後藤家
少しシリアスになってしまいました・・・
今俺は実家にいる。ゴリと帰ってきてから、2日経つがやっぱり実家はいいな。飯も洗濯もすべてやってくれる聖母様がいらっしゃるからな~今度コンビニでモンブランを買ってきてやろう。
「ん?」
携帯が鳴る。誰かから連絡が来たのだろう。といっても俺と連絡を取る奴なんてほとんどいないから大体候補者は絞れる。
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『おいっス。明日バッティでもやりにいかんかね?ボーイ』
『バッティングをそんな風にダンディに誘うやつに今まで会ったことがないのよ』
『じゃあ伊織のは・じ・め・ては私がもらっちゃった♡(≧▽≦)♡』
『何童貞ですかそれは?』
『バッティ童貞』
『ばっちい童貞って聞こえて一瞬ドキッとしちゃったよ』
『まあ実際童貞でしょ?』
『ちゃうし』
『エロゲ童貞は罪が重いなぁ』
『もうこの話はやめようよぉ。LIN●だってこんなことで容量を使いたいと思わないと思うのよ』
『しゃーないな( *´艸`)それより行けるん?』
『行こう』
『オーケ~、ちょっと遠いから私が車を出すわ。今実家だよね?』
『そう』
『じゃあ13時くらいにうちに来てよ』
『りょ~』
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明日の予定が決まった。ゴリとバッティングかぁ。昔はゴリと後数人で野球とかやったもんだけど、ここ最近は全く身体を動かしてないからなぁ。まぁ運動不足解消にはもってこいだな。
てか運動靴ってあるのかな~高校の時に履いて以来全く見てないんだが。
「母ちゃん~、俺の運動靴ってどこにあるん?」
「え~もう捨てちゃったかな。何で?」
「明日ゴリと遊びに行くことになっててさ」
「へ―、ゴリちゃんとだなんて久しぶりじゃん」
「ひょんなところで再会してね。前飲みに行ってからちょこちょこ会ってるんよ」
「なるほどねぇ~ゴリちゃんどう?綺麗になった?」
「ボチボチですな」
なぜ俺の周りの女はこうも綺麗かどうかを聞いてくるんだよ。そんなに容姿って重要か?美人かどうかなんてどうでもええやろ。大事なのは心だ!な~んてくっさいセリフが思い浮かんだ。
「まあゴリちゃんと遊ぶなら、金くらい出してあげるかね~。これで買ってきな」
「貴方が神だったか」
俺は母親から5000円をもらって、XYZマートにチャリで向かった。ついでにモンブランでも買ってきてやるかな。
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翌日
『義姉のススメ』を午前中にプレイしてから、俺はゴリの元に向かった。エロゲのプレイタイムは基本的に午前中と決めている。朝に英気を養うと午後の俺は通常の1.1倍くらいパフォーマンスが違う。ソースは俺。10日間エロゲを午前中にやる日と午後にやる日でデータを取ってみたのだが、結果は歴然だった。誰が何を言おうと俺はお天道様の前でエロゲをやるって決めているのさ。
閑話休題
「ゴリ~来たぞ~」
俺はインターホンを鳴らさずに家の前でゴリの部屋に向かって声をかける。すると、ドアが開いた。そこにいたのは和葉さんだった。
「あれ?もしかして伊織くん?」
「お・・お久しぶりです!和葉さん!」
「ええーーー!めっちゃ久しぶりじゃん!元気してた?」
「は、はい!元気です!」
「小学生か(笑)相変わらず面白いなぁ(笑)」
焦ったぁ、まさか和葉さんが出てくるとは。後藤和葉。後藤莉奈の二つ上のお姉さんであり俺の初恋の人。顔はゴリの姉と言うこともあり超美人。ファンクラブがあったという話も聞いた。今は保育士をやっていると母親から聞いた。髪色はホワイトベージュでロングのくびれ巻きという韓国風のヘアアレンジをしていた。
「あらあら伊織君?久しぶりねぇ」
「こんちは~お久しぶりです!」
「大きくなったね~昨日莉奈に聞いたわよ。久しぶりに再会したって」
「そ、っそうっすか」
ゴリのお母さんが俺と和葉さんとの会話を聞いて出てきた。相変わらずお若いなぁ。
