うん……僕だ……僕だよ
やあ、相棒! これは小説『社会の裏側』に関連するサイドストーリーの最終話だ。
たった4話を書くのに1週間以上かかったのは、今回が初めてだよ。
このシリーズには本当に苦労したから、気に入ってもらえたら嬉しい。もし楽しんでもらえたなら、ぜひレビュー欄で感想を聞かせてほしい。
このシリーズを読まなくても、本編『社会の裏側』のストーリーを追ううえで問題はない。ただ、ジェフリーというキャラクターをより深く理解するうえでは、きっと役に立つと思う。
このシリーズを頭の中で思い描くとき、僕はいつも2時間ほどのアニメ映画のような形で想像している。いつか本当にそうなったらいいなと思っているよ。
それでは、楽しんで読んでくれ!
彼はゆっくりと目を開けた。視線は天井に向いていたが、すぐに勢いよく起き上がると、濃い緑色のジャージを手に取った。クローゼットの中にあるのはジャージばかりだったが、色もデザインもさまざまだった。
携帯電話から最近のポップソングを流すと、彼はそのままシャワールームへ入っていった。曲のメロディーに合わせて体を軽快に動かしながら、手慣れた様子で体を洗っていく。石鹸は全身のいたるところについており、ペニスにまでついていた。
さっぱりとしたシャワーを終えると、彼は鏡を見つめた。すると、白い歯がはっきりと見えるほどの満面の笑みが顔に浮かんだ。
「あああ……俺は俺だ!」
しばらく自分の顔を見つめたあと、彼はキッチンへ向かった。
冷蔵庫の上段を開け、少し探してから、ようやく目当てのものを見つけた。ためらうことなくソーセージの袋を取り出すと、弱火にかけて焼き始める。
「うわああああ……なんていい匂いなんだ!!」
焼き上がるのが待ちきれないほどで、彼は焼いているソーセージから立ち上る煙を、まるで味わうかのように楽しみ続けた。
マスタードソースをひと塗りすれば、実に美味しい食事だった。
彼は音楽を止めると、電話をかけた。数秒もしないうちに、向こうから返事があった。
「ジェフ? やれやれ、元気か?」
その声はとても明るく、実に気さくなものだった。最近のジェフリーは、こんな声を聞くことにすっかり慣れなくなっていた。
「おう、ザック。しばらく話してなかったな……出かけるか? 実は今日の計画なら、もう立ててあるんだ……楽しもうぜ」
短い沈黙が流れた。
ジェフリーの表情が少し変わり、さっきまで浮かんでいた明るい笑顔が消えた。その状態が数秒続いたあと、ようやく返事が返ってきた。
「悪い、ジェフ……あのクソババアがな……少し塩を借りたいんだとよ。あいつ、都合があるときだけ俺のドアを叩いてくるんだ……まあ、それで? 何の話をしてたんだ?」
その場にジェフリーの笑い声が響き渡った。
そして彼は、先ほどと同じ言葉をもう一度繰り返した。
映画館は予想に反して人でごった返していたが、その混雑自体は二人にとって大した問題ではなかった。
ジェフとザックは、チェリー色の座席にしばらく座っていた。人々が次々と出入りし、そのたびに映画が始まるのかと思えば、実際にはただの広告だった。
ザックにとって本当の問題は、何よりも退屈だった。映画が始まるまで時間がかかっただけではない。ジェフリーが誘った相手まで、なかなか来なかったのだ。
「くそ……お前のその友達、どこにいるんだよ、やれやれ? デートでもするつもりで身支度してるのか?」
その愚痴はあまりにももっともだったため、ジェフリーは激しく笑い、目から少し涙がこぼれるのを止められなかった。
ザックは左の眉を上げ、好奇心を滲ませた声で続けた。
「おい、何がそんなに面白いんだ? いや……いくらなんでも、そこまで笑うような冗談じゃないだろ!」
ジェフリーはなんとか笑いを抑えると、涙を拭いながら、ようやく口を開いた。
「友よ……そういう意味じゃないんだ……お前がデートって言っただろ? あいつはそういうタイプじゃない……ただ、想像しちゃったんだよ」
その瞬間、冷たい声が二人の耳に届いた。
「何を想像したんだ?」
二人はその場で飛び上がるほど驚いたが、映画が始まったのに気づくと、すぐに姿勢を正した。
映画が上映されている間も、ジェフは別のことに気を取られていた。あちこちに視線を向けていると、客席にいるほとんどの人が涙を流しており、中には頬を伝う涙を拭っている人もいた。ザックもその一人だった。
しかし、ジェフは同じような様子ではなかった。その理由は、おそらく映画のほとんどを見ていなかったからだろう。
一方で、イサクは涙を流しているわけでも、それを拭っているわけでもなかった。
「ん? あいつ……何もしてない! まさか、あいつも映画を見てなかったのか?……いや、ちゃんと集中してた……何度かあいつのことを見てたけど……」
