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契約結婚を解約する方法  作者: 紡里


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8/8

もう一つの契約解消

もう一つの元凶。

 娘が泣いて帰ってきた

 あら、お人形を買いに行ったんじゃないの?

 侍女が「売らないと言われて帰ってきました」と言う。

 なんですって?

「壊されるとわかっていて、職人が精魂込めたものを売る気はない」と言われたの?


 ひどいわね。

 夫が休みの日に、改めて一緒に行きましょうか。

 きっと、平謝りで買ってくれと言ってくるわよ。




 その夜、夫が雑誌を開いて私に見せる。

 違う国の言葉でよくわからないわ。




 夫が私の言葉を遮り、一方的にまくし立てた。



「王女殿下のお気に入り」という記事だ。

 君の義姉が作ったドールハウスが、外国の王女殿下のお気に召したそうだ。

 通訳なしで楽しく過ごしたと書いてある。


 読めもしない君とは、えらい違いだな。



 しかも、作家になったきっかけが、義妹に母親の形見のドールハウスを壊されたからだと……これ、君のことだよね。


 そんな子どもの頃の話を今更だと?


 反省していないのか。



 この国だけじゃない。他の国の王室にも愛好家がいる作家だ。

 実家が小遣いをくれないから十代でデビューしたなんて、どんな家なんだと話題になっているぞ。

 君のご両親が夜会で「娘さんがたいそうご活躍ですね」と話しかけられて「なんのことだ」と言ってしまい、「本当のことらしい」とすでに知れ渡っている。


「遊び歩いて男あさりに忙しいご令嬢」が、いつ根気が要るドールハウスを作成するんだ?

「困ったお義姉様」というのは、どこの誰のことだ?



 君の言うことは信用できない。

 このままでは、こっちまで笑いものだ。


 離婚させてもらう。

 明日には弁護士が来るから、協議しよう。

 数日もらうが、荷物をまとめて出て行く。


 入り婿だから、持ち出せるものなんか、あまりないよ。

 もちろん、君からの贈り物は置いていく。



 実家に相談したら、領地で補佐でもすればいいと受け入れてくれた。

 僕が恥ずかしくて社交界には出られないだけじゃないんだよ。


 結婚したままだと、僕の実家にも悪い影響が出てしまう。

「あんな女とよく縁を結べるもんだ」と信用を落としかねない。



 いくらなんでも、ひどすぎる。

 罪のない義姉の悪口を言いまくって、令嬢としての立場を奪って。

 なんて性格が悪いんだ。


 今まで「家付き娘の可愛い我が儘」だと思っていた自分が信じられないよ。



 愛していないのかだと?


「義姉に虐められても健気に耐える少女」なんていうのが、そもそも幻だったんだ。

 僕の愛も存在しない、幻だ。



 これは外国の文化誌だが、国内のゴシップ誌がいつ「最初にキャリーを裏切った男」と僕に突撃してくるかわからないだろう。

 義姉から妹へ乗り換えた男?

 君の言葉を真に受けて、人前で彼女に苦言を呈したこともあるんだぞ。


 ああ、僕は嫉妬深い女の戯れ言に振り回された道化師として、有名になってしまうね。




 子どもたちが僕と一緒に田舎に来たいと言うなら、連れて行く。

 今日、泣いて帰ってきた? 義姉の作品を扱っているドールハウスなら当然だろう。


 これから子どもたちに説明をして、僕か君かを選ばせよう。

 子どもたちには辛い選択だと思うが……。



 事実をねじ曲げるな。

 子どもたちに罪悪感を植え付けて、付け込もうとするな。



 君は本気で「自分に非が無い」と思っているのか?

 ……すごいな。


 そんな人間とやっていけるわけがないだろう。

 政略結婚なんだから、利がなくなって害ばかりになれば解消だ。



 ああ、元婚約者として、キャリーは謝罪を受けてくれるだろうか。

 優しい彼女なら、きっと……。



 ああん? 離婚しないという選択肢は、ない。


きっちり「ざまぁ」しました。

この夫も反省してないですね。

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― 新着の感想 ―
養子になった子の立場からの婚約破棄は新しく、興味深く読めました。そして、分家からみたら養子に出した上、本家のしょうもない醜聞に巻き込まれるなんてたまったものではないといった理由を上手に物語へ落とし込ん…
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