それよりエロゲショップで再会したことは言ってねぇよな?言われてたとしたら社会的に死ぬんだが・・・
「うーす。あれ?姉ちゃんと母さん、何やってんの?」
ようやく来たか。初恋の和葉さんとあばさんに囲まれるのは若干気まずさがあったので、ゴリが来てくれたことは安心感が半端ない。
「伊織君と話してただけよ」
「ふ~ん」
ゴリは和葉さんに対して特に興味のなさそうに返事をした。
「それにしても、本当に久しぶりね。伊織君と再会したって、莉奈ったら喜んじゃって」
「母さん?!!」
「へぇ~」
俺はニヤニヤしながらゴリを見る。そうかそうか。ゴリったらそんなに俺と再会できたことが嬉しかったのね。ま、その話は再会した時に聞いているから、いじるくらいの余裕はある。
「今日なんて朝からそわそわしちゃってさ。『姉ちゃ~ん、この服とこの服。どっちがいい?』なんて聞いてきたりしたしねぇ。伊織君、どう?今日の莉奈」
「おい姉貴////!」
可愛いなおい!流石に幼馴染とはいえ俺もそんなゴリの行動を想像して率直にそう思った。
今日のゴリの恰好は半袖の黒いシャツとグレーのラフなズボンを履いている。伸縮性が高そうで運動に適した格好ともいえるが、鎖骨辺りが若干見えるのが、悔しいことにエロい
「に、似合ってんじゃない?」
「あ、ありがとう///」
俺はゴリとは目を合わせずに感想を伝えた。なんか照れてるゴリが可愛くて見てられなかった。和葉さんとおばさんはニヨニヨしながら俺の方を見ている。俺とゴリはいたたまれなくなって目を合わせるがすぐにそらす。なんでだよ!相手はゴリだぞ?!
「いいわねぇ青春青春」
「ねぇ~可愛いわぁ2人とも」
もう勘弁してください。これ以上ここにいたらいじり倒されると思ったので、ゴリに早く行こうぜと提案しようとすると、
「そういえば、伊織って昔姉ちゃんに告ったんだよね!」
「うおおおい?!!」
おい!いくらなんでもこれはひどい!本人の前で告った話をされるとかこれなんてエロゲだよ!!よりにもよって一番最悪な面子で最悪な話題なんだが!!!?ゴリを見ると目が『私が恥ずかしい思いをしたんだから伊織もな』という目をしていた。最悪な巻き添えなんだが・・・当の和葉さんは
「ああ~そんなこともあったね~すっごい驚いたよ。突然LIN●で『俺の女になれ』だなんて」
「もうやめてください勘弁してください殺してください死なせてください」
中2故の恐ろしい病を患っていた俺は恐ろしいほどナルシストだった。だから、行けると思って、ゴリに頼んでLIN●をもらって告白したのだが普通に凄い長文で返されて中2病は完治した。その代償は死ぬほど大きかったけどな。
「あの告白だけで1月くらいはお茶の間のネタになったわねぇ」
「死体蹴りはやめてくれませんか!?」
おばさんが俺に聞きたくもない事実を俺に教えてくれる。
「あの時の告白、写真で取ってあるから見てみようかな」
「和葉さん!?」
「ちなみに私もLIN●をくれって言ってきたくだりは全部保存してあるぞぉ?」
「お前は悪魔か!!!」
「見せて見せて」
「おばさんも便乗しないで!」
後藤家総出で俺の黒歴史を掘り返すために、スマホをスクロールしていく。その間俺にできる抵抗はとにかく心を無にしておくことだけだった。あ、アゲハチョウだ。久しぶりに見たなぁフフフ。
「あった」
「さいですか」
「見せて見せてぇ」
「私も」
「はいは~い」
後藤家は俺とゴリのLIN●のやり取り覗き見る。
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『ゴリ、なんか和葉さんのことを好きになっちまった』
『何言ってんの?』
『前会った時に俺に対して手を振ってきてくれたんだよ!あれは脈ありだ!』
『そ、そうっすか』
『ああ、だから和葉さんの連絡先をくれ』
『まあいいけど』
『サンキュー今度アイスを奢る。何か告白の時にやった方がいいことってある?』
『男らしさを見せればいいんじゃない?』
『了解!お前が俺のことを義兄さんと呼ぶ日が来るから覚悟しておけよ』
「楽しみにしてるぅ~」
「おい!何で音読するんだよ?!しかも結構な声量で!」
改めて当時の俺ってキショいな!じゃねぇんだわ!なんじゃこれ?!
