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地元の居酒屋

新キャラ登場です!

俺こと西川伊織と、ゴリこと後藤莉奈が再会して飲んだのはもう3日前のことになった。

俺は何気ない日常、バイトして勉強してエロゲをやる。それだけの日々を送っていると、ゴリから連絡が来た。

================================================

『おいっス。明日また飲みに行かんかね('ω')ノ』

『なんかおっさん化してない?』

『中年クソ上司の連絡にこんな絵文字が多くて、私も影響されちゃったかも( ;∀;)

以後気負付けねば!(^^)!』

『もう手遅れだって(笑)』

『うるせ蝦夷(#^.^#)』

『シベリア気団とオホーツク海気団の接近中~』

『どちらも寒いってかぁ~こんにゃろ~』

『(笑)』

================================================

お互いにおっさんらしい掛け合いをして、LIN●を一時間ほど続けた。俺もゴリも悲しいことにおっさんのような感性を持っているんだろうな。まだ、20そこそこだってのによ・・・でもこの小気味の良いやり取りは安心感があっていいわ。変に気を遣わなくて済むしな。

================================================

『話逸れすぎた(笑)明日は飲みに行けるの?』

『ああ~それなんだけど、明日は地元に戻ろうと思ってね。江戸では飲めんのよ~』

『おお、人返し令でも伊織限定で発令されたのかね?』

『そうなんだよ~田舎の人間は田舎にけえれってさ、って違うわ!単純に母親に帰ってくれば?って呼ばれてな』

『ほうほう、マザコンだねぇ、伊織く~ん』

『なんでそうなんだよ(笑)』

『ま、ちょうどいいし私も帰ろうかな~、地元の駅前でなら飲めんの?』

『それならええぞ?ただ大学とバイトが終わってからだから21時くらいになるけど、Are you OK?』

『おーけー!私も今夜勤明けだから、仮眠とっていくわ~』

『りょ~』

===============================================

俺は明日、ゴリと飲みに行くことが決まった。ってかLIN●でこんなに時間が取られるとは・・・明日の授業の予習が終わってねぇ・・・後はバイトの授業準備・・・てかヤバい!時計をみたら日付が変わっているじゃねえか!明日、1限があるのによぉ~

徹夜が決まって俺は自分の計画性のなさを呪った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

結局俺はなんとか徹夜ですべての事を終わらせた。寝ていないので眠くなると思いきや、俺は逆にテンションが上がっちまうタイプでした。( ̄∇ ̄;)ハッハッハ神にでもなった気分だ!!

すいません、調子に乗りました・・・目の下に隈ができているので、これはゴリにからかわれるだろうなぁ。後、あいつにもか(・・・・・・)

今日の曜日を確認して、俺は大学帰りにバイトに向かった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ちゃーす」

「うーす」


俺はバイト先の塾に来て塾長に挨拶をする。俺は高校時代はもちろん受験が終わってからすぐに雇ってもらったので塾長には頭が上がらない。場所は大学よりも地元寄りになるが、時給が良いので多少の不便さは苦にならない。何よりもやりがいがあるからなぁ


「こんにちはぁ~い・お・り・せ・ん・せ・い」


俺の1つ下の元教え子の小山翔子(こやましょうこ)。今では俺の同僚だ。見た目は美人というよりも可愛い系だ。肩まで伸びた髪をベージュに染め、顔周りにレイヤーカットを入れているのでより男子ウケの良い小顔に見せている。高校時代にもモテていたが、大学生になってからさらにモテてたまにサークルをクラッシュするらしい。彼氏は常にいるが、たいてい3日か長くて1週間で入れ替えている。しかも小山を好きになった男は例外なく、ヤンデレになるらしく、俺は勝手に「ヤンデレ製造機」と呼んでいる。


「おぃ~す小山」

「ぶす~、翔子って呼んでくださいって生徒時代から言っていますよねぇ?」

「はい廃藩置県」


俺は教材を取り出して、小山の言うことを流しそうめんよりも華麗に流した。


「おっさん臭」


さっきまでの猫なで声とは180度変わって極寒の低温ボイス。昨日ゴリと会話したからおっさんオーラが移ってしまったかもしれない。だからってそんなドスの聞いた声で俺に話しかけなくても・・・