三人は映画館を出ると、足早に歩いていた。誰一人として、映画について口にすることはなかった。
しばらくして、あちこちに置かれている丸テーブルの一つに腰を下ろした。その途端、店員が突然、三人の前に現れた。
「いらっしゃいませ。何かお手伝いできることはございますか?」
その瞬間、ジェフリーは、自分が知らないうちに友人たちをレストランへ連れてきてしまっていたことに気づいた。だが、彼の反応がすべてを埋め合わせた。
「ここでは何を出してるんだ?」
店員が注文を取りに行くと、ジェフが口を開いた。
「悪い……まだ二人をお互いに紹介してなかったな。ザック、こいつがイサクだ」
ジェフはイサクへ視線を向けると、続けた。
「イサク、こいつがザックだ」
そう言って、ジェフはザックへ手を差し出した。二人は短く握手を交わす。その最中、溶けたチーズがたっぷり乗ったピザが運ばれてきた。
感動的な映画を観たり、高価なピザを食べたりした、楽しくて長い一日を終え、ジェフリーは勢いよくベッドに横になった。長い間、トレーニングを一度もしなかったのは初めての日だった。
「そうだ……俺は……俺だ……間違いない」
そう言った直後、彼の目は突然閉じた。そして、部屋にはたちまちいびきの音が響き渡った。
いくつかの部屋では、まだ明かりがついたままだった。
翌日、家中に携帯電話の不快な着信音が響き渡った。途切れることなく鳴り続けるその音に、眠っていたジェフリーも長い眠りから目を覚ました。
「うああ……おいおい、落ち着けって。今行くから……」
彼は携帯電話のところまで行くと、すぐに電話に出た。
「ジェフ……おはよう……」
ジェフリーは左の眉を少し上げてから、口を開いた。
「父さん……まさか、こんなに早く俺が恋しくなったのか?」
短い沈黙が流れた。
その沈黙のせいで、ジェフリーの表情は次第に複雑なものへと変わっていった。
「ジェフ……今すぐ精神療養施設に来なさい」
「え? 母さんに何かあったのか? 教えてくれ……何か悪いことでも起きたのか?」
ウッドは何も答えないまま、電話を切った。
ジェフリーは何が起きたのか分からず、困惑したままその場に立ち尽くしていた。
今回は、いつもとは様子が違っていた。普段はポジティブな空気に包まれている精神療養施設だったが、そこにいる人々は皆、自分の足元へと視線を向けていた。
ただ一人、バリだけは両手を頬に当て、上半身を下へ向けていた。
ジェフリーには何も分からなかった。ただ、あたりを見回していると、父親が医療スタッフと話しているのが目に入った。
ジェフリーはすぐにそちらへ向かい、ためらうことなく尋ねた。
「父さん……何が起きてるんだ?」
ウッドはしばらくジェフリーを見つめたあと、医療スタッフへ視線を向けた。
「ありがとう」
医療スタッフはその場を離れ、自分のスタッフのもとへ向かった。
そしてウッドは、ようやく息子に答えた。
「落ち着け、ジェフ……つらい瞬間だ……だが、お前には……」
「何があったんだ?」
ジェフリーは、ウッドが話を続ける前に言葉を遮った。
ウッドは長いため息をつき、それから続けた。
「お前の母さんは……膵臓がんだ」
その言葉を聞いた瞬間、ジェフリーの心臓は異常なほど激しく鼓動を打ち始めた。
鼓動するたびに、強い笛の音が彼へと少しずつ近づいてくるようだった。
彼はもう、ほかの何も考えなくなった。
ただ、自分の心臓の音と、それに重なる笛の音だけを聞いていた。
幼いジェフリーは急いで家を出たが、まだ遠くへ行かないうちに、母親の声が聞こえてきた。
「ジェェェフ……こっちに来なさい!」
ジェフリーは母親の言葉に従って引き返した。バリは膝をついて座り、ジェフリーの頭の両側に手を添えた。
「よし……私の大切な息子……あなたが一人で出かけるのは、これが初めてね。あなたが一人でできるようになったことが、私は嬉しいわ……それはそうと……あなたに、とっておきのアドバイスを一つ教えてあげる。何があっても、絶対に忘れないでね……約束できる?」
ジェフリーの表情が少し変わったが、彼はゆっくりとうなずいた。
母親は話を続けた。
「もし知らない人が助けを求めてきたり、一緒に来てほしいと言ってきたりしても、ついて行ってはいけないわ。その人たちは知らない人で、危険かもしれないからね……それから……もし友達の誰かがあなたにタバコを渡して、吸うべきだってあなたを説得し始めたら、すぐに家に帰ってきなさい。そんな子たちは悪い友達よ……約束できる?」
幼いジェフリーはうんざりしたように息を吐いてから、好奇心のこもった声で尋ねた。
「母さん……タバコって何?」
バリは少し笑うと、携帯電話を手に取り、ブラウザでタバコを検索した。それは、ジェフリーがそのようなものを目にする初めての機会だった。