「へぇ~こんな、ププ、流れで、ハハハハハ、可愛すぎわ(笑)あッははははは」
「本当ね(笑)舞い上がりすぎてて、ふふ、可愛いわぁ」
和葉さんは腹を抱えて笑い転げている。おばさんは笑いながらも微笑ましそうに俺とLIN●の内容を見ている。もうやめて俺の心のライフはもうゼロよ・・・俺は地面にうずくまって耳と目を塞いでこれ以上情報が入ってこないようにした。
「ほれほれ~伊織~当時のLIN●だよぉ」
ゴリが俺にスマホを見せてくるが、俺は見ないようにした。だが、好奇心が勝って一瞬チラ見してしまった。
「ああああああああああああああ殺してくれええええええええええええええええええええええええ」
魂のある限り叫んだ。もう身体のすべてがむずがゆくて心の処理が追い付かない。時を戻させてくれ。あの時の馬鹿で舞い上がっていた俺を殺して今の俺に入れ替わりたい・・・
閑話休題
「恨むぞゴリ・・・」
俺は怨嗟の瞳をゴリに向けた。なんとか人と話せるくらいには回復した俺が一番最初に発した言葉それだった。ここ数日間だけで俺はなんでこんなにひどい目に合わなきゃならんのだ!自業自得なのだがゴリを睨まずにはいられなかった。
「ごめんごめんって(笑)でもさ、私の義兄になるとか言われた私の身にもなってよ」
「すいませんもう何もいいません」
「はーはー、もう一生分くらい笑ったわ(笑)」
「そうですか・・・」
「でも私は嬉しかったけどね」
「え?」
和葉さんの言葉は意外だった。正直あのLIN●が気まず過ぎてあれ以来全く普通に話せていなかったのだ。だってキモイとか思われていたらどうしよう?侮蔑の言葉を浴びせられたらどうしよう?そんな恐れの感情があったから、ゴリとも遊ぶのが怖くなって、最近まで全く関われなかったのだ。
「弟みたいに思ってたからさぁ。好きって言われたことは嬉しかったよ。でもその後どう対応したらいいか分からなくなっちゃって私も伊織君を避けるようになっちゃったんだぁ。そのせいで莉奈も伊織君と疎遠になっちゃって本当に申し訳ないと思ってたんだ」
「和葉さん・・・」
「姉ちゃん・・・」
俺は和葉さんにそんな気を遣わせていたのかと自分を呪いたくなった。自分勝手に告白して、ゴリとも疎遠になったのは俺のせいだ、だから!
「和葉さんは全く悪くないです。俺が考えなしに告ったばかりに・・・」
「いやいやこういうのは大人の私がしっかりしてないといけなかったんだよ。ごめんね」
俺たちは互いに謝りあった。さっきまでと違って突然シリアスな展開になって嫌な沈黙が流れる。そこで、おばさんが口を開いた。
「なら今日を境にまた仲良くやったらいいじゃない!過去のことなんて水に流してさ」
「お母さん・・・」
「おばさん・・・」
「お互いに仲良くしたい気持ちはあるんでしょ?なら今日で過去を清算して昔に戻りましょ!」
おばさんの提案は俺にとって最高だった。ただ、和葉さんの方は?
「そうね・・・それがいいわ!伊織君もいい?」
滅茶苦茶前のめりで答えてくれた。だから
「俺としても願ったりかなったりです・・・その、また仲良くしてください?」
「うん!」
俺はようやく過去を清算できた。なんか心の中に膿のようにまとわりついていた憑き物がすべて取れた気分だ。
「それじゃあいい時間だし、行きますか」
「だな。和葉さん、おばさん、また」
「うんまたねぇ」
「凛子さんによろしくね~」
ぺこりと挨拶して、ゴリの車に乗った。ちなみ凛子とは俺の母親だ。
そのまま手を振っている二人に車中から挨拶をして、俺たちは地元を出た。
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「よかったね」
ゴリが唐突にそう呟く。あそこまで黒歴史がほじくり返さなくてもよかったのでは?という言葉は飲み込んだ。野暮ってもんでしょ。
「おう、ありがとな」
「何の話?」
「俺と和葉さんの仲をずっと気にしていてくれたんだろ?」
ごりが今回意図的に家から遅れて出てきたのはそういうことだろう。
「まあね。こうでもしないと元に戻らないでしょ?」
「確かに」
俺は苦笑する。流石幼馴染だよ。俺のことをよく理解してくれている。
「は~~~~~~ようやく吹っ切れた気がするぜ!!」
「本当に?」
「今なら何が来ても、乗り越えられる気がするぜ!!」
「ふ~ん、あっ、今姉ちゃん彼氏いるんだよねぇ」
「嘘だああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
俺は頭を抱えて、慟哭を上げ、奈落の底に突然落とされた。
まだまだ、完全に吹っ切れるのは先のことになるんだろうなぁ
車中に悲鳴がはびこる中で、今日の空は快晴だった。
『重要なお願い』
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感想なんか書いていただけたらさらに嬉しいです!
執筆のモチベーションになるので、どうぞよろしくお願いいたします!