「いくらなんても酷くない?」

「酷くないですぅ~それに伊織先生は私を傷物にしたじゃないですかぁ」


泣いたふりなのは一瞬でわかるし、なんなら一回アイアンクロウをくらわしたい。だが悲しいかな。ジェンダー社会が掲げられている中でも、本当に平等なんてない。男が女にそんなことをしようものなら●witterで拡散されてデジタルタトゥーを刻まれてしまう。後、傷物っていうのは第1志望に受からせることができなかったということだ。確かにそこを言われたら弱いんだよな~


「はぁ、翔子(・・)

「ん?なんですかぁ?」


な☆ぐ☆り☆た☆い


「うーしそろそろ生徒が来たから先生たちは持ち場にいってくれ~」


塾長の号令で俺たちは割り当てられた生徒に個別に教えに行く。個別といっても大体1人の先生で5人くらいを持つから「個」と「集団」の間ともいえばいいのかね。基本的には生徒が分からないところを俺が指導するという感じだ。俺は生徒の進みによって与える問題を変えなきゃいけないがこれが案外難しい。だが、俺たちバイトにもその裁量を任せてくれているのでやりがいももちろんある。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「お疲れース」

「うぃーまたよろしく~」


午後20時を迎えていた。ここから地元まで20分ちょっとだ。今から行ったら待ち時間が長いし、かといって、やることもないしなぁ。残業をしようと思ったが、俺のやることはねぇと取りつく島もなかった。


「伊織先~生!」

「この甘ったるいクリームみたいな声はこやー「翔子」・・・翔子か」

「は~い、伊織先生のは・じ・め・て・の生徒でぇ~す」

「なぜそこを強調するんだよ・・・」

「いいじゃないですかぁ~それより暇なら私の話を聞いてくださいよぉ」

「ええ~またヤンデレ男を製造した話を聞かされんの?」

「そうなんですよぉ、、あぁ?」

「すいません、調子乗りました」


結構「ヤンデレ製造機」と言われるのは嫌らしい。俺としては完璧なネーミングだとは思うんだけどな。


「はぁ~罰として愚痴を聞いてくださいよぉ!」

「いやぁ、悪いんだが、今日は友達と約束があってな。あまり長くは聞いてられないからな?」

「え?珍しいですね?」

「まぁな。地元で飲むことになっていてな。後20分くらいしたら電車に乗らなきゃ間に合わん」


ま、だから翔子の話を聞いていれば時間潰しにはなるだろう。俺は人間の情欲に関する話を聞くのが好きだ。やれ、誰が好きになっただの、別れたのだの、そういう人間の本能に従った物語。そういう意味では俺は翔子のことを結構気に入っている。毎度のように運命の人に巡り会える(・・・・・・・・・・)、そして、流星のように捨て去る(・・・・・・・・・・)。一緒にいてつまらないなんてことはない。だから、今日もどんな話を持ってくるのかと楽しみにしていたのだが、


「へえ~どんな人なんですか?まさか・・・女?」


滅茶苦茶大げさに演技をなさっているが、


「そのまさかだよ。お隣さんの幼馴染だ」

「ええ~~!びっくり!!先生にそんな人がいたなんてぇ!一生女と縁がないと思っていたのに・・・」

「おいこら、俺に対する偏見が酷いぞ」

「だってぇ先生は童貞でしょ?」

「う、う、う、うるせえ」

「丸出しすぎます。ちなみに私は処女ですよぉ?」

「おいこらそんな大事なことをサラッとカミングアウトしなさんな。てか初体験がまだという時点で俺と同列じゃねぇか」

「処女と童貞が同列とか馬鹿なんですか?」

「なにこの羞恥プレイ・・・」


しかもすげぇ負けた気分・・・


「それよりどんな人なんですかぁ?美人なんですか?」

「俺のことばっかだけど、翔子の話はいいのか?」

「私の話はいいんですよ。いつも通り運命だと思った人が髪の毛を送ってくるド変態だっただけですから」

「何それ滅茶苦茶気になる・・・」

「ほらほら美人なんですか?」


改めてゴリのことを思い出す。先日エロゲショップで再会したときの婦警の恰好、そして、飲みに行ったときの恰好を。正直、遠目で見たときには美人すぎてゴリだと気が付けなかったんだよなぁ。

俺は素直に率直な感想を話すことにした。


「美人になってたなぁ。まさかあいつがなぁ・・・」


そういう感嘆の声が口から漏れ出る。マジであいつがあんなに美人になるとか悔しすぎるんだよなぁ。まぁ、和葉さんと同じ血を継いでいると考えたら、100万歩譲って納得できた。


