しっぺ返し
因果応報っていい言葉ですよね。
「うぅ~怖かったよぉ」
「おお~よしよしぃ、怖かったねぇ~」
俺とゴリは現在居酒屋の『漁民』に来ていた。前に翔子と来たところの別店舗だ。だが、そんなことはどうでもいい。俺は恐怖で机の上に突っ伏していた。そして、ゴリも母親のようになでなでしてくれる。俺はさっきの『まねく猫』の店員とのやりとりでLIN●を交換してしまい、その時に発狂してしまった。ゴリがギリギリのところで抑え込んでくれたからなんとか理性を取り戻したのだが、『漁民』に来て飲んだら、恐怖がぶり返してきた。結果的に幼児退行してしまっている。
「ママ~」
「誰がママや」
さっきからゴリに頭をなでなでされているおかげでゴリに母性を感じていた。ゴリから鋭いツッコミが入るがそんなことは些細なことだった。俺はようやくママを見つけられたと思った。しかし、ゴリの絶壁とTシャツのロゴを見てそんなことは吹っ飛んでしまった。
「ブフ~くくく(笑)」
「なぜ笑っているマイサン?」
「誰がユアサンだよ。いやぁそれにしてもよく似合っているなぁと思ってさ(笑)」
「Tシャツが?」
「うん(笑)」
「何がおかしいの・・・?おい、まさか・・・」
ゴリは勘づいてしまったらしい。自分のTシャツを引っ張りながらスマホにスペルを入力していく。すると、みるみるうちに顔が赤くなっていく。
ちなみにゴリのTシャツのロゴの英単語。”MICROMASTIA”の意味は『貧乳』という意味だ。もう一度言う。『貧乳』だ。これを推してきた『FU』の店員さんは相当センスが良い。俺は机に突っ伏して笑い声が出ないように耐えていたのだが、ゴリの方は、一転して静かになってしまった。俺はそれを不気味に思って、
「お、おいゴリ?どうした?」
と聞いたが、不気味なくらいに静かだ。え?もしかしてやりすぎた?すると、
「あの店員をころころしてくるわ。またね伊織。後でお前の番だけどな」
ハイライトの消えた瞳と笑顔で首を斬るジェスチャーをしながらそんなことを宣ってきやがった。
「ちょ、ゴリー」
「それじゃね、伊織、てかこんな服着てらんないから脱ぐわ」」
ゴリは下着姿になって、『漁民』からまだ見ぬ『FU』の店員さんの元に向かおうとした。
「いや落ち着いてゴリ!!!マジで脱ぐな!おい~~~~!!落ち着け、悪ふざけが過ぎたわ!!」
「離せ!!!あの店員だけは絶対に網走(日本最北端の刑務所)にぶち込んでやる!!」
「すいません!マジでごめんなさい教えなければよかった!!俺が天才であるばかりに!!!」
「うるせえぇ!!!いちいち自慢してくるなぁ!!!」
ギャーギャーと俺はゴリを抑え込むというさっきとは全く反対の状況になった。
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「う~もうお嫁にいけない・・・」
「悪かったよ・・・ちょっとやりすぎた・・・」
ゴリは落ち着いたが、あのTシャツを着たくないらしくて、俺のTシャツと交換してきている。正直ゴリとはいえ、女性と服を交換するという特殊な状況に俺は若干の興奮をしてしまっていた。くそぉなんか悔しい!翔子の時もそうだったが、なぜ自分の服を異性が来ている状況にこんなに興奮してしまうのだろうな。この現象に名前を付けてほしいわ。
「うう~最悪伊織にもらってもらうもん」
「そうだなぁ~」
若干幼児退行してしまっているので、俺はゴリの隣に座って頭を撫でて落ち着かせている。俺もゴリも今日は散々だな。
「ほれ、飲んでいやなことは忘れようぜ」
「うん・・・」
ゴクゴクとビールを飲む。ヤバいマジで可愛い。ゴリっていい意味でも悪い意味でも強いからカッコいいとか美人という印象はよく感じるが、こんな弱ったゴリは見たことがない。正直破壊力が抜群だ。不覚だ。ゴリを可愛いとか守ってやりたいと思うとか。
「ゴリたん・・・」
「誰が『ゴリたん』だ」
俺の心の声が漏れたのを綺麗なツッコミを返してきた。
