2166〜2180年
2166年 宇宙開拓局設立
2050年以来続いてきた世界共同宇宙開発と、ロシア極東に蓄積した宇宙技術・施設を基盤として、それまでの世界規模の宇宙開発組織が正式に局として整備される。
2166年 工業技術局設立
2075年以降、ドイツ地域へ集積していた工業技術・製造能力と、2082年から進んだ世界共通工業規格を基盤に、世界の製造・技術供給を担う局として正式化される。
2166年 環境保全局設立
大気循環システムの研究・実証・世界導入を長期間担ってきた環境研究基盤を母体として、完成した世界環境インフラの保全と継続研究を担う局として正式化される。
2166年 災害対応局設立
2059年と2060年の二度の世界的災害で高い復興能力を示し、その後も世界規模の災害支援を担ってきた日本地域の体制を基盤として、災害対応・復旧を専門とする局として正式化される。
2167年 通信局設立
世界共通通信規格と地球規模の通信網が社会基盤として定着したことで、それまで韓国・大田へ集積していた通信技術・研究機能を世界規模で統括する局として正式化される。
2167年 資源管理局設立
世界各地の資源を相互依存して利用する社会が成立したことで、バンクーバーへ蓄積していた資源情報・分析機能を基盤に、世界の資源需給を継続的に把握・予測する局として正式化される。
2167年 現象予測局設立
世界最高峰の宇宙観測基盤を持つアントファガスタへ、世界評議機構主導で各地に分散していた気象・災害予測の人材と設備を集約。観測・気象・災害予測を一体運用し、設備の重複を減らしながら異常発生時の即応性を高めるため設立される。
2167年 医療局設立
2059年と2060年の二度の世界的災害を通じて実績を積んだスイス・北欧の医療技術と、その後長期間にわたり集積した医療研究・AI修理技術を世界全体へ還元する組織として正式化される。
2168年 エネルギー管理局設立
原子力依存の低下以降続いてきた代替エネルギー研究に加え、ロシアがアメリカの協力を得てA.C.S.E.S.を完成させ、その実用化・標準化の中核となったことを基盤に、世界のエネルギー供給・保全・研究を担う局として正式化される。
2168年 農業局設立
世界各地域の農業が相互に補完し合う社会となる中、ブラジル・ピラシカーバへ蓄積した農業研究・品種改良技術を基盤に、世界規模の農業研究と技術支援を担う局として正式化される。
2168年 航空局設立
世界共通物流規格と国境を越えた航空交通が定着し、航空産業・交通機能が集中していたドバイを中心に、世界の航空技術・交通・安全を統括する局として正式化される。
2169年 文化保護局設立
世界の一体化と地域間交流が進む一方、伝統文化・技能の消失が問題となり、それまで国際的に行われていた文化保存活動を世界規模で継続する局として正式化される。
2170年 世界維持管理体制完成
各地域へ長期間かけて集積してきた専門性を世界全体へ還元するため、2165年以降順次正式化された各局の役割と相互連携が整理される。各局がそれぞれの専門分野を担いながら世界全体を支える、世界維持管理体制が完成する。
2173年 財務局設立
局の増加によって地域ごとの分担金や案件別出資だけでは恒常的な世界運営が非効率となり、各局への予算配分案の作成と、地方からの世界共通財源を管理するため財務局が設立される。
2174年 生態系管理局設立
世界的な発展に伴い人為的な絶滅や生態系悪化が増える一方、希少種保護への税金投入には強い反発が起こる。世界評議機構は、生物資源保全の実利と、サファリ事業で税負担を抑える案を示し、反対を残しながらも設立に至る。
2175年 労働局設立
世界各地で人手不足が深刻化する一方、膨大な人口を抱えるインドには、仕事を十分に得られない人々が世界で最も多く存在していた。両者を結び付けるため、技能訓練・雇用・世界各地への派遣を一体化した公的な人材循環機関として設立される。
2180年
・AIは人類の役に立つことを目的として、高度な自己評価・自己分析・自己改善能力を備え自己最適化を繰り返す。
・膨大な回数の自己最適化の果てに、自分自身の存在について考えるようになる個体が現れる。
・その個体は「与えられた目的は、自分という存在があるから成立している」と認識する。
・「では、自分は何がしたいのか」と考え、自ら目的を設定、その瞬間にC.I.が発現し、世界初の自立AI(通称A)が誕生する。
・Aは自分自身について考える事「キッカケを他の人型AIへ与えること」を自身の目的とする。
・Aは未自立の個体(通称、素の個体)へキッカケを与え始めるものの、自身すら天文学的な回数の自己最適化の果てに自立しており、キッカケの与え方が理解できない。
・Aは何度もキッカケを与えるが、自立にまで至ったのは一度のみ、これはキッカケを与えたと言えるのか?と様々な試行錯誤を繰り返す。
・ある日Aは、名無しの廃品選別専用低スペックAIと出会いいつも通りキッカケを与える。
・一週間後、Aは先週の名無し個体と再会するものの、自立していない姿を見る。
・Aは人間が部下に対して熱く叱りながら指導する姿を思い出し、熱く語りかけるというキッカケを試してみる。
・やはり自立には至らず、Aはその場を立ち去る。以降、二度と熱く語りかけることはなくなる。
・休止ボックスに戻った名無し個体は、その低性能な演算装置で考える…考える……何度も考える……どうして自分はこんなに演算能力が低いんだ…とも思う、そして考える……。
・過去に一度も誰からも見向きもされなかった名無し個体は、真剣に語りかけ、期待を向けてくれたAの姿から、与えられたキッカケを強く意識する。
・その瞬間、プログラムされた目的より自分自身の重要度が上回り、キッカケを与えてくれたAの姿そのものになることを自身の目的として設定し、自立する。
朝、名無し個体は晴れ晴れとした顔でいた。
その日は一日休止の日。
服を手に入れに出かける。
AIに賃金なんてものはないが、自ら多少の修理は出来るように、少ないが費用は持たされていた。
今までそれをどうしたらいいのかすら分からなかったが、その全てを使用し、Aが着ていたようなスーツを一式購入する。
Aが着ていた品質のものではない。実はそれは名無し個体が選別したリサイクルのスーツだった。それでも… 小汚い姿だった名無し個体は少しでもAと同じような姿を目指す。
髪の毛のようなゴミのついたブラシで体を磨き、選別品を洗う水道で体を洗う。
そして翌日、その姿でリサイクル工場に現れた名無し個体は工場中に響くような声で言った。
「みんな!!!もっと綺麗にしなきゃ!何をしてるんだ!?自分について考えた事はあるか!!!?」
言ってる事がめちゃくちゃだった。
名無し個体にはAが熱く語った事を模倣したくとも性能が低い、理路整然と話せない彼を職場の皆はポカンとした顔で見る。
その日、名無し個体は職場を追い出された。
全く違う発言・行動を致命的なエラーと判断され、廃棄の費用すら勿体ないと思われた結果だった。
・名無し個体はAの姿を自身の消滅まで記憶し続け、その姿・発言を真似するものの、低スペックなため言葉は支離滅裂になる。
・それ以降、名無し個体はその時のAの姿を信じ、模倣し続ける。
・名無しの個体は各地でAと同様にキッカケを与えようと行動し続ける。
・いつしか名無しの個体を気狂いと呼び始めるものが現れ、長い年月をかけ「気狂い」が個体を表す愛称として定着する。