「へぇ~、先生がそんなに感じ入っているんだから相当な美人なんでしょうねぇ~」

「なんか怒ってる?」

「ぜ~んぜん」


翔子と1年ちょっとの付き合いだが、こいつの機嫌が悪い時って声のトーンが落ちるってことはよくわかる。ソースは受験期の本人。マジで機嫌が悪い時の翔子は笑顔で何もしゃべってくれないからな。だから怒りゲージで言うと大体3割ってとこかな。


「それより、翔子の話を聞かせてくれよ」

「つ~ん」


おっとこれは思った以上に怒っているな。さてどうしたもんかね。あざとさ満載だが、私怒ってますオーラを出している女にどう対応するのが正解なのかね?俺はこういう時にどうすればいいのかわからないからとりあえず思っていることを話すようにしている。


「ま、あいつは美人だけど、翔子の方が可愛いからな」

あ、やべ、まじで無意識に頭の中のゴリと翔子を比べてしまった。女ってこういう時に比較されるのが嫌だってエロゲで学んだ気がする。だが


「そ、そうですかね~///」


お、イイ反応。これが正解かな。思っていることがそのまま正解なら簡単だ。本音を言えばいいだけなんだからな。


「おう、お前以上に可愛い人間なんてリアルでは出会ったことはないな」

「へぇ~そこまで私を上げてくれるんですね~」


俺からしたら教え子(・・・)という時点で他の有象無象に比べたら世界で一番といってもいいかもしれない。初めて持った生徒が成長して俺と一緒に働いている。その時点で察せられるだろ?


「いやまじまじ、ってかヤベぇ!もうそろそろ行かねえと」


時刻を見たら、もう長針が7をタッチしそうだった。40分には乗らないと間に合わん。


「おっと伊織先生、最後にもう一個だけ聞いてくださいよぉ」

「ん?何?」


俺は急がないといけないから、Suic●を出して、改札を出る準備をする。


「私と今度飲みに行きましょう」

「いいぞ・・・ってお前は未成年だよな?」

「いえいえ、私は4/27生まれなので19歳です」

「なるほどダメだな」


お酒は20歳になってからっていうルールがあるんだよ!と俺が思っていると、ちっちっちっと指を左右に動かす。なんか腹立つな。


「伊織先生、4/27を反対にして読んでください」

「ん?724だが?」

「ですよね?つまり私は7/24になったら20歳なんですよ」


俺は眉を指で揉む。何を言っているんだこの子は?


「だからですね、数学には逆数という考え方があるんです。読んで字のごとく、逆さから数字を読む(・・・・・・・・・)ことです。だから私は7/24に20歳なんですよぉ」

「逆数と数字に関わる全ての賢者に謝れ・・・ってマジでヤバい!またな」

「はぁい、楽しみにしてま~す!」


俺は翔子との会話を切り上げて、改札を超えて、軽く小走りになりながら急行列車に乗り込む。まさかとは思うけど、あいつさっきのことを本気で言っているわけではないよな?

嫌な予感は拭えないまま俺は電車で地元に向かった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

地元の最寄り駅に着く。ただこの駅最寄りなんだけど、家まで30かかるってどういうことよ?最寄りを再定義するか、駅をマジで通してくれ・・・

思い通りにならない最寄り駅について嘆きながら俺は改札を出た。

俺はLIN●を見てなかったが、未読があった。

===============================================

『もう着いてるでぇ~』

『まだかいな?』

『遅れとるんかぁわれぇ?』

『21時までに返信か合流ができなかったら、『義姉のススメ』を姉貴にプレイさせて、伊織が好きなゲームだって説明するぞこら?』

===============================================

ヤベぇ犯罪予告じゃん・・・しかもあなた婦警ですよね?

時刻を見直すと、後2分で21時だ。あぶねぇ~LIN●を返信したらセーフ・・・何か見覚えのある美人がいるなぁ?

俺はあの美人がゴリだと分かって声をかけようとするが、心の急ブレーキがかかる。

待てよ?ここであの美人に話しかけて、全然知らない人だった場合、俺は恥ずかしいナンパ野郎の不名誉を受けながら時間切れで俺は和葉さんに俺のすべてをばらされるという地獄を味わなければならないということになるのでは?なら今すぐにでも電話でゴリに連絡しなくては!


