何人?」
レリスが聞く
「………………1人、暇潰しの相手にされて、お茶飲んで終了でした……」
よし、この話は終わりだ!!
・・・・・・・・・
「……んっ」
目が覚める、どうやら酔ってそのまま寝てた様だ
ベッドに入って毛布を掛けられている……自力でやったのか?
起き上がって周りを見る
アルスが隣のベッドで寝てる
ユリウスは床に雑魚寝している
レリスとレムレの姿が無い
「?」
俺はベッドから出る
ガチャ
「あ、おはようございますカイト様」
廊下からレムレが部屋に入ってきた
「ああ、おはようレムレ……出てたのか?」
「はい、レリス様を城まで送っていました」
相変わらずレリスは早いな……時計を見るとまだ5時だぞ?
「お前も目が覚めたのか?」
「はい、この時間はいつも鍛練してるので……帰りに少ししてきました」
そっか……勤勉だな
「カイト様も戻られますか? お送りしますよ?」
「いや、もう少し休む……皆で行こう、レムレも休みなよ」
「はい!」
レムレは椅子に座る
『………………』
お互いに無言
何か話すべきか?
俺は周りを見渡す
「あ、ここの支払いは?」
「レリス様が済ませてくれましたよ?」
レリスどこまでイケメンな事するつもりだよ
「ん……」
「……いっ! 頭……いてぇ……」
アルスとユリウスも起き出した……さて、2人の目が完全に覚めたら帰るか
……昨日は、寂しくはなかったな