16.ずっと一緒にいてくれませんか
纏わり付くような闇の中に、セレナはいた。
体が重くて、動くことができない。
誰かに呼ばれた気がして、意識はゆっくり、浮上していって・・・
天井が、見えた。光の加減から、朝だと分かる。首を傾けると、こちらを覗き込む橙色の瞳が───
「・・・クラウス?」
「っ!セレナ!」
昨日の夜の記憶がよみがえってきて、
「クラウス、大丈夫?」
「それはこっちのセリフだよ。・・・良かった」
クラウスは安堵に息をつく。
「昨日、なにがあったの・・・?」
クラウスの話はこうだ。
いつもよりだいぶ遅くなり、慌てて帰ろうとしたときのこと。
突然殺気を感じ、振り返った瞬間、クラウスは突進してきた魔獣にはね飛ばされていた。
はね飛ばされた先に木があり、クラウスは為すすべもなく気を失った。
「そこに私が行って、魔獣の爪を受けて・・・」
「・・・今回、セレナのおかげで助かったよ。でも、もうこんな危ないことはしないで」
そのとき、壁際にいて気付かなかった人物が歩み寄ってきた。
「ハイレンさん・・・!来て、くれたんですね」
「嬢ちゃんの使役してる黒猫が俺のところに来たからな」
ハイレンに感謝を述べると、クラウスが神妙な面持ちで口を開いた。
「───セレナ。話があるんだ」
「───」
「セレナには『呪い』がかけられてて、それは解呪できた」
呪いは、多量の血液が流れ出てしまうというものだったらしい。
「解呪には時間が必要で、間に合いそうになかったから・・・僕の血を輸血した」
「・・・だから、君も───僕と同じ体質になってしまったんだ」
つまり、成長速度が遅くなり、長い寿命を得たということか。
「───ごめん」
深く頭を下げる意味が分からなくて、首を傾げる。
「なんで、謝るの?」
「───クラウスがそうしたのは、私を助けるためなんでしょ?」
きっと、それをするには抵抗があったはずだ。
それでも、彼はセレナを助ける道を選んだ。───地獄に付き合わせると分かっていながら。
「むしろ私は、感謝してる」
「え・・・」
「───だって、これでクラウスとずっと一緒にいられるもの」
寿命の差というしがらみなしで、生きていける。
「僕で、いいのか・・・?」
「クラウスが、いいの」
クラウスの顔が、くしゃりと歪んだ。彼は何度か瞬きし───
「僕も、セレナと死ぬまで一緒にいたい」
クラウスは端正な顔に微笑みを浮かべ、そう言った。セレナも満面の笑みで───
「ね、約束」
───クラウスとセレナは互いの体に腕をまわし、永遠の愛を誓った。