「あっもしもしゴリ?今どこ?」

「正面でどちゃくそ目が合ってるだろうがタコ」


すぐさま頭を下げる。目の前の美人さんがゴリ様でしたマル

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

俺たちは駅前の「目利きの金長」に来ていた。


「待ちくたびれたわ~」

「申し訳ない、ちょっと同僚と話をしていてな」

「ん、同僚?」

「あれ言ってなかったっけ?俺、塾でバイトをしてるんよ」

「ほえ~そりゃまた意外な」

「そう?」

「だって、年上にしか興味がない伊織が年下に教える仕事を選ぶなんて考えられないんだよねぇ。ほらあの『義姉のススメ』だってそうじゃん」

「逆に言えば、年上にしか興味ないからこそ、年下と健全に付き合えると思わない?」

「ごめん、マジで引いた」

「理不尽のパイルバンカーかよ・・・」


俺の決死の切り返しは、ドン引きの前にあっさりと死滅した。

今日のゴリは白のティーシャツとスキニーでまとめた上下白コーデだ。それだけなら女らしい(・・・・)のだが、軍の迷彩色で使われるようなジャケットを肩に羽織っているせいで、カッコいいが勝っている。


「まっだかな~まっだかな~」

「こらこらお坊ちゃん。はしたないですよ」

「今、お坊ちゃんって言ったかコラ?」

「滅相もない」

「あっそ、じゃあ『義姉のス「すいません、言いました、ごめんなさい」


マジで性癖の弱みを握られているのがデカすぎる。反撃手段がこれですべてかき消されるんだよなあ。

いっそのことゴリの弱みを聞いてみるか。だが、どう聞き出そう?普通に聞いたら絶対に答えてくれない。だから、


「ゴリって胸小さいよな」

「セクハラで網走(最北端の刑務所)にぶち込むぞ?」


やっちまった。これはアカン。速攻で和葉さんにばらされる案件なのでは?

正直に言おう。


「いやさ、俺だけ弱点を握られてるって不公平じゃん。ゴリの弱点を教えてほしいなって」

「エロゲショップでエロゲを買っている幼馴染の伊織を誤逮捕したことをネタにされて、婦警内で『エロゲの幼馴染』といじられることが今の私の弱点かなぁ」

「おいお~い、俺の性癖が政府の雌犬に広められているのかよぉ」


とんだ道連れがあったもんだ。何をしてもゴリには勝てないのだろうか。


「そういや、私、木村君が好きだったよ」

「へえ、あいつ最近、アメリカの金髪ガールと結婚したぜ?」

「嘘だ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「ひぐら●かな?」

「え?噓でしょ?マジ?え?本当?」

「マジのマジ。母ちゃんが言ってたぜ」

「うわあ、割り切ってたとはいえ、なんかショックだわぁ~~~」


マジでゴリがショックそうだ。たまには幼馴染として、なんとかしてやるか


「こんなことなら無謀でも姉貴に告った伊織を見習って、私もいくべきだったぁ!!!!」

「だから俺を巻き込まないでくれよぉ・・・!」


こいつ俺を巻き込んで自分の心のダメージを軽減してやがるな。俺はタンクもしくはサンドバックじゃないんだぞ?


「失礼しま~す!ビール2丁とレモンサワー2丁。後は縞ホッケと焼さんまです!」

「待ってましたぁ!!」


元気のいい店員さんが品を持ってきてくれる。それを見てゴリは目を輝かせていた。さっきまでのダウナーな雰囲気はどこに行ったんだ?まぁいい。俺もお腹が空いている。さっそくいただこうかね。


「おいおい伊織!まずはアレ(・・)が必要じゃろ?」

「ああ、アレ(・・)ね」

「はい、いくよぉ。せーの」


食事前には絶対にやらなければならない儀式。すべての食材、いきとしいけるものすべてに感謝して俺は


「いただきます!」「カンパーイ!」


バシャ―ン


俺の顔面はゴリが来るであろうと想定していた、グラスが来なかったことにより、俺はビールまみれになりました☆

                     