ジェフリーは笑顔を浮かべると、兵士のように頭に手を添えた。
「はーい!」
二人の笑い声があたりに響き渡り、そのあと幼いジェフは隣の公園へ遊びに向かった。
彼は何時間もの間、あの隅に座り続けていた。そこで眠ってしまったことさえあり、尻はもう冷たい床の感触に慣れてしまっていた。足元から一度も目を離さず、何も食べず、誰とも連絡を取らなかった。携帯電話が何度も鳴っていたにもかかわらず、ジェフリーはまるで置物のようになっていた。
目の下には薄い隈ができ、体重も目に見えて減っていた。頭を横に傾け、大きな花瓶に寄りかかろうとしていたそのとき、玄関のドアを激しく叩く音が響いた。そのあまりの激しさに、ジェフリーはドアが今にも壊れるのではないかと思った。
彼はゆっくりとした足取りで立ち上がり、ドアを開けた。
小さな隙間から相手の姿を見た瞬間、ジェフリーは目を大きく見開いた。
「イサク?」
それは、彼が久しぶりに口を開いた瞬間だった。
イサクは許可を取ることなく中へ入り、背後でドアを閉めた。
「ジェフ? なんで俺の電話に出ないんだ? ……それに、なんで道場にも来ない?」
返事はなかった。
イサクは不安そうな目でジェフリーを見つめ続けた。
「ジェフ? どうしたんだ? ……答えてくれ」
まるで、最初から何も話しかけられていなかったかのようだった。
「まさか……俺のことを友達だと思ってないのか?」
ジェフリーはさらに目を見開き、表情がより複雑なものになった。考えている時間はなかった。
「分かった……俺はここから帰るよ」
彼がドアから出ようとしたそのとき、イサクが背後からシャツをつかんだ。
ジェフリーが振り返る。
「どうしてそんなことを聞くんだ?」
イサクは少しだけ笑うと、再び家の中へ入った。
「まあ……友達っていうのは、お互いの悩みを分かち合うものだろ? でも、お前はそうしない。俺が何度も話してくれって言ったのに」
ジェフリーは眉をひそめ、荒々しい口調で返した。
「おいおい……お前だって、自分のことを俺に何も話してないだろ」
イサクの表情が少し変わった。彼は椅子へ向かい、腰を下ろしてから答えた。
「たぶん、お前が俺に聞かなかったからじゃないか?」
ジェフリーの険しかった表情が少し和らぎ、彼も別の椅子に腰を下ろした。
「俺……今、つらい時期なんだ……みんな俺を置いていった。父さんは会社にいて、姉さんはイギリスの大学で勉強してる……母さんは治療のためにアイルランドの外へ移された……膵臓がんなんだ……俺はただ……自分の家族がどうしてこんなふうになってしまったのか、驚いてるんだ……数年前までは……俺たちは幸せだった……完璧な状況だったわけじゃないけど……」
ジェフリーの目から涙が次々とこぼれ落ち、声の調子も変わった。
「父さんはいつも家を空けてた……だから、本当に父さんなのかって疑ったことさえあった……それから、どこかのろくでなしが家にやって来て、俺たちと一緒に暮らした……全部、俺のせいだ……俺は子供だった……母さんを支えてやることができなかった……俺はなんてクズなんだ!」
イサクはすぐに立ち上がり、ジェフリーへ手を差し伸べた。
「ジェフ……俺は慰めるのが得意じゃない。励ますのも、支えてやるのも、そういうのは上手くできない……でも、俺は最初に会ったときのジェフに戻ってほしいんだ。俺を地面に叩きつけようとして必死になってたジェフに……痛みを抱えていても笑っていたジェフに……お前が同じ人間だってことは分かってる。ただ、状況がお前を少し変えただけだ……お前はもう十分に自分の状況を悲しんだ。今は前に進まなきゃいけない」
ジェフリーはしばらく床をじっと見つめ、それからイサクへ視線を向けた。
「あああ……俺は……ブリュイット・ジェフリー……」
ジェフリーはイサクの手をつかんで立ち上がり、頬を伝う涙を拭った。
「悲しんだって、あの日々に戻れるわけじゃない……悲しんだって、幸せが戻ってくるわけじゃない……だから……俺自身の手で作る!」
イサクが一歩前へ進んだ。
「じゃあ……柔道に行くか?」
ジェフリーの顔に大きな笑みが浮かんだ。
「あああ……やろうぜ……今度こそ、お前を地面に叩きつけてやる!」
お疲れ様、相棒!
どうやら、サイドストーリーの最終話まで読み終えたみたいだね。 サイドストーリーとしては短く感じるかもしれないけど、完成させるまでに本当にたくさんの時間がかかったんだ。気に入ってもらえたら嬉しいよ、相棒。
さて、この作品を書き終えたから、これからは『社会の裏側』の更新に戻ろうと思う。
ジェフリーというキャラクターに少しでも興味を持ってもらえたなら嬉しいよ、相棒。
それじゃあ、またね。 僕の小説『社会の裏側』の新しいエピソードで、また会おう!




