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第9話 ベススとの交渉

カイト視点に戻ります

 

 オルベリンがカイナスへの援軍に行った翌日


「…………」

「カイト様、どうしましたか?」

「いや、ベススとの交渉をどう進めるか考えていた」

「そうでしたか」


 俺とレリスはベススとの交渉の為に馬で走っていた


 俺とレリスだけかって?


「カイト様!前方に賊が!始末してきます!」

「任せた!!」


 もう一人……ヘルドが護衛として一緒に来ている


 この3人で交渉の場に向かっている

 3人なのは大人数だと移動に時間がかかるのと、相手に不快な気持ちを与えるからだ

 これは交渉なんだ……同盟を結ぼうって相手に大人数で会いに行くか?

 行かないだろ?



 交渉場所は『ルノマレス』という都だ

 ベススの領土にある都で一番オーシャンに近い場所だ

 そこでベススの領主『ナリスト・ベスス』に会う


 ナリスト・ベスス

 数少ない女性の領主だ

 女性の領主だからか最初は周りからも軽く見られていたが、高い知性とカリスマを発揮してベススを纏めた人物だ

 彼女ならオーシャンと同盟を結んだ時のメリットを考えてくれる筈だ……てか結んでもらわないと困る


「しかし、手土産はこれで良かったのでしょうか?」


 レリスは小袋を取り出す

 その中には作物の種を入れている


「ベススの土地でも育ちやすい作物だ、時間はかかるがベススでもある程度の自給が出来るようになる……喜んでくれる筈だ」


 実際ゲームでも種を献上したら一番友好度が上がったし


「終わりました!」


 俺達が追いついたら一緒に馬を駆け出すヘルド

 これで17人目の賊を殺したことになる

 ……道中の賊多くない?

 帰ったら見廻りを増やすかな……


 ・・・・・・・


 途中で休みながら6日でルノマレスに到着した

 さて、交渉する建物は……


「あの、カイト・オーシャン様ですか?」


 馬から降りた時に綺麗な服を着た老人が話し掛けてきた……見た目や仕草から執事っぽいと思った


「そうだが?」

「……」


 レリスが俺の左側に立つ

 ヘルドが俺の右斜め前に立つ

 警戒してるな……


「お待ちしておりました……わたくしはナリスト様に仕える執事の『ムベ』と申します」

「ナリスト殿の?」

「はい、カイト様が訪れたら屋敷まで案内せよと……」

「それは助かる……よろしくお願いします」

『……』

 俺が礼をするとレリスとヘルドも礼をする


「これはわたくしなどにご丁寧に……こちらです」


 ムベは嬉しそうにお辞儀をすると歩き出した


 ・・・・・・


「こちらになります」

「ほぉ、これは立派な……」


 案内された屋敷はとても大きかった……

 もう1.5倍くらい大きかったら家の城と同じ大きさじゃないのか?

 …………いや逆に家の城が小さいのか?


「主は既に準備が出来ております」

「わかりました」


 俺はムベに着いていく

 レリスとヘルドも俺の側を歩く


 屋敷の中を案内されて、とある部屋の前で立ち止まる


「こちらの部屋になります……あの、カイト様」

「何か?」

「そちらのお二方なのですが……」


 ムベがレリスとヘルドを見る


「二人がどうした?」

「主は側近を一人だけ付けております、ですのでカイト様もどちらかお一人様だけの同伴で中に……」

「そうか……ならレリス一緒に来てくれ」

「畏まりました」

「カイト様、俺はどうすれば?」

「ここで待っててくれるか?何かあったら大声で呼ぶから」

「わかりました!」


 ヘルドが俺に敬礼をしてから廊下の壁に背をつけて部屋の扉を睨む


「よし、行くか……」


 俺とレリスは部屋の扉に近付く


「…………ノックは大事だよな?」

 コンコンっと扉をノックする


『どうぞ』


 女性の声


「失礼します」


 ガチャっと扉を開けて入室する


「ようこそ、カイト・オーシャン殿……随分と礼儀正しいな?」

「礼は欠かさずですので」


 サラリーマン時代の癖だよ


 俺はナリストを見る


 褐色の肌

 整った顔立ち

 ……ふむ、美人だな……


「ふむ、思ったより若いのだな」


 ナリストも俺を見て言う


「まだ16の若輩ですので」

「へぇ、16……その歳で領主なんて大変だろうに?」

「優秀な部下達に助けられています……貴女も噂よりもお綺麗ですね……思わず見惚れてしまいました」

「ふふ、口が上手いな」


 よし掴みはバッチリなようだ


「…………」

 

 ナリストの後ろに髭面の男が立っていた


「おっと、紹介しておこう、彼は『ゼルナ』……私の自慢の弟だ」


 ゼルナ・ベスス

 武力とカリスマが高いキャラだ

 ナリストが知性寄りなら彼は武力寄りのステータスになっている

 ナリストが死んだ場合は彼が領主になる確率が高い……100回で99回は彼だ

 後1回は……誰だったかな?


「初めましてゼルナ殿」

「……ああ」


 ゼルナは俺の握手を求めて差し出した手をチラリと見る

 そして無愛想に返事だけをした


「初めまして!カイト様に仕える軍師!レリスと申します!!」


 その様子を見て怒ってるのかレリスが前に出てゼルナの手を握って挨拶した


「…………ああ」


 ゼルナは無愛想だ……

 いや、無礼だと言ってレリスを殴ったりしないから良い方か?