                      閑話休題


「失礼しま~す。ビールとタオルです」

「あっお気遣いどうもありがとうございます」

「いえいえ仕事なので、ごゆっくり~」


俺はビールまみれになった顔をタオルでふきふき。ゴリは空になったグラスを変えてもらって、ビールを補充した。ひと呼吸。そして、


「普通はいただきますやろ?!!」

「いやいや酒の席なんだから乾杯でしょうが!!!」

「食事があるんだからまずはいただきますをしてから、ご飯、メイン、サラダ、飲み物、ご飯の円順列で食べなさいって小学校の時に倣ったでしょうが?!」

「いつの話よ!後ここには魚と酒しかないでしょうが!!」

「だったら魚から食うだろ?!、その後酒に行くもんだろ!?」

「でも前は乾杯してたじゃん」

「あっ本当だ」

                    ぽくぽくぽくちーん

「改めて、かんぱーい」

「かんぱーい」


ぐびぐびと行く


「ㇷ゚ハ~~~~!!このために生きてるぅ!!」

「よっいい飲みっぷり!」


マジでおっさんくさいな俺ら・・・ゴリが一気に飲んでいるのを見てから俺もちびちびと飲みだす。一気に飲みたい気もするがスッキリとしたのど越しを味わう前に口の中をビール味にしておきたい。

そして、口の中がビールで埋め尽くされてから、俺は一気に飲み込む。


「プハ~~~~~~生き返る~仕事の後はこれに限るなぁ」


ビールなんて苦いもんだと思っていたが、夏の暑い中日中働き、疲れた人間には最高の飲み物だ。マジで疲れが一瞬で取れるんだよなぁ


「いい飲みっぷりだねぇ~」

「お代官様にはかないませんよぉ~」

「エロおやじか(笑)まあエロゲ好きって時点で間違えてはいないよねぇ」

「はいはい。じゃあホッケでもいただきますか」


俺は木の割り箸を綺麗に割って、ホッケの白身を綺麗に取り出していく。そして、そのまま口の中に入れて頬張る。肉厚で淡白な味だが、脂がのっていて、噛むたびに味が染み込んでくる。


「おっと、忘れてた」


俺は醤油皿に醤油を少々入れて、そこにホッケを付ける。それをムシャムシャと食べる。さっきとは違って白身の中に醤油のほんのりとした辛みが交わっていて、それがホッケの味を引き立たせていた。


「おお~美味そう~いい顔してるねぇ~」

「見惚れんなよ。俺がイケメンだからってさ」

「ちょっと何言っているか分からない。それにエロゲを選んでた時の顔にそっくりの顔だから気持ちが悪いって意味なんだけど」

「俺ってばホッケに欲情しちまっていたのか・・・」

「伊織の守備範囲は海にまで及ぶのかよぉ」

「そうらしいなぁ~人間と結婚できなかったら魚と結婚しよ」

「だとしたら、そのホッケ()を食ってる伊織は頭がおかしいね」

「違いない」

「「ハハハハハ」」


馬鹿な会話で盛り上がる。マジで20歳になってもこれじゃあなんか情けないな。小学生の頃は大学生や社会人ってすごい意識の高くて難しい会話をしている印象しかなかったけど、結局のところは本質は変わらないんだろうなぁ


「さてさてぇ~、私も焼さんまをいただくかしらん」

「お、いいねぇ~」


ゴリはさんまの皮を手と箸を使って綺麗に剥いた。そして、手を一回拭いて、さんま内蔵を取り出す。


「いきなり内臓から食べるなんて変わってるなぁ」

「よく言われるぅ。レモンサワーと一緒に食べるのがいいのよねぇ」

「ほー」


ゴリはさんまの内臓の食べ方を教えてくれた。

まずは大根おろしをさんまにかける。そして、それを白身を食べる。それはそれでうまいのだが、その後に黒い部分。つまり、内臓を口にする。ほろ苦くて、焼け焦げた匂いがするので、鼻と舌にツーンとした苦みを感じるが、それを口の上で咀嚼し、最後にレモンサワーで飲みこむ。

口にレモンのすっぱさと焼さんまの独特な味が交わって独特な味を醸し出すが、なるほど、確かにこれは癖になりそう。俺の目の前でゴリがニコニコしていた。


「どーお?うまくない?」

「うまい。これは癖になりそう」

「でしょう~?贅沢を言えばもっとレモンの味を強くしてほしいけどねぇ~」

「確かに薄いな。炭酸で誤魔化してる気がする」

「ね。摘発しようかしら」

「職権乱用だ~」


俺たちはその後も他愛のない話で盛り上がった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「でさ~、うちのクソ上司がさ!私たちの代が歴代最悪のデキだっていうのよ!」