「落ちついたか?」
「ん、まあね。でも後で姉貴に伊織の秘密をバラす」
「すんませんどうかそれだけはご勘弁を」
結局俺はこの秘密を握られている時点でゴリに勝つことはできないんだよなぁ
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「はぁ最近嫌なことばかりだなぁ~」
ゴリは落ち着いて、梅酒を飲んでいる。もちろんロックだ。グラスを持つとマジでカッコいい。
「そんなに嫌なことがあったん?」
「まあね。突然知らない人からさ。『先生から連絡先を頂きました。絶壁さんですよね?僕大好きなんです!』とか言ってきやがってさ」
「あっ」
「で、普通にセクハラだからさ、捕まえたのよ」
「ほ、ほう」
「そしたらさ、『先生が!先生が絶壁さんが彼氏を探しているって言ったんです!』とか言ってきたわけよ」
「へ、へぇ~」
俺は汗を滝のように流しまくった。だって物凄く思い当たることがあるもん。しかも最近。
「問題は私のことを知っている理由だよ。『先生』とやらに教えてもらったらしいんだが、どうして私が『絶壁』だと知っているんだろうね」
「さ、さあね~たまたまなんじゃないかなぁ、ハハハ」
「「ハハハハハ」」
俺たちは互いに高笑いをした。そして、
「吐けやコラ」
「はい・・・」
ゴリに髪を掴まれて、目に箸を突きつけられた状況で俺は尋問された。
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「ったく、これに懲りたら気を付けてよ」
「面目ありません」
俺は土下座の姿勢だ。流石にやりすぎた気がしたので、今回は甘んじて受け入れる。ゴリには翔子の元カレの話をすぐにするはずだったのだが、普通に忘れていた。やっちまったなぁという感想がほとんどだ。でもTシャツの話は俺じゃなくて店員が悪い!後は俺の頭脳が!
「本当に昔からいたずら好きなんだから・・・」
「悪かったよ・・・」
「まあいいけどね。このくらいで怒るのも疲れるしねぇ」
「ゴリたん・・・」
「やっぱりやめた。ちょっと復讐するわ」
「え?」
俺はゴリにスマホの画面を見せられた。俺はその画面を見て全身が青ざめた。
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『姉貴~、伊織がエロゲやってるらしいよ』
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ゴリがあろうことか姉である和葉さんに俺の秘密をバラしやがった。
「うおおおお~~~い!!!ゴリさん!!!?」
「え?何?」
「これはアカンやろ!!!!???」
「反省してないようだからさ。やっちゃった♡」
ちくしょう。可愛いと思ってしまったよぉ~ま、まぁジャンルの方はバラしていない分ゴリなりの配慮なんだろう。でも、元想い人に俺の秘密がバレてしまうなんて・・・
「あっ返信来たよ」
「・・・なんて?」
「ん」
ゴリが俺にスマホを見せてきた。そこには
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『伊織君も男の子なんだねぇ~~』
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「殺してください・・・」
なんだろう。このエロゲを隠して置いたはずなのに、母親に綺麗に並べられていて、『ごめんね、お姉ちゃんを作らなくて』って書かれた手紙が残っていたときと同じと言えばいいのだろうか・・・なんでエロに限っては親とかって謎の理解を示すんだろう・・・いつもはうるさいくせに・・・
「はぁ、これ以上やるとお互いに死にそうだから、話題を変えようか」
「だな」
良い判断だ。このままだとお互いに恥の上塗りになってしまいそうだ。とはいっても他の話題か~ゴリに聞きたいことは自分からべらべらと話してくれるからなぁ~
