表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/290

第102話 それは突然に

「マールの浴場に行ってみたい!!」



 それは本当に突然だった


 シャルスがパストーレに向けて出発した翌日だ


 久し振りに仕事が一段落したから、たまには家族でお茶会でもしようと思った俺はティンクやアルスにミルム……それとレリスを誘って庭園でお茶を飲んでいた


 ヤンユが用意してくれた紅茶やお菓子を味わいながら談笑していたら、ミルムが言ったのだ


「あ~いきなりどうした?」


 俺はミルムを見る


「マールの浴場が凄いって聞いたの! お兄様やアルス兄様に義姉様は行ったけど私は行ったこと無いの! なんか仲間外れみたいで嫌!!」


「…………あぁ、確かにミルムは行ってなかったな」


 少し考えると……ミルムとヤンユとレリスは行ってないよな……


「でしょ!? お兄様! マールに行きたい!」


 ミルムが俺の側に来て俺の身体を揺らす


「うーん……ミルム、習い事は?」

「先生が暫く来れないから休みなの!」


 俺はヤンユとレリスを見る

 頷く2人、本当みたいだな


「そんなに行きたいのか?」

「うん!!」


 まあ、マールなら近いし……ミルムも習い事ばかりでストレスが溜まってるだろうな……長い休みは久し振りだろうし……

 たまには我が儘を聞いてやるか……


「よし、行くか!」

「やったぁぁぁぁぁぁ!!」


 跳びはねるミルム……やれやれ


「あの、カイト様?」

「んっ? どうしたレリス?」

「いえ、明日の事なのですが……」

「…………あっ!?」


 いけない! 忘れていた!

 明日は数人の貴族と会わないといけないんだ!!


「それに明後日は……」

「そ、そうだったな……」


 明後日は俺の兜を造ってくれた鍛冶屋に会いに行くんだ……


「えっ? じゃあ行けないの?」


 ガッカリしてるミルム

 うーん……流石に可哀想だな……


「あー、なんだ……俺は行けないが……ミルムは行ってみればいい」

「……1人で?」

「いや、1人じゃないぞ……」


 俺はそう言って振り返る


「ティンク、ヤンユ……悪いけどミルムと一緒にマールに行ってくれないか?」

「畏まりました」


 ヤンユは直ぐに了承してくれた

 ティンクは『えっ?』って首を傾げた


「…………」


 そしてミルムを見て……


「…………わかりました、ミルムちゃん、わたし達と行こう?」

「うん!!」


 了承してくれた……いやーありがたい


「アルスはどうする?」

「ちょっと先約があるから、僕も残るよ」

「そっか……なら護衛はあの2人に頼むかな」


 俺は近くのメイドにある2人を呼ぶように頼んだ


 ・・・・・・・・


「そんな訳で君達に護衛を頼みたいんだ」

『…………はい?』


 目の前の2人が同じ反応をした


「いやーいくら治安が良くなったと言っても心配でさ……実力があって信用できて女性と言ったら2人しか浮かばなくてさ」


 俺は目の前の2人……ルミルとティールに頼む


「それはわかりました…………うん、はい! 私は行けます!! てかマールを見たいです!!」


 ルミルは了承してくれた


「…………」


 ティールは難しい顔をしている


「厳しいか?」


 仕事が忙しいのか? 誰か代わりに送ろうか?


「…………わかりました、行きましょう」

「助かる!!」


 俺は2人に感謝する


「わーい! 旅行だぁ!」


 ミルムが2人の周りを走り回る

 ……転ぶぞ?


「わっ!」

「っと!」


 案の定躓いて転びそうになったのをティールに受け止められた


「ティールありがとう!!」

「い、いえ……」


 ミルムの人懐っこさにはティールもたじたじだな……


 そんな訳で

 ミルム、ティンク、ヤンユ、ルミル、ティールの5人は明日マールに行くことになった




 ーーー夜ーーー


 寝室で寛ぐ俺とティンク


「その、なんだ……無理を言ってすまないな」


 俺はティンクに昼間の事を謝る


「あ、いえ、全然大丈夫です! むしろ頼りにされて嬉しかったんですよ?」

「そうなのか?」

「はい!」


 ティンクが笑顔で答える


「そっか……あーなんだ、ミルムはあの通り元気な子だから迷惑を掛けると思うが……」

「大丈夫ですよ、ミルムちゃんもいい子ですし……頼もしい護衛も居ますから!」

「はは、そうだな」

「それに……その……」

「んっ?」

「ミルムちゃん、最近寂しそうでしたから……」

「そうだな……俺もアルスも忙しくてミルムと遊んだり出来てないからな……」


 ミルムも相当我慢していたと思う

 あの子は甘えん坊だからな……本当は四六時中俺やアルスに甘えたいんだろうが……去年くらいからは全く構えていない……

 それで我慢の限界を今日迎えたんだろうな……


「ティンクはミルムの事をどう思ってる?」


 ふと、気になって聞いてみた


「ミルムちゃんですか? 可愛い妹です!」

「へぇ……」

「その、わたしはヤークレンでの扱いの事もありますが……末娘でしたからね……姉と言ってわたしを慕ってくれるミルムちゃんが可愛くて可愛くて仕方ないんです!」

「…………」


 そっか……

 そう言えばティンクが初めてミルムと会ったときも、ミルムは即ティンクを受け入れていたな

 それが当時のティンクにはかなりの救いになったのかもしれない


 俺はティンクの肩に手を回して抱き寄せる


「カイトさん?」

「いや、暫く会えなくなるから……」

「あ、そ、そうですね……1泊の予定ですが……数日は会えないんですよね……」


 往復で4日……もしかしたら5日はかかるかもしれない


 まあ戦の時と比べると短いが……それでも寂しいものは寂しいものだ


「あの、その……し、しますか?」


 少し赤くなりながら、ティンクはボタンを外す

 一気に俺のやる気が爆発する


「勿論」


 まあ、明日は早いから程々にな?


 ・・・・・・・・・


 ーーー翌日ーーー


「じゃあ行ってくるね!!」


 そう言って馬車に乗り込むミルム


「それでは失礼します」


 ヤンユも馬車に乗り込む


「行ってきますカイトさん!」

「あぁ、気をつけて」


 俺はティンクの額にキスをする


「はい! …………えい!」

「!?」


 一旦離れたティンクが駆け寄って来て、屈んでいた俺の唇にキスをした


「行ってきます!」


 そして赤くなりながら馬車に乗り込んだ


「熱いですね」


 レリスがからかうように言う


「羨ましいだろ?」


 俺は笑いながら答えた


 こうして、ティンク達はマールに向かった

 まあ、ゆっくりとお風呂でくつろいで欲しいものだ








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