「レリス!」

「あ、申し訳ございません……」


 レリスはシュンとして下がる


「ナリスト殿、ゼルナ殿、申し訳ございません……彼が無礼を働いてしまって……」

「いや気にしなくて良い……家の馬鹿がちゃんと挨拶をしないのが悪い!」


 バシバシとゼルナの背をナリストが叩きながら言う


「さて、お互いの紹介も終わったんだ……話し合おうかね?」


 ナリストが椅子に座る

 促されて俺も向かい側に座る


「オーシャンからは食料を格安で輸出するという話だったね?本気かい?」

「はい、ナリスト殿もご存知でしょうが我が領は人口が他の領と比べて少ないです……しかし食料は大量に収穫できています……その為余るんですよ……」

「ベススとしては羨ましい話だねぇ……だから格安で売ると?」

「腐らせて駄目にするよりは遥かに良いかと……」

「ふーん…………それだけかい?何か目的が有るんだろう?腹を割って話そうじゃないか」


 そうだな、俺も回りくどいのは嫌だ


「では単刀直入に……我々オーシャンはベススとの同盟を望んでいます」

「へぇ……家との同盟かい?」

「はい」

「…………んー」


 ナリストは少し考える……そして


「あんた東方を手に入れるつもりかい?」


 そう聞いてきた……見抜かれてるな


「えぇ、そのつもりです」


 俺は笑顔で答える


「あっさりと答えるねぇ……それで?東方を手に入れたら次は南方かい?」

「そこまではわかりませんよ……少なくともベススとは争いたくはありませんね、末永く付き合いたいと思っていますよ?」

「ふーん……」


 ナリストはニヤニヤしながら俺を見る

 その表情はまるで珍しい物を見る子供のようだ


「あんた面白いね……いや、末恐ろしいと言うべきかね?」

「そうでしょうか?」

「普通は誤魔化す所だよ?でもあんたはハッキリと言った……ふふ、いいね、私はそんな男は好きだよ?」

「ありがとうございます」

 意味が違うのはわかるが『好き』と言われてドキッとした


「まあ、あんたが東方を制圧するまでに私が南方を制圧すれば問題ないね……うん……後はオーシャンの輸出する食料についてだね」

「それなら……レリス」

「はい……こちらを」

「…………」


 レリスが小袋を前に出てきたゼルナに渡す

 ゼルナは小袋に怪しいところは無いかを確認してからナリストに渡した


「これは……種かい?」

「繁殖能力の高い作物の種です、それならベススでも収穫出来ると思います」

「ほお……」


 ここだ!相手が興味を持ったなら一気にハートを掴むんだ!!


「更にオーシャンが提供するのは芋等の野菜からです」

「……んっ?()()?」

「はい、先ずは長持ちする作物から輸出します……何度か輸出して運ぶのにどれ程の時間がかかるか、安全なルートは何処か、一度にどれだけ運べるか……それを確認していきます」

「ふんふん……」

 ナリストの目が輝いた


「そして可能だと判断したら鮮度が命の新鮮な葉物などの作物も輸出したいと思います!」

「葉物!!」

 ガタッとナリストが椅子から立ち上がった

「葉物があるのかい?レタスが?キャベツが?」

「あります!生で食べることも出来ます!」

「生!……生で……」


 ナリストの頬が弛む


「好物でしたか?」

「ああ!ベススでは滅多に食べられなくてね!!」

「でしたら……」

「あぁ!結んでやるさ!同盟を!!」



 こうしてベススとの同盟が結ばれた



 2枚の書状に、お互いの署名を入れて……よし!


「はい、確かに確認しました」


 ムベが書状を1枚ずつ俺とナリストに渡す


「これで同盟を結ばれました」


 ナリストが俺を見る


「ベススの力、必要なら遠慮なくいいな!!」

「では、こちらは出来るだけ速やかに葉物を送れるようにしますよ」


 俺とナリストが握手する



『おい!止まれ!』


「んっ?」


 外からそんな声が聞こえた

 人が来たのか?物音が床下……廊下……そしてこの部屋に近付く


「……下がれ」


 ゼルナが剣を抜いて俺達の前に出る


『んっ?おい!どうした!』


 ヘルドの声がする


『…………なに!?』


 そんな声がして扉が叩かれる


『カイト様!報告が!』


「…………」


 俺はナリストを見る


「入れて良いよ」

「入ってこい!」


「失礼しますってうお!?」


 ヘルドがゼルナを見て身構える


「……」


 ゼルナは剣を仕舞った


「…………カイト様!」


 ヘルドはゼルナが敵意が無いことを確認してから俺に駆け寄る


「どうした?」


「マールマールがオーシャン領に向けて進軍してるそうです!」


「なに!?」


 おいおいおい!?なんで今!?


「……マールマールがかい?カイトが居ないのを狙ったのかい?」


 ナリストが首をかしげる


「わかりません……数は?」


 俺はヘルドを見る


「えっ?……えっと……」


 ヘルドは廊下を見る

 廊下から家の兵が俺達を見ていた


「あ、はい!数は4千です!!」


 兵が答える


「4千か……」

「家の兵が早速必要かい?1万ならすぐに動かせるよ?」


 ふう!気前が良い!


「ありがたいですが……1万も必要ありません……3千ほど援軍を頂けませんか?」

「3千で良いのかい?」

「はい、大丈夫です、ベススの援軍には交戦させませんよ」

「……んん?」


 ナリストが首をかしげる


「同盟を結んだのです、俺のやり方をお見せしますよ」


 4千だったら何とかできる……既に策は浮かんでる



「レリス!ヘルド!戻るぞ!すぐに戦の準備をする!!」

『はっ!!』



 さて、マールマールからオーシャンまでは片道でも15日かかる

 急いで戻れば充分に間に合うな!!


 それにこれはチャンスだ!

 マールマールを攻める口実が出来た!!



 さあ……蹂躙しようか!!



















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