「へえ~それはなんでまた?」

「チームワークがなってないだの礼儀がなってないだの仕事を時間内で終わらせないだの、全部てめぇの監督不足じゃねぇか!」

「確かに?」


酒が入ってきて、ゴリの愚痴はますますエスカレートしていった。今は大嫌いなクソ上司に対して、不満を俺にぶつけてくる。


「しかも、後輩も中々ひどいのよぉ~。言われたことをちゃんとやらないし、理屈をこねてグダグダいうし・・・」

「それは良くないなぁ」

「でしょ!?『これってやる意味あるんですか?無駄だと思います』っじゃねぇのよ!んなこと言う暇があるなら、さっさと仕事を終わらせてくれや!!」

「クソわろ」

「もうマジで後輩指導ってどうやればいいのか分からないのよ・・・伊織教えてよ。あんた先生なんでしょ?」

「え~なんともいえんけど、そうだな~」


俺は残っていたビールをグイっと呷りながら考えた。中身が空っぽになったところで、


「そのままでいいんじゃねぇの?」


俺は思ったことを口に出した。情報が少なすぎるっていうのもあるけれど、でも、俺はそれが正しいと信じていた。


「・・・どうして?」

「だって、後輩はゴリを信頼して(・・・・・・・・・・)るから思ったことを(・・・・・・・・・)話すんだろ(・・・・・)?大丈夫だよ。いつか絶対に大きく成長するときがくるはずさ」

「へぇ~いいこと言ってくれるじゃん」

「当たり前だろ?それに何年幼馴染をやっていると思ってんだ。お前が良いやつだなんてことは俺が一番よく知ってるわ」


ゴリが目を丸くしてる。おいおいさっきからあんなに俺の言葉を拾ってくれてたのに途端にだんまりですかい。ちょっとカッコつけたこと言い過ぎたかね。

俺はレモンサワーを飲みながら、沈黙に耐え続けた。


「ほぉ~、カッコいいこと言ってくれるじゃん。伊織じゃなかったら惚れてたわ~」

「なんで俺限定でダメなんだよ・・・」

「ん~顔?」

「俺と俺に遺伝子を紡いでくださったすべての親族に謝れ」

「でも、そうすると、アダムとイブにいきつくじゃん」

「じゃあゴリも自爆してない?」

「あ、本当だ。私たち親戚じゃん」

「ってことは俺と和葉さんも姉弟ってことになれるじゃん!」

「・・・・・・」

「何か言えよ・・・」


俺は酒の勢いでヤベぇことを言ってしまっていた。酒ってすげぇわ。心の中で思ったこがすべて出ちゃうぜ。ま、ゴリとしか飲まないし、弱みを完全に握られているからこそできることだしな。

会話も途絶え途絶えになって解散の流れになったので、もう一杯飲んで会計を済ませた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「おお~涼しいねぇ~」

