14話 小さな波紋
スキルを使い始めてから――数日。
音は、確実に変わっていた。
ジャラン――♫
弦を弾くたびに、音の輪郭がはっきりする。 以前のような曖昧さは、もうない。
(……見える)
《音響構築》
音が、線として視える。 弦の振動。 空気の揺れ。 それらが、重なり合って“形”を作っている。
(ここを、少しだけ……)
指の位置を、ほんのわずかにずらす。
ジャラン――♫
(……合った)
音が、ぴたりと収まる。
「すごい……」
隣で、カノンが目を輝かせていた。
「なんか、前よりずっと綺麗!」
「……調整できるようになったから」
「調整?」
「音を、直せるんだよ」
言葉は少ない。でも、感覚ははっきりしている。
一方で――
「じゃあ、わたしも!」
カノンが目を閉じ。すぅ、と息を吸って――
「〜〜♪」
歌った。
その瞬間。
(……来る)
音が、広がる。
ただの声じゃない。 周囲の空気ごと巻き込むような響き。
《共鳴歌》
音と音が、自然に引き寄せられる。
(合わせやすい……)
いや、違う。
(……勝手に、合う)
ギターの音と、カノンの声が――
ぶつからない。
むしろ、自然に重なるように導かれる。
ジャラン――♫
声が重なる。
揺れが、消える。
(……すごいな)
これはもう、技術じゃない。
力だ。
「ねえシオン!」
歌を止めて、カノンが笑う。
「今の、すっごく良かった!」
「……うん」
短く頷く。
でも。
(……まだいける)
もっと、できる。
「もう一回」
「うん!」
今度は、最初から。
音を組み立てる。流れを作る。
そして――
歌が、乗る。
今までよりも。 さらに、自然に。
さらに、深く。
響く。
曲が、完成に近づいていくのが分かる。
時間を忘れて、音を重ねる。
何度も。何度も。
やがて――
「……ねえ」
カノンが、ぽつりと言った。
「これ……また、誰かに聴かせたら、びっくりするかな?」
「すると思う」
私は、即答した。
するとカノンが、くすっと笑った。
「だよね!」
少しだけ間を置いて――
「じゃあさ」
こちらを見る。
「もっとすごいの、作ろ?」
「うん」
迷いはない。
音は、まだ成長する。
もっと遠くまで行ける。
(……この音なら)
この世界で。
まだ誰も知らない場所まで。
――届く。
その時だった。
遠くから、誰かの声が聞こえた。
「……あの音、また聞こえるぞ」
「最近よく聞くな……」
通りすがりの大人たちが、足を止めて話している。
(……広がってる)
少しずつ……確実に。
私たちの音は――外へ広がり始めている。
まだ小さい波。
……でも。
それは、やがて大きくなっていく。
そんな予感が、私にはあった。
読んでくださりありがとうございますm(_ _)m
この小説を読んで面白いと少しでも思って下さったのなら、↓の★★★★★、ブックマークで応援してくれると嬉しいです(ㆁωㆁ)