「伊織は最近何かあったん?」
「ん?俺か?」
「そうそう。私がほとんどしゃべっちゃってるからさ~たまには伊織の話が聞きたいなぁってね」
「う~む、とはいえなぁ~俺もバイト、テストで忙殺されていたからなぁ。あっ、でも今回テストで一個やらかしたのがあったわ。首席取れてるかな・・・」
思い出した。あの日にやらかしたことを。普段なら全く問題なく満点が取れるはずだったんだが、その日は徹夜で頭が働かなくて、計算をミスしたんだった。
「へぇ~、珍しい伊織でもやらかすんだね~」
「その日は元教え子の同僚が終電を逃したとかで泊りに来てな。勉強も教えてたら、徹夜しちまったてさ~うっかりミスをやらかしたんだよなぁ」
「へえ~、え?」
「ん?」
ゴリがグラスを飲みながら凍りつく。何か変なこと言ったか?俺は元教え子の同僚が・・・あっ
「ええ~とその元教え子の同僚って女の子だよね?」
「お、おう」
なぜだ?特に悪いことをやってないのに浮気を言い訳する旦那みたいな状況になっているのは・・・
「ふう~ん、そんな仲だったんだぁ・・・」
「・・・言っておくけどゴリの想像するような仲ではないからな」
「でも家には泊めてるんでしょ?」
「まぁ、うん」
「なるほどねぇ・・・」
そのままゴリと俺は無言になった。話すことがなくなったというかこれ以上話すと何かヤバい方向にいきそうというか・・・
そのまま俺たちの飲みは解散になった。
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時刻は20時手前。いつもはもっと飲むのだがそんな気分じゃなくなってしまったというのが原因だろう。
そして、ゴリが突然口にした。
「今度、伊織の家に泊まりに行くわ」
「おう、ん!?」
突然ゴリがそんな戯言をほざいてきやがった。何を考えているんだ、こいつ?すると、ゴリがニヤリと笑って、
「勘違いすんなよぉ~、伊織とモンハ●の新作がやりたいだけだよ。それなら伊織の家で飲みながらやった方が効率がいいだろぉ?それともモンハ●は買ってない?」
何か無理をしているような言い訳をしているようなそんな雰囲気を感じた。
「いや、買ってからまだプレイしていない。でも、そういうことなら俺の家じゃなくて、通信でやればー」
「それは嫌!!」
「え?」
ゴリから子供の駄々をこねたような拒否を聞いた。何か大事なものを取られてしまったような、そんな感じだった。ゴリはハッとなって、自分が何か余計な一言を言ってしまったような顔をした。
「ご、ごめん、やっぱり迷惑ー」
「いいよ」
「え?」
「久しぶりに朝まで狩りに行こうぜ!全然やってなかったもんな!昔は俺かゴリの家でやっておばさんか母ちゃんに怒られたもんだけどさ、今はその邪魔がないもんな!」
俺は昔のことを引っ張り出して、無理やり元気にふるまう。そうじゃないとヤバい気がした。ゴリも
「う、うん!朝までに古龍を200体くらい狩りたいね!!」
「だな!テンション上がってきたわ!」
俺たちは幼馴染という殻の中で盛り上がった。これでいい。ゴリと俺はこういう風に幼馴染としていつまでもこの関係のままいたいんだ。これがお互いにとって最良の選択だと言い聞かせるように。
「それじゃあ今度休みができたら連絡するわ!」
「おけ!俺もその間にハンターランクを上げておく」
「はいは~い、それじゃあ伊織!」
「ん?」
「またね」
「おうまたな!」
また会う日を約束して、俺とゴリは別れた。
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『後、伊織。そのTシャツは燃やしておいて』
『捨てるんじゃないのね・・・』
『この世に残すんじゃねぇぞ?(#^.^#)』
『あいあいさ・・・』
『重要なお願い』
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