「だなぁ~夏の真夜中って本当に気持ちがいい」


俺とゴリはお隣同士なので、帰りももちろん一緒だ。タクシーや親も呼ぶかと考えたが、歩いて酔いを冷ます方が良いだろうとして、30分の帰路につく。

ゴリはいつものポニーテールを解いている。その動作に一瞬ドキッとしたが、気のせいだと思って頭の中で考えたことを速攻でゴミ箱にぶち込む。


「伊織って、おっぱいが大きいのが好きなん?」

「突然なんて質問だよ。そうだけど」

「死ねよ」

「おかしくね?」


理不尽すぎるやろ。俺の性癖なんて知っているんだから・・・ああ~そういうことか!自分の胸の大きさにコンプレックスを感じているんだな・・・可哀そうに・・・


「胸は大きさじゃないだろ?絶壁好きだっているはずだよ」

「なんで私の胸が垂直だって断言してんだよ」

「それに和葉さんはでかいじゃないか。遺伝子的にはまだ希望があるだろ?」

「胸の大きさは中学生で決まるって、研究があるんだわ」

「どこで調べたんそれ?」

「前に捕まえた犯人が巨乳つくりのスペシャリストだったんよ」

「なにそれ詳しく」

「取り調べの担当が私になってね。アイスブレイクと個人的な私情を挟んで聞いてみたのよ。どうすれば大きくてできますかって」

「ちなみに公私は何対何だったん?」

「1対99で『私』が勝っていたわ」

「私情じゃねぇか」

「うるさい。そしたら、私の胸を見て、『手の施しようがないわ・・・」って申し訳なさそうに言われたわ」

「じゃあもう無理じゃん。てかその人はどうして捕まったんだ?」

「人類貧乳化計画を推進する人間に濡れ衣を着せられたって言ってたわ」

「恐ろしいな。その計画」

「ええ、もしかしたら私はスカウトされるかもしれないって言われた瞬間にカッとなって殴ってしまったの。それで一番最初の話に戻るの」

「悪いの100でゴリじゃん。上司の判断は間違えてなかったな」


てか、この国ってそんなに馬鹿な計画が進んでいたのかよ。なんて日本人らしい出る杭は打つならぬ、出る乳を打つ計画なんだ。許せん!。と同時に、巨乳に対して貧乳はここまで嫉妬しているのかと同情したい気持ちになった。だから、俺はゴリに言った。


「ゴリ、たとえお前が絶壁の民だったとして堕ちるんじゃねぇぞ」

「さっきから絶壁、絶壁って・・・キラウエア火山みたいな形はしとるわ!」

「盛りすぎじゃね?いいとこ大阪の天保山(日本一小さい山)やろ?」

「黙れ小僧!お前に私の痛みが分かるのか!?胸がなさ過ぎて高校まで宝塚の人ですか?と間違えられる気持ちが!!!」

「ひっ!」


血涙を流しながら言ってきたので、迫力が比にならない。ちょっと調子に乗りすぎた。


「ま、そんなものよりもゴリのいいところはたくさん知っているからさ。安心しろよ」

「突然よいしょすんなよぉ~、メンヘラを作る男の匂いがするなぁ」

「まじか・・・あいつの話を聞きすぎて俺もそっちの道に走ってしまうのか・・・」

「ん?あいつって?」

「ほら、さっき言ってた同僚だって」

「へぇ~女?」


なんでゴリといい翔子といい同じ質問をしてくるんだよ・・・そんなに俺の周りに女がいたらおかしいのか?いくらなんでも失礼が過ぎる気がするぜ。ま、いいけどさ


「女だよ」

「ほぉ~可愛いの?」


さっきの翔子は美人かどうかだったのにゴリからは可愛いのか?っていう質問が来た。


「顔はめっちゃ可愛い系だな。だけど、ゴリの方が美人だぜ」


ふっ、決まった。俺の本心を伝えつつ、ゴリを上げる高等テクニック。さっきはこれで翔子を怒らせたからな。俺は過去に学ぶ男だ。歴史は繰り返してはいけないのさ。


「ほうほう、にゃるほどねぇ~」

「なんだよ・・・?」

「い~や、伊織って私のことを美人だって思ってたのねぇ?」


ニヤニヤしながら、言ってくる。からかってきているのが分かって若干ばつが悪いが、本心だから仕方がない。


「前も言ったじゃん。あか抜けしすぎだって。再会した時はマジの美人すぎて本当に気づかなかったよ」

「そ、そこまで言われると照れる///」


ゴリは女らしく滅茶苦茶照れてる。なんかやり返せた気がして気分がいい。


俺たちは歩く。ようやく地元に続く橋が見えた。そこを登って下の川を見る。月が良い感じに反射して、闇と光が交差している。蝉やコオロギ鳴き出し、本格的に夏になったんだなぁと実感する。

橋を下るともう街灯すら光っていないド田舎。俺たちのホームグラウンドに着いた。


「ん~帰って来たねぇ~」

「そうだな~」


ゴリは腕を上げて伸びをする。俺も都会とは違う空気を感じて深呼吸をする。アスファルトの上では感じられない土の香り、稲の大群。五感で感じられるすべてが刷新したかのようだった。

俺たちの家が見える。もう50メートルほどだ。唐突にゴリが話し出した。


「それじゃあ伊織。美人すぎて伊織の大好きな幼馴染である私が次の休み、一緒に遊びに行く権利を与えようと思う」


殿様のように偉そうに、厚顔不遜に宣言する。俺の回答はきまっている。


「光栄でござんす」

「うむ、それじゃあ次の休みができたら連絡するわ」

「オーケー」


俺はゴリと遊ぶ約束をした。大好きなとか色々ツッコミたいところがあったが、なんか機嫌がいいので水を差すのは野暮ってもんだろう。そうこうしているうちに実家の前に着いた。


「それじゃあまたね!」

「おう、またな!」


互いに手を振り合って別れる。ゴリが家に入ったのを確認しておれも、


「たで~ま~」


実家に帰還した。


『重要なお願い